インテルが「Intel 10 nm」プロセスで製造している内蔵GPU「Iris Xe MAX」のグラフィックボード版を入手できたので、ベンチマークしてレビューします。
2022Q2以降に発売が予定されている、インテル社の最新グラボ「Arc Alchemist GPU」の性能を占ってみましょう。
(公開:2022/3/28 | 更新:2022/3/28)
「Intel Iris Xe MAX」の仕様とスペック
GPU | Iris Xe MAX | UHD 770 | GTX 1050 Ti |
---|---|---|---|
プロセス | 10 nm製造 : Intel | 10 nm製造 : Intel | 14 nm製造 : Samsung |
シェーダー数CPUのコア数に相当 | 768 | 256 | 768 |
RTコア数レイトレ用の特化コア | 0 | 0 | 0 |
ブーストクロック | 1650 MHz | 1450 MHz | 1392 MHz |
VRAM | LPDDR4X 4 GB | なし | GDDR5 4 GB |
理論性能(FP32) | 2.534 TFLOPS | 0.742 TFLOPS | 2.138 TFLOPS |
SLI対応 | – | – | – |
PCIe | PCIe 4.0 x8 | – | PCIe 3.0 x16 |
TDP | 25 W | 15 W | 75 W |
補助電源 | – | – | – |
MSRP | $ 149= 949 CNY | $ 233 | $ 139 |
参考価格2022/03時点 | 18680 円 | 28600 円 | 21480 円 |
発売価格 | 17680 円 | 19778 円 | 18340 円 |
発売 | 2022/2/16 | 2020/4/1 | 2016/10/25 |
「Intel Iris Xe MAX」はインテルが製造するGen 12世代の内蔵グラフィックス(Intel DG1)の最上位モデルです。
デスクトップ向けの内蔵グラフィックスと比較して、シェーダー数は3倍、さらにGPU専用のLPDDR4Xメモリを4 GB搭載します。
大幅に増えたシェーダー数と専用のVRAMを搭載し、理論性能(FP32)は約3.4倍まで跳ね上がったにもかかわらず、TDPはわずか25 Wでたったの10 Wしか増えていません。
スペックだけを見る限り、Intel Iris Xe MAXは非常に効率の良いGPUです。
インテルが2022年中に発売を予定している、新たなゲーマー向けグラボ「Arc Alchemist(Intel DG2)」の性能を占う貴重なグラボでもあります。
なお、圧縮率の高いAV1デコード機能は最大8Kまで対応し、ハードウェアエンコードQSV(Intel Quick Sync Video)の最新バージョン(Tiger Lake版 = バージョン8)も対応します。
Intel Iris Xe MAXの性能をベンチマーク
テスト環境(スペック)
テスト環境「ちもろぐ専用ベンチ機」 | ||
---|---|---|
CPU | Core i9 12900K | |
CPUクーラー | NZXT X63 280 mm簡易水冷クーラー | |
マザーボード | ASUS TUF GAMINGZ690-PLUS WIFI D4 | |
メモリ | DDR4-3200 16GB x2使用メモリ「G.Skill Trident Z C16」 | |
グラフィックボード | Intel Iris Xe MAX GUNNIR「Xe Max Index V2」 | |
SSD | NVMe 1TB使用SSD「Samsung 970 EVO Plus」 | |
電源ユニット | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
OS | Windows 11 Pro(Build 22000) 修正パッチ「KB5006746」導入済み | |
ドライバ | Intel 30.0.101.1631 | |
ディスプレイ | 3840 x 2160@60 Hz使用モデル「BenQ EL2870U」 |
グラフィックボードの検証に使うベンチ機のスペックです。CPUはRyzen 9 5950Xより安いのに最強クラスのゲーミング性能を持つ「Core i9 12900K」を使います。
