クリエイティブ系のソフトウェアとして「Adobe Photoshop」はよく例に挙げられます。そしてクリエイティブ系だからという理由で、しばしばXeonやCore i7の上位クラスをオススメされることが多い。
さて・・・実際はどうなのか。データにもとづいて、Photoshopの推奨CPUを解説します。
(公開:2017/8/22 | 更新:2020/8/31)
Photoshopは意外とCPUを使わない
これは意外な真実でして、Photoshopは意外とレガシー(古い)なソフトです。
3DCGやレンダリング系のソフトだと、8コアどころか10コア以上の超マルチコアCPUが効率よく機能しますが、Photoshopではそう上手く行きません。
Pugetsystems社が公開しているデータ「Photoshop CPU performance」をもとに、解説していきます。
テスト環境
CPU | Core i9 10900K Core i7 10700K Core i5 10600K Ryzen 9 3900X Ryzen 7 3700X ・・・などなど18種類 |
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メモリ | 16GB x4(64GB) |
グラボ | RTX 2080 Ti 11GB |
SSD | Samsung 960 Pro 1TB |
OS | Windows 10 64bit(1909) |
検証ソフト | Photoshop CC 2020 |
Photoshopの処理速度に、CPUの性能やコア数がどれほど影響するのかを検証するため、原則としてCPU以外のパーツはほぼ同じスペックで揃えられています。
検証に使ったベンチマークソフトは「PugetBench for Photoshop」で、Photoshopのバージョンは2020(21.1.1)です。
- Xeon W-3175M:iMac Pro(2019)に搭載の28コアCPU
- Xeon W-2170B:iMac Pro(2017)に搭載の14コアCPU
- Ryzen Threadripper 3990X:64コアCPU
- Ryzen Threadripper 3970X:32コアCPU
- Ryzen Threadripper 3960X:24コアCPU
- Core i9 10980XE:18コアCPU
- Core i9 10940X:14コアCPU
- Core i9 10920X:12コアCPU
- Core i9 10900X:10コアCPU
- Core i9 10900K:10コアCPU
- Core i7 10700K:8コアCPU
- Core i5 10600K:6コアCPU
- Core i9 9900K:8コアCPU
- Core i7 9700K:8コアCPU
- Ryzen 9 3950X:16コアCPU
- Ryzen 9 3900X:12コアCPU
- Ryzen 7 3800X:8コアCPU
- Ryzen 7 3700X:8コアCPU
総合的な処理速度
Photoshopのベンチマーク結果をまとめたグラフです。
グラフを見てのとおり、CPUのコア数が多いからと言って処理速度が速く・・・ならないです。トップは10コア20スレッドの「Core i9 10900K」で、2~5位は12コア超えのRyzenがぞろぞろと並んでます。
結局のところ、Photoshopに最適なCPUは8~10コア前後、かつクロック周波数が高い(= シングルスレッド性能が速い)CPUです。
ただし、上記のグラフはあくまでもすべてのテスト結果をひとまとめにしたモノ。テストごとに細かく見ていくと、場合によってはコア数が多いほど有利なシーンもあります。
一般的な処理はコア数よりクロック
一般的な処理(General Score)のスコアは、高クロックな8~10コアCPUが上位です。
- RAW画像の展開
- 500MBへのリサイズ
- 回転
- 自動選択
- マスク
- バケツ
- グラデーション
- 塗りつぶし
- PSD保存
これらの単純なタスクは、やはりコア数よりもクロック周波数(= シングルスレッド性能)の方が効率よく効いてます。
例外は「回転」で、28コアのXeon W-3175MがCore i9 10900Kより約30%速いです。しかし、お値段は約30倍。コスパを考えるとやはり・・・8~10コア程度にしておくのが良いでしょう。
フィルター系の処理もコア数を活かせない
フィルター系の処理性能(Filter Score)も、一般的な処理と同じく、マルチコアCPUよりクロック周波数が効きやすい傾向です。
- Camera Raw フィルタ
- レンズ補正フィルター
- ノイズ除去
- スマートシャーペン
- フィールドぼかし
- チルトシフトぼかし
- 虹彩絞りぼかし
- 広角補正フィルター
- ゆがみツール(Liquify)
これらのフィルター処理はCPUのコア数が効率よく発揮されそうですが、実はGPU支援(グラフィックボード)をガシガシ使っているため、グラボを高速に動かせるCPUほど有利になります。
グラボを高速に動かせるCPUの代表例が「Core i9 10900K」です。ゲーミング最強CPUですが、まさかPhotoshopのGPU支援においても高い性能を出せるとは、素直に驚きました。
GPU支援を使う処理もコア数が効きにくい
GPU支援をよく使う処理(GPU Score)は、ゲームに強いCPUが有利です。
- 回転
- スマートシャーペン
- フィールドぼかし
- チルトシフトぼかし
- 虹彩絞りぼかし
特に↑5つの処理は、グラフィックボードをかなり使います。「回転」だけはCPUのコア数が効いてますが、途中でも解説したように性能差の割にCPUの価格差が大きすぎて、10コア以上のコスパは微妙です。
残り4つのスマートシャーペンや虹彩絞りぼかしなど、フィルター系の処理はグラフを見てのとおり、Core i9 10900Kがほぼ1位を独占しています。
細かく見ると6コア12スレッドのCore i5 10600Kが、8コア以上のRyzen 7 3800XやCore i9 10920Xを上回る場合もあり、Photoshopがいかにマルチコアを上手く使えないソフトかが分かります。
結論、Photoshopはシングルコア性能を重視
2017バージョンより、2020バージョンの方がマルチコア性能を多少は使えるように改善されています。
しかし、依然としてPhotoshopがマルチコアを上手く使ってくれない状況は続いており、コストパフォーマンス的に8コア~10コアCPUで処理性能はほぼ上限です。
コア数だけでなく、1コアあたりの性能(シングルスレッド性能)も重要。
シングルスレッド性能が高いCPU
Cinebench R15でCPUのシングルスレッド性能を計測して、グラフにまとめた。インテルCPUの方が若干強いですが、第3世代Ryzenも負けず劣らずいい勝負です。
コスパと性能で選ぶなら、インテルのCore i7 10700Kや、i9 10900Kと同等で1万円も安いCore i9 10850Kで間違いなし。もっとコスパ重視なら、8コアのRyzen 7 3700Xで良いでしょう。十分な性能です。
Photoshop CCにおすすめなCPU
Photoshopパソコン用に、とにかく性能を重視したいクリエイターさんには、Core i9 10900Kの廉価版としてリリースされた「Core i9 10850K」がイチオシです。
i9 10900Kより約1万円も定価が安いのに、性能はほぼ同じ(動作クロックが100 MHz違うだけ)。難しい設定は不要、定格運用で高性能ならi9 10850Kで間違いないです。
最高性能は求めないから、コストパフォーマンス重視で。という人には約3.9万円で買える8コア16スレッドCPU「Ryzen 7 3700X」が適任でしょう。
同じ8コアのi7 10700Kには劣りますが、4万円未満の安い価格を考えれば十分すぎるほど高性能。Photoshopで重要なシングルスレッド性能も速く、コスパはとても優秀。
低予算では「Ryzen 5 3600」がおすすめ。同じ価格帯のCore i5 10400Fより1割ほどPhotoshopのスコアが高く、Core i5 10600Kを買うよりコスパは良いです。
以上「データでよく分かる、Photoshopに最適なCPUまとめ【解説】」でした。
Photoshop向けのクリエイターPC
「Photoshopには興味あるけど、自作PCはそれほど・・・」
もちろんそういう方もいるはずなので、Photoshop用にちょうど良いBTOパソコンをいくつかまとめておきます。
Legion T750i型番:90Q80016JM | |
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CPU | Core i9 10900K |
GPU | RTX 2080 Super 8GB |
メモリ | DDR4-3200 16GB x2 |
マザーボード | Intel Z490(ATX規格) |
SSD | 512 GB(NVMe) |
HDD | 2 TB |
電源 | 650W 静音電源FSP製 / 80+ GOLD認証 |
保証 | 1年間 / 引取修理保証 |
Photoshopで最高の性能、だけでなくゲーミングや動画編集など。他にもいろいろな用途でゴリゴリと使い込みたい人向けには「Legion T750i」を推します。
国内BTOの同スペックモデルより約2~4万円も安いのに、CPUクーラーに「240 mm簡易水冷ユニット」を標準で付いているのが大きなメリット。パーツ構成(中身)も至ってマトモです。
DAIV A5 | |
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CPU | Ryzen 7 3700X |
GPU | GTX 1650 Super 4GB |
メモリ | DDR4-3200 8GB x2 |
マザーボード | AMD X570(ATX規格) |
SSD | 256 GB(NVMe) |
HDD | 1 TB |
電源 | 500W 静音電源メーカー不明 / 80+ BRONZE認証 |
保証 | 1年間 無償保証※24時間365日電話サポート付き |
手頃な価格でPhotoshopがサクサクと動いてくれればそれで良い。なら、マウスコンピューターのクリエイターモデル「DAIV A5」がおすすめ。
8コア16スレッドのRyzen 7 3700X搭載で、グラボはGTX 1650 Superです(※Photoshopには十分すぎるグラボ)。ただし、SSDが256 GBしか入ってないので、カスタマイズで512 GB以上に変更してください。
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CC以前のCSユーザーもまだまだ多いと思いますが
RYZENへの最適化が期待できないこともあるので、
余計にintel・・・ですねえ
まぁPhotoshopはフィルターかけてる時間よりも
どうしようか悩んでる時間の方が多いですから
正直どれ使っても総作業時間で考えると差がないとおもいますね
バッジ処理でかなりの数のファイルに処理かけるのがメインとかなら考えたりしますけど
全然内情とかに詳しくないんですけどT750iのレビュー出来そうだったら是非お願いします! 出来たとしても一ヶ月以上は先ですかね?
いつも楽しく読ませて頂いています。
今回の記事もとても興味深く拝見しました。
勝手な希望なのですが、この『○○に最適なCPU・グラボ』シリーズでAdobeのイラストレーターを特集していただけないでしょうか?
検索しても最近の参考になるサイトがあまり見当たらないのです。
検討のほど、よろしくお願いいたします。
未だにCS6だからintelの方がいいのかな?
つくもの3700のリンク先が