最近、SSDの価格を見ていると「Intel 760p」の値下がりがスゴイです。256 GBモデルは約6600円から購入できる。あまりに安いので、ついポチってしまった。
というわけで、格安SSD並に安いIntel製NVMe SSDの実力を検証してみます。めちゃくちゃ安いけど果たして大丈夫なモノでしょうか?
Intel 760pの仕様とスペック
「Intel 760p」は2018年1月に、インテルがエントリー向けNVMe SSD「Intel SSD 750」の後継モデルとして投入したSSDです。低価格でインテル製のNVMe SSDを購入できる選択肢ですね。
スペック | Intel 760p | ||||
---|---|---|---|---|---|
容量 | 128 GB | 256 GB | 512 GB | 1 TB | 2 TB |
フォームファクタ | M.2 2280(片面実装) | M.2 2280(両面実装) | |||
インターフェイス | PCIe 3.0 x4 | ||||
コントローラ | Silicon Motion Inc SM2262Intel向けの特注モデル | ||||
NANDフラッシュ | Intel製64層 3D TLC NAND | ||||
DRAMキャッシュ | DDR3 | ||||
256 MB | 512 MB | 1024 MB | 不明 | ||
読み込みシーケンシャル | 1640 MB/s | 3210 MB/s | 3230 MB/s | 不明 | |
書き込みシーケンシャル | 650 MB/s | 1315 MB/s | 1625 MB/s | 不明 | |
読み込みランダムアクセス | 105000 IOPS | 205000 IOPS | 340000 IOPS | 不明 | |
書き込みランダムアクセス | 160000 IOPS | 265000 IOPS | 275000 IOPS | 不明 | |
消費電力アイドル時 | 25 mW | ||||
保証 | 5年 | ||||
TBW書き込み耐性 | 72 TBW | 144 TBW | 288 TBW | 576 TBW | 1152 TBW |
MSRP希望小売価格 | $ 72.99 | $ 108.99 | $ 198.99 | 不明 | |
参考価格価格コム調べ | 5589 円 | 6680 円 | 12829 円 | 23927 円 | 46676 円 |
GB単価 | 43.7 円 | 26.1 円 | 25.1 円 | 23.4 円 | 22.8 円 |
Intelはデータセンター向けのハイエンドモデルや、Optane SSDシリーズでは基本的に自社製のコンポーネントで揃えるメーカーですが、コンシューマ向けSSDでは意外と他社製のコンポーネントを使います。
Intel 760pでは、SSDコントローラにSilicon Motion製の特注モデルを採用しており、DRAMキャッシュもIntel製ではなく他のメーカー(詳細は不明)から仕入れたモノを使っているようです。
読み込みは最大で3200 MB/sに達し、書き込みは最大で1600 MB/sオーバーですが、キャッシュが剥がれるとどうなるかは記載されていません。ただ、安い割には高性能なのは間違いない。
耐久性能はやや少ないが価格に対して妥当
SSDの耐久性能を示す「TBW」を、他社のTLC NAND採用のNVMe SSDと比較してみた。最近のSSDはだいたい500 GB版で300 TBWが主流で、Intel 760pは288 TBWとちょっと少なめです。
非常に安い値段を考えると、妥当どころか耐久性能あたりのコストパフォーマンスはかなり良い部類なので、全く問題ではありません。コスパ良く耐久性に優れたNVMe SSDですよコレは。
Intel 760pのスペックまとめ
- それなりに速そうな読み書き速度
- コスパの良い耐久性能
- NVMe SSDの中ではトップクラスのコスパ
- 5年保証
価格がとても安い今なら、コストパフォーマンスがとにかく優秀なNVMe SSDです。
Intel 760pを開封レビュー
Intelらしいシンプルなパッケージング
最近のIntelはシンプルな背景に、デカイ英字フォントを「バーンッ」と配置するだけのシンプルなデザインを採用中。Intel SSDシリーズも同じようなデザインで仕上がっています。
背面は一面インテルブルー。白いフォントで「M.2 2280片面」「5年保証」「PCIe 3.0 x4」など、接続インターフェイスについて記載がありました。