32 GBのメモリ、容量1 TBのメインSSDなど、CPU以外のスペックは基本的に従来のセットアップと同じままです。OSは修正パッチを適用した最新版のWindows 11 Proを使用します。
グラフィックボードの足を引っ張らないよう、可能な限りCPUボトルネックを抑えたテストスペックになっているので、グラフィックボードの性能をかなり正確にテスト可能です。
テスト時のグラフィックドライバは、Intel Graphics Driver 30.0.101.1631(Xe Graphicsに対応するドライバ)にて検証します。
用意したグラボ
今回のIris Xe MAXベンチマークで使用するグラボは、GUNNIR製「Iris Xe Max Index V2」です。
中国の大手通販サイトTaobao.comより、約19000円で自腹で購入しました(※2022年3月時点は円安の影響で約2万円ほど)。
Intel Iris Xe MAXのTDPはたった25 Wです。とても低発熱なGPUチップなので、小型シングルファン設計で十分な冷却性能を得られます。
ファン口径は実測で75 mm、ボードの厚みは32 mm(ブラケット含め37 mm)でした。ボードの全長は155 mm(ブラケット含め168 mm)、横幅は121 mmです。
映像出力はDisplay Port、HDMI、DVI-Dの3つです。4K(60 Hz)で2画面まで出力を確認しています。DVI-Dの動作状況は未確認です。
Intel Iris Xe MAXのゲーミング性能
今回のちもろぐ版グラフィックボードレビューでは、以下2つのベンチマークと12個のゲームタイトルを使って、「Intel Iris Xe MAX」のゲーム性能を詳しくテストしました。
テスト時の解像度はフルHD(1920 x 1080)です。Intel Iris Xe MAXは低予算なグラボなので、最高設定と中設定の2つを検証します。
- 3DMark(FireStrike / TimeSpy / Port Royaleを使用)
- VRMark(Orange / Cyan / Blueすべて使用)
- Apex Legends(ベンチマークまとめ)
- VALORANT(New !!)
- Escape from Tarkov(ベンチマークまとめ)
- フォートナイト(ベンチマークまとめ)
- Rainbow Six Siege(ベンチマークまとめ)
- Assassin’s Creed Valhalla
- Cyberpunk 2077(ベンチマークまとめ)
- Forza Horizon 5
- FF14:暁月のフィナーレ
- モンスターハンターライズ
- Microsoft Flight Simulator 2020(ベンチマークまとめ)
- マインクラフト:RTX(New !!)
レビューに使用するベンチマーク対象ソフトは以上の12個です。ベンチマークに使いやすいソフト、日本国内で人気のあるゲームを中心に選んでます。
定番ベンチマーク:3DMark
「3DMark」はグラフィックボード用の定番ベンチマークです。グラボの性能をざっくりとスコア化(Graphics Score)して、性能を分かりやすく比較できます。
DX11で動作するフルHD向けベンチマーク「FireStrike」では、Intel Iris Xe MAXは6273点。6年前のエントリーグラボGTX 1050 Tiに迫る性能です。
グラフに掲載はしていないですが、Ryzen APUの内蔵GPU「Radeon Vega 7」の4000点と比較するとほぼ1.5倍です。
DX12で動作する、WQHD向けかつ比較的新しいゲーム向けの「TimeSpy」では、Intel Iris Xe MAXは1805点。GTX 1050 Tiの7割くらいの性能です。
他のグラフィックボードとベンチマークスコアの比較をしたい方は、↑こちらのグラボ性能まとめ表も参考にどうぞ。
VRゲーム性能:VRMark
日本はヨーロッパ圏を超えるVRゲーム大国でして、VRゲームのためにグラボを求める人も少しずつ増えています。VRゲーム向けの定番ベンチマーク「VRMark」を使って、Intel Iris Xe MAXのVRゲーム性能を検証します。
