メモリーのオーバークロックと効果、やるべき人とそうでない人を解説

メモリーはクロック周波数をオーバークロック可能。しかし、一般的にメモリーの高速化にはほとんど体感できるほどの性能差は無いと言われています。

実際のところはどうなのだろうか。データを見ながらメモリーOCの効果を確認し、メモリーのオーバークロックをやるべき人と、そうでない人について解説してみたい。

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メモリーのオーバークロック

XMPを有効化して2667Mhzで動作するCORSAIR製DDR4メモリ。

最近はマザーボード側の「XMP」という機能を使うことで、とても簡単にメモリーのオーバークロックが可能になった。

CORSAIRなどのメーカーが販売しているオーバークロックメモリー(例:DDR4-2666、DDR4-3333)を買ってきて、マザボに刺し、BIOSからXMPをポチッとすれば簡単にメモリークロックが高速化される。

そしてDDR4規格から、メモリークロックに理論上の上限は存在しなくなりました。液体窒素でガンガン冷やして5000Mhzオーバーを達成した記録も海外にはある。さて…メモリーのオーバークロックに意味はあるのか??

DDR4メモリーを4000MhzにOCして「性能差」を見る

参考にするデータは「DDR4 Memory at 4000 MT/s, Does It Make a Difference?」です。このデータを元にメモリーのOCについて解説してみたい。

テスト環境
CPUCore i7 6700K @4.50Ghz
GPUGTX 980 Ti 2-way SLI
マザーボードAsrock Z170
メモリーG.Skill TridentZ 8GB (4GB *2) DDR4-4000
SSDSamsung 950 Pro 512GB
電源ユニット1000W (80+ GOLD)
OSWindows 10 Pro 64bit

出来るだけ余計なボトルネックが生じないように、テスト環境はかなりハイスペック。シングル性能に優れるCore i7を4.50GhzにOCし、グラフィックボードはGTX 980 Tiを2枚使っている(2way SLI)。

マザーボードはVRMフェーズがしっかり装着されおり、チップセットはIntel Z170が搭載されている製品。高いオーバークロック耐性があるということです。そして肝心要のDDR4メモリーは…

OCメモリー専門メーカーの「G.Skill」が製造販売する「TridentZ」※です。かなりぶっ飛んだ規格(例:DDR4-4000やDDR4-4333など)のDDR4メモリーを多数揃えており、TridentZもそのひとつ。

※画像はRGB LED版で、テストに使われたのは無色・無発光版のTridentZ。

メモリー帯域幅の変化

SiSoftware Sandra 2016 – GB/s

  • DDR4-4000
    35.5
  • DDR4-3600
    33.0
  • DDR4-3000
    27.4
  • DDR4-2400
    22.9
  • DDR4-2133
    20.4

メモリークロックを上げれば上げるほど、ちゃんと1秒間あたりの転送量が増加しています。2133Mhzでは秒間20.4GBだったのが、倍近い4000MhzにOCすると秒間35.5GBまで高速化。+74.0%ものパフォーマンス向上を実現してみせた。

CPUの処理性能への影響

メモリークロックが上がったことで、CPUの処理性能にどれほどの影響を与えているかを確認します。

7-ZIpの処理速度

7-Zip Benchmark 32MB – 処理されたMIPS数

  • DDR4-4000
    28157
  • DDR4-3600
    27860
  • DDR4-3000
    26578
  • DDR4-2400
    25537
  • DDR4-2133
    24687

CPUは何を処理するのにもメモリーを経由する。7-ZIpのベンチマークでも、それがよく分かる結果になっていますね。メモリークロックが速いほど同じ時間(ファイルサイズ:32MB)に処理できる情報量(MIPS)が増えている。4000MHz時で+14.1%の性能アップ。

Excelの処理速度

Microsoft Excel 2013 – モンテカルロシミュレーションの終了時間(秒)

  • DDR4-4000
    3.0
  • DDR4-3600
    3.1
  • DDR4-3000
    3.2
  • DDR4-2400
    3.3
  • DDR4-2133
    3.3

0.3秒程度の差は少ないと感じるが、率で見れば10%の改善になる。もっと膨大なシミュレーションを行った時に10%は効いてくると言える。ただ、一般的な使い方であればメモリークロックはあまりコストを掛けるべきところでは無いですね。

Adobe Photoshopの処理速度

Adobe Photoshop CC – 「フィールドぼかし」の処理時間(秒)

  • DDR4-4000
    14.6
  • DDR4-3600
    15.5
  • DDR4-3000
    17.2
  • DDR4-2400
    20.8
  • DDR4-2133
    22.5

Photoshopはほとんどの処理が4コアまでしか対応していない、意外とレガシーな仕様なアプリケーション。4コアという条件を満たせば、あとはクロック周波数(シングル性能)でしかパフォーマンス向上は狙えないのが事実だった。

しかし、この結果を見る限りメモリークロックもパフォーマンスアップに使えそうだ。2133Mhzから4000Mhzにメモリをオーバークロックすることで、54.1%もの高速化に成功している。

動画エンコードの速度

HandBrake – .mkvから.mp4へのエンコード(720p)処理速度(fps)

  • DDR4-4000
    540
  • DDR4-3600
    491
  • DDR4-3000
    441
  • DDR4-2400
    377
  • DDR4-2133
    343

無料エンコードソフトとして非常に優秀なHandBrakeを使って、その処理速度を計測したもの。720p(1280×720)の動画をMKVからMP4へ変換し、1秒間あたりの変換枚数(フレームレート)の多さを競う。見ての通り、かなり驚異的な効果が観測されており、ちょっと驚いています…。

2133Mhzから4000Mhzへのオーバークロックで、1秒間の処理枚数は57.4%も増えた。CPUを全くの別物に変えたかのような効果だ。恐ろしいな。

GPUの処理性能への影響

最初に書いたとおり、テスト環境は「GTX 980 Ti」を2枚使っています(2-Way SLI)。グラボ2枚分の処理能力に、果たしてメモリークロックはどれくらいの影響があるか確認してみよう。

ARMA 3

ARMA 3 – WQHD(2560×1440) / ウルトラ設定 / 平均fps + 最低fps

  • DDR4-4000
    87
  • 79
  • DDR4-3600
    84
  • 75
  • DDR4-3000
    80
  • 72
  • DDR4-2400
    76
  • 69
  • DDR4-2133
    69
  • 63

メモリークロックが上がれば上がるほど、動作フレームレートも上がり続けています。つまり2133Mhzではグラボ2枚分のデータ処理量にまったく追いつけていないことを意味するということだ。

Call of Duty: Black Ops III

CoD: Black Ops III – WQHD(2560×1440) / 最高設定 / 平均fps + 最低fps

  • DDR4-4000
    156
  • 127
  • DDR4-3600
    152
  • 124
  • DDR4-3000
    146
  • 122
  • DDR4-2400
    142
  • 119
  • DDR4-2133
    136
  • 113

CoDでも同様の結果が得られた。最低フレームレート、平均フレームレート共にメモリークロックに呼応するように上昇しており、DDR4メモリーのオーバークロックは思っていた以上に効果が大きいことが分かった。グラボ1ランク分の性能差は出ていますからね…。

Civilization

Civilization Beyond Earth – WQHD(2560×1440) / ウルトラ設定 / 平均fps + 最低fps

  • DDR4-4000
    184
  • 91
  • DDR4-3600
    183
  • 89
  • DDR4-3000
    178
  • 87
  • DDR4-2400
    173
  • 84
  • DDR4-2133
    164
  • 82

全体的に悪くない傾向ですが、3600Mhzあたりで頭打ち感が出ていますね。それでも2133Mhzから4000Mhzで、最低フレームレートは約10、平均フレームレートは20も向上している。想像以上のすごさです。

Fallout 4

Fallout 4 – WQHD(2560×1440) / ウルトラ設定 / 平均fps + 最低fps

  • DDR4-4000
    67fps
  • 63fps
  • DDR4-3600
    65fps
  • 61fps
  • DDR4-3000
    58fps
  • 53fps
  • DDR4-2400
    54fps
  • 50fps
  • DDR4-2133
    49fps
  • 41fps

2015年に発売されて以降未だに人気のあるベストセラータイトルFallout 4でも、メモリークロックによる顕著な性能向上が確認できた。3600Mhzあたりに限界を感じるものの、メモリーのオーバークロックで平均60fpsオーバーを達成できたことに驚きしか感じない。

つまり、「グラボもCPUも頑張った。それでも平均フレームレートが目標値に達しない…どうしよう…」という状況になった場合の最終手段ということですから。「ならば最後はメモリーをオーバークロックしてやる。」という手段が使える可能性があるってことです。

なお、こちらの記事によればもともとFallout 4はメモリー速度の影響を受けやすいようです。

The Division

The Division – WQHD(2560×1440) / ウルトラ設定 / 平均fps + 最低fps

  • DDR4-4000
    89
  • 72
  • DDR4-3600
    87
  • 71
  • DDR4-3000
    86
  • 70
  • DDR4-2400
    84
  • 68
  • DDR4-2133
    83
  • 66

Divisionではメモリーのオーバークロックの効果をあまり得られないようだ。効果が全く無いわけではないが、8%程度しかフレームレートが向上していないので明らかにコストと苦労に見合わない。

The Witcher : Wild Hunt

WQHD(2560×1440) / ウルトラ設定 + HairWorks有効 / 平均fps + 最低fps

  • DDR4-4000
    102
  • 80
  • DDR4-3600
    99
  • 80
  • DDR4-3000
    95
  • 79
  • DDR4-2400
    90
  • 77
  • DDR4-2133
    83
  • 72

フレームレートをガタッと落とす効果がある「NVIDIA HairWorks」を有効化してフレームレートを計測している。その影響もあってか、メモリークロックの上昇に合わせてフレームレートも見事に向上しています。同じグラボなのに平均フレームレートが25%も上昇するのは驚異的だ。

ただし、最低フレームレートは10%程度しかアップしていない。10%でもそれなりに大きい効果だが。

さて、メモリーのオーバークロックはやるべきか?

ゲームやソフトウェアのパフォーマンスは、複数のハードウェア(グラボやCPU、そしてメモリなど)から影響を受けて決まっている。グラボが高性能でも、CPUが低性能だと本来のパフォーマンスを出せない「ボトルネック」が存在するのはよく知られた話だ。

※「ボトルネック」については、上記の記事もとても参考になります。

今回、メモリーのオーバークロックによって確かに性能向上が確認された。これはメモリーにボトルネックが存在したことを意味しています。同じCPU、同じグラボを使っているのに、メモリークロックが上がると性能がアップしたからね。

4.5Ghzにオーバークロックされた「i7 6700K」に、GTX 980 Tiを2枚使うという環境。間違いなくグラフィックボードが大量にこなす作業に、CPUも十分に追いつける環境であったが、メモリーはまだ追いつけていなかったことを示唆する。

ここでひとつの問題が。ボトルネックという現象は、高性能であればあるほど発生する確率が高くなるのです。GTX 980 Tiの2枚刺し(2way SLI)はかなり高性能。ではGTX 980 Tiを1枚だけ使うようにしたら、ボトルネックはなくなるのではないか。

以下はグラボ1枚だけで検証したデータだ。

WQHD(2560×1440) / ウルトラ設定 + HairWorks有効 / 平均fps + 最低fps

  • DDR4-4000
    62
  • 44
  • DDR4-3600
    61
  • 44
  • DDR4-3000
    60
  • 44
  • DDR4-2400
    59
  • 44
  • DDR4-2133
    58
  • 44

GTX 980 Tiだけで計測すると、結果はこの通り。最大25%もの効果が得られた4000Mhzだったが、シングルボードにした途端に効果は消えた。つまり、グラボを1枚にするとボトルネックは消失してしまうのです。

結論、メモリーのOCは無理してやる必要はない

ここまで分かったことをまとめます。

  • グラボを2枚以上使うと、メモリークロック由来のボトルネックが発生しやすい
  • しかしグラボが1枚なら、メモリークロック由来のボトルネックはほぼ発生しない
  • Photoshop、HandBrakeでは顕著な効果が見られた
  • ほとんどのアプリケーションでは劇的な効果は見込めず、対費用効果は悪い

ということでしたね。

結論、ほとんどのユーザーはメモリーのオーバークロックにこだわる必要はないでしょう。やる価値がある人は

  • グラボは当然SLI(Crossfire)にするし、可能な限りフレームレートを追求したいガチゲーマー
  • Photoshopをよく使うし、動画エンコードも可能な限りスピードを追求したいコンテンツクリエイター

ガチゲーマーか、コンテンツクリエイターが「メモリーOC対象者」ですね。それ以外の人は、メモリー速度にお金を使うのではなく、SSDの容量やもっとランクの高いグラボにお金を費やしたほうが得られる効果は大きいでしょう。

以上「メモリーのオーバークロックと効果、やるべき人とそうでない人を解説」でした。

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2 件のコメント

  • GTX 980 Ti1枚の時に処理されるデータ程度なら処理できるだけで、2枚分の性能から出されるデータ量はボトルネックを発生させてしまったからか。
    性能差か枚数差か判断がつかないように感じました。
    結論に変わりは無いと思いますが。

    • そうですそうです。SLI時だとメモリークロックがボトルネックに成りえますが、シングルボードならまだ気にする必要はないということです。今後、1枚分でも今の2~3枚分のデータ量を処理できるようになれば、メモリークロックはとても重要になる可能性があります。

      < 性能差か枚数差か判断がつかないように感じました。

      読み直したところ、たしかに最初は話の内容が「CPU」で、途中からいきなり「GPU」の話になっているので分かりづらいですね。若干書き直します。コメントありがとうございました(_ _)。

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