ASUS Vivobook Pro 15 OLED(M6500)を知っていますか?
おそらく、DELLやHPのノートパソコンほど有名ではないですが、なんと11.9万円の安さで2880 x 1620(120 Hz)のOLEDパネルを搭載します。
旅行の宿泊先で映像美に優れたノートパソコンが欲しかったため、一番安い11.9万円モデルを自腹で購入。せっかくなのでレビュー記事を残しておきます。
(公開:2022/9/26 | 更新:2022/9/26)
ASUS Vivobook Pro 15 OLED(M6500)のスペック
Vivobook Pro 15 OLED(M6500シリーズ)のスペック表です。CPU、グラフィックボード、SSDの容量違いで3つのラインナップが用意されています。
- 【約12万円】
Ryzen 5 5600H / RTX 3050 / 512 GB(NVMe SSD) - 【約14万円】
Ryzen 7 5800H / RTX 3050 Ti / 512 GB(NVMe SSD) - 【約15万円】
Ryzen 7 5800H / RTX 3050 Ti / 1 TB(NVMe SSD)
スペック的には「Lenovo Legion 570(約14万円)」がRyzen 5 6600HとRTX 3050 Tiを搭載していて、性能あたりのコスパはLenovoに一歩負けています。
正直Legion 570を買うかどうか深刻に悩みましたが、普通のIPSパネルを買うより・・・、どうせなら高精細な2.8K OLED(120 Hz)パネルを搭載したVivobook Pro 15 OLEDの方がワクワクするのでLegionをやめました。
ノートパソコンは基本的にモバイルモニターを持ち運ばない限り、ノート付属のディスプレイを見続けます。メモリの増設のようにかんたんに交換もできず、割りと取り返しがつかないスペックです。
RTX 3050とRTX 3050 Tiの微妙な性能差よりも、主観的に差がハッキリ見えやすいディスプレイの表示品質にこだわった方が結果的にQOLが高いはず。
ASUS Vivobook Pro 15 OLED(M6500)レビュー
今回注文したのは「Ryzen 5 + RTX 3050(約12万円)」モデルです。ASUS Storeで注文して2日後に届きました。
画面:2.8K OLED(120 Hz)ディスプレイが超高画質
Vivobook Pro 15 OLED(M6500シリーズ)のディスプレイはSamsung Display製「OLED(有機EL)」パネルを搭載。型番は「ATNA56AC01-0」です。
15.6インチに2.8K(2880 x 1620)を詰め込んだ、ドット感の少ない高精細なディスプレイです。さらに120 Hz対応でヌルヌルと画面が動きます。
さっそくピクセル拡大図と、i1 Pro 2によるスペクトラム分析を見てみましょう。
ピクセル拡大図がクッキリ鮮明に映っています。ノングレア加工だと、りんかく線がぼんやりとしか映らないため、Vivobook Pro 15 OLEDは「グレア」だと分かります。
画面が真っ暗になると、周囲の明るい照明や背景がガッツリ映り込みます。一見するとデメリットしか無い仕様に思えますが、グレアの方が光の透過率が良く、色が美しく見えやすいです。
なお、RGBの配列はキレイに横並びです。三角形配列のOLEDパネルにありがちな、テキストフリンジ(文字にじみ)が起きる心配はありません。
スペクトラムは青色が一番鋭く出ており、緑色と赤色はほどほどの高さにとどまります。三色の山がそれぞれ互いにあまり混じらず、まるで量子ドットかのような形状です。
色域カバー率※クリックで拡大します | ||
---|---|---|
規格 | CIE1931 | CIE1976 |
sRGBもっとも一般的な色域 | 100% | 100% |
DCI P3シネマ向けの色域 | 100% | 100% |
Adobe RGBクリエイター向けの色域 | 97.2% | 99.2% |
量子ドットのようなスペクトラム特性に支えられ、表示できる色の広さ(色域カバー率)は非常に広いです。
もっとも一般的な「sRGB規格」で100%カバー、HDRコンテンツで重要なシネマ向けの規格「DCI P3」ですら100%を完璧にカバーしています。
量子ドット技術を使ったハイエンド液晶パネルすら上回る、驚異的な表示性能です。
OLEDパネルの性質上、「色ムラ(均一性)」はほとんど出ません。IPSパネルにありがちな、パネルの四隅に近い位置ほど暗くなる症状「IPSグロー」も当然発生しないです。
色ムラの平均値はわずか0.54%でした。
