RTX 3080とRTX 3070の間を埋める新たなラインナップとして、「GeForce RTX 3070 Ti」が登場。RTX 3070のコアを微増 & VRAM高速化しただけの地味なグラボですが、実際の性能はどの程度伸びるのか。詳しくレビュー & ベンチマークするよ。
(公開:2021/7/17 | 更新:2021/7/17)
「GeForce RTX 3070 Ti」の仕様とスペック
GPU | RTX 3070 Ti | RTX 3070 | RTX 3080 |
---|---|---|---|
プロセス | 8 nm製造 : Samsung | 8 nm製造 : Samsung | 8 nm製造 : Samsung |
シェーダー数CPUのコア数に相当 | 6144 | 5888 | 8704 |
RTコア数レイトレ用の特化コア | 48 | 46 | 68 |
ブーストクロック | 1770 MHz | 1730 MHz | 1710 MHz |
VRAM | GDDR6X 8 GB | GDDR6 8 GB | GDDR6X 10 GB |
理論性能(FP32) | 21.75 TFLOPS | 20.31 TFLOPS | 29.77 TFLOPS |
SLI対応 | – | – | – |
PCIe | Gen 4.0 | Gen 4.0 | Gen 4.0 |
TDP | 290 W | 220 W | 320 W |
補助電源 | 12-pin | 12-pin | 12-pin |
MSRP | $ 599 | $ 499 | $ 699 |
参考価格 | 110920 円 | 112590 円 | 159460 円 |
発売価格 | 89890 円 | 69960 円 | 95700 円 |
発売 | 2021/6/9 | 2020/10/15 | 2020/9/17 |
GPU | RTX 3070 Ti | RTX 3070 | RTX 3080 |
---|---|---|---|
世代 | Ampere | Ampere | Ampere |
プロセス | 8 nm製造 : Samsung | 8 nm製造 : Samsung | 8 nm製造 : Samsung |
トランジスタ数 | 174.0 億 | 174.0 億 | 283.0 億 |
ダイサイズ | 392 mm2 | 392 mm2 | 628 mm2 |
シェーダー数CPUのコア数に相当 | 6144 | 5888 | 8704 |
TMU数Texture Mapping Unitのこと | 192 | 184 | 272 |
ROP数Render Output Unitのこと | 96 | 96 | 96 |
演算ユニット数 | 48 | 46 | 68 |
Tensorコア数機械学習向けの特化コア | 192 | 184 | 272 |
RTコア数レイトレ用の特化コア | 48 | 46 | 68 |
L1キャッシュ演算ユニットあたり | 128 KB | 128 KB | 128 KB |
L2キャッシュコア全体で共有 | 4.0 MB | 4.0 MB | 5.0 MB |
L3キャッシュコア全体で共有 | – | – | – |
クロック周波数 | 1575 MHz | 1500 MHz | 1440 MHz |
ブーストクロック | 1770 MHz | 1730 MHz | 1710 MHz |
VRAM | GDDR6X 8 GB | GDDR6 8 GB | GDDR6X 10 GB |
VRAMバス | 256 bit | 256 bit | 320 bit |
VRAM帯域幅 | 608.3 GB/s | 448.0 GB/s | 760.3 GB/s |
理論性能(FP32) | 21.75 TFLOPS | 20.31 TFLOPS | 29.77 TFLOPS |
SLI対応 | – | – | – |
PCIe | Gen 4.0 | Gen 4.0 | Gen 4.0 |
TDP | 290 W | 220 W | 320 W |
補助電源 | 12-pin | 12-pin | 12-pin |
MSRP | $ 599 | $ 499 | $ 699 |
参考価格 | 110920 円 | 112590 円 | 159460 円 |
発売価格 | 89890 円 | 69960 円 | 95700 円 |
発売 | 2021/6/9 | 2020/10/15 | 2020/9/17 |
「RTX 3070 Ti」はRTX 2070 Superの後継モデルで、RTX 3070とRTX 3080の間を埋めるラインナップです。
RTX 3070よりコア数がちょっとだけ増えて、VRAMが高速化(GDDR6 → GDDR6Xメモリに変更)しています。地味なスペックアップの割に、消費電力の目安となるTDPは220 → 290 Wにまで増え、希望小売価格は100ドルの値上げです。
単純に見ると・・・ワットパフォーマンスもコストパフォーマンスも悪そうに見えるグラボですが、国内での販売価格はRTX 3070 Tiの方が安いので新しい選択肢として普通に歓迎できます。
なお、RTX 3070 Tiのマイニング性能は50%に制限される仕様です(なぜ代理店がRTX 3070 TiをRTX 3070より価格を安く設定しているのか、少し理由が分かったような気がします)。
強化された「レイトレ」と「DLSS」
- 第2世代RTコアでレイトレ性能は1.5倍(RTX 30シリーズ解説記事)
従来のRTX 20シリーズだと、リアルタイムレイトレーシング(NVIDIA RTX)を使うとフレームレート落ちすぎで、正直なところ不人気な機能です。今回のRTX 30シリーズは、レイトレを処理するRTコアを進化させ、性能は1.5倍に改善します。
- 「DLSS」で4K ~ 8Kゲーミングを簡単に(RTX 30シリーズ解説記事)
グラボに大きな負荷が掛かるアンチエイリアシング(AA)を、ディープラーニング技術を使って超高速で処理する「NVIDIA DLSS」も進化してます。より少ないTensorコアで高性能なDLSSを可能にし、コストカットに貢献します。
パッとしないスペック構成と価格設定
- シェーダー数は6144コア(RTX 2070 Superの2.2倍)
- 超高速なGDDR6Xメモリ搭載
- 高性能化する「レイトレ」と「DLSS」
- マイニング性能は50%にカット(特需対策)
- なぜかRTX 3070より安い
- 大幅に増加したTDP(220 → 290 W)
- 希望小売価格は599ドル(100ドル値上げ)
RTX 2070 Superの後継モデルとして不足ないスペックの持ち主です。しかし、同じRTX 3000シリーズのRTX 3080やRTX 3070と比較してしまうと、やや中途半端なスペックと価格設定。
幸い、マイニング性能を50%にまでカットする仕様変更のおかげで、国内販売価格はRTX 3070(無印)より抑えられています。微妙なスペックでも価格性能比(コスパ)が良ければ、意外とアリなグラボになる可能性が高いです。
では、以下よりベンチマーク & 実測ゲーミングしてRTX 3070 Tiの性能を詳しく調査します。
RTX 3070 Tiの性能をベンチマーク
テスト環境(スペック)
テスト環境「ちもろぐ専用ベンチ機」 | ||
---|---|---|
CPU | Ryzen 9 5950X | |
CPUクーラー | Corsair H100i Pro RGB240 mm簡易水冷クーラー | |
マザーボード | ASUS ROG STRIXX570-E GAMING | |
メモリ | DDR4-3200 16GB x2使用メモリ「G.Skill Trident Z C16」 | |
グラフィックボード | RTX 3070 Ti 8GB | |
SSD | NVMe 500GB使用SSD「Samsung 970 EVO Plus」 | |
SATA 2TB使用SSD「Micron 1100」 | ||
電源ユニット | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
OS | Windows 10 Pro 64bit検証時のバージョンは「2009」 | |
ドライバ | NVIDIA 466.77 / AMD 20.8.3 | |
ディスプレイ | 3840 x 2160@60 Hz使用モデル「BenQ EL2870U」 |
ついに・・・重たい腰を挙げて、グラフィックボードの検証に使うベンチ機のCPUを更新しました。従来のCore i9 10900Kから、コンシューマ向けで最高の性能を誇る「Ryzen 9 5950X」を採用。
Ryzen 9 5950Xの採用により、今まで以上にCPUボトルネックの影響を避けられ、結果的により正確なグラフィックボードの性能評価が可能です。
テスト時のグラフィックドライバは、NVIDIA GeForce Driver 466.77(RTX 3070 Tiに対応する最初のドライバ)にて検証します。
用意したグラボ
今回のRTX 3070 Tiベンチマークで使用するグラボは、Palit製「GeForce RTX 3070 Ti GameRock OC」です。Palitさんより直接サンプル提供をいただきました。
RTX 3070 Ti GameRock OCそのモノのレビューは↑こちらの記事で確認してください。
RTX 3070 Tiのゲーミング性能
今回のちもろぐ版グラフィックボードレビューでは、以下2つのベンチマークと14個のゲームタイトルを使って、「RTX 3070 Ti」のゲーム性能を詳しくテストしました。
- 3DMark(FireStrike / TimeSpy / Port Royaleを使用)
- VRMark(Orange / Cyan / Blueすべて使用)
- FF14 : 漆黒のヴィランズ
- FINAL FANTASY XV
- Apex Legends(ベンチマークまとめ)
- Call of Duty : Black Ops Cold War(New !!)
- Cyberpunk 2077(ベンチマークまとめ)(New !!)
- Escape from Tarkov(ベンチマークまとめ)(New !!)
- Rainbow Six Siege(ベンチマークまとめ)
- Fortnite : Battle Royale
- Overwatch
- Assassin’s Creed Valhalla(New !!)
- Microsoft Flight Simulator(ベンチマークまとめ)
- Watch Dogs Legion
- モンスターハンターワールド(ベンチマークまとめ)
- PSO2 ニュージェネシス(NGS)(New !!)
全部で14個あったベンチマーク対象のうち、5つを新しいゲームに置き換え、以前のレビューで掲載を見送っていたApex Legendsを復活させました。
- Battlefield V
- Call of Duty Black Ops IV
- Assassin’s Creed Odyssey
- ARK Survival Evolve
- Shadow of the Tomb Raider
- 黒い砂漠
今回のレビューより、ベンチマーク対象から外れるタイトルは以上の通りです。ソフトが古い(または後継の新ソフトが出た)、日本国内のプレイヤー数の減少などを考慮して、検証から外しています。
定番ベンチマーク:3DMark
「3DMark」はグラフィックボード用の定番ベンチマークです。グラボの性能をざっくりとスコア化(Graphics Score)して、性能を分かりやすく比較できます。
DX11で動作するフルHD向けベンチマーク「FireStrike」では、RTX 3070 Tiは35700点です。かつて18万円だったRTX 2080 Tiをわずかに上回るスコアで、なかなか悪くない性能を示しています。
DX12で動作する、WQHD向けかつ比較的新しいゲーム向けの「TimeSpy」では、ほぼRTX 2080 Tiと同じスコアです。
他のグラフィックボードとベンチマークスコアの比較をしたい方は、↑こちらのグラボ性能まとめ表も参考にどうぞ。
VRゲーム性能:VRMark
日本はヨーロッパ圏を超えるVRゲーム大国でして、VRゲームのためにグラボを求める人も少しずつ増えています。VRゲーム向けの定番ベンチマーク「VRMark」を使って、RTX 3070 TiのVRゲーム性能を検証します。
「Orange Room」はVRMarkで一番軽い(HTC ViveまたはOculus Riftの動作チェック的な)テストです。グラフを見て分かる通り、基本的にOrange Roomのスコアは15000点前後でほぼ頭打ちです。
「Cyan Room」はDX12で動作するVRベンチマークで、2番目に重たいです。RTX 3070 TiのスコアはRTX 2080 Tiとほとんど同じで驚きます。性能の良いグラボほど、VRAMの速さが効きやすいです。
「Blue Room」は将来のハードウェアを前提として用意された、5K解像度の重量級VRベンチマークです。RTX 2080 Tiには引き離されますが、RTX 3070をきちんと抑えています。
【1920 x 1080】フルHDゲーミングの性能
14個のゲームの検証データを平均化して、RTX 3060のフルHD(1920 x 1080)における平均パフォーマンスをグラフにまとめました。
RTX 3070 TiのフルHDゲーム性能は「平均158.4 fps(下位3%:118.4 fps)」です。下位モデルのRTX 3070との性能差はおよそ6%と少ないです。希望小売価格は20%も上がっているので、コスパは悪化します。
RTX 3070 Ti平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
フルHDゲーム(1920 x 1080)における、検証したそれぞれのデータはこちら↑のスライドをじっくり見てください。
テストしたゲームは14個で、RTX 3070 Tiはうまい具合に3070と3080の間に挟まる性能です(さすがNVIDIAというべき?)。しかし、ゲームによってはRTX 3070と大差ないシーンも見られ、やや中途半端な感は否定できません。
【2560 x 1440】WQHDゲーミングの性能
14個のゲームの検証データを平均化して、RTX 3070 TiのWQHD(2560 x 1440)における平均パフォーマンスをグラフにまとめました。
RTX 3070 TiのWQHDゲーム性能は「平均118.8 fps(下位3%:92.4 fps)」です。相対パフォーマンスはRTX 3070比較で約8%アップ。フルHDより性能が伸びますが、まだ地味な性能差です。
RTX 3070 Ti平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
WQHDゲーミング(2560 x 1440)における、検証したそれぞれのデータはこちら↑のスライドをじっくり見てください。
MSFS2020やWatch Dogs Legionを除き、ほとんどのゲームでRTX 3070を明確に超える性能を発揮します。
【3840 x 2160】4Kゲーミングの性能
14個のゲームの検証データを平均化して、RTX 3070 Tiの4K(3840 x 2160)における平均パフォーマンスをグラフにまとめました。
RTX 3070 Tiの4Kゲーム性能は「平均67.3 fps(下位3%:54.8 fps)」です。WQHD時よりさらに性能が伸び、RTX 3070比較で約10%の性能アップ。RTX 3070より安定して4Kゲーミングを動かせます。
ただ、4Kゲーミングが目的なら、あと1つ上位のRTX 3080を選んだほうが確実です。予算が限られていてどうしようもないなど、ハッキリした理由がないなら4K目的でRTX 3070 Tiを選ぶメリットは薄いでしょう。
グラフをよく見れば見るほど、RTX 3080の性能は圧倒的です。
RTX 3070 Ti平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
4Kゲーミング(3840 x 2160)における、検証したそれぞれのデータはこちら↑のスライドをじっくり見てください。
基本的にRTX 3070よりも、60 fpsを安定して狙える性能です。設定次第で伸びしろがありますし、NVIDIA DLSSに対応しているゲームなら平均60 fpsのハードルはグッと下がります。
ベストはRTX 3080以上ですが、妥協案としてRTX 3070 Tiは悪くないグラボです。
RTX独自の強み:レイトレとDLSSを試す
レイトレーシング(NVIDIA RTX)の性能
NVIDIA RTXシリーズの大きな武器のひとつである「RTX(リアルタイムレイトレーシング)」をテストします。
光の反射や映り込みをリアルタイムに計算して、リアリティあふれる映像を作り出す「リアルタイムレイトレーシング」は非常に負荷が重たい処理です。では、RTX 3060のレイトレ性能を試します。
レイトレーシングの性能をスコア化する定番ベンチマーク「3DMark Port Royal」の結果がこちら。RTX 3070 Tiは8895点でした。
次は実際のゲームでレイトレを使ってみて、実用に耐えるフレームレートを出せるかチェック。
レイトレ対応の超美麗グラフィックなタイトル「Cyberpunk 2077」の検証結果です。残念ながらフルHDで平均60 fpsすら無理です。
レイトレ対応ゲーム「Watch Dogs Legion」は驚くほど高画質でレイトレが割と分かりやすいのですが、やはり動作の重さが凄まじいです。フルHDでは明らかな性能向上が見られる一方、WQHD以上だと性能差が微妙・・・。
単純にVRAM容量が足りてません。
「DLSS」でフレームレートの底上げ効果
次はRTXシリーズで使用可能な、もうひとつの武器「NVIDIA DLSS(Deep Learning Super Sampling)」について検証します。
DLSSは、GPUコア内部に配置されているディープラーニング専用の「Tensorコア」を使って、グラフィックの中で特に負荷が重たいアンチエイリアシング(AA)を超高速で処理します。結果的にシェーダーコアに掛かる負担が減って、フレームレートを底上げできる仕組みです。
特にGPUへの負荷が大きい、かつ画質も重視される4K解像度以上で重宝します。DLSSに対応した5つのゲームタイトルを使って、4KゲーミングにおけるDLSSのフレームレート底上げ効果を検証です。
コールオブデューティー:コールド・ウォーでは、安定したDLSSの効果を得られます。なんとか60 fps台だったRTX 3070 Tiが、DLSSによって平均90 fps近くまで押し上げられます。
サイバーパンク2077のテスト結果です。DLSS無しと比較して、ほぼ2倍近い性能アップです。RTX 3070 TiはDLSSの底上げにより、サイバーパンク2077を4K解像度でギリギリ60 fpsで動かせます。
フォートナイトをわざわざ4Kでプレイするゲーマーは稀だと思いますが、実はDLSSの効き目が大きいタイトルの一つです。
aaa
モンハンワールドはDLSS(設定:1.0)でテスト。ノーマル画質よりシャープネスの効いた映像になり、フレームレートはおよそ1.4~1.5倍です。DLSSを使えばRTX 3070 Tiでモンハンワールドを4K@60 fpsでプレイできます。
Watch Dogs Legionはレイトレを有効化した状態だと、DLSSの効果は非常に大きいです。しかし、RTX 3070 TiはDLSSを入れても平均14 fpsと、快適な動作からはほど遠い様子。
- Anthem(1.0)
- Battlefield V(1.0)
- Bright Memory(2.0)
- Control(2.1)
- Cyberpunk 2077(2.0)
- Death Stranding(2.1)
- Deliver Us the Moon(2.0)
- F1 2020(2.0)
- Final Fantasy XV(1.0)
- Fortnite(2.1)
- Justice(1.0)
- Marvel’s Avengers(2.1)
- Mechwarrior 5 Mercenaries(2.0)
- Metro Exodus(1.0)
- Minecraft RTX(2.0)
- Monster Hunter World(2.0)
- Pumpkin Jack(2.0)
- Shadow of the Tomb Raider(1.0)
- Watch Dogs Legion(2.1)
- Wolfenstein Youngblood(2.1)
DLSSの最新バージョンは「2.1」です。2.0以降のDLSSほど、シャープネスの効いた高精細な映像を出力でき、性能の伸び幅も大きくなりやすいです。
RTX 3070 Tiのクリエイティブ性能
ゲーミング性能だけでなく、クリエイティブ性能も検証します。GPUレンダリングの定番「Blender」に加え、OpenCL系の「LuxMark」。それとOpenGL系の「SPECviewperf 2020」を使った検証を行います※。
※Blenderのバージョンを2.90 → 2.92に更新。SPECviewperfのバージョンを13 → 2020に更新。
GPUレンダリング
Blenderの公式サイトで無料配布されているCycles Render向けのベンチマーク「Blender Benchmark」を使って、GPUのみ使用する設定でレンダリングを行います。描画に掛かった時間が短いほど高性能です。
RTX 3070 Tiは29秒で「BMW」のレンダリングを完了。もう少し複雑な「Koro」のレンダリングは97.1秒で完了。RTX 3070との性能差はごくわずか・・・、シェーダー数の差が少ないので妥当な結果です。
LuxMarkはレンダリングソフト「LuxRender」のパフォーマンスを評価できるベンチマークソフト。Cycles Renderと違って、NVIDIA / AMDのどちらでも「OpenCL」を使ってテストが実行されます。
Blenderと同様、RTX 3070 Tiのレンダリング性能はRTX 3070と比較してほとんど変化がないです。GPUレンダリングはコア数(シェーダー数)がモノを言う処理内容ですので、シェーダー数の自動だと伸ばせる性能に限界があります。
3DCG / CAD(OpenGL処理)
ワークステーション向けのベンチマークソフト「SPECviewperf 2020」を使って、有名な3DCG / 3DCAD系ソフト「3ds Max」「Maya」「Solidworks」の性能を検証します。
3ds MaxとSolidworksはRTX 3070と比較して6%、Mayaは約9%の性能差です。
RTX 3070 Tiの温度と消費電力
消費電力を実際に計測
FF15ベンチマーク(設定:高品質)を実行中に、グラフィックボード本体の消費電力を計測します。なお、消費電力の比較は最大値ではなく「平均値」を使います。
消費電力は悪い意味でびっくりです。フルHDで約243 W、WQHDで約266 W、4Kゲーミングだと約282 Wでほぼ300 W近い消費電力。上位モデルのRTX 3080と20 W程度しか違いません。
性能差の割に消費電力の伸びが大きく、ワットパフォーマンスの悪化は明らかです。RTX 3070 Tiは基本的に「RTX 3070のVRAM強化版」ですので、要するに「GDDR6X」メモリが消費電力増加の主要因と言えそうです。
電力ロガー機能のついた電源ユニットを2台使って、CPUとマザーボード(CPU以外)に電力供給を分割します。
テスト環境 | ||
---|---|---|
電源ユニット #1システム全体 | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
電源ユニット #2CPUのみ | 850 W(80+ Gold)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 |
FF14:漆黒のヴィランズのテスト中に、CPU以外の消費電力をロガー機能で測定した後、グラフィックボードを取り外した状態で再び同じテストを実行して測定を行います。
- A:グラボを取り付けた状態で消費電力を測定
- B:グラボを外した状態で消費電力を測定
以上2つのデータを取得したら、「AをBで引き算」でグラフィックボード本体の消費電力を抽出できる仕組みです。
グラボの消費電力はソフト読み(HWiNFO)で確認は可能ですが、グラフィックボードのモデルやメーカーによって表示される数値に差が生じる可能性があるので、ロガー機能のついた電源ユニットを使って測定しています。
少々手間は掛かるものの、ただのソフト読みよりは正確です。
ワットパフォーマンスは?
FF15ベンチマークの平均フレームレートを、先ほど実際に測定した消費電力で割り算して、ワットパフォーマンス(= 消費電力1 Wあたりのフレームレート)を求めます。
言うまでもなく、今回比較した4つのグラフィックボードで一番ワットパフォーマンスが悪いです。
グラボの温度をチェック
FF15ベンチマーク(3840 x 2160)を実行中に、HWiNFOを使ってGPUコア温度を計測します。
なお、グラフィックボードの温度はテストに使用したオリファンモデルの出来によって完全に左右されるため、各GPUの比較は参考程度に見てください。
消費電力が大幅に増えたものの、Palit製GameRock OCは見事に温度を抑えています。
厚み60 mm(2.7スロット占有)かつ90 mm大口径トリプルファンと、ベント付きバックプレート(穴あきデザイン)のおかげで、300 W近い熱を適切に処理できます。ただしファンの動作音は若干気になるレベルです。
まとめ:RTX 3070より安く買えるのが救いか?
「RTX 3070 Ti」のデメリットと弱点
- 最高設定のレイトレには耐えられない
- 4Kゲーミング性能はやや不足
- 性能の伸び幅が少ない
- その割に消費電力が多い
- 低いワットパフォーマンス
- 国内の販売価格(599ドル → 10万円台??)
RTX 3070 Ti単体で見るなら決して悪くないグラボです。しかし、RTX 3070と比較すると性能差は思ったより小さい上に、消費電力の増加は非常に大きくワットパフォーマンスの悪さはなかなか。
4KゲーミングだとRTX 3080に迫る消費電力を見せながら、性能はまったく届かない状況です。自作PC用に単品で買うなら、全体的に中途半端と言わざるを得ないグラフィックボードです。
「RTX 3070 Ti」のメリットと強み
- フルHDで200 fps以上が可能
- WQHDで100 fps以上を狙える
- (DLSSで)4Kゲーミングもできる
- 「レイトレ」対応
- フレームレートを底上げする「DLSS」
- RTX 2080 Ti以上のレンダリング性能
- なぜかRTX 3070より安く買える
客観的に見るとRTX 3070 Tiはあまり良いグラボではありませんが、国内価格はなぜかRTX 3070 TiがRTX 3070(無印)より安い状況であり、コストパフォーマンスでRTX 3070を完全に打ち負かします。
適正な定価ならRTX 3070 Tiの存在意義は薄いはずなのに、RTX 3070の方が高いため「ゲーム用グラボを買うなら意外とアリ」と評価できてしまうグラボです。
もちろん価格差の原因はマイニング性能の有無だけ。今回の性能比較で明らかなように、マイニング性能が制限されていてもクリエイティブ性能にまったく悪影響はありません。
純粋にRTX 3070 Tiは、RTX 3070よりもコスパが良いグラボです(2021年7月時点)。ちもろぐの評価スコアには、価格を使った単純なわり算が含まれるため、当初の予定よりも高いスコアを付けられます。
というわけで、ちもろぐの個人的な評価は「Aランク」とします。一日でも早く、グラフィックボードの価格正常化を・・・待ってます。
以上「RTX 3070 Tiベンチマーク & レビュー:3070(無印)より安くて高性能とは?」でした。
RTX 3070 Tiを入手する
RTX 3070 Tiを搭載するグラフィックボードは、記事を書いた時点で9.5~13.6万円の価格帯で購入できます。200 Wを余裕で超える消費電力のため、ラインナップの大部分が分厚いトリプルファンモデルです。
とりあえず今回レビューに使用した「Palit RTX 3070 Ti GameRock OC」をおすすめに挙げておきます。
もうひとつおすすめを挙げるなら、玄人志向の「GALAKURO」です。国内3年保証が最大の魅力で、ボード本体の性能も優秀です。
厚み61 mmの分厚い設計に、90 mm口径トリプルファンを搭載。さらに1-Clip Boosterと呼ばれる取り付け型の小型ファンも付属します。
RTX 3070 Tiを搭載するBTO
RTX 3070 Tiを搭載するいい感じのBTO PC(ゲーミングPC)については、↑こちらの記事にまとめる予定です。
現時点で購入できる在庫があり、無難におすすめできるBTOモデルは「ガレリア」または「G-GEAR」です。ガレリアについては、以下のレビュー記事も参考にどうぞ。
半導体の供給が良くなって値段落ち着いたらRTX3080でいいやって再評価になりそうなのが何とも
性能は良いんだが、GDDR6X使ってるやつ全般に言える電気食いはどうにかしてほしいね・・・
意外と320bit仕様の3080のコアチップ自体は省電力性高く優れているとも言えるのか。
6800XTは256bit GDDR6でもそして7nmEUVでも同じく300Wオーバーでもあるので。
時期的に3070Tiはメーカーからの卸値から少し高騰化を抑えられているとは思いますが、それでもMSRPからはまだ遠いしそれ以上に3080/3070が高騰していることで逆転現象が起こってしまっているので3070Tiが買いな状況ですね。
絶対的パフォーマンスの高い3080やワットパフォーマンスの高い3070がもう少し下がってくると、3070Tiの立場は必然的に微妙になるのでここ数ケ月限定の評価Aになりそうな感じが・・・。
GDDR6Xの使用に伴い、3070Ti FEのPCBも172mm→213mmにデカくなった。
このサイズだとヒートシンクを改造しても超小型PCに入れないな。
こいつの発売前に無理して3070を買ったけどそんなに価格差も性能差無くて嬉しいのか悲しいのかわからん
89980のものが買えたら別の話ですけど…
確かに秋葉原では2回のチャンスがありましたね。
ゲフオはtsmc製7nmのsuperを出せないのなら、せめてマイニング制御版の60tiと70と80を量産すればいいのに・・
実際に出したのは50ti相当と揶揄される60と、消費電力のみ大幅アップでその実70super相当にも満たないと評判の?70tiだもんなあ
今のnvidiaはユーザーの予想や期待の斜め下を行くのか好きなのか、それとも単なる○抜けなのか・・
まあ次期40シリーズがtamc5nmとの噂も出てきたから、我が家の1060と1080にもう少し頑張ってもらおうかな
兎に角色んな事情が重なって割高になったのなら、せめてせめてユーザーに大枚はたきがいのある買い物をさせろとnvidiaには言いたい
うわ、めんどくせ!
デビュー当初から言われた
電力は3080に肉薄、性能は3070に肉薄
が、再確認されただけですね
解散
ワッパが壊滅的なのに(状況によるとは言え)コスパが良いとはどうなのか・・・
この消費電力だと750w電源だとちょっと厳しくなるのがな……
最近は850wとか1000wとか高級品をみんな載せてんのかしら
消費電力激増の事はあるにせよ、一応若干ではあるが性能向上ははたしている新型にしては随分と評判が悪いね
今は相当にグラボメーカーのイメージが悪いってこともあるのかな
マイナー専用のグラボを作る一方でゲーマーの味方を気取ってきたNvidiaが入手難のゲーマー向けに作ったものがこれかよ
とうとうNvidiaの本性が見えてきた
鼻からゲーマーを欺く気満々だな
どうぞこれからもマイナーとゲーマーに電力効率の悪い低質なグラボを高値で売り捌いて自社の利益と環境破壊とマイニングに貢献して下さい
私は二度と買いません
350~400Wな3090や6900XTよりはワットパフォーマンスは高いでしょうけど、GDDR6のまま16GBにした方がワットパフォーマンス良く需要が高そうな気が。
まあこれは来年Q1にSuperシリーズとして出してくるような気もするしコストパフォーマンスは昨年レベルまでには戻らず良くはないでしょうけど。
まあRTXの入手性は改善されてきてはいるからRXほど悪くはないとも思いますが。
3070無印のLHRが安くなってきたからtiのメリットが少なくなってきましたね
まだ3070の方が最安だと5000円高いからなあ
新技術gddr6x+パワーリミット220wで3070より性能がいいと考えるとまだ買いでしょう
これ低電圧化するとどうなんでしょ
メモリ12GB以上なら差別化できたのにね…
まぁ高騰化してから買い替える必要になったので3070ti買ったのですが…
昔の記事にて失礼します
玄人志向よりデュアルファン 3スロット占有のRTX3070Tiがあるのですが、排熱の面でちもろぐさんのようなレビューがなく購入を足踏みしております
ちもろぐさんの体感 経験でRTX3070Tiはデュアルファンでもしっかり冷えると思いますか?
ご教授お願い致します