第2世代のAMD Ryzenが解禁され、同時に新チップセット「X470」を搭載したマザーボードも登場。で…このX470は、従来のRyzen向けチップセットだった「X370」と比較して何が違うのか。リーク情報しか無かった1~2ヶ月前と比べて、より正確な情報が出揃ったので改めて解説しておきます。
実は大差ない「X470」と「X370」
チップセット | X470 | X370 |
---|---|---|
ロゴ | ||
オーバークロック | 可能 | 可能 |
PCIe構成 | x16 | x16 |
x8 + x8 | x8 + x8 | |
マルチGPU | SLI | SLI |
CrossFire | CrossFire | |
SATA | 6本 | 6本 |
NVMe 2本 | NVMe 2本 | |
SATA Express | 2本 | 2本 |
PCI Express | x8 Gen2 | x8 Gen2 |
※ x4 NVMeがない場合、x2 Gen3を追加 | ||
SATA RAID構成 | RAID 0 | RAID 0 |
RAID 1 | RAID 1 | |
RAID 10 | RAID 10 | |
USB 3.1 Gen2 | 2個 | 2個 |
USB 3.1 Gen1 | 10個 | 10個 |
USB 2.0 | 6個 | 6個 |
StoreMI | バンドル | なし |
その他 | TDP 105Wに最適化 | TDP 95Wを前提の設計 |
X470とX370のスペック表をまとめた。オーバークロック可否、PCI Expressの対応構成、SATAの本数、USBポートの数など。基本的な部分では全くと言っていいほど、変化はありません。
最も大きな違いは表の下の方で強調している「StoreMI」機能をバンドルしているかどうかと、第2世代Ryzenの「Ryzen 7 2700X」が持つ105WのTDPを前提に設計されているかどうかの2点です。
「StoreMI」とは
Enmotus社が提供している「FuzeDrive for Ryzen」という、HDDを高速化するアクセラレータと全く同等の機能です。「StoreMI = FuzeDrive for Ryzen」という認識で構わない。
じゃあ、そのFuzeDriveが何なのかと言えば、Optane MemoryのAMD版にあたる。Optane Memoryは専用のNVMe SSDと普通のSATA HDDを組み合わせ、SSDをキャッシュとして利用することでHDDの読書速度を飛躍的に伸ばす技術。
FuzeDriveもこれと概ね同じ技術で、パフォーマンス面で若干Optane Memoryに劣っている部分があるものの、キャッシュとして使えるSSDが限定されていないという点が大きなメリット。
Intelの場合は「Optane Memory」が必須だが、AMDのFuzeDriveはSATA / NVMe SSDがあれば利用可能。しかも適用可能なドライブがシステムドライブ(C:)に限定されない※のも、Intelと違って太っ腹な部分。
※ 従来は「Intel SRT」を使えばデータドライブに適用可能だった。しかし、2018/04/13に正式にデータドライブへ適用できるようにバージョンアップを施したとのこと(パッチノートより)。
エディション | StoreMI | FuzeDrive Basic |
---|---|---|
利用可能なSSD容量 | 最大256GB | 最大128GB |
FuzeRAM容量 | 最大2GB | 最大2GB |
利用可能なHDD容量 | 無制限 | 最大10TB |
適用可能なドライブ | システムドライブ(C:) | |
データドライブ(D:以降) | ||
料金 | 「X470」にバンドル | 19.99ドル |
更に、X470に付属するStoreMIは、FuzeDriveのBasic版よりも高性能。約20ドルの料金が必要なBasic版よりも対応しているSSD容量が幅広く、使えるHDDに制限がないのは嬉しいかも。
TDP 105Wに最適化されたチップセット
第1世代のRyzenは最大95Wだったのが、第2世代は最大105Wになった。それに合わせて、X470は105Wに最適化された電力プロファイルになっているらしいが、具体的に性能へどれほどの影響があるかは不明。
なお、第2世代のRyzenは冷やせば冷やすほど高い性能を発揮する自動オーバークロック機能「XFR 2」と「Precision Boost 2」を搭載するが、これらの機能は従来のX370でも問題なく動いてくれる。
第2世代Ryzenを使うだけなら「X370」で構わない
というわけで、スペック的には大きく変わりません。単にRyzen 5 2600XやRyzen 7 2700Xを使って自作PCを組みたい…だけなら、あえてやや高額なX470を選ぶメリットは少ないと言える。
しかしこれには条件がある。
- 既にRyzenを持っていて、マザーボードのBIOSを自分で更新できること
- あるいはショップまで足を運んで、店員にBIOS更新をやってもらうこと
X370 / B350など、第1世代向けのチップセットでも問題なく第2世代のRyzenを使えますが、BIOSを更新する必要がある。既にRyzen(またはAMD FXなどSocket AM4を起動できる環境)を持っていなければ、自前でBIOS更新はできない。
通販でX370マザーボードを買うのはやめておいたほうが良い。BIOS更新済みかどうか確認できないし、今のところ(2018年5月)はZen+対応を謳う最新のX370 / B350マザーボードも登場していない。
これから初めてRyzenで自作する、という人がX370を選ぶ場合は必ずショップに足を運んだほうが良い。マザーボードの購入時にBIOS更新をやってくれるショップに行くのが確実です(PC 1sなど)。
田舎なので通販が…なら「X470」を
ぼくもですが、ド田舎に住んでいて、BIOS更新をやってくれるようなショップが近くに全然無いからAmazonで揃えたい。という人も当然いるかと思います。
もうそういう場合は諦めて、確実にRyzen 2000~が動く「X470」マザーボードを選んだほうが安全。「MSI X470 GAMING PLUS」や「ASRock X470 Master SLI」など、2万を切るX470マザボを使えばOKです。
かく言うぼくも、なんだかんだ言いつつ「ASRock X470 Master SLI」で組んでいますし…w
まとめ:コスパで選ぶなら「X370」
X470が登場した影響でX370が全体的に値下がり気味という事情もあり、ショップまで出向ける or 自分でBIOS更新が出来るという人は「X370」を選んだほうがコスパ的に良いですね。
逆にBIOS更新とかよく分からないし、現実的に行ける距離に親切なPCショップも無いよ…という人は「X470」を選んだほうが確実にRyzen 7 2700Xなど、最新のRyzenを動かせるでしょう。
以上「AMDの新チップセット「X470」と従来の「X370」の違い」についてカンタンに解説でした。
なお、記事の途中で紹介したX470 Master SLIを使って実際に自作した記事はこちら。「初Ryzen」という人にも分かりやすいように解説しているので、ぜひRyzenの世界に足を踏み入れてみては。
大量のデータに基づいた、性能比較についてはこちらの記事が詳しい。Ryzen 7にするか、Core i7にするか悩んでる人はこの記事を先に読んだほうが良い…かも。
AMDのCPU搭載のノートPCって良いのありますか?
ノートPCしか買えない環境なのでその系統も書いて下さるとうれしいです。
(図々しいお願いで申し訳ないです)
Ryzenだと僕なりのおすすめはLenovoのideapad 720Sですかね。
デフォルトで256GBのSSD、メモリは8GB乗せてありますし。
価格.comで探したほうが早いかもですよ。
ありがとうございます!
Optane Memoryは最近のアップデートでDドライブにも正式に適用できるようになりましたよ〜
CPU不要でBIOSアップデートが出来るUSB BIOS Flashback機能は最近の製品には搭載されて無いんですね。
数年前のASUS製品には付いてたんですけどねえ
Optane memoryってDドライブ以降にも対応したと聞きましたけど違いましたっけ
公式には対応していないですが、Intel Response Storage Technology(RST)を使えばデータドライブにも適用可能のようでした。
Intelのサポートを確認したところ、「対応した。」というパッチノートを見つけたので追記しました。
X470マザーボードは最低でも16000円かかってしまうのが難点。
それ故にB450の登場を待っていますが、噂では7月にならないと出ないとのこと。
どうしてここまで遅くなるのか…
そうなんですよね…。B450は遅くてもかまわないから、従来のチップセットでPinnacle Ridge正式対応のマザーボードを発売するなど、各MBベンダーに頑張って欲しいところです。
Raven Ridgeの時はそういう製品を出していたのですが。やっぱりB450が出るまでは出すなと、AMDに止められているのかもしれません。
“パフォーマンス面で若干Optane Memoryに劣っている部分がある”
StoreMIのoptainとのメリットとデメリットを教えてほしいです