OLEDパネルだから視野角も広いです。角度がズレても色がほとんど変化しません。(参考:液晶パネルの違いを解説するよ)。
色の正確さ(発色の良さ)※クリックで画像拡大します | |
---|---|
グレースケール | カラー |
|
|
コントラスト比 | ガンマ |
|
|
Vivobook Pro 15 OLED(M6500)の色はとても正確です。ASUSは基本的に規格に準じた色設計を行う場合が非常に多く、今回のノートパソコンも例に漏れず規格を重視したプロファイルが適用されています。
sRGBに対して、グレーの正確さがΔE = 0.9で2.0未満、カラーの正確さがΔE = 2.16でほぼ2.0前後に一致します。キャリブレーションせず、そのままの色で問題なし。
OLEDパネルは完璧な黒色を表示できます。よって液晶パネルとはまったく比較にならないレベルの非常に高いコントラスト比が可能です。
発色の良さは正しくは「色の正確さ」と呼ばれ、規格どおりの色が出ているかどうかを「色差(ΔE)」という単位で表現します。ΔEが平均値で2.0以下なら「正確」です。
なお、プリインソフト「MyASUS」から、sRGB / DCI P3 / Display P3規格に合わせたプロファイルに切替可能です。
Windowsの明るさ調整(0~100%)を10%ずつズラしながら、画面の明るさ(輝度)を測定しました。結果はかなり幅広いです。
一番暗い状態(0%設定)で「5.3 cd/m2」、最大設定(100%設定)で「398.5 cd/m2」でした。設定値57%で目にちょうど良いとされる「120 cd/m2」に一致します。
なお、HDRモード時のみ明るさが600 cd/m²を超えます。Vivobook Pro 15 OLEDはDisplay HDR True Black 600認証を取得しているため、ピーク時に600 cd/m²以上に達しなければ違反です。
HDRを初めて見る人は「明るすぎる!」と感じるかもしれませんが、正しいHDRコンテンツを再現するのに必要な明るさです。
画面の明るさを25%ずつ変更しながら、オシロスコープを使ってフリッカーの有無を測定したグラフです。
ASUSいわく、公式ページでフリッカーを抑制する工夫を施しているとアピールしていますが、残念ながら明るさを問わず240 Hz(4.3ミリ秒)のPWMフリッカーが見られます。
240 Hzのフリッカーを人間の目で感じられるかどうかはけっこう微妙なラインで、気づかない人のほうが多いはずです。
たとえば、最近のスマートフォンも一定周期のフリッカーを発するOLEDパネルが使われていますが、大きな問題になった事例はあまり見つからないです。
Vivobook Pro 15 OLEDの応答速度120 Hz / オーバードライブ:なし | |
---|---|
平均値 | 0.53 ms |
最速値 | 0.28 ms |
最遅値 | 1.19 ms |
明るく | 0.62 ms |
暗く | 0.45 ms |
応答速度 | 0 | 50 | 100 | 150 | 200 | 255 |
---|---|---|---|---|---|---|
0 | – | 0.64 ms | 0.52 ms | 1.19 ms | 0.90 ms | 0.82 ms |
50 | 0.52 ms | – | 0.48 ms | 0.62 ms | 0.61 ms | 0.66 ms |
100 | 0.43 ms | 0.34 ms | – | 0.45 ms | 0.53 ms | 0.56 ms |
150 | 0.51 ms | 0.46 ms | 0.35 ms | – | 0.36 ms | 0.45 ms |
200 | 0.52 ms | 0.49 ms | 0.42 ms | 0.28 ms | – | 0.51 ms |
255 | 0.57 ms | 0.53 ms | 0.46 ms | 0.38 ms | 0.45 ms | – |
エラー率 | 0 | 50 | 100 | 150 | 200 | 255 |
---|---|---|---|---|---|---|
0 | – | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % |
50 | 0.0 % | – | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % |
100 | 0.0 % | 0.0 % | – | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % |
150 | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | – | 0.0 % | 0.0 % |