スライドして引き出すと、茶色のダンボールで挟まれたIntel 760p本体と、保証書兼マニュアルが入っています。付属品はこれだけで、他には何もありませんでした。
基板コンポーネントをチェック
Intel 760pのスペックはSamsungのように全てを記載しているわけではないので、これから実際にIntel 760pに実装されているコンポーネント類を目視でチェックしていく。
貼ってあるデザインシールはとてもシンプル。データセンター級の評価という「Rated DC」の文字が目を引く。左下には「シールを剥がすと保証無効」という注意書きもあります。
というわけで剥がします(5年保証は消えた)。NANDフラッシュ、DRAMキャッシュ、そしてSSDコントローラが整然と設置されている。
NANDフラッシュはスペック通り、インテル製です。64層の垂直NANDフラッシュなので、キャッシュが無い状態でも高い書き込み速度を期待できます。それにしても…Micronと似ているのでビックリ。
今更思い出したけれど、IntelのNANDフラッシュはMicronと協業しているわけですから、NANDフラッシュが似ているのは当たり前でしたね。
DRAMキャッシュはNanya製のDDR3規格。容量は512 MBです。海外レビューではMicron製のDRAMキャッシュを搭載しているモノもあったが、低容量モデルだとNanya製なのかもしれない。
SSDコントローラはSMI(Silicon Motion Inc)製「SM2262」。Intel 600pで採用されていたSM2260をベースに作られた、第2世代のコンシューマ向けコントローラです。
Silicon Motionはサイコロのようなロゴマークが印象的だったので、「SMI」とだけ書かれたデザインには驚いた。インテル向けの製品ですから、インテルに配慮した結果ですね。
コンポーネントは片面実装。M.2 2280スロットのあるマザーボードなら、問題なく取付可能です。
Intel 760pの性能を検証(ベンチマーク)
Crystal Disk Mark 6
国内だけでなく、国際的にも定番のSSDベンチマークである「Crystal Disk Mark 6」を使って、Intel 760pのシーケンシャル速度や、SSDの質が出やすいランダムアクセス速度を検証する。
性能に一貫性があるかどうかを確かめるため、複数のテストサイズも実行しておいた。
50 MB
50 MBサイズはCDMで検証できる最も小さいテストサイズ。キャッシュに収まる大きさなので、大抵のSSDがここでトップスピードを記録する傾向ですが、Intel 760pはそれほど速くない。
読み込み、書き込みともに公称値にすら届いていない。逆に小さすぎて処理が上手く行かない、という性質のあるコントローラなのかも。
1 GB
標準的な1 GBサイズでテストすると、読み込み速度が一気に改善して公称値どおりの結果に。書き込みは遅いままで、やはり公称値には届かない。
それにしても驚くのは、4KiB(Q1T1)の読み込み速度です。約60 MB/sはTLC NANDのSSDにしては非常に速い。
4 GB
やや大きい4 GBサイズになると、更に書き込み速度が低下したが、ランダム読み込み速度は依然としてトップクラスの水準です。
16 GB
もっと大きい16 GBサイズをテストすると、書き込み速度がやや改善。読み込み速度はそれほど変わらず、同じスピードを維持しています。
32 GB
もっとも大きい32 GBサイズでテストすると、シーケンシャル読み込み速度が急落。書き込み速度はそれほど変わらず、ランダム速度もそこそこのスピードを維持した。
現行トップスピードを走る970 EVO Plusと比較すると、やはり全体的に劣る結果になりました。
AS SSD Benchmark 2.0
非圧縮データをテストに用いる「AS SSD Benchmark」もチェック。読み込み速度はおおむね同じ水準で、アクセスタイムがやや速い。書き込み速度は完全に負けてしまいました。
AS SSD Benchmark 2.0
書き込み速度で大きく追い抜かされ、スコアは2736点に。
ATTO Disk Benchmark
様々なテストサイズで一括テストができるATTO Disk Benchmark。SSDの良し悪しが分かりやすいソフトです。
32 KBサイズでおおむねトップスピードに到達。読み込み速度は128 KBをピークに少しずつ低下していくのが特徴的です。書き込み速度は全体を通して4~5割ほど遅い。
比較をグラフにまとめると、読み込み速度はやはり全体的に遅く、スピードが一貫していないことが分かります。Silicon Motionの安価なコンシューマ向けコントローラですし、仕方のないところです。
書き込み速度も970 EVOと比較すると全体的に遅く、サイズが大きくなると速度低下も発生した。
HD Tune Pro
約3500円するシェアウェアのストレージベンチマークです。ディスク全体に渡って書き込みを実行するテストがあるので、キャッシュの挙動(=下駄の履かされ具合)を確認しやすい。
読み込み速度
読み込み速度は特に問題なく安定している方ですが、アクセスタイムはバラツキがひどく、平均アクセスタイムは0.141ミリ秒に達しました。
書き込み速度
書き込み速度はキャッシュを剥がすと平均280 MB/sにまで落ち込んだ。64層の垂直NANDフラッシュとしては、妥当なスピードを叩き出しています。
ゲームのローディング時間
ロード時間 | Intel 760p256 GB | 970 EVO Plus250 GB | 970 EVO250 GB | 比較 |
---|---|---|---|---|
シーン#1 | 1.454 秒 | 1.376 秒 | 1.991 秒 | 5.7% |
シーン#2 | 1.801 秒 | 1.843 秒 | 2.086 秒 | -2.3% |
シーン#3 | 1.491 秒 | 1.546 秒 | 1.679 秒 | -3.6% |
シーン#4 | 2.026 秒 | 2.062 秒 | 2.147 秒 | -1.7% |
シーン#5 | 3.585 秒 | 3.967 秒 | 4.092 秒 | -9.6% |
シーン#6 | 0.803 秒 | 0.881 秒 | 0.92 秒 | -8.9% |
合計 | 11.16 秒 | 11.676 秒 | 12.916 秒 | -4.4% |
FF14:紅蓮のリベレーターのベンチマークを使って、各セクションごとにロード時間を計測した。結果は驚くべきもので、970 EVO Plusを更に4.4%も超えるロード時間を達成です。
0.5秒しか変わらないので体感はほとんど出来ませんが、トップクラスに速いランダム読み込み速度が現れた結果だと推測できます。
Premiere Proでプレビューの「コマ落ち」を検証
Premiere Proに4K~6Kの高解像度ファイルを入れて、フル画質でプレビューを実行。コマ落ちインジケータを使い、ドロップしたフレーム数を計測する。計測は5回行って平均を取ります。
ドロップ率 | Intel 760p 256GB | 970 EVO Plus 250GB | 970 EVO 250GB |
---|---|---|---|
6K @238MB/s | 77.14% | 75.11% | 76.69% |
5K @136MB/s | 31.08% | 30.72% | 32.10% |
5K @115MB/s | 20.59% | 21.47% | 19.90% |
5K @72MB/s | 0.00% | 0.00% | 0.00% |
4K @38MB/s | 0.00% | 0.00% | 0.00% |
TLC NANDのNVMe SSDとして、ごく標準的なコマ落ち具合でした。これ以上コマ落ちを防ぐためには、Optane SSDのようにもっと速いランダム読込速度が必要ですね。
SSDの動作温度を確認
ベンチマーク時のセンサー温度を計測
負荷の大きいCrystal Disk Mark 6の32 GBサイズテスト実行時に、SSDのセンサー温度を計測した。
Intel 760pが表示する温度は「NANDフラッシュ」なので、やや低めの温度が出ています。最大で74℃なので、運用上の問題は特に無い。
書き込み速度が派手に揺れ動いているように見えますが、これはキャッシュの挙動でした。さて、サムスン製ならコントローラ温度を表示するのですが、Intel 760pはそうではない。
どうやってコントローラ温度を確認するかですが、サーモグラフィーカメラを使って直接コントローラを撮影すればOKです。
SSD自体の発熱をサーモグラフィーで見る
NANDフラッシュはサーモグラフィーで計測すると73℃前後。センサー経由で提供されている温度情報と一致しており、NANDフラッシュは間違いなく70度くらいになっています。
一方のコントローラは最大で98℃を計測した。ヒートシンクを付けていない状況なら、SSDコントローラはだいたい90℃を軽く超えます。だから別にめずらしいことではない。
とはいっても…以前レビューした「Samsung 970 EVO Plus」は90℃を少し超えるくらいので温度だったので、それと比較するとIntel 760pのコントローラ発熱は激しい方です。
扇風機でエアフローを与えると一気に10℃くらい下がったので、Intel 760pを使う場合はPCケース内に必ずエアフローを用意しましょう。可能であればM.2ヒートシンクも装備したい。
まとめ:Intel 760pはコスパ抜群のNVMe SSD
ここ最近、Intel 760pは値下がりが進行していて、256 GB以上ならGB単価は22~26円です。競合するNVMe SSDの中では(今のところ)トップクラスに安いです。
これだけ安いにも関わらずNVMe SSDとして問題ないシーケンシャル速度を実現し、ランダムアクセス速度においては他社のハイエンドモデルに対して互角のレベルを提供しています。
「Intel 760p」の良いところ
- NVMe SSDとして問題ない性能
- 競合に負けないランダムアクセス速度
- 安いのに耐久性能はとても高い
- 抜群のコストパフォーマンス
ただただコストパフォーマンスがスゴイ。安くて高性能なNVMe SSDをお探しなら、これほど適任なSSDは他にほとんど無い状況と言っていい。
「Intel 760p」の微妙なとこ
- サムスンに負けず「発熱」は派手です
- シーケンシャル速度はやや一貫性に欠く
- 書き込み速度がやや遅い
SSDコントローラは何も対策しなければ簡単に100℃近い高熱になります。サーマルスロットリングはほとんど観測できなかったが、念のためM.2ヒートシンクやエアフローで冷やしたいところ。
次に微妙なところは、競合する他社のNVMe SSDと比較すると書き込み速度はまぁまぁ…遅いです。最高の性能には程遠いですが、コストパフォーマンスを考慮すれば無視できます。
というわけで、Intel 760pは「コスパ最高のNVMe SSD」という評価で締めさせていだきます。手頃な価格でNVMe搭載の自作PCを組みたい方におすすめです。
以上「インテルの人気SSD「Intel 760p」を実機レビュー:屈指のコスパが魅力」でした。
SSDでお肉が焼けそうです…
しかし、値段的にも耐久性的にも、メイン機というよりサブ機に使う、もしくはお試しで使う感じの使い方が良さそうですね
個人的にNVMe SSDは有名どころであればなんでもいいやという感じです。
多分使い比べてもわからないと思うので…
TLC NANDだと積層化で書き込み速度を改善できますが、構造上どう頑張ってもランダムアクセス速度が改善されにくいので「どれを使っても同じ。」と言われればあんまり否定できないですね(苦笑)。
YouTube動画とともに、いつも参考にさせてもらっています。
760pはゲームのロードで地味にですがしっかり良い性能を出していて良さそうですね。
ページ真ん中あたりにあるAS SSD Benchmark 2.0の見出しすぐ下の画像比較のテーブルのテキストが両方とも970 EVOとなっていますので確認してみてください。
最後のほうにある「表示されている温度はNAND側であって、コントローラではありません。」という文ですが、INTELのことなのかSamsungのことなのかわかりにくく、読んでいて少し引っかかりました。
修正します。
温度は、Samsungが2箇所の温度を表示するようになっていて、普通のSSDならNAND側の温度しか表示しないようです。だから「SamsungのSSDは爆熱」という誤解が生まれやすいのかな…と。
「intelは実際に使った時のレスポンスを大事にしている」ってOptain memoryの記事に掻いてあったような…
ランダムアクセス速度が早いのもそういうことですかね
設計思想としてあり得ますが、使ってるフラッシュはTLC NANDなので限界はありますね…。
NVMe SSDはどれを使っても、発熱が派手なのは変わらないのでは?
発熱が激しくないNVMe SSDなんてあるんでしょうか?
わかりやすい記事ですね。
最近は自作PC系のブログの中で1番重宝しています。
個人的にはamazonで人気のIPSモニターの、実際の応答速度の比較の記事が見てみたいです。
メーカーのカタログスペックには辟易しているので。
モニター選びはいつも迷います。
先日[Acer ゲーミングモニター RG240Ybmiix 23.8インチ]を注文したのですが、選別落ちのパネルを使っているらしく、色ムラがひどかったので、2回注文して2回とも返品することになりました。
20000円以下の価格帯で、そこそこ(実用上の)応答性能が早いIPSモニターをご存知でしたらぜひ知りたいです。
左下には「シールを剥がすと保証無効」という注意書きもあります。
というわけで剥がします(5年保証は消えた)。
即落ち2コマで草
RATED DCは「データセンター級」ではなく後ろの3.3V 1.13Aまで含めて「定格 直流3.3V 1.13A」の意味だと思われます。