Core i7 13700(無印)をレビューします。i7 13700Kより約3000円安くて、ほぼ同じスペックが付いてきます。MTPの既定値も253 W → 219 Wへ引き下げられ、扱いやすくなっているように見えますが実態は・・・?
(公開:2023/4/9 | 更新:2023/4/9)
今回のレビューで使用する「Core i7 13700」は、インテルの提携代理店がAmazon.co.jpで注文して筆者の住所に直送してもらった市販品です。
もちろん、以前のレビューと同じくレビュー内容に関して、ベンチマークソフトの指定や使用機材の要望(例:DDR5-6000メモリの強要等)は一切ありませんでした。引き続き、コスパの良いIntel Z690 + DDR4プラットフォームにてテストを行います。
Core i7 13700の仕様とスペック
CPU | Core i7 13700 | Core i7 13700K | Ryzen 7 7700X |
---|---|---|---|
ロゴ | |||
世代 | 13th Raptor Lake S | 13th Raptor Lake S | 5th Zen 4 |
プロセス | Intel 7 (Intel 10 nm ESF) | Intel 7 (Intel 10 nm ESF) | TSMC N5 (TSMC 5 nm FinFET) |
TIMCPU内部の熱伝導材 | ソルダリング薄化ダイ & IHSを分厚く | ソルダリング薄化ダイ & IHSを分厚く | ソルダリング |
ソケット | LGA 1700 | LGA 1700 | Socket AM5 |
チップセット | Intel 600 / 700 | Intel 600 / 700 | AMD 600 |
コア数 | 16 | 16 | 8 |
スレッド数 | 24 | 24 | 16 |
ベースクロック | 2.10 GHz | 3.40 GHz | 4.50 GHz |
ブーストクロック | 5.20 GHz | 5.40 GHz | 5.40 GHz |
内蔵GPU | UHD 770 | UHD 770 | Radeon Graphics(2CU) |
GPUクロック | 300 ~ 1600 MHz | 300 ~ 1600 MHz | 2200 MHz |
TDP | 65 W / 219 W | 125 W / 253 W | 105 W / 142 W |
MSRP | $ 384 | $ 419 | $ 399 |
参考価格 (2022年4月時点) | 55449 円 | 58527 円 | 46949 円 |
CPU | Core i7 13700 | Core i7 13700K | Ryzen 7 7700X |
---|---|---|---|
世代 | 13th Raptor Lake S | 13th Raptor Lake S | 5th Zen 4 |
プロセス | Intel 7 (Intel 10 nm ESF) | Intel 7 (Intel 10 nm ESF) | TSMC N5 (TSMC 5 nm FinFET) |
TIMCPU内部の熱伝導材 | ソルダリング薄化ダイ & IHSを分厚く | ソルダリング薄化ダイ & IHSを分厚く | ソルダリング |
ソケット | LGA 1700 | LGA 1700 | Socket AM5 |
チップセット | Intel 600 / 700 | Intel 600 / 700 | AMD 600 |
コア数 | 16 | 16 | 8 |
スレッド数 | 24 | 24 | 16 |
ベースクロック | 3.40 GHz | 3.40 GHz | 4.50 GHz |
ブーストクロック | 5.40 GHz | 5.40 GHz | 5.40 GHz |
手動OC | 可能 | 可能 | 可能 |
L1 Cache | 1408 KB | 1408 KB | 512 KB |
L2 Cache | 24 MB | 24 MB | 8 MB |
L3 Cache | 30 MB | 30 MB | 32 MB |
対応メモリ | DDR5-5600 DDR4-3200 | DDR5-5600 DDR4-3200 | DDR5-5200 |
チャネル | x2 | x2 | x2 |
最大メモリ | 128 GB | 128 GB | 128 GB |
ECCメモリ | 不可 | 不可 | U-DIMMのみ |
PCIeレーン | Gen5 + Gen4 | Gen5 + Gen4 | Gen5 |
16 + 4 | 16 + 4 | 24 | |
レーン構成 | 1×16 + 4 | 1×16 + 4 | 1×16 + 1×4 + 1×4 |
2×8 + 4 | 2×8 + 4 | 2×8 + 1×4 + 1×4 | |
– | – | 1×8 + 2×4 + 1×4 | |
内蔵GPU | UHD 770 | UHD 770 | Radeon Graphics(2CU) |
GPUクロック | 300 ~ 1600 MHz | 300 ~ 1600 MHz | 2200 MHz |
TDP | 65 W / 219 W | 125 W / 253 W | 105 W / 142 W |
MSRP | $ 384 | $ 419 | $ 399 |
参考価格 (2022年4月時点) | 55449 円 | 58527 円 | 46949 円 |
「Core i7 13700」をざっくり表現するなら、Core i7 13700Kになり切れなかった個体の再利用モデルといって差し支えないです。
Core i7 13700Kで要求される高いクロック耐性と電圧特性に合格できないものの、クロックを下げれば問題なく動作するので「無印」モデルとして販売されています。
性能がわずかに下がる分だけ、価格も419ドル → 384ドルへ35ドル安く設定されています。国内価格で比較すると約5.8万円が3000円下がって、約5.5万円で入手できます。
Core i7 13700のCPU性能:当然i7 13700Kに近い
テスト環境
テスト環境 「ちもろぐ専用ベンチ機(2023)」 | ||
---|---|---|
スペック | Raptor Lake / Alder Lake | Zen 4 |
CPU | Core i7 13700 | Ryzen 7 7700X |
冷却 | NZXT Kraken X63 280 mm簡易水冷クーラー | |
マザーボード | ASUS TUF GAMING Z690-PLUS WIFI D4 | ASUS TUF GAMINGX670E-PLUS |
メモリ | DDR4-3200 16GB x2使用モデル「Elite Plus UD-D4 3200」 | DDR5-4800 16GB x2使用モデル「CT2K16G48C40U5」 |
グラボ | RTX 4080 16GB使用モデル「Gainward Phantom」 | |
SSD | NVMe 1TB使用モデル「Samsung 970 EVO Plus」 | |
電源ユニットシステム全体 | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
電源ユニットCPUのみ | 850 W(80+ Gold)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
OS | Windows 11 Pro 22H2 | |
ドライバ | NVIDIA 531.28 DCH |
以前のレビューと同じく、引き続きIntel Z690マザーボードとDDR4-3200(ネイティブメモリ)を使って、Core i7 13700(無印)の性能を検証します。
第13世代Raptor LakeはDDR5-5600メモリに対応しますが、DDR4-3200の約1.6~1.9倍も価格が高く、DDR5対応マザーボードも配線コストの都合で価格がやや高めです。
得られる性能の割に価格が高いせいで、DDR4環境と比較して確実にコストパフォーマンスが悪化します。
幸い、Raptor Lakeでは従来のDDR4メモリとDDR4対応マザーボードを利用できます。特にIntel 600マザーボードは発売から時間が経過したおかげで価格もこなれており、DDR5環境より導入コストを抑えやすいです。
よって、本レビューではあえてRaptor Lake側のベンチマーク機材にDDR4環境を使っています。
低コストで済みやすいDDR4環境を使ったCore i7 13700が、高コストなDDR5環境を使っているZen 4シリーズにどこまで対応できるか見てみましょう。
レンダリング性能
CPUの性能をはかるベンチマークとして、「CPUレンダリング」は定番の方法です。ちもろぐでは、下記3つのソフトを用いてCPUレンダリング性能をテストします。
- Cinebench R15
- Cinebench R23
- Blender 3.4.0
日本国内だけでなく、国際的にも定番のベンチマークソフトです。なお、CPUレンダリングで調べた性能はあくまでも目安であり、CPUの性能を代表するスコアではない点は注意してください。
やはり最大クロックが下がった分だけ、Core i7 13700のレンダリング性能が下がります。Core i7 13700Kから約7~8%ほど性能が下がり、1世代前のCore i9 12900Kをやや上回ります。
シングルスレッド性能も同様に、ブーストクロックが5.4 → 5.2 GHzへ(約4%)下がった分だけ低下します。Core i5 13600Kに近いです。
動画エンコード
CPUレンダリングと並んで、動画エンコードはCPUの性能を調べる定番の方法です。
- Handbrake
- Aviutl(rigaya氏の拡張プラグインを使用)
ちもろぐでは、フリー動画エンコードソフト「Handbrake」と、日本国内で人気の動画編集ソフト「Aviutl」における動画エンコード速度をテストします。
先のレンダリングテストと同じく、動画エンコードも似た結果です。ブーストクロックが下がった分だけ性能も下がります。
それでもCore i9 12900K以上の性能を出せているのは、CPUの実効性能に影響があるリングレシオ(キャッシュ倍率)の改善が効いている印象です。
Aviutlにて、拡張プラグイン「x264guiEx」「x265guiEx」を使って動画エンコードをしました。
Handbrakeと同じく、AviutlもCore i7 13700K未満かつCore i9 12900K以上のエンコード性能です。
AI(機械学習)
2022年ごろから、AIでデジタルイラストを生成する「Stable Diffusion」をはじめ、AI(機械学習)を応用した技術が一般人の間でも身近な存在になりました。
ちもろぐのCPUベンチマークも流行に習って、機械学習のベンチマークを試験的に取り入れます。
- TensorFlow(実務で人気のフレームワーク)
- PyTorch(学術研究で人気のフレームワーク)
- 4x BSRGAN(機械学習による画像アップスケール)
Stable Diffusion(機械学習によるイラスト生成)
※今回のレビューからベンチマークから外します
試験的に取り入れているベンチマークは以上3つです。Stable Diffusionはグラフィックボードを使ったほうが遥かに効率がいいため、今回のレビューから外しました。
AnacondaプロンプトからTensorFlow 2をロードして、単純な手書き文字の自動認識(MNIST)トレーニングを実行します。
すべてのCPUコアが処理に使われる設定ですが、実際の結果はマルチスレッド性能にあまり相関しません。CPUの性能よりも、メインメモリの帯域幅の方(DDR5メモリ)が効果的に見えます。
AnacondaプロンプトからPyTorchをロードして、PyTorch公式が提供しているベンチマーク用のコード(torch.utils.benchmark as benchmark)を使って処理性能をテストします。
なお、処理時間を伸ばすためにベンチマークコードに含める乱数行列は10000×8192として、テストの実行回数は250回です。処理1回あたりの時間に250回をかけて、合計処理時間を求めます。
結果はTensorFlowより分かりやすいですが、いまいちコア数とベンチマーク結果がスケーリングしない部分が多いです。
Ryzen 7000シリーズが全体的に優秀な状況を見るに、CPUの性能よりもDDR5メモリの方が効率よく性能に効いている気がします。
次は4x BSRGANを使って、512 x 512サイズ画像の超解像(アップスケーリング)をテストします。アップスケーリング後のサイズは2048 x 2048(※BSRGANは4倍のみ対応)です。
一応コアスレッドの増加に比例して処理時間を短縮できますが、DDR5メモリを使っているRyzen 7000シリーズのほうが効率よく性能を出せている傾向です。
動画編集
「Davinci Resolve」はフリー動画編集ソフトとして、Aviutlと並んで完成度の高いソフトです。カラーグレーディングやVFX合成などプロ仕様な機能に加え、PCスペックをフルに活用できる洗練された設計が大きな強み。
ちもろぐでは、Puget Systems社のベンチマークプリセットを使って、Davinci Resolve Studio 18における動画編集のパフォーマンスを計測します。バッチ処理でDavinci Resolveを動かして、それぞれの処理にかかった時間からスコアを出す仕組みです。
Core i7 13700のDavinci Resolveベンチマーク性能は「2553点」、Core i5 13600Kを超え、Ryzen 9 7950Xに迫ります。
4K動画編集スコアは「153点」で、Core i7 13700Kからわずかに下がります。Fusionスコアは「433点」で、Core i7 13700Kとほぼ同等です。
動画編集で不利なDDR4メモリを使っていながら、DDR5メモリを使っているRyzen 7 7700X以上の性能です。
「Premiere Pro」は言わずもがな、超有名な動画編集ソフトです。マルチコアが効きづらい残念ソフトでしたが、2020年以降よりマルチコアが効きやすく最適化されています。
Core i7 13700の総合スコアは「1144点」です。Core i7 13700Kと大差ない性能ですが、DDR5メモリを使うRyzen 7 7700Xには微妙に届かず惜しいです。
圧縮と解凍
ファイルの圧縮と解凍のスピードを、有名なフリー解凍ソフト「7-Zip」を使って計測。付属のベンチマークツールで、圧縮と解凍のスピードを「MIPS」という単位で分かりやすく表示してくれます。
7-Zip Benchmarkのベンチマーク結果です。
メモリクロックの影響が大きい「圧縮」では、DDR5メモリを使うRyzen 7000シリーズが全体的に有利です。Core i7 13700はRyzen 7 7700Xに大きく引き離されています。
一方、メモリの性能に影響を受けづらい「解凍」だと、Core i7 13700がRyzen 7 7700Xを打ち負かし16コア24スレッドに見合う性能を発揮します。
と言ってもコア数の差の割に性能差が小さく、Ryzenシリーズの方が解凍に強いのは明らかです。
ブラウザの処理速度
PCMark 10 Professional版の「Microsoft Edgeテスト」と、ブラウザ上で動作するベンチマーク「mozilla kraken 1.1」を使って、CPUのブラウザ処理性能をテストします。
Edgeブラウザ(Chromium)の処理速度は、基本的にシングルスレッド性能に影響を受けやすいです。シングルスレッドに強いK付モデルがトップを占め、無印モデルは一歩引いた位置にいます。
krakenテストもシングルスレッド性能が反映されやすいです。Core i7 13700は387 ミリ秒、文句なしに速いです。
なお、mozilla krakenは1000 ミリ秒が大きな目標のひとつで、ここでテストしたCPUはすべて1000 ミリ秒を下回っています。つまり、どれを選んでも実用上はまったく問題ない性能です。
Photoshop CC
写真編集の定番ソフト「Adobe Photoshop CC」の処理速度をテストします。Puget Systems社のプリセットを用いて、Photoshopを実際に動かして、各処理にかかった時間からスコアを算出する仕組みです。
Core i7 13700のPhotoshop総合スコアは「1500点」です。Core i7 13700Kと大差ないスコアですが、DDR5メモリを持つRyzen 7 7700Xには届きません・・・でした。
一般処理とフィルタースコアも同様の結果です。
Microsoft Office
パソコンの一般的なワークロードといえば、Microsoftの「Office」ソフトが代表例です。しかし、Microsoft Officeにベンチマークモードはありませんので、ちもろぐでは「PCMark 10 Professional版」を使います。
単なる再現テストではなく、PCMark 10が実際にMicrosoft Office(Word / Excel / PowerPoint)を動かして、各処理にかかった時間からスコアを算出します。
Wordスコアは「11162点」で、Core i7 13700Kとほぼ同じ、Ryzen 7 7700X以上です。
Excelスコアは「34464点」でRyzen 7 7700Xを軽く打ち負かし、Core i7 13700Kの一歩手前です。
PowerPointスコアは「21779点」、解釈がやや難しい傾向ですが、マルチスレッド性能が重要に見えます。おおむねCore i7 13700Kと似た結果に。
なお、PCMark 10によると快適な動作に必要なスコア(目安)は4500点です。今回テストしたCPUはすべて4500点を軽く超えており、実用上どれを選んでも快適そのもの。
「IPC」でCPUの真の進化をチェック
最後は「IPC(クロックあたりの処理性能)」をテストします。IPCが高いとは、つまるところ「同じクロックなのに性能が高い」わけですから、CPUのクロック周波数を固定してベンチマークを行えばある程度は明らかにできます。
方法はシンプルで、クロック周波数を3.5 GHzに固定してCinebench R15をシングルスレッドモードで実行するだけ。
Cinebench R15 / シングルスレッド性能@3.5 GHz
これでIPCの違いをキレイに抽出できます。グラフを見ての通り、Core i7 13700のIPCは従来のAlder Lake世代と変化なし。
一応、第13世代インテルCPUシリーズを名乗っているものの、中身自体はAlder Lakeです。設計が同じである以上、IPCが変化しないのも当然です。
Ryzen 5000(Zen 3)と比較して約3%だけ速く、Ryzen 7000(Zen 4)より約2%遅いです。ほとんど大差ないと言っていいでしょう。
Core i7 13700のゲーミング性能
RTX 4000シリーズの登場にともない、グラフィックボードの性能が急激に跳ね上がっています。CPU側の性能不足がフレームレートを下げてしまう「CPUボトルネック」が顕著に出やすい環境です。
特にRTX 3080以上のグラフィックボードでは、CPUボトルネックが無視できないほど大きいです。平均100 fps超えのフレームレートでゲームをプレイするなら、「ゲーミング性能」に優れたCPUが重要です。
新しいCPUレビューでは、「よりCPUボトルネックが出やすい」テスト内容に変更しています。以前のレビューではグラフィックボードに負荷がかかりすぎていて、CPUボトルネックが出づらく比較として意味がうすい状態でした。
- Apex Legends(ベンチマークまとめ)
- フォートナイト(ベンチマークまとめ)
- Overwatch 2
- Escape from Tarkov(ベンチマークまとめ)
- サイバーパンク2077(ベンチマークまとめ)
- Forza Horizon 5
- Microsoft Flight Simulator(ベンチマークまとめ)
- ELDEN RING(ベンチマークまとめ)
- 原神(ベンチマークまとめ)
- ブループロトコル(ベンチマークまとめ)
テストに使用するゲームタイトルは以上10個です。海外のAAAタイトル(洋ゲー)の方がベンチマーク機能は充実していますが、残念ながら日本国内でほとんどプレイされていないゲームが多いです。
筆者は「国内でプレイされているゲームのベンチマーク結果」を見たくて仕方がないため、あえて上記のようなベンチマークに向かないタイトルを多めに入れています。
フルHDゲーミング(10個)のテスト結果
平均フレームレート最低フレームレート(1%)
「Escape from Tarkov(タルコフ)」では、ほぼCore i7 13700Kに匹敵する性能を出せます。
L2キャッシュ容量の増量や、キャッシュレシオの改善のおかげで、Core i7 12700Kより安定したフレームレートです。
「Apex Legends」はCPUボトルネックが出づらいです※。
Ryzenシリーズと微妙に性能差が出ているのはボトルネックではなく、メモリクロックの違いです。
※実際のゲームプレイだと性能差が出るらしい話を聞きますが、残念ながら実際のゲームプレイを毎回再現できないので証明不可能です。CPUボトルネックなのか、それともプレイ内容が変わったことが原因なのか・・・?、比較実験として意味がありません。
「オーバーウォッチ2」も意外とCPUボトルネックが出づらいです。比較的新しい世代のCPUであれば、Core i7 13700にこだわる必要はないです。
「フォートナイト」はCPUボトルネックが大きいです。Alder Lake、Raptor Lake、Ryzen 7000シリーズそれぞれでハッキリと性能差が発生します。
Core i7 13700はクロックが下がった分だけ、わずかにフレームレートが下がりますが、Core i7 13700Kとの性能差は約2.5%程度です。
「Microsoft Flight Simulator」はCPUボトルネックで有名なゲームタイトルです。
基本的にCore i7 13700Kに近い性能を出せますが、残念ながらRyzen 7 7700Xには届かないです。
「原神」はスメールシティの決まったルートを周回して検証。意外とCPUボトルネックが出やすいゲームです。
「エルデンリング」もCPUボトルネックが出やすいです。割りとシングルスレッド性能が効果的で、安定して高いクロックを維持できるK付きモデルが優秀です。
国産MMORPG「ブループロトコル」では、Core i7 13700とCore i7 13700Kの性能差はごくわずか。
今でも非常の重たい部類の「サイバーパンク2077」は、CPUへの負荷が非常に高いゲームタイトルですが、Core i7 13700とCore i7 13700Kの性能差は少ないです。
「Forza Horizon 5」はベンチマークモードで検証。Core i7 13700とCore i7 13700Kで謎に性能が開きます。
Core i7 13700の平均ゲーミング性能は、Core i7 13700Kから約1.7%下がっただけです。主にブーストクロックの性能差に限られるため、フレームレートに大差なくて当然の結果です。
4Kゲーミング(10個)のテスト結果
GPU負荷が大きく、CPUボトルネックが出づらい4Kゲーミング(3840 x 2160)の結果も参考程度に調査しました。
平均フレームレート最低フレームレート(1%)
4KゲーミングだとCPUボトルネックはとても少ないです。検証した10個のゲームタイトルで、目立った性能差があるのはForza Horizon 5のみ。他のゲームはわずかな性能差にとどまり、CPUにコストを掛ける意味が薄いです。
Core i7 13700の平均4Kゲーミング性能は、現行ハイエンドCPUと大差ありません。
4Kゲーミングの場合、CPUボトルネックを気にするよりも、グラフィックボードにお金をかけた方が良い結果を得られるでしょう。
消費電力とCPU温度
ちもろぐのCPUレビューでは、電力ロガー機能が付いた電源ユニットを2台使って、CPU単体の消費電力を実際に測定します。
テスト環境 | ||
---|---|---|
電源ユニット #1システム全体 | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
電源ユニット #2CPUのみ | 850 W(80+ Gold)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 |
電源ユニットを2台に分けて電力供給を分割しているため、CPUに電力供給している電源ユニットの計測値(+12V Power)を見れば、CPU本体の消費電力が明らかになる仕組みです。
ゲーミング時の消費電力と温度
ゲームプレイ時の消費電力を測定して、10タイトルの平均値を求めたグラフです。
Core i7 13700は平均で約129 Wを消費し、Core i7 13700Kより約25 Wも増加します。同じゲーミング性能を出すために必要な電力が大幅に跳ね上がっています。
なお、CPUへの負荷が減る4Kゲーミング時の消費電力は少し減って平均107 Wですが、やはりCore i7 13700Kより増加傾向です。
検証した10タイトルの中で、もっとも消費電力が高かったサイバーパンク2077を検証中のCPU温度は平均68℃(ピーク時74℃)です。
消費電力が増えた分だけCPU温度が上昇しており、Core i7 13700Kより扱いづらさが増しています。
100%負荷時の消費電力と温度
CPU使用率が常時100%に達するCinebench R23(ストレステストモード)にて、Core i7 13700の消費電力を測定したグラフです。
Core i7 13700の消費電力は平均257 W(ピーク時277 W)で、Core i7 13700Kとほぼ同じ。13700のMTPが219 W、13700KのMTPが253 Wにもかかわらず消費電力に大きな差が見られません。
要するに、規定されたクロックに達するために必要な電力は13700Kの方が少なく済むからです。
100%負荷時のCPU温度は平均81℃(ピーク時86℃)で、消費電力の割には冷えやすいです。
Core i7 13700Kよりなぜか4℃ほど低いので、何度か検証し直しましたが結果は変わらず。消費電力が同じでも、動作クロックが高い方が発熱が大きくなりやすい可能性がありそう・・・?
参考までにCore i7 13700Kの高負荷時クロックが、Pコア:5.3 GHz / Eコア:4.2 GHz / リング:4.5 GHzでした。一方、Core i7 13700(無印)だとPコア:5.0 GHz / Eコア:3.8 GHz / リング:4.35 GHzで、全体的に動作クロックが低めです。
詳しい方が技術的なコメントを残してくれました(→ コメント#99422)。同じ消費電力でも、動作クロックが高い方がロスが大きく、結果的に温度が高くなりやすいとのこと。
ワットパフォーマンス
消費電力1ワットあたりの性能(ワットパフォーマンス)は当然ながら13700Kと比較して、悪化します。
同じクロックに達するために必要な電力が増えているのだから、ワットパフォーマンスの悪化は避けられません。
ワットパフォーマンスを見る基準を変えると、また違った風景が見られます。
フルHDゲーミング時のワットパフォーマンスでは・・・、やはり13700Kと比較して悪化してしまいテストしたCPUでワースト1位に。
4Kゲーミング時のワットパフォーマンスも同様の結果です。ワットパフォーマンスの関係をまとめると、
- ゲーミング時のワッパ:i7 13700 < i7 13700K << R7 7700X
- マルチスレッド時のワッパ:i7 13700 < i7 13700K << R7 7700X
でした。すべてのCore i7 13700(無印)がこれほど特性が悪いかどうかは判断できませんが、基本的に13700Kになり切れなかった個体の再利用ですから、全体的に特性が悪くなっている可能性が濃厚です。
まとめ:値下げ分より失うモノが多い微妙なCPU
「Core i7 13700」のデメリットと弱点
- 電気的特性がかなり悪い
- 100%負荷時の消費電力が高い
- ワットパフォーマンスが微妙
- 付属CPUクーラーが冷えない
- オーバークロック非対応
「Core i7 13700」のメリットと強み
- 優れたシングルスレッド性能
- 非常にすぐれたゲーミング性能
- 汎用性の高いCPU性能
- PCIe 5.0と4.0をサポート
- DDR5 / DDR4メモリに両対応
- Intel 600マザーボードを流用できます
- 内蔵GPU「Xe Graphics」搭載
- コストパフォーマンスは悪くない
Core i7 13700単体で見た場合、それほど悪いCPUではないです。16コア24スレッド搭載で、L2キャッシュの増量とキャッシュレシオの向上により、Core i9 12900K以上の性能を発揮できます。
現状の価格だとi9 12900Kより約1万円も安いため、コストパフォーマンスの改善は明らかです。
しかし、あと3000円を足して手がとどく上位モデル「Core i7 13700K」が思わぬライバルに。今回レビューした無印版はとくに電気的特性が悪く、ワットパフォーマンスの悪化が顕著に出ます。
Pコア / Eコア / キャッシュレシオすべての動作クロックがCore i7 13700Kより低いにもかかわらず、消費電力にほとんど差が無いです。結果的にCPUの温度も高く、ゲーミング時のCPU温度はむしろ逆転します。
無印モデルに対して「Kモデルより大人しくて扱いやすいかも?」とイメージを抱いている方は要注意です。
というわけで、ちもろぐの評価は「Aランク」で決まりです。
よほどの理由がない限り(例:13700Kより1万円も安いなど)、Core i7 13700Kを買ったほうが良いです。
以上「Core i7 13700(無印)ベンチマーク&レビュー:無印モデルは大人しい?・・・いいえ」でした。
レビューで使用したパーツはこちら【おすすめです】
うちにある13700Fは熱もここまで激しくないので無印は選別落ちだけあってやっぱり当たり外れの差が大きいんですねぇ…
3070tiとかみたいに自作するにはオススメじゃないけど、人気のなさからBTOに搭載されることが多くなりそうだ
「最新世代のi7」だし
Escape From Tarkovを含めた検証ありがとうございます
7800x3d 7900x3d 7950x3dあたりの検証もぜひお願いします
7800X3Dの予定価格はなんと71800円・・・。
この値段でレビューすると評価が厳しいことになるので、
・71800円(ご祝儀で160円)
・64200円(143円)
7700Xや7600Xの現在レート(143円)まで値下がったら、自腹で買ってレビューしたいと思ってます。
うおお嬉しいです
CPUの性能で大きくパフォーマンスの変わるゲームらしいので楽しみにしています
クロックが上がるとスイッチングロスの1つであるデットタイム(HL切替り時の短絡する時間)の回数が増えるので、その分が発熱に出ていると思います。
スイッチングロスは損失なので、同じ消費電力の場合、ロスが少ない(熱として消費されない)方が温度が低いのは正しい結果です。
ただ、ロス(無駄な発熱)が少ないとはいえ、無印は必要なエネルギー自体が高いので性能で考えた場合はK付きの方が優秀なのは間違いないです。
技術的な解説ありがとうございます。
グリスの塗り替えや、取り付けミスを疑って何度かやり直しても13700Kの方が高熱になってしまい驚きましたが、やはりクロックが高い方が高熱になりやすい理屈があるんですね…参考になりました。
いつも丁寧な解説などで楽しく見させていただいています
違うcpuなのでここで書くべきではないのかもしれませんが今までのcpuから更にryzen75700xの性能を見ていただけますか?
今最安2.7万くらいでコスパ高そうに見えるのですが実際どうなんだろう?と思っているのでぜひ検証していただけると嬉しいです
値段差が違うので比較にならないかもしれませんがこのi713700との差も気になります
非常に興味深く読ませていただきました。
K付きと無印の差についてここまで詳細に検証している記事は初めて見ました。
ありがとうございました。
Kありなしの消費電力比較、とても興味深い結果になりましたね。
今回の測定は、マザーの電力制限設定は、仕様表通りの設定だったのでしょうか?
また、両者を本来のTDPより低い同一値で電力制限を設定したときにどうなるかも気になります。
OCしない人がK付きを買う理由ってありますか?K付きはOC前提で使うためのものだと思われますが