MINISFORUMが手掛けるコンパクトマシンに新製品「TL50」が登場。Tiger Lake搭載のレアなマシンかつ、インテルNUCキットより更に小さいです。
メーカーよりサンプルが届いたので、詳しくベンチマーク & レビューします。
MINISFORUM TL50のスペックと概要
MINISFORUM TL50 | |
---|---|
CPU | Core i5 1135G74コア8スレッド / 4.2 GHz |
クーラー | 小型シロッコファン |
グラボ | Iris Xe Graphics80コア / 1300 MHz |
メモリ | LPDDR4-3200 12GB |
SSD | 512 GB(NVMe) |
HDD | – |
ドライブ | なし |
電源 | 90 W(ACアダプター) |
無線LAN | Wi-Fi 6(802.11ax) |
OS | Windows 10 Pro 64bit |
保証 | 2年間(修理 / 交換 / 返金など) |
参考価格 | 69000 ~ 73000 円 |
深センの小型パソコン専門メーカー「MINISFORUM」の新製品「TL50(Tiger Lake 50)」のスペックをまとめました。
今回はRyzenではなく、インテルの第11世代Tiger Lakeを搭載した小型マシンです。Ryzenモデルより更に厚みが薄く、コンパクト化を推し進めた点が大きな改善点。
ただし、販売方法は以前と同じく「Makuake(※クラウドファンディング)」です。
貴重なTiger Lake搭載のコンパクトPC
インテルCPU搭載の小型PCといえば、インテル純正のNUCキットが有名。しかしTiger Lakeを搭載したNUCキットは恐ろしく価格が高いです(※スペックを揃えた11TNHi5で約12万円)。
Tiger Lakeが欲しいけど冷却に難がありそうなノートパソコンはいらないし、かと言って海外で購入できるTiger Lake NUCキットは価格が強気すぎて手を出せないし・・・。
つまり、マトモな価格でTiger Lakeが欲しい人にとって、今回レビューするMINISFORUM TL50はぴったりな選択肢です。
個人的にも、TL50はTiger Lake世代の実力を試しやすい貴重なサンプルとして興味深い製品だと思っています(※だからレビュー依頼を引き受けたわけでして)。
以前レビューした「Yoga Slim 750i Carbon(i7 1165G7)」だと、やはり薄型ノートパソコンゆえ冷却に限界があり、Tiger Lakeの実力を引き出せているかイマイチ不明瞭でした。
「MINISFORUM TL50」のデザインとパーツ構成
シンプルなパッケージ、必要十分な付属品
MINISFORUMのロゴが入ったシンプルな箱が届きました。中身を引っ張って取り出すタイプで、中は2段構造です。上の段にTL50本体、下の段に付属品がいろいろと入ってます。
- HDMIケーブル
- 電源ケーブル
- ACアダプター(65 W)
- 2.5インチマウントベイ
- SATAコネクタ
- VESAマウント変換セット
- 説明書
付属品は小型パソコンならではの内容。
PCモニターの裏側にパソコン本体を取り付けられる「VESAマウント変換セット」、小型ケース専用の3.5インチマウントベイと、コンパクトなSATAコネクタなどが付属します。
ACアダプターの出力はおよそ65 W(19 V / 3.42 A)です。搭載CPU「Core i5 1135 G7」のTDPは最大28 Wほど、65 Wあれば不足しません。
容量1.24リットルの超コンパクト筐体
本体サイズ(実測)は横幅が14.96 cm、奥行きが14.96 cm、高さ5.55 cmです。体積からリットル換算すると「約1.24 L」です。
シャーシ容量を比較
他のコンパクトPCと容量を比較すると、MINISFORUM TL50の1.24 Lは、LenovoのTinyシリーズに迫るコンパクトさを実現しています。小型ベアボーンの代表例DeskMiniのほぼ半分近い容量です。
MINISFORUM TL50の大きさを「ThinkCentre M75q Tiny Gen2」と並べて比較してみた。高さはM75q Tiny Gen2の方が低いですが、面積はTL50の方がずっとコンパクトです。
TL50の本体重量は「629 g」、ACアダプターが「247 g」で合計わずか「876 g」です。1 kgを完全に切っている圧倒的な軽さを実現しており、家の中はもちろん外出先にも持ち運びがかんたんです。
底面に滑り止め兼スペーサーのゴム足が4本取り付け済みです。中央にある2箇所の凹みは、VESAマウントに引っ掛けて固定するときに使います。
インテルらしい充実のインターフェイス
- 電源ボタン
- マイク出力(3.5 mm)
- イヤホン入力(3.5 mm)
- USB 3.0 Gen1
- USB 3.0 Gen1
- Thunderbolt 4
フロントパネルのインターフェイスです。最大5 Gbps対応のUSB 3.0 Gen1が2ポート、最大40 Gbps対応のThunderbolt 4を1ポート(8K@60 Hzの映像出力も可)備えます。
- USB 2.0
- USB 2.0
- USB 3.0 Gen1
- USB 3.0 Gen1
- LANポート(2.5G)
- LANポート(2.5G)
- HDMI(4K@60 Hz対応)
- Display Port(8K@60 Hz対応)
- セキュリティキーホール
- 電源コネクタ(ACアダプター専用)
バックパネルのインターフェイスも充実の内容です。映像出力はHDMIとDisplay Portの2つあり、HDMIは最大4K、DisplayPortは最大8Kまで対応します。
USBポートはUSB 3.0 Gen1(最大5 Gbps)を2ポート。オーディオインターフェースなど、USB 3.0で相性が出やすい機材の取り扱いに重宝するUSB 2.0が2ポートあります。
LANポートは最大2.5 Gbpsの帯域幅に対応。LANチップは「Intel I-225V」を2つ搭載しています。中身の基板を目視でチェックして確認しました。
サイドパネルは左右どちらも吸気用スリットです。
「MINISFORUM TL50」分解とパーツ増設
TL50はとてもかんたんに開封できます。底面パネルの四隅に4本あるネジを外すだけです。メンテナンス性に問題なし。
標準搭載のSSDは「Kingston A02」でした。PCIe 3.0 x4接続のNVMe SSDです。ヒートシンクとサーマルパッドがゴムで固定されてます。
WiFiカードはWi-Fi 6(最大2.4 Gbps)対応の「Intel AX200」チップを搭載。
CPUクーラーは100 mmファンを搭載した薄型ヒートシンクです。ノートパソコンよりずっと面積と厚みが大きく、ファンも巨大ですのでTiger Lake CPUの実力を試しやすいです。
Core i5 1135G7が中央に配置されてます。CPUのすぐそばに位置する2つの正方形チップが、LPDDR4メモリ(Micron製)です。はんだ付けなのでメモリの増設は不可能です。
SATA SSDの増設
MINISFORUM TL50は最大2台のSATA SSD(2.5インチ)を増設できます。
取り外したフタに、2台のSATA SSDをはめ込むスペースがあります。はめ込んだ上から、付属のSATA固定トレイをネジ止めしてフタにSSDを固定するギミックです。
付属のSATAケーブルを増設したいSATA SSDに挿し込みます。
フタにSATA SSDをはめ込んで、付属のSATA固定トレイをネジで固定します。写真では2点どめですが、4点どめでもOKです(※筆者がズボラなだけです)。
フタを閉じて、SSDに挿し込んだSATAケーブルをマザーボード側の小型SATAコネクタに挿し込みます。
取り外したフタを閉じたらSATA SSDの増設が完了です。従来モデルより取り付けがラクに改善されています。
「MINISFORUM TL50」の性能ベンチマーク
MINISFORUM TL50の性能をテストします。定番のベンチマークソフトはもちろん、実際にゲームをプレイした結果まで詳しく見てみましょう。
レンダリング / 3DCG系の性能
ベンチマーク | 結果 | 画像※クリックで画像拡大します |
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Cinebench R15シングルスレッド性能 | 203 cb速い | |
Cinebench R15マルチスレッド性能 | 921 cbやや遅い | |
Cinebench R20シングルスレッド性能 | 424 cbやや速い | |
Cinebench R20マルチスレッド性能 | 2104 cbやや遅い | |
Blenderレンダリング時間 | 7分23秒やや遅い |
Tiger Lake世代は今までの焼き直し版ではなく、きちんと新しい設計を採用したインテル最新のCPUです。シングルスレッド性能がそこそこ改善され、体感性能の向上を感じます。
一方で、シンプルにマルチコアを要求されるレンダリングや3DCG用だと、コア数の多いRyzen系に勝てません。インテルにはぜひ、Tiger Lake世代の6~8コアを出して欲しいです。
動画エンコード
動画エンコードは無料ソフト「Handbrake」を使って検証します。容量が約1 GBのフルHDアニメを「Fast 480p30(x264)」と「H.265 MKV 480p30(x265)」プリセットでエンコード。
動画エンコード※クリックで画像拡大します | |
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x264 | x265 |
平均67.04 fps | 平均33.09 fps |
Core i5 1135G7(4コア8スレッド)はモバイル向けCPUにしては、割と速い動画エンコード性能です。
動画エンコードの処理速度(x264)
過去ちもろぐでレビューしたゲーミングPCと比較したグラフです。
Core i5 1135G7はモバイル向けCPUですが、デスクトップ向けの4コアCPUとほぼ同じ性能を実現しています。しかし6コアや8コアRyzenを相手にすると厳しいです。
Microsoft Officeの性能 | |
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Edge(ブラウザ) | 9323 |
PowerPoint(プレゼン作成) | 10462 |
Excel(表計算) | 11386 |
Word(文書作成) | 6694 |
総合スコア | 9285 |
PCMark 10 Professional Editionを使って、オフィスワークの代表例「Microsoft Office」の処理速度をチェックします。
総合スコアは9285点。PCMark 10の開発元によると、4500点が快適に感じる目安ですので、2倍の9000点を超えるMINISFORUM TL50のオフィス処理性能はとても快適です。
写真編集(Photoshop)
Adobe Photoshop CC「写真編集」の性能をベンチマーク | |
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総合スコア | 779.6/1000 |
一般処理のスコア | 64.5 /100 |
フィルタ系のスコア | 80.8 /100 |
Photomergeのスコア | 99.2 /100 |
GPUスコア | 71.3 /100 |
マシン | MINISFORUM TL50 |
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CPU | Core i5 1135G7 |
GPU | Xe Graphics 80EU |
RAM | 12GB |
総合スコア | 779.6 |
一般処理のスコア | 64.5 |
フィルタ系のスコア | 80.8 |
Photomergeのスコア | 99.2 |
GPUスコア | 71.3 |
テストの詳細結果 | |
RAW画像の展開 | 4.64 |
500MBへのリサイズ | 2.86 |
回転 | 2.07 |
自動選択 | 13.06 |
マスク | 3.56 |
バケツ | 1.77 |
グラデーション | 0.56 |
塗りつぶし | 20.93 |
PSD保存 | 16.58 |
PSD展開 | 3.16 |
Camera Raw フィルタ | 8.3 |
レンズ補正フィルター | 20.26 |
ノイズ除去 | 20.37 |
スマートシャーペン | 29.88 |
フィールドぼかし | 20.95 |
チルトシフトぼかし | 16.81 |
虹彩絞りぼかし | 18.01 |
広角補正フィルター | 17.39 |
ゆがみツール(Liquify) | 9.58 |
Photomerge(2200万画素) | 78.2 |
Photomerge(4500万画素) | 109.67 |
※「Puget Systems Adobe Photoshop CC Benchmark」を使用しました。
写真編集は「Photoshop CC」で処理速度をテスト。Puget Systems社が配布しているベンチマーク用のバッチファイル※を使い、実際にPhotoshopを動かして性能をスコア化します。
総合スコアは「779.6 点」です。
Tiger Lake世代はコア数がイマイチな一方、シンプルに速いのでPhotoshopのようなソフトだと意外とハイスコアを叩き出せます。Zen2世代のRyzen 5を軽く上回るPhotoshop性能です。
ビデオチャット(VC)の処理速度
PCMark 10の「Video Conference(ビデオ会議)」モードを使って、ビデオチャットの快適さをテストしました。
PCMark 10でテスト | |
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総合スコア | 77245000点以上ならOK |
ビデオチャットの快適度 | 28.65 /30.00 fps |
結果は7724点で、5000点以上を余裕でクリア。複数人とビデオチャットを同時に行った場合の、映像のスムーズさ(フレームレート)はほぼ30 fpsで、上限の30 fpsに迫ります。ビデオ通話は余裕で動きます。
軽いゲームなら意外とプレイ可能
Core i5 1135G7の内蔵グラフィックス「Xe Graphics 80EU」は、1万円台のローエンドGPU(GT 1030など)を超えるゲーミング性能を発揮します。
3DMarkのベンチマークスコアを比較すると、Xe Graphics 80EUはGT 1030を少し上回るスコアです。ライバルのRyzenに搭載されてる内蔵GPUをおおむね抑えており、現行トップクラスの内蔵GPUです。
設定を落としたPUBGやVALORANTが普通に動いてしまうし、比較的動作の軽いマインクラフトや原神も余裕でプレイできます。
ストレージの性能と搭載パーツ
ストレージ | 詳細 | ベンチマーク |
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SSD |
標準搭載のSSDは「Kingston OM8PCP3512F-A02」です。青色の基板に、PhisonコントローラとKingston刻印のNANDメモリを搭載しています。国内大手BTOの安価なゲーミングBTOでも、割とよく見かけるタイプのNVMe SSDですね。
定番のCrystal Disk Markでテストすると、読み込みが1727 MB/s、書き込みは985 MB/sでした。NVMe SSDとしてはそれほど速くないですが、SATA SSDの2~3倍のスピードです。
特にランダム書き込み性能は290 MB/sとなかなかにぶっ飛んだ数値を叩き出してます。
「MINISFORUM TL50」の温度と騒音
動作温度をチェック
CPUに100%の負荷がかかるCGレンダリング中に、CPU温度を計測しました。
Core i5 1135G7は最大で94℃(平均78℃)です。最初の数秒だけ大幅なブーストクロックが掛かったあと、ブーストが解除されて70 ~ 80℃まで温度が下がります。
クロック周波数のグラフです。数秒間だけ3.8 GHzで動作して、ブーストクロックが解除されたあとは3.3 GHz前後で動作します。
Tiger Lake世代はインテルの10 nmプロセスで製造されていますが、結果を見る限り高クロック動作に苦戦している様子です。デスクトップ向けにTiger Lakeが出てこない理由が分かった気がします。
静音性能を騒音計で検証
校正済みのデジタル騒音メーターを使って、Elite Mini X400の動作音(騒音レベル)を計測します。ケースパネルを閉じて、見下ろすような角度で50 cmの距離をとって計測を行いました。
- PC起動前:31.6 dBA(極めて静か)
- アイドル時:32.9 dBA(静か)
- CPUベンチ:36.2 dBA(やや静か)
それぞれの中央値をまとめました。過去のレビューと比較したデータは以下です。
動作音の比較(ゲーム中)
騒音値(dBA) | 評価 | 目安 |
---|---|---|
30 ~ 32.49 | 極めて静か | 耳を近づければ聞こえるレベル |
32.5 ~ 34.9 | 静か | ファンが回っているのが分かる |
35 ~ 39.9 | やや静か | 扇風機を「小」で回したくらい |
40 ~ 42.49 | 普通 | エアコンよりは静かな音 |
42.5 ~ 44.99 | やや騒音 | エアコンの動作音に近い |
45 ~ 50 | 騒がしい | 扇風機を「中~大」で回した音 |
50 ~ | うるさい・・・ | 換気扇を全力で回した音 |
MINISFORUM TL50の冷却ファンは、小型ファンらしく温度の変化に敏感で音がよく変化します。
アイドル時の動作音はわずか32 ~ 33 dBでほとんど気にならないです。ゲーミング時の動作音も思ったより静かで、36 ~ 38 dBの範囲に収まります。小型PCとしてそこそこ静かなマシンです。
「MINISFORUM TL50」レビューまとめ
- 容量1.24リットルの超小型
- SSDを2台まで増設できます
- メンテナンス性OK
- 全体的に動作音が静か
- 最強クラスの内蔵GPU
- 恐ろしく速い体感性能
- インターフェイスが多い
- Windows 10 Proをプリイン
- 保証期間は「2年」
- インテルNUCより安い
- カスタマイズは一切不可
- メモリを増設できない
- 現在ラインナップは1種類のみ
- M.2スロットは1つだけ
- Tiger Lakeは温度が高い
- (今のところ)入手方法はクラファン限定
使ってみた第一印象は「割となんでもできる超コンパクトマシン」です。
欲をいうと6コアや8コアが欲しいですが、Tiger Lake世代はきちんとIPCが改善された新設計のCPUであり、4コア8スレッドでも動作はとてもサクッとしてます。
内蔵グラフィックス「Iris Xe Graphics」はRadeon Vegaを凌ぐ性能で、原神をはじめとした大抵のライトゲームを60 fpsで動作できる点も美味しいです。
Thunderbolt 4やUSB 3.0 Gen1、デュアル2.5G LANポート、Wi-Fi 6対応など。小型PCで重要なインターフェイスも豊富な内容です。特にThunderbolt 4ポートはTiger Lakeならではのメリット。
一方、デメリットはカスタマイズ性の乏しさです。SATA SSDを2台まで増設できますが、個人的にメモリを12 GBから増設できないのは惜しいです。
入手方法はクラファン(Makuake)限定。早期購入特典なら6.9~7.3 万円で買えます。海外で販売されているほぼ同じスペックのインテルNUC(11TNHi5)だと約10万円です。コスパは普通に優秀です。
以上「MINISFORUM TL50レビュー:レアなTiger Lake搭載コンパクトPC」でした。
i5 1135搭載で7万円くらいのノートPCをデルとかHPとかレノボが出してますけど
そこからディスプレイ、バッテリー、キーボード、マウス(タッチパッド)を抜いたのに同じ値段なのは不思議。
何に追加コスト入ってるんだろう
仕入れで大手に勝てるわけがないんだよなぁ…
このコンパクトPCにはこのPCだからこその良さがあるんだってはっきりわかんだね。
性能でコスパを求めるならBTOに行って、どうぞ。よろしくぅ~!
小型シロッコファンはどこに付いているんですか?
ちょっと無関係な話ですが、Intel自家製11世代NUCのHDMIは2.0なのに、LG製C1シリーズのOLEDテレビに4K 120Hzの出力ができる報告があるらしいです。
(引用元(中国語のみ):https://www.chiphell.com/thread-2324811-1-1.html)
ただし、全ての4K 120Hzテレビ/モニターに対応するわけではありません。