「Orange Room」はVRMarkで一番軽い(HTC ViveまたはOculus Riftの動作チェック的な)テストです。Intel Iris Xe MAXのスコアは約3100点、GTX 1050 Tiのほぼ75%に相当します。
「Cyan Room」はDX12で動作するVRベンチマークで、2番目に重たいです。Intel Iris Xe MAXのスコアは約1860点、やはりGTX 1050 Tiの一歩手前の性能にとどまります。
「Blue Room」は将来のハードウェアを前提として用意された、5K解像度の重量級VRベンチマークです。
VRAMが4 GBしかないIntel Iris Xe MAXだと苦戦します。GTX 1050 Tiとの性能差は35%まで開きます。
Apex Legends
6500 XT平均fps最低fps(下位3%)
定番のFPSタイトル「Apex Legends」のテスト結果です。
最高設定で平均30 fps、中設定だと平均37 fps、内蔵グラフィックスとしてはかなり良い性能をしています。しかしGTX 1050 Tiには届かないです。
VALORANT
6500 XT平均fps最低fps(下位3%)
無料でプレイできる競技FPS「VALORANT」のテスト結果です。とても動作が軽いため、最高設定だけでテストします。Intel Iris Xe MAXは平均87 fpsで快適です。
Escape from Tarkov(タルコフ)
6500 XT平均fps最低fps(下位3%)
ロシア産の硬派なリアル系FPS「Escape from Tarkov(タルコフ)」のテスト結果です。
最高設定(Ultraプリセット)は平均18 fpsで、中設定(Mediumプリセット)だと平均25 fpsにとどまります。GTX 1050 Tiとの性能差はほぼ2倍です。
フォートナイト
6500 XT平均fps最低fps(下位3%)
Apex Legendsと双璧をなす大人気FPSタイトル「フォートナイト」のテスト結果です。
最高設定で平均7.9 fpsと、中設定ですら平均14 fpsで非常に不安定な動作です。特にテクスチャが多いシーンで1 ~ 2 fpsに落ち込みます。ドライバの完成度に問題があるのは明らかです。
レインボーシックスシージ
6500 XT平均fps最低fps(下位3%)
かなり競技性の強いFPSタイトル「レインボーシックスシージ」のテスト結果です。
最高設定で平均43 fps、高設定で平均47 fpsでした。GTX 1050 Tiとの性能差はおよそ1.5~1.6倍です。
Assassin’s Creed Valhalla
6500 XT平均fps最低fps(下位3%)
動作の重たい重量級ゲームで知られる「アサシンクリード:ヴァルハラ」のベンチマーク結果です。
最高設定では平均わずか10 fps、設定を妥協しても平均13.8 fpsで、厳しい動作はほとんど変わりません。GTX 1050 Tiとの差は2倍以上です。
サイバーパンク2077
6500 XT平均fps最低fps(下位3%)
超高画質なサイバーパンク系RPG「サイバーパンク2077」のベンチマーク結果です。
ウルトラ設定だと平均12.3 fps、中設定まで下げて平均18.8 fpsで、なんとか動きます。なぜかGTX 1050 Tiとの性能差も少ないです。
Forza Horizon 5
6500 XT平均fps最低fps(下位3%)
超美麗グラフィックのレーシングゲーム「Forza Horizon 5」のベンチマーク結果です。
エキストリーム設定だと平均10.3 fps、中設定では平均16.2 fpsです。普通にきびしい動作です。GTX 1050 Tiはおよそ2倍の性能を発揮します。
FF14:暁月のフィナーレ
6500 XT平均fps最低fps(下位3%)
定番MMORPG「FF14:暁月のフィナーレ」のベンチマーク結果です。
フルスクリーンで実行すると高確率でGPUを見失って操作不能に陥る(そのたびに強制シャットダウンが必要)ため、ウィンドウモードでベンチマークを行いました。
最高設定で平均32.7 fps、標準設定だと平均59.5 fpsです。
モンスターハンターライズ
6500 XT平均fps最低fps(下位3%)
モンハンシリーズ最新作「モンスターハンターライズ」のテスト結果です。
最高設定(150%スケーリング)で平均28.8 fps、中設定(150%)だと平均62.3 fpsです。思ったよりもフレームレートが伸びないです。
Flight Simulator 2020
6500 XT平均fps最低fps(下位3%)
重量級フライトシミュレーター「Flight Simulator 2020」のテスト結果です。
国会議事堂から羽田空港へルートを設定して、オートパイロットモードで飛行させるだけのシンプルなフライトプランを使ってテストしました(天候は午前12時の晴天で固定)。
最高設定(ULTRA設定)では平均11.2 fps、中設定(MEDIUM設定)だと平均20.1 fpsでかろうじてプレイできるフレームレートが出ます。
内蔵グラフィックスでMSFS2020が動くのは正直驚きますが、まだまだ性能が足りないです。
【1920 x 1080】フルHDゲーミングの性能
ここまでテストしたデータを平均化※して、Intel Iris Xe MAXのフルHD(最高設定)の平均パフォーマンスをグラフにまとめました。
Intel Iris Xe MAXのフルHDゲーム性能は「平均20.4 fps(下位3%:15.9 fps)」です。GTX 1050 Tiと比較して、約42%も低い性能です。
※フレームレートが高すぎる「VALORANT」は平均から除外します。
Intel Iris Xe MAXのフルHD(中設定)の平均パフォーマンスをグラフにまとめました。
Intel Iris Xe MAXのフルHDゲーム性能(中設定)は「平均31.4 fps(下位3%:24.3 fps)」です。GTX 1050 Tiより約44%も低いパフォーマンスを示します。
製造プロセスの観点ではXe MAXの方が有利ですが、VRAMの規格やTDPの制限、何よりドライバの成熟度はやはりNVIDIAが圧倒的に強いです。
特にドライバまわりの挙動は、実際にインテルグラボを使ってかなり不安を覚えました。とにかく不安定で、フルスクリーンでゲームを起動しただけでGPUを見失って何も操作できない症状が頻発します。
思ったように性能が出ていない理由はVRAMの規格違いも当然大きいと思われますが、これほどドライバが不安定だとドライバの成熟度が原因で性能を出し切れていない可能性も高いです。
Iris Xe MAX(DG1)の次世代モデル「Arc Alchemist(DG2)」がなかなか発売されない理由も、ドライバの完成度に大きな課題があると、しばしば報道されています。
2022年3月時点で、この程度の出来栄えなら・・・延期せざるをえないのも納得です。4月の発売はほぼ不可能で、5~6月以降にずれ込むのは確定的です。
Intel Iris Xe MAXのクリエイティブ性能
グラフィックボードはゲームだけでなく、3Dレンダリングやゲームの録画配信もこなせます。
GPUレンダリングの定番ソフト「Blender」、動画エンコード「Aviutl」、ゲーム実況配信ソフト「OBS」を使ってIntel Iris Xe MAXのクリエイティブ性能をテストします。
「OBS」でゲームの録画配信
ゲーム実況配信の定番ソフト「OBS Studio」を、グラフィックボードを使って快適に動くかどうかをチェックします。
OBSの録画配信は非常に負荷が重たいリアルタイムエンコードですが、グラボに搭載されているハードウェアエンコード機能を使うと、CPUにほとんど負荷をかけずに快適な録画と配信が可能です。
GeForce系のグラボは「NVEnc」、Radeon系だと「VCE」と呼ばれるハードウェアエンコード機能でリアルタイムなエンコードができます。
解像度はフルHD(1920 x 1080)、フレームレートは60 fps、ビットレートは9000 kbpsです。録画と配信どちらも同じ設定で、同時に実行します。
テストに使用するゲームは「Apex Legends(最高設定)」で、ゲーム側に144 fpsのフレームレート上限をかけています(※上限なしだとエンコードが安定しない場合があるため)。
OBSでゲーム配信と録画 | ||
---|---|---|
ドロップフレーム率 | 評価 | |
RX 6500 XT | 動作しない | |
GTX 1650 G6 | 0 % | 快適 |
GTX 1050 Ti | 0 % | 快適 |
RTX 3050 | 0 % | 快適 |
GTX 1660 Super | 0 % | 快適 |
Intel Iris Xe MAX | 58.6 % | 困難 |
Intel Iris Xe MAXはQSV(Version 8)に対応していますが、Apex Legendsを動かしながらエンコードをするとGPU使用率が100%カツカツ。まともな動画配信ができません。
ドロップフレーム率はほぼ60%です。パラパラマンガのようなカックカクの動作です。
OBSでゲーム配信と録画 | |||
---|---|---|---|
フレームレート | 配信中 | 減少率 | |
RX 6500 XT | 動作しない | ||
GTX 1650 G6 | 58.5 fps | 49.8 fps | -14.9 % |
GTX 1050 Ti | 38.1 fps | 32.0 fps | -16.1 % |
RTX 3050 | 89.9 fps | 76.2 fps | -15.3 % |
GTX 1660 Super | 91.5 fps | 75.0 fps | -18.1 % |
Intel Iris Xe MAX | 29.9 fps | 27.2 fps | -9.2 % |
配信中のフレームレートは約1割の低下で済んでいますが、約60%もコマ落ちしているのでなんとも言えない状況。
「Aviutl」で動画エンコード
無料で使える有名な動画編集ソフト「Aviutl」に、rigaya氏の拡張プラグイン「NVEnc」「VCEEnc」を入れて、動画エンコードにかかった時間を比較してみる。
QSVエンコードはNVEnc(Turing)並に動画エンコードが高速です。
しかも、Tiger Lake以降のQSV(Version 8)は予測変換やBフレームに対応しており、NVEnc(Turing)と同等かそれ以上の品質で動画エンコードが可能です。
ハードウェアエンコードの優秀さはすでにAMD VCEを超え、NVEnc(Turing)と同じレベルに達しています。
テスト時のエンコード設定 | |
---|---|
出力設定 | H.264/AVC High @ Level 5.2 1920 x 1080 @60 fps オーディオ:AAC(192 kbps) |
品質 | NVEnc:Quality VCE:slow QSV:best |
ビットレート | 9000 kbps(VBR) |
最大ビットレート | 288000 kbps(VBR) |
VBVバッファ | 9000 kbit |
Lookahead | 32フレーム |
Bフレーム | NVEnc:3フレーム VCE:非対応 QSV:3フレーム |
参照フレーム | 3フレーム |
GOP長 | 600 |
その他 | deblock |
かなり細かい設定まで手動で決め打ちして、なるべく同じ内容のエンコードを実行できるように工夫してます。
上記のエンコード設定で容量1.5 GBの元ファイルが、NVEncだと192 MB前後、VCEでは197 MB前後、QSVで190 MB前後に仕上がります。若干VCEのほうが容量が大きいので、ベンチマーク比較としてはRadeon(VCE)側が有利です。
「Blender」でGPUレンダリング
BlenderでGPUレンダリングを実行するために必要な、Intel Iris Xe MAX用のドライバがまだ無いようです。
- Blender 2.7x:BMWで4分30秒(GPU使用率が10%未満)
- Blender 2.9x:レンダリング中にクラッシュ
- Blender 3.x:Iris Xe MAXでレンダリングできない
自分のやり方が間違っている可能性はありますが、現状だとIrix Xe MAXでBlenderのGPUレンダリングは実行不可です。
Blender 2.7xの結果は正常に動作しているかどうか微妙なので参考値です。
Intel Iris Xe MAXの消費電力と温度
消費電力を実際に計測
電力ロガー機能のついた電源ユニットを2台使って、CPUとマザーボード(CPU以外)に電力供給を分割します。
テスト環境 | ||
---|---|---|
電源ユニット #1システム全体 | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
電源ユニット #2CPUのみ | 850 W(80+ Gold)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 |
FF15ベンチマークを実行中に、CPU以外の消費電力をロガー機能で測定した後、グラフィックボードを取り外した状態で再び同じテストを実行して測定を行います。
- A:グラボを取り付けた状態で消費電力を測定
- B:グラボを外した状態で消費電力を測定
以上2つのデータを取得したら、「AをBで引き算」でグラフィックボード本体の消費電力を抽出できる仕組みです。
グラボの消費電力はソフト読み(HWiNFO)で確認は可能ですが、グラフィックボードのモデルやメーカーによって表示される数値に差が生じる可能性があるので、ロガー機能のついた電源ユニットを使って測定しています。
FF15ベンチマーク(2560 x 1440 / 高品質)を実行中に、2台の電源ユニットを使ってグラフィックボード本体の消費電力を計測します(※システム全体ではなくグラボ単体の消費電力)。
測定した結果をグラフにまとめました。
Intel Iris Xe MAXの消費電力は平均25 Wで、公称スペックのTDP:25 Wに収まります。
デスクトップ向けのIntel DG1と比較して3倍に増えたシェーダー(768個)、4 GBのVRAM(LPDDR4X)を搭載していながら、わずか25 Wの消費電力です。
参考までに、Intel UHD 770(256シェーダー / 専用VRAMなし)の消費電力はソフト読みで平均9 Wほどでした。
ワットパフォーマンスは?
FF15ベンチマークの平均フレームレートを、先ほど実際に測定した消費電力で割り算して、ワットパフォーマンス(= 消費電力1 Wあたりのフレームレート)を求めます。
Intel Iris Xe MAXのワットパフォーマンス(電力効率)はかなり優秀です。
半導体の電力効率は製造プロセスに依存しているため、今回比較したグラボの中で3番目に進んでいるプロセス(Intel 10 nm SF)を使っているIris Xe MAXがトップクラスに来るのは・・・ある意味当然の結果かもしれません。
Intel 10 nm SF < TSMC 7 nm < Intel 7(10 nm ESF)
もう1点付け加えると、Intel Iris Xe MAXのVRAMはLPDDR4Xメモリを使っています。GDDR6メモリと比較して帯域幅が限られるかわりに、消費電力も低いです。
温度を読み取れないので今回のレビューでは温度テストを見送ります。
- GUNNIR製のグラフィックボードに温度センサーが搭載されていない
- HWiNFO側がIntel Iris Xe MAXの読み取りに対応していない
温度を読み取れない詳しい原因は、上記のいずれか、もしくは両方です。
まとめ:電力効率は高いですがドライバが不安定
「Intel Iris Xe MAX」のデメリットと弱点
- ゲーム性能はGTX 1050 Tiの半分
- 4 GBのVRAM容量
- LPDDR4Xメモリは遅い
- レイトレ使えません
- 非常に不安定なドライバ
- Intel CPUが必要(9~12世代)
- 入手方法が限定的
- コスパが悪い
「Intel Iris Xe MAX」のメリットと強み
- NVEncに匹敵する「QSV」
- 消費電力がとても低い(25 W)
- 優れたワットパフォーマンス
- Arc Alchemistの先行体験版
今回、インテルが製造するGPUでもっとも規模が大きい「Iris Xe MAX(DG1)」を使って、インテルのグラボを一足先に体験しました。
未成熟なドライバ、帯域幅の狭いLPDDR4Xメモリに足を引っ張られて絶対性能はなかなか伸びていないですが、それでも電力効率はかなり高いです。
電力効率の高さに定評がある、TSMC 7 nmプロセスを使ったRX 6000シリーズのベストケース(RX 6600 XT)に迫るワッパです。
しかし、肝心のゲーム体験はまだまだ課題が多いと言わざるをえません。
インテルのGPUドライバは非常に不安定で、ウィンドウを切り替えるとかなりの確率でGPUを見失います。FF14ベンチマークはウィンドウモードで実行する必要があるほどです。
ゲーム自体の動作も問題があります。フォートナイトなど、一部のゲームでフレームレートがまったく伸びないか、テクスチャの量が多いと1 ~ 2 fpsに落ち込む症状が見られます。
LPDDR4Xの少ない帯域幅が原因である可能性を考えられますが、インテルGPUドライバも相当にあやしいです。Radeonドライバが可愛く思えてくるレベルで、インテルGPUドライバは不安定の塊です。
「Arc Alchemist(DG2)」の性能を予想してみよう
インテルは今も必死にドライバを作り込んでいる(はず)ですし、ネガティブな話はこれくらいにしておきましょう。ここからは「Arc Alchemist(DG2)」の性能をざっくり予測します。
GPUの性能はシェーダー数(コア数)、キャッシュ構造、クロック周波数やIPC、VRAMの帯域幅などで決まります(※ドライバの作り込みやゲームとの相性は無視)。
SKU | EU | シェーダー | VRAM | TDP |
---|---|---|---|---|
DG1 MAX (Intel 10 nm SF) | 96 | 768 | LPDDR4X 4GB (68 GB/s) | 25 W |
DG2 128EU (TSMC 6 nm) | 128 | 1024 | GDDR6 4GB (112 GB/s) | 75 W |
DG2 384EU (TSMC 6 nm) | 384 | 3072 | GDDR6 12GB (384 GB/s) | 200 W |
DG2 512EU (TSMC 6 nm) | 512 | 4096 | GDDR6 16GB (512 GB/s) | 225 W |
現時点で分かっている情報をもとに、Arc Alchemist(DG2)のスペックをまとめました。
DG2世代ではシンプルにシェーダー数が大幅に増えています。DG1とDG2世代のトップ同士でシェーダー数が約4.3倍です。
Iris Xe MAXで出した3DMarkのスコアにそのままシェーダー数を反映すると、DG2世代の性能をざっくり予測できます。
最上位のDG2(512EU)の性能はしばしばRTX 3070に相当するとウワサされていますが、上記の予測グラフを見る限り、それほど的ハズレなウワサではないようです。
実際にはシェーダー数の増加に比例して性能がリニアに伸びるわけではないですが、DG2世代はLPDDR4Xではなくもっと高速なGDDR6メモリを使いますし、TDPも大幅に跳ね上がっています。
製造プロセスもIntel 10 nm SFからTSMC 6 nmに変更される(らしい)ので、2.0 GHz以上の動作クロックも想定できます。実際、TSMC 7 nmを使っているRX 6000シリーズは2 GHz後半で動作可能です。
とはいえ3DMarkスコアはあくまでも理論値で、実際のゲームでRTX 3070に相当する性能を出せるかどうかは極めて不透明です。
しかし、グラフィックボード業界には競争が必要です。Intel Arc Alchemist(DG2)が市場に参戦し、価格の下落圧力が高まることに期待しています。
RTX 4000シリーズに勝てなくとも、RTX 3070相当の性能はフルHDゲーミングやWQHDゲーミングに依然として使える性能です。安く提供してくれれば、助かるゲーマーはかなり多いでしょう。
インテルが開発を進めているアップスケーリング機能「XeSS」の性能次第では、4Kゲーミングが視野に入る可能性もあります。
以上「Intel Iris Xe MAXベンチマーク&レビュー:インテルのグラボArc Alchemistの性能を占う」でした。
すぐには無理でも数年単位で見るとIntelの参入は価格競争の面から見てホントに大きいですね。
流石にドライバは頑張って欲しいですが…
Intel CPUが必要(9~12世代) と書かれているのでAMD環境だと動作しないのでしょうね
Arc AlchemistもINTEL環境しか動作しなそう
Zen3とX570マザーボードで起動しようとすると、「VGA」エラーが出てPOST不可です。Intel DG1に限っては第9~第12世代のインテルCPUが必要という情報は確実ですね。
このDG1はBIOS画面も映されますか?