200 | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | – | 0.0 % |
255 | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | – |
↑こちらの記事で紹介している方法で、「モニターの応答速度」を測定します。
モニターのメーカー公称値はまったくアテにならないので、測定機材できちんと測らないと本当の応答速度は分かりません。
Vivobook Pro OLED 15の応答速度はさすがOLEDパネルとしか言えない、圧倒的な速さです。
120 Hz時で平均わずか0.53 ミリ秒で、ほぼ0ミリ秒に近い応答速度を記録します。残像感がとても少ない、キレのある映像を表示できます。
120~165 以上のゲーミングモニターと応答速度を比較しました。言うまでもなく・・・、最強クラスの応答速度です。OLEDパネルだからある意味当然の結果です。
Display HDR True Black 600による「超美麗なHDR」
OLEDパネルは構造上、画面の明るさを高くしづらい性質があります。よって画面の明るさを必要とする「HDRコンテンツ」との相性が悪く、液晶パネルと比較して再現性能で劣ってしまう場合が多いです。
しかし、Vivobook Pro 15 OLEDはピーク時に630 cd/m²を叩き出しつつ、限りなく0 cd/m²に近い完璧な黒色も両立します。
筆者は今まで4つのHDR規格(HDR 400 / 600 / 1000 / True Black 400の4つ)を実際に見て、レビューで評価もしています。そうした過去の経験に照らし合わせても、Vivobook Pro 15 OLEDのHDR映像は割りと衝撃的です。
もちろんHDR輝度の変化をテストしました。結果は白色領域が1~75%まで、615~630 cd/m²で、100%時に419 cd/m²まで下がります。
白色が画面全体の75%を占める状態ですら、輝度が600 cd/m²を超えています※。Display HDR 600相当の明るさを維持しています。他のOLEDパネルと比較すると性能差は歴然です。
※上記グラフに75%の測定ポイントは記載していないので、こちらに実測値を。75%時で614.5 cd/m²、90%時で590.3 cd/m²、100%時に418.8 cd/m²でした。
LG OLEDは100%時でわずか150 cd/m²、Samsung QD-OLEDですら100%時は260 cd/m²です。今回のVivobook Pro 15 OLEDは400 cd/m²を維持します。
他のHDR対応ゲーミングモニターと明るさを比較しました。400 cd/m²台はOLEDとしては驚異的な明るさでも、液晶パネルと比較するとまだまだ・・・。トップクラスは800 cd/m²以上です。
一方、コントラスト比はOLEDが圧倒的に有利です。黒色が0.001 cd/m²(ほぼ測定限界)、ピーク輝度が630.1 cd/m²で、HDRコントラスト比は630100:1となります。
黒と白の比較はあまり意味のないコントラスト比で、あくまでも理論値ですが、1ドット1ドットが独立して点灯できるOLEDパネルの場合は理論値ではなく「実際に見られる映像」です。
Vivobook Pro 15 OLEDでHDRコンテンツを見てみる
「Morocco 8K HDR」と、4K HDR対応の「天気の子(4K Ultra BD)」にて、Vivobook Pro 15 OLEDのHDR映像を見てみます。
メリハリの効いた、うっとりするようなHDR映像です。黒い部分はしっかりと黒く、明るいシーンはハッキリと明るく、液晶パネルのHDR 600モニターにありがちな光漏れ(ハロー)もほぼ見られません。
1ドット1ドットが独立点灯できる性質ゆえに、花火や星空のようなごく一部だけが光るシーンが相手でも、光漏れやにじみを一切起こさないまま630 cd/m²近い明るさをピンポイントで叩き出します。
75%の広さまで600 cd/m²以上を維持できるおかげで、OLEDテレビで感じやすい「おっと今、明るさが下がったな・・・」など、OLEDあるあるな症状も非常に分かりづらいです。
端的に言ってすばらしい画質です。主観的な評価だとHDR 1000 > Vivobook Pro 15 OLED(True Black 600) > HDR 600 > HDR 400の順番です。
Vivobook Pro 15 OLEDを買った最大の理由である「2.8Kで120 HzのOLEDディスプレイ」は、期待以上の画質を出してくれて満足です。
なおOLEDパネルには「焼き付きリスク」がついて回りますが、デスクトップ画面を8時間つけっぱなしにしても、目視で分かるほどの焼き付きはまったく発生しませんでした。
実際に8時間もつけっぱなしにするシーンはほとんど無いため、焼き付きが大きな問題になるのは遠い未来の話になりそうです。
CPU性能:省エネな6コア12スレッド「Ryzen 5 5600H」
- 電源モード:バランス(初期設定)
- MyASUS:変更しない(初期設定)
プリインソフト「MyASUS」から冷却モードを3段階で変更できます。今回はデフォルト設定(2段階)を使用して、各ベンチマークをテストします。
CPUの定番ベンチマーク「Cinebench R23」の比較です。
Ryzen 5 5600Hの性能はCore i5 11400FとRyzen 5 5600Xの真ん中くらいに位置します。TDP(消費電力)が45~54 Wに制限されているため、2倍以上の消費電力を持つデスクトップ版と同じ性能は無理です。
サクサクとした体感性能に影響が大きいシングルスレッド性能の比較です。
最新のデスクトップCPUと比較すると見劣りする性能ですが、Core i9 10900Kと同等のシングル性能を確保しています。体感性能はそこそこにサクッとしていて、不便を感じません。
ベンチマーク | 結果 | 画像※クリックで画像拡大します |
---|---|---|
Cinebench R15シングルスレッド性能 | 225 cbやや速い | |
Cinebench R15マルチスレッド性能 | 1548 cb普通 | |
Cinebench R23シングルスレッド性能 | 1362 cb普通 | |
Cinebench R23マルチスレッド性能 | 9168 cb普通 |
レンダリング系のベンチマーク結果まとめです。
動画エンコードは無料ソフト「Handbrake 1.42」を使って検証します。容量が約1 GBのフルHDアニメを「Fast 480p30(x264)」「Fast 1080p30(x264)」プリセットでエンコード。
Ryzen 5 5600Hの動画エンコード性能は、Core i5 11400FとCore i5 12400のちょうど中間に位置します。
デスクトップ版と比較するとTDP(消費電力)が制限されている都合上、どうしても出せる性能に限界がありますが、薄型ノートパソコンとしては十分です。
おそらく、世の中に大量に出回っているであろう業務用の支給品よりかは、Vivobook Pro 15 OLEDの方がはるかに高性能なはず。
ベンチマーク | 結果 | 画像※クリックで画像拡大します |
---|---|---|
Fast 480p30軽い動画エンコード | 平均98.7 fps | |
Fast 1080p30重たい動画エンコード | 平均53.9 fps |
動画エンコードの結果まとめです。
Microsoft Officeのベンチマーク | |
---|---|
Edge | 10932 |
Word | 8146 |
Excel | 18530 |
PowerPoint | 11284 |
総合スコア | 11681 |
PCMark 10 Pro版を使って、オフィスワークの代表例「Microsoft Office」の処理速度をチェック。
Vivobook Pro 15 OLEDの結果は「11681点」です。PCMark 10公式の目安である4500点を大幅に超えています。
PCMark 10 Video Conference(ビデオ会議) | |
---|---|
総合スコア | 76485000点以上ならOK |
ビデオチャットの快適度 | 29.9 /30.00 fps |
PCMark 10の「Video Conference(ビデオ会議)」モードを使って、ビデオチャットの快適さをテストしました。
結果は7915点で、5000点以上を余裕でクリア。複数人とビデオチャットを同時に行った場合の、映像のスムーズさ(フレームレート)はほぼ30 fpsで、上限の30 fpsに迫ります。ビデオ通話も余裕です。
写真編集は「Photoshop CC」で処理速度をテスト。Puget Systems社が配布しているベンチマーク用のバッチファイルを使い、実際にPhotoshopを動かして性能をスコア化します。
Adobe Photoshop ベンチマーク | |
---|---|
総合スコア | 934.8/1000 |
一般処理のスコア | 83.7 |
フィルタ系のスコア | 96.2 |
Photomergeのスコア | 107.6 |
GPUスコア | 93.6 |
Vivobook Pro 15 OLEDのPhotoshopスコアは「934.8点」です。ほぼ1000点満点のうち9割を取れているスコアで、Photoshopの基本的なタスクをサクサクとこなせます。
上位モデルのRyzen 7 5800H(RTX 3050 Ti)モデルなら1000近いスコアも狙えそうですが、900点台あれば十分です。
ただし、ミラーレス一眼(Sony a7 IVなど)で撮影した高解像度な写真素材だとメモリの容量が不足するリスクはあります。プロ仕様の本格的な写真編集にVivobook Pro 15 OLEDは向いていないです。
ゲーム性能:原神が余裕で動く「RTX 3050 Laptop」
Vivobook Pro 15 OLEDのグラフィックボードは「RTX 3050 Laptop」または「Radeon RX Vega 7」です。ゲームプレイ時は基本的に「RTX 3050 Laptop」が優先的に動作します。
薄型ノートパソコンにあまり性能は期待していませんが、筆者の想像よりはゲームが動きます。「原神」は高設定(精度1.1)で平均50 fps前後で、解像度をフルHDに下げると60 fpsに張り付きます。
超高画質な120 Hz駆動のOLEDパネルでプレイする原神は満足度が高いです。
有名FPSタイトル「Apex Legends(中設定)」も動きます。2.8K解像度だと60 fpsを割ってしまいやや厳しいものの、フルHDなら平均60 fps前後でプレイ可能です。
半導体の進化をひしひしと感じられました。
定番ベンチマーク 「3DMark」 | ||
---|---|---|
設定 | スコア | 画像 |
FireStrike フルHDゲーミング向け | 10934 上位56% | |
TimeSpy かなり重たいゲーム向け | 4214 上位81% |
ゲーム性能をチェックする定番ベンチマークソフト「3DMark」でざっくり性能をスコア化します。
フルHDゲーム向けの「FireStrike」は10934点で、フルHDゲーミングなら平均60 fpsくらいでプレイ可能です。
重量級ゲーム向けの「TimeSpy」は約4200点と低く、重量級のゲームで60 fpsを維持するのは難しいですし、2.8K解像度のまま60 fpsで動かせるゲームも限られます。
「FireStrike」のスコアで他のグラフィックボードを比較してみた。
RTX 3050 Laptopの性能は、デスクトップ版のGTX 1650とGTX 1650 Superの中間です。RTX 3050の割に性能が低いと思うかもしれませんが、TGP(消費電力)はわずか39 Wに制限されています。
デスクトップ版のGTX 1650 Superは95~100 Wを消費し、GTX 1650ですら65~70 Wも消費します。
つまり、GTX 1650 Superと比較してたった40%の消費電力で、90%の性能を維持している計算です。めざましいワットパフォーマンスの進化です。
定番ベンチマーク 「FF14:暁月のフィナーレ」 | ||
---|---|---|
設定 | スコア | 画像 |
1920 x 1080 最高品質 | 18899 平均139 fps |
「FF14:暁月のフィナーレ」を最高品質でベンチマーク。フルHDは11140点(平均78 fps)で快適な動作です。設定を下げると100 fps以上も可能。
Apex Legends 射撃訓練場でテスト | |
---|---|
フルHD(中設定) | 平均66 fps |
2.8K(中設定) | 平均54 fps |
Apex Legendsは中設定で平均66 fps、2.8Kだと平均54 fpsです。
VALORANT マップ「フラクチャー」でテスト | |
---|---|
フルHD(最高設定) | 平均183 fps |
2.8K(最高設定) | 平均105 fps |
VALORANTOは最高設定で平均183 fps、余裕すぎる動作です。2.8Kでも平均100 fpsを維持します。
原神(Genshin Impact) マップ「スメール」でテスト | |
---|---|
フルHD(高設定) | 平均60 fps |
2.8K(高設定) | 平均46 fps |
原神(高設定1.1)はフルHDなら60 fps上限に張り付き、2.8Kだと45 fps前後でした。
マインクラフト(Java 1.18.1) 建築多めのテストマップでテスト | |
---|---|
SEUSシェーダー | Optifineのみ |
平均53 fps | 平均122 fps |
マインクラフト(Java版 / ver 1.18.1 / 描画距離16チャンク)は、Optifineだけを入れた状態で平均122 fps、SEUSシェーダーを入れると平均53 fpsとなんとか動きます。
熱処理:薄型シャーシの割によく冷えます
3DMark TimeSpy StressTestを使って、ノートパソコンに30分ほど負荷をかけました。CPU温度は平均69℃(最大86℃)で、グラボの温度が平均66℃(最大67℃)にとどまります。
重たいゲームを起動したままでも、RTX 3050 Laptopの温度が80℃や90℃に達しないのは驚きです。
30分後のキーボードの表面温度は、ホームポジション周辺が33~36℃でぬるいです。中央は40℃台ですが、不快になるほどの温度とは感じないです(※個人差あり)。
底面の通気孔から50℃近い熱風を吐き出します。ノートパソコンを膝においてゲーミング等、重たいタスクをこなすのは暑苦しいです。
背面にある左右の排気口から40℃の熱風を勢いよく放出しています。
動作音(騒音)をテスト (本体から50 cmの距離で測定) | ||
---|---|---|
シャットダウン (電源オフ時) | インターネット (Youtubeを表示) | ゲームプレイ中 (FF14:暁月ベンチ) |
31.2 dB | 32.1 dB | 42.5 dB |
校正済みのデジタル騒音メーターを使って「Vivobook Pro 15 OLED」の動作音(騒音レベル)を、シーン別に測定しました。それぞれの結果は中央値です。
動作音の比較(ゲーム中)
騒音値(dBA) | 評価 | 目安 |
---|---|---|
30 ~ 32.49 | 極めて静か | 耳を近づければ聞こえるレベル |
32.5 ~ 34.9 | 静か | ファンが回っているのが分かる |
35 ~ 39.9 | やや静か | 扇風機を「小」で回したくらい |
40 ~ 42.49 | 普通 | エアコンよりは静かな音 |
42.5 ~ 44.99 | やや騒音 | エアコンの動作音に近い |
45 ~ 50 | 騒がしい | 扇風機を「中~大」で回した音 |
50 ~ | うるさい・・・ | 換気扇を全力で回した音 |
Youtubeを見たり、オフィスソフトをカタカタするくらいの軽い作業だと、ほぼ無音に近い動作音です。
GPU支援が働く4K~8K動画の再生では、若干ファンが回って35 dB前後まで動作音が上昇しますが、まだまだ静かな範囲に収まっています。
ゲームプレイだとCPUとGPUどちらも温度が上昇して、2つある内蔵ファンが同時に回ります。温度に応じてファン回転数が上昇し続け、動作音は42.5 dBまで上昇。
ゲーム時の動作音は「普通(40~42.5 dB)」に分類されます。
デザイン:場所を選ばず使えるシックな色合い
サイズは15.6インチ、本体重量が1771 gでした。ACアダプターと電源ケーブル(437 g)とあわせて合計2208 gです。
クワイエットブルーのシックな色合いです。シャーシの素材はプラスチック製で、高級感は特に感じられません。
シャーシ表面の加工がマットで、指紋がやや付きにくいのが嬉しいです。
ヒンジの開口角度はほぼ180°です。
ディスプレイ上部にあるWebカメラは物理シャッターに対応。右にスライドするとシャッター(オレンジ色)が閉じて、Webカメラを物理的に封印します。
84キー日本語キーボードを搭載。7~8万円のLenovo IdeaPadより明らかにタイピングしやすく、タイプ音も静かです。テンキーもあって便利です。
Print Screenキーと電源ボタンの距離が離れており、うっかり自爆する心配もありません。
拡張性:底面の開封はかんたんですが拡張性皆無
Vivobook Pro 15 OLEDの分解はかんたんです。底面にある10本のトルクス(T6)ネジを取り外して引っ張るだけ。
トルクスドライバー(T6)と分解ベラが必要です。
開封すると、M.2スロットやKey.Eスロットにアクセスできます。DDR4メモリはオンボード(はんだ付け)されており、交換や増設ができません。
60 mm径の薄型シロッコファンでCPUとGPUの熱を排出します。
左右にあるゴム状の円盤は、Harman Kardon製スピーカーの低音ユニット(ウーファー)です。地面に向かって低音を放って得られる反響音を利用して、効率よく低音を稼ぐ工夫がされています。
Wi-FiモジュールはMediaTek製「MT7921」を搭載。802.11 ax(Wi-Fi 6)対応のモジュールで、Bluetooth 5.0接続も対応します。
M.2スロットは標準的なM.2 2280規格です。標準SSDの両面にペラペラの金属板が貼ってあり、底面シャーシとの接着面にサーマルパッドが挟まっています。
SSDの交換はリカバリメディアを事前に作成すれば可能です。
コネクタ:Wi-Fