2017年発売のインテル純正SSD「Intel 545s」が、今になって価格コムで人気商品に。理由はシンプルで、インテル純正のSATA SSDが5000円から買えるから。確かに安いし、インテルのブランド力に裏付けられる信頼性も抜群です。
しかし実際のところはどうでしょうか。分解と性能レビューを行います。
Intel 545sの仕様とスペック
「Intel 545s」はインテルがメインストリーム向けに用意したコンシューマ向けSATA SSDです。SK Hynix製の16nm プレーナーNANDを採用していた「Intel 540」の後継モデルに位置する。
スペック | Intel 545s | |||
---|---|---|---|---|
容量 | 128 GB | 256 GB | 512 GB | 1 TB |
フォームファクタ | 2.5 inch | |||
インターフェイス | SATA 3.0 | |||
コントローラ | Silicon Motion Inc SM2259Intel向けの特注モデル | |||
NANDフラッシュ | Intel製64層 3D TLC NAND | |||
DRAMキャッシュ | SK Hynix製DDR3 | |||
128 MB | 256 MB | 512 MB | 1024 MB | |
読み込みシーケンシャル | 550 MB/s | 550 MB/s | ||
書き込みシーケンシャル | 440 MB/s | 500 MB/s | ||
読み込みランダムアクセス | 70000 IOPS | 75000 IOPS | ||
書き込みランダムアクセス | 80000 IOPS | 85000 IOPS | ||
消費電力稼働時 | 4.5 W | |||
消費電力アイドル時 | 50 mW | |||
保証 | 5年 | |||
TBW書き込み耐性 | 72 TBW | 144 TBW | 288 TBW | 576 TBW |
MSRP希望小売価格 | $ 54 | $ 74 | $ 129 | $ 239 |
参考価格Amazon価格 | 4979 円 | 5022 円 | 9405 円 | 22307 円 |
GB単価 | 38.9 円 | 19.6 円 | 18.4 円 | 21.8 円 |
インテルはデータセンター向けのSSDを除き、コンシューマ向け製品ではアッサリと他社の安価なコンポーネントを使います。545sでIntel製なのは、64層の垂直NANDフラッシュだけ。
価格設定はそれなりに頑張っていますが、500 GB以上のモデルでは「Crucial MX500」や「Samsung 860 EVO」に対して価格競争力が弱い。250 GBモデルだけ突出して安い状況です。
スペックだけを見ると良くも悪くも「平凡」な印象を受けるSSDですが、2017年に登場したSATA SSDですので仕方がない部分はある。
耐久性能は2番目に頑丈
2017年登場のSSDにしては、耐久性能(TBW)が非常に高いです。現在はSamsung 860 EVOに首位を取られていますが、ほとんど同じ耐久性能を実現しています。
もっとも人気の高いCrucial MX500と比較すると、耐久性能は44~60%も高い。Intel 545sは5年保証をアピールしていますが、これだけのTBWがあれば普通に使っていれば5年以内には壊れない。
Intel 545sを開封レビュー
インテルのパッケージはやっぱりシンプル
茶色のダンボールに梱包されて届きました。あまりにもアッサリ過ぎるパッケージングで驚きましたよ…。
と思ったら、中に本体パッケージが入ってました。
シンプルな背景にドーンッと大きい英字フォントを配置しただけのデザイン。「5」の上に「64-LAYER TLC 3D NAND」とシールが貼ってあります。
裏面は一面にインテルブルーのグラデーション。「2.5インチ」「SATA 3.0」「5年保証」など。スペックや規格について簡単な記載があるのみで、非常にシンプル。
最近レビューした「Intel 760p」と並べてみた。インテルは高性能な製品ほど明るく激しいカラーを使い、ローエンドな製品ほど青色を使う傾向がありますね。
スライドして中身を取り出す。保証書を兼ねるマニュアルと、SSD本体だけ。他に付属品は特に無かった。
缶詰のようなアルミ筐体
パッキングしたアルミの缶詰のようなデザインです。インテルのロゴが「ドドーン」と配置されているだけ。友人に見せると「だっさ。」とか言われたけど、個人的には洗練されてると感じます。
裏面にはシリアルコードが記された製品シールが貼ってあり、四隅には2.5インチベイに固定するためのネジ穴があります。
分解して内部コンポーネントをチェック
さて…、基板コンポーネントを確認したいので、パッキングしている4箇所のネジを外します。右上のネジに「シール」が貼ってあり、剥がすと保証が切れるので真似しないように。
100 mmのプラスドライバーがあればネジを回せます。コツとしてはSSDに対してドライバーを押し付け、そのままSSD本体を動かしてしまおう。そのほうがネジ山を潰さずに回しやすい。
四隅のネジを外すとカンタンに割れた。中に入っている基板を見てください。2.5インチパッケージ全体の4割しか占有していません。SSD本体は驚くほど小さいです。
水色のサーマルコンパウンドでアルミ筐体にべったりと接触していて、2.5インチの筐体を使って熱を放出する仕組み。ここまでするとは…意外と発熱が大きいのかもしれません。
この小さいチップがDRAMキャッシュです。SK Hynix製のDDR3規格が搭載されていて、容量は256 MBです。
サーマルコンパウンドが付着していて見えにくいが、NANDフラッシュはインテル製の64層TLC NANDです。
中央に位置する正方形のチップが、SSDコントローラ。SMI(Silicon Motion Inc)製の「SM2259」。右下にインテルのロゴが刻印されているので、インテル向けのカスタムモデルですね。
従来モデルのIntel 540で採用されていた「SM2258」に、SRAM ECC機能など。エンドツーエンドなデータ保護機能を追加したのが主な違いです(→ SM2259の資料はこちら)。
というわけで、Intel 545sの中身はNANDフラッシュだけがインテル製で、他のDRAMキャッシュやSSDコントローラは他社製でした。利益率の追求を極めている、インテルらしい造りだと思います。
Intel 545sの性能を検証(ベンチマーク)
Crystal Disk Mark 6
国内だけでなく、国際的にも定番のSSDベンチマークである「Crystal Disk Mark 6」を使って、Intel 545sのシーケンシャル速度や、SSDの質が出やすいランダムアクセス速度を検証する。
性能に一貫性があるかどうかを確かめるため、複数のテストサイズも実行しておいた。
50 MB
まずは50 MBサイズでテストを実行。256 MBのキャッシュ内に収まるため、公称値どおりの結果が出て当然です。傾向としてはやや書き込み速度が遅いですが、当時としては速い部類でしょう。
1 GB
標準的な1 GBテストだと、ランダムリード(4KiB Q1T1)がやや速くなって約48 MB/sに。Samsung 860 EVOだともっと速いのですが、体感で気づくことはまず無いです。
4 GB
やや大きめの4 GBテスト。ランダムリードががっくりと落ち込みました。シーケンシャルの書き込み速度(Seq Q32T1)も410 MB/sにまで低下です。
16 GB
もっと大きい16 GBサイズでテスト。なぜかシーケンシャル書き込み速度が少し速くなって、ランダムアクセス速度(4KiB Q1T1)はもっと遅くなってしまった。
32 GB
CDMでテストできる最大サイズ32 GBでは、16 GBテスト時とほとんど同じ結果になりました。
過去レビューしてきたSATA SSDたちと比較をまとめました。Samsung 860 EVOのような飛び抜けたスピードは無く、ごく標準的な速度を実現していることが分かります。
AS SSD Benchmark 2.0
非圧縮データをテストに用いる「AS SSD Benchmark」もチェック。SATA SSDとして問題のないスピードですが、アクセスタイムは少し遅めでした。
AS SSD Benchmark 2.0
1000点台のスコアは過去のレビューと比較すると、それなりに標準的です。
ATTO Disk Benchmark
様々なテストサイズで一括テストができるATTO Disk Benchmark。SSDの良し悪しが分かりやすいソフトです。
速度の立ち上がりは少し遅く、64 KBサイズでトップスピードに到達します。その後のスピードは非常に安定しており好印象です。
比較してみると、Intel 545sの動作はそれほど悪いものではなく、おおむね互角の水準を保っています。256 B以降は全く同じスピードでした。
しかし書き込み速度では、やはり世代の違いが見て取れます。Intel 545sは860 EVOやBarracuda SSDに対して、ワンランク劣った書き込み速度を示した。
HD Tune Pro
約3500円するシェアウェアのストレージベンチマークです。ディスク全体に渡って書き込みを実行するテストがあるので、キャッシュの挙動(=下駄の履かされ具合)を確認しやすい。
読み込み速度
読み込み速度は上下に50 MB/sのブレがあります。アクセスタイムにもバラツキが見られ、平均タイムは0.103 ミリ秒でした。実用上は困らないけれど、やや遅めと言えます。
書き込み速度
書き込み速度はキャッシュが効いている状態で380 MB/s前後。キャッシュが切れると260 MB/sくらいに落ち込みます。アクセスタイムは0.036 ミリ秒で問題なし。
やっぱり64層の垂直NANDフラッシュは凄いですね。キャッシュが切れても書き込み速度はかなりの水準を維持してみせました。
ゲームのローディング時間
ロード時間 | Intel 545s | 860 EVO | BarraCuda SSD | 比較 |
---|---|---|---|---|
シーン#1 | 1.646 秒 | 1.837 秒 | 2.292 秒 | -10.4% |
シーン#2 | 2.145 秒 | 2.351 秒 | 2.818 秒 | -8.8% |
シーン#3 | 1.725 秒 | 1.945 秒 | 2.263 秒 | -11.3% |
シーン#4 | 2.483 秒 | 2.528 秒 | 3.221 秒 | -1.8% |
シーン#5 | 4.427 秒 | 4.815 秒 | 5.864 秒 | -8.1% |
シーン#6 | 0.94 秒 | 1.003 秒 | 1.098 秒 | -6.3% |
合計 | 13.369 秒 | 14.479 秒 | 17.558 秒 | -7.7% |
FF14:紅蓮のリベレーターのベンチマークを使って、各セクションごとにロード時間を計測した。結果はIntel 545sが860 EVOを約8%も出し抜くことに。
Intel 760pを検証した時も似た傾向があったので、SSDコントローラや搭載されているファームウェアが、読み込み速度を重視して処理する仕様になっているのかもしれません。
Premiere Proでプレビューの「コマ落ち」を検証
Premiere Proのプレビューは、素材を保存しているストレージのスループットに非常に影響されやすいため、高解像度のファイルをプレビューさせて「コマ落ちの頻度」を見ることでSSDを評価できます。
コマ落ちの頻度はPremiere Proの「コマ落ちインジケータ」という標準機能を使い、5回計測して平均を取りました。総フレーム数に対するコマ落ち枚数が少ないほど優秀なSSDです。
ドロップ率 | Intel 545s 256GB | Intel 760p 256GB | 970 EVO Plus 250GB |
---|---|---|---|
6K @238MB/s | 79.70% | 77.14% | 75.11% |
5K @136MB/s | 35.21% | 31.08% | 30.72% |
5K @115MB/s | 25.39% | 20.59% | 21.47% |
5K @72MB/s | 0.00% | 0.00% | 0.00% |
4K @38MB/s | 0.00% | 0.00% | 0.00% |
最近始めた検証方法なのでまだデータが少なく、やむを得ずNVMe SSDと比較データを表にまとめた。
Intel 760pと比較すると、1秒あたりの転送量が115~136 MB/sの素材でコマ落ち頻度が13~23%も増加しています。100 MB/s以下ならコマ落ちはゼロなので、フルHD編集なら特に不便はしない。
SSDの動作温度を確認
ベンチマーク時のセンサー温度を計測
負荷の大きいCrystal Disk Mark 6の32 GBサイズテスト実行時に、SSDのセンサー温度を計測した。
センサー経由の温度は、最大で68℃でした。それほど熱いわけではないのですが、過去のレビューを見るとSATA SSDにしては妙に熱い方です。
高くても50℃くらいが良いところなので、70℃近い温度はかなり高い。しかもNANDフラッシュの温度であって、SSDコントローラの温度ではありません。
サーモグラフィーで表面温度を確認
中央のSSDコントローラをサーモグラフィーカメラで撮影。最大で73℃に達しており、やっぱりコントローラの発熱はSATAとしてはトップクラスに高温です。
NANDフラッシュの表面温度は55℃くらい。こちらもSATAにしては妙に高い。最近のSATA SSDなら40℃くらいです。
つまり、フラッシュとコントローラに「サーマルコンパウンド」(水色の粘着性のある物体)を貼ってあるのは、決して飾りではなく必要性があってのこと。
おそらく通常はアルミ筐体に入れたまま使うし、PCケース内部にエアフローがある前提ですので、分解せずにそのまま使えば温度はあと5℃くらいは低い水準に落ち着きます。
まとめ:格安ならIntel 545sは「全然アリ!」
最近はSSDが全体的に値下がり気味であり、500 GBや1 TBモデルでは「860 EVO」や「MX500」といった高品質なSSDまでもが手頃な価格で買えてしまう。
だが250 GBモデルならIntel 545sの5000円という価格は非常に強力で、選別落ちした低品質フラッシュを使っている中華系の激安SSDを買うくらいなら、Intel 545sの方が遥かに魅力的。
「Intel 545s」の良いところ
- メジャーブランド品にしては「安い」
- 860 EVOにあと一歩の耐久性能
- サーマルコンパウンドとアルミ筐体で熱対策済み
- 優れたコストパフォーマンス
- インテル製NANDフラッシュの安心感
魅力は「コスパの高さ」とインテル製に裏付けられる「高い信頼性」の両立に尽きる。逆に言えば、今の低価格を保てなくなったら選ぶ理由がなくなってしまいます。
「Intel 545s」の微妙なとこ
- SATA SSDとしては発熱がやや大きい
- 書き込み速度がやや遅い
- ランダムアクセス速度も遅い
2017年のSSDなので、最新のSATA SSDと比較して速度が遅いのは仕方がないですね。そもそも低価格帯のSSDを選ぶユーザーは、多少の性能の低さには目をつむります。
低予算な自作PCに使うシステムドライブ用に、Intel 545sは適任です。ぼくがIntel 545sを買った理由も、小学生の従姉妹に組む予定の「中古パーツ自作PC」に使うためですし。
以上「Intel 545sを実機レビュー:あらためて試すインテル製SSDの実力」でした。
インテル製のコスパに優れたNVMe SSD「Intel 760p」のレビューはこちらより。Intel 545sと同レベルの高い耐久性能と、妙に速いランダムリード速度が強みです。
依然としてSATA SSDで最強の位置づけられる「Samsung 860 EVO」のレビューはこちら。予算に余裕があるなら、860 EVOの500 GBや1 TB版を買うと幸せです。
いつも記事楽しみにさせてもらっています。
最近、SSDの価格競争が激化していて、どれがいいんだろうと悩んでる人も
多いと思うので(私もその一人ですが)、
売れ筋の廉価系のレビューももっと拝見したいです。
よかったらお願いいたします。
少し書く場所が違うと思うんですが質問していいでしょうか。
今私のPCにCドライブ(SSD)とDドライブ(HDD)があります。
そしてm.2SSDを増設したところDドライブ(HDD)を認識しなくなりました。
色々試行錯誤したらHDDのSATAの指すところを2番から4番にすると認識するようになりました。
これは何かの仕様で認識しないんですかね?
それともSATAの2番が不良品、もしくはバグってるのでしょうか。
もしそういう仕様だったり、良くあることなら対処法などを教えてくださると幸いです。
マザーボードによって、M.2とSATAが「排他仕様」になっている場合があります。
よくあるのは「M.2スロットを使うと、SATAが2本使えなくなる」など。公式サイトのスペック表にも記載されていることが多いので、確認してみてください。
返信ありがとうございます。
そういう仕様があるのは知っていましたが、急に認識しなくなったので焦って頭が回りませんでした。
確認したところ丁度指していたところが無効になると書いてありました。
理由が分かりスッキリしました。
本当にありがとうございます。
SM2259の資料はこちら
のリンク先がlocalhostになっていませんか?
ホントだ。自分が落としたPDFにリンクを貼っていますね…正しいリンクに修正しました。