以前(2021年春)私が中国から輸入したDG1は、VBIOSが無く、事前にIntelドライバーのインストールしたWin10でしか画面出力が無いとなります。
連投すみません。
さらに、そのVBIOSの無いDG1は9世代(H370、Z390)に使うと、デバイスマネージャーのDG1に!マークが入って、動けない状態となります。
10世代ではASUSのSTRIX Z490-Iでしか動作できなく、GIGABYTEのZ490I AORUS ULTRAに使うと、単独では画面出力できず、必ず内蔵グラボ(i5-10600KのUHD630)と併用するかつDG1が主画面以外に指定しないと動けないとなりました。
上記の全てはVBIOSが無いのせいか、古い世代のせいか、それとも個体差のせいか、私はわかりません。ただ9〜10世代には動けない可能性を例として挙げたのです。
https://m.bilibili.com/video/BV1Wr4y1Y7GH
この放送主さんの動画により、事前にResizable-BARを有効にすると、DG1が一部メーカーのAMD B550マザボまでにBIOS画面もWindowsも動作できると示されました。
私の手持ちの9世代マザボはResizable-BARが無いので再検証不能ですが、今度ASUS B550-IとCrosshair VIII Impactに検証予定します。
ただ全て
再度連投して申し訳ございません。
性能面にドラクエ11で簡単なFPS比較をしました。
FHDでRX550並のFPSとなっており、1030にさえ負けたのです。
しかし4Kビデオファイル(ストリーミングではなくファイル)の再生はかなり優秀です。
これまでの内蔵グラボは、AMD VEGA APU以外全てmadVR(デフォルト設定)での4K 60p HDRビデオファイル再生には39FPSまででしか出力できず、酷いコマ落ちが発生したのですが、DG1は余裕にスムーズに再生できました。
5000円くらいだったら欲しいですね(´・ω・`)
128EU版が15000円(税込)くらいでスタートしてくれると嬉しい。でもDG2はTSMC 6 nm使うから価格競争力はちょっと期待しづらい懸念が・・・。Intel 10 nm ESFでGPUは作れないのかなぁ。
これVega8以下よね。
0円でもいらないかな。
DG2は頑張れ。
手持ちのデータ↓
【3DMark FireStrike GPU Score】
Iris Xe MAX:6273
Radeon Vega 7:4000
UHD 750:2140
UHD 630:1491
さすがにVega 8よりは性能いいですね。DG2には頑張ってほしい。
QSVでの録画配信のドロップ率が大きいのはVCEやNVENCと違いASICだけでなくGPUも使うためゲームの処理と競合しやすいからでしょうね
ゲーマーや配信者向けじゃなくてゲーム以外ジャンルの動画編集者向けって感じなんかな
ちょっとした広告とかさっくり作るのに重宝しそう
安定して動けばの話だけど
LPDDR4Xじゃなぁ…GDDR6を積んでほしかったな
お陰で1スロのファンレスモデル(俺の所持するVBIOSの無いDG1)や、
1スロロープロモデル(当時入手も考えましたがRX550を選択しRX6400を待つと決めました)も出回っています。
それでも頑張ってると思います。かなりの省エネだし、
そこから見るIntel Alchemistは期待が持てると感じています。
ドライバの不安定性はまあちょっとわからないですけれども。
ありがとうございました!
Valorantのベンチマークはどのように取っていますか?
体感このゲームは他のゲーム以上に、撃ち合いが発生した瞬間のfpsの下落幅が大きい印象があるので、そこら辺考慮してベンチマーク載せてくれると嬉しいです。
大体分かってはいたけど、まずドライバーの完成度が上がってこないとお話にならないね。
ドライバーが熟成されればコスパは良い製品になりそうだけど、弾数少ないって予想が出ているので、意外にお高い所から価格落ちてこなかったりして。