LGA 1700ソケットに標準で対応した3500円のクーラーに新たな刺客が登場。DeepCoolの「AK400」です。
Youtuberに評価用のサンプルがバラまかれているため、個人的に疑いの目で見ていますが・・・果たして本当に評価通りの性能なのでしょうか?
DeepCool AK400のスペックと仕様
DeepCool AK400 型番:R-AK400-BKNNMN-G-1 | |
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冷却ファン | 120 mm FDBファン x1 |
LED対応 | なし |
互換性 | Intel:LGA 1700 / 1200 / 115x AMD:AM4 |
保証年数 | 3年 |
参考価格 | 3546 円 |
DeepCoolは「ASSASSIN III」や「AS500」など、低価格でよく冷えるCPUクーラーを数多く投入し、自作PCユーザーから着実に支持を集め続けているクーラーメーカーです。
そのDeepCoolから、3546円のエントリーモデル「AK400」が発売されました。LGA 1700に標準対応、高さ155 mmで互換性そこそこ良し、静音性に優れたFDBファンを付属と。
スペックを見る限り、非常にコスパが良さそうなCPUクーラーです。
DeepCool AK400:レビュー内容
パッケージと付属品
白い背景に真っ黒なAK400本体がデザインされた、シンプルなパッケージで届きました。
パッケージ側面にスペックの記載あり。
中身は発泡スチロール製の梱包材で、ヒートシンク本体と付属品が仕切られていました。
- ヒートシンク本体
- 120 mmファン
- インテル用マウントキット
- AMD用マウントキット
- ファン取り付けクリップ
- 説明書
付属品はごく普通の内容です。CPUグリスは付属していません。ヒートシンクに最初から塗布済みですので、誤って拭き取ると別売りのグリスが必要になります。
ヒートシンクとファン
高密度なフィンが均等に並んだ精度の高いヒートシンクです。
凸凹とした独特な形状は「マトリックスフィンデザイン」とDeepCoolが名付けており、高い冷却性能(公称値は最大220 W)を支える重要なデザインらしいです。
ヒートシンクの側面は空気がもれないようにフィンの隙間を板で仕切っています。
ヒートパイプは左右ジグザクにズレた配置で、ヒートシンクにつながっています。ジグザクに分布している方がヒートシンク全体にまんべんなく熱を伝えやすいように見えます。
CPUから熱を回収する受熱部は「ダイレクトヒートタッチ」方式を採用。虎徹で使われている「ベースプレート」方式と比較すると、コスト面で有利ですが、冷却性能は劣るとされています。
熱回収の効率は発熱が大きいほど性能差が開くため、AK400の最大220 W対応だとダイレクトヒートタッチが最適解とは思えませんが、3500円の価格を実現するならベースプレート方式は厳しいのでしょう。
4本あるヒートパイプの太さをデジタルノギスで測定すると、およそ6 mmでした。
冷却ファンは120 mmサイズのFDB方式(Fluid Dynamic Bearing)が付属します。
型番は「FC120P(DF1202512CM)」です。公称スペックは送風量が最大66.47 CFM、ファン回転数は500~1850 rpm(+-10%)、騒音値は最大29 dBです。
FDB方式のファンは一般的に冷却性能と静音性を両立しやすい傾向があります。
取り付け方法を解説
今回はLGA 1700ソケット(ASUS TUF GAMING Z690 WIFI D4)に取り付けながら解説します。
インテル用マウントキットをLGA 1700に合わせます。
ネジ穴を内側に寄せるとLGA 1200に対応、外側に寄せるとLGA 1700に対応します。
マザーボードの取付穴に合わせて、マウントキットを挿し込みます。
スペーサーを取り付けます。「115X」と刻印された丸いスペーサーがLGA 1200用、「1700」と刻印のあるスペーサーがそのままLGA 1700用です。
スペーサーをマウントキットのネジ穴に添えます。
固定用のブラケットを配置します。
プラスドライバーでネジを回して固定します。
なお、4辺にわたって覆いかぶさるフレームは剛性に優れていますが、マザーボード上の部品(コンデンサ等)と物理干渉するかもしれないリスクが若干あります。
今回のASUS TUF GAMING Z690 WIFI D4では、ギリギリ物理干渉しなかったです。コンデンサとの距離は1 mm未満で本当にギリギリですが。
ヒートシンクをフレームに合わせて、ネジをプラスドライバーで回して固定します。
片方だけを一気に締めずに、圧力が均等に鳴るイメージで左右交互に少しずつネジを締めるのが正しい取り付けのコツです。
ネジを締め切りました。途中でネジが回らないようにストップする機構が搭載されているので、自作PC初心者でも安心してネジを回せます。
付属のファンクリップで冷却ファンをヒートシンクに取り付けます。ファンに向きが書いてあるので、ヒートシンクに向かって風がふくように取り付けてください。
コンパクトで干渉しづらいデザイン
全体的にコンパクトなデザインで、背の高いオーバークロックメモリやVRMヒートシンクと干渉(ぶつかり)しづらいです。
メモリを4本挿し込める余裕があります。背の高いヒートシンクが付いたオーバークロックメモリも問題なく取り付け可能です。
余ったファンクリップを使えば、別のケースファンをヒートシンクに追加してデュアルファン化もできます。
DeepCool AK400の冷却性能
テストスペック
テスト環境 | |
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CPU | Core i7 12700K (レビュー記事) |
CPUグリス | SMZ-01R熱伝導率:13.2 W/mk |
マザーボード | ASUS TUF GAMING Z690 WIFI D4 |
メモリ | DDR4-3200 16GB x2使用メモリ「G.Skill FTridentZ C16」 |
グラフィックボード | GTX 1650使用グラボ「Palit KalmX」 |
SSD | NVMe 1 TB使用SSD「Samsung 970 EVO Plus」 |
電源ユニット | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 |
OS | Windows 11 Pro検証時のバージョンは「22000」 |
第12世代Alder Lake世代で人気のある「Core i7 12700K」を使って、DeepCool AK400の性能をテストします。
グリスは「SMZ-01R」を使います。9点盛りにしたあと、マスキングテープとクレジットカートを使って平坦に塗布してから、CPUクーラーを取り付けます。
なお、Alder Lake世代ではマザーボードによってはソケット圧が強すぎてCPU側が歪んでしまう仕様※があり、CPUクーラーの性能をテストするときに問題です。
ぼくが使っているCore i7 12700Kと、ASUS TUF GAMING Z690 WIFI D4のソケット(Lotus製ソケット)には、「歪み」が生じていないかどうか当然チェック済みです。
※インテルいわく「仕様」扱いとなりました。ワッシャーや金具を使って圧力を分散するノウハウが流通していますが、仕様外の方法で使った場合の悪影響が予想できないので、レビューでは使いません。
最後に「CPUクーラーをどれくらい動かすか?」ですが、距離50 cmで動作音が35 dBになるようにファンの回転数を調整します。35 dBはとても静かです。
- クロック周波数:自動
- コア電圧:自動
- メモリ電圧:1.350 V(固定モード)
- Load Line Calibration:自動
- 電力制限(Power Limit):190 W(※i7 12700Kの最大TDP)
今回のレビューで使用したCore i7 12700Kの設定です。基本的にCore i7 12700Kの最大TDP(= 190 W)で動かしますが、設定に変更を加えた場合はグラフに別途記載します。
静かな設定(35 dB)の冷却性能
静かな設定の冷却性能は最大86℃、平均81℃です。Core i7 12700K(定格)の消費電力は200 W近いですが、90℃未満に抑えてられていて驚愕です。
Vetroo V5と比較すると、最大値で4℃低く、平均値で5℃も低いです。
ファン全開(100%)時の冷却性能
ファン回転数を100%(全開)に変更して、同じテストを行います。
ファン全開時の冷却性能は最大83℃、平均80℃でした。静かな設定と比較して、平均値は1℃しか下がっていません。35 dB時とファン全開の回転数に大きな差がないため、冷却性能も差が開きづらいです。
142 Wに制限したときの冷却性能
↑こちらの記事で解説している「電力制限設定」を使って、Core i7 12700Kの消費電力を142 Wに抑えた状態で同じテストをします。
142 Wに制限すると一気に温度を抑えられます。最大73℃、平均70℃です。標準設定(TDP:190 W)より最大で13℃も温度が下がっています。
Vetroo V5と比較すると、最大3℃、平均3℃も温度が低いです。
ファン回転数を100%(全開)に変更すると、最大71℃、平均68℃まで下がります。Vetroo V5より最大4℃、平均2℃低い温度です。
サーマルスロットリング(Cinebench R23)
CPUの定番ベンチマーク「Cinebench R23」のストレステストモード(10分間)で、どれくらい性能に変化が見られるかを確認します。
設定 | 最大 | 最小 | 平均 |
---|---|---|---|
35 dB / 190 W | 22552 cb | 22361 cb | 22478 cb |
全開 / 190 W | 22487 cb | 22358 cb | 22419 cb |
35 dB / 142 W | 21346 cb | 21210 cb | 21283 cb |
全開 / 142 W | 21432 cb | 20978 cb | 21290 cb |
平均値と性能変化率を表にまとめました。
ファンの設定で冷却性能も変わりますが、CPUの性能は意外と変化しづらいです。静音設定とファン全開設定、どちらも平均値で見ると0.3%程度の差で、ほぼ誤差といっていいレベル。
設定 | 平均 | 性能変化 |
---|---|---|
35 dB / 190 W | 22478 cb | 0.3 % |
全開 / 190 W | 22419 cb | 0.0 % |
35 dB / 142 W | 21283 cb | -5.1 % |
全開 / 142 W | 21290 cb | -5.0 % |
温度がガクッと下がる142 W設定による性能低下はせいぜい5%に抑えられており、Ryzen 9 5900Xに匹敵する性能(20500~21500 cb)を維持できています。
ファン回転数ごとの動作音(騒音)
ファンの回転数を10%ずつズラしながら、騒音値とファン回転数を測定したグラフです。ファン75%で35 dB前後、ファン100%で38.3 dBです。
ファン設定 | ファン回転数 | 騒音値 |
---|---|---|
0 % | 480 rpm | 31.9 dB |
10 % | 480 rpm | 31.9 dB |
20 % | 480 rpm | 31.9 dB |
30 % | 667 rpm | 32.0 dB |
40 % | 870 rpm | 32.0 dB |
50 % | 1057 rpm | 32.1 dB |
60 % | 1206 rpm | 34.0 dB |
70 % | 1371 rpm | 33.6 dB |
80 % | 1530 rpm | 35.3 dB |
90 % | 1660 rpm | 36.6 dB |
100 % | 1789 rpm | 38.3 dB |
DeepCool AK400の付属ファンは回転数の割に動作音がかなり低いです。回転数80%まで騒音値が35 dBに抑えられており、ほとんどのシーンで静かに聞こえます。
さすがに100%まで回すと騒音値が38 dB前後まで上昇し、扇風機を小モードで動かしたのと同じくらいの動作音になりますが、PCをケースに閉じ込めてしまえば実際はもっと静かです。
Vetroo V5のファンと騒音値を比較すると、静音性能の差は一目瞭然です。
Vetroo V5だと70%以上から40 dBを超えてしまい、静かとはいえない動作音に突入します。AK400ならたとえ100%(全開)まで回しても騒音値は40 dB未満に抑えられており、一貫して静かです。
一般的に光らないFDB(Fluid Dynamic Bearing)方式のファンは静音性で有利と言われていますが、AK400のFDBファンは定説どおり静音性に優れています。
Vetroo V5の付属ファンはARGB LED対応かつ油圧ベアリング方式です。
騒音値(dBA) | 評価 | 目安 |
---|---|---|
30 ~ 32.49 | 極めて静か | 耳を近づければ聞こえるレベル |
32.5 ~ 34.9 | 静か | ファンが回っているのが分かる |
35 ~ 39.9 | やや静か | 扇風機を「小」で回したくらい |
40 ~ 42.49 | 普通 | エアコンよりは静かな音 |
42.5 ~ 44.99 | やや騒音 | エアコンの動作音に近い |
45 ~ 50 | 騒がしい | 扇風機を「中~大」で回した音 |
50 ~ | うるさい・・・ | 換気扇を全力で回した音 |
まとめ:低価格CPUクーラーの「迷ったらコレ級」
「DeepCool AK400」の微妙なとこ
- 4辺フレームが物理干渉しないか心配
- 200 Wを冷やすにはやや不足
- ARGB LEDライティング非対応
- Vetroo V5より7 mm背が高い
「DeepCool AK400」の良いところ
- 142 Wを余裕で冷やせる性能
- ファン80%まで静音動作(< 35 dB)
- 100%回転でもそれなりに静か
- 価格の割につくりが良い
- 高さ155 mmのコンパクト設計
- ファンの回転数を自由に設定可
- 標準でLGA 1700に対応
- かんたんな取付方法
- 3年保証
DeepCool AK400の冷却性能は本当に優秀です。
なぜ優秀なのか、ぼくはCPUクーラーの設計者では無いので理由について詳しくコメントしないですが、素人でも分かる明らかな事実は付属冷却ファンの優秀さです。
回転数80%まで35 dBちょっとの騒音値に抑えられており、100%時ですら40 dBを超えません。しかも、100%時のファン回転数は約1800 rpmで決して回転数が低いわけではありません。
虎徹Mark IIの付属ファンも40 dBを超えないものの、回転数はせいぜい1200 rpmで送風量に限界があります。AK400は40 dB未満で1800 rpmを実現しており、静かなまま高い送風量を稼ぎます。
独特な凹凸をもつマトリックスフィンデザインや、左右上下から空気がもれないように板で仕切ったデザインも冷却性能に貢献していると思われますが、付属ファンの性能の方が際立っています。
なお、今回比較に使ったVetroo V5は残念ながら冷却性能でAK400に惨敗ですが、背の低さ(148 mm)ではAK400より有利です。
とはいえ、PCケースを自由に選べる自作PCでCPUクーラーを選ぶなら、基本的にAK400で良いでしょう。高さ155 mmはほとんどのATX対応ケースに入り切るサイズ感です。
以上「DeepCool AK400レビュー:LGA 1700対応の3500円CPUクーラー対決【Vetroo V5】」でした。
追記2:AK400にライバルが登場
3800円の安さで、ツインタワー型ヒートシンクとデュアルファンを搭載したCPUクーラー「PA 120 SE」が登場。AK400より冷えるのかどうか、実際にテストしました。
追記:ファン単品で売ってました
DeepCool AK400に付属するファン「FC120P」の標準版にあたる「FK120」なら、Amazonで入手できます。3個セットが約3600円、単品で約1500円です。
虎徹Mark IIに付属する「KAZE FLEX 120」より500円くらい高いですが、最大回転数はおよそ1.5倍です。
検証ありがとうございます!ファンを統一したり入れ替えたらどうなるのかなーと単純な興味として思いました。そうなるとAK400の優位性はかなり失われるんですかね
FK120ってファンのデザインがこのAK400と同じなのですが違うファンなんですかね?それだと単品で売ってますね。
FK120はAK620に搭載されているモノと同じですけど、このAK400に搭載されているファンは若干コストダウン(又はシングルファン用のカスタム?)をされているのか、
空気圧やエアフロー、ノイズやワッパが若干(ほんの数パーセントなので実質同等ですが…)見劣りするので、厳密には違うのかもしれません。
ほぼ同じですけど。
調べてみました。
単品で売っているFK120と仕様(公称値)を比較すると、たしかに微妙に性能が下がってますね。それでもけっこう驚きの静音性能なので、価格を考えると十分というか、同価格帯に対して余裕で勝てていると思われます。
もう相場は4000円台に入りそうな様相だけど。
AS500との価格差が小さくなると微妙になってくる…高さ制限を無視すればだけど。
在庫状況が不安定ですが、Amazon.co.jpの直販だと3546~3704円で買えます。ただ、いつまでこの価格帯を維持できるかは不透明かも。
GentleTyphoonと同じかんじで、羽形状を工夫し回転数を上げて、風量よりも風圧を重視したファンなのでしょうね。
風圧が高いおかげでフィンの狭い隙間にもしっかり空気を送り込めて、冷却能力UPってところでしょうか。
最近GentleTyphoonも10年ぶりに復活したらしいので、この系統のファンがまた再流行し始めてるのでしょうかね
流行してる感はありますね~。
ADATA XPGと日本電産がコラボしたGentle Typhoonもそうですし、PhanteksもSUNONと共同開発で「PH-F120T30」を売り出したり。特にF120T30はNoctuaの4000円ファンより冷却性能で勝ってるのですごいです。
某液体窒素おじさんも言ってましたが、「迷ったら虎徹」の時代は終わりましたね
AMDの場合はどのくらい冷えるんだろう
AMD版の検証お願いします
先週3,547円でamazonで買えました
今からだと値段は変わらないようですが
発注して1か月以上はかかるようになってますね
この会社のファンは駄目ですわ。個体差なのかもしれないが、ファンブレードが薄すぎるのが原因で低周波の異音がする。使えねぇ
自分の個体も最初から1400rpm前後でうなるような音をしていました。
10ヶ月近く経って30%以下では必ず変な音で泣きますし高回転でもうなる範囲が多いので静音とは程遠いですね。
いろんな人達に絶賛された静音性に騙された気分。
今年の2月に13600Kに使用開始、12月に入って異音がしてきた。
+-10%の誤差で最低回転数が570超えって廉価版ぽいし不良率高いのかしら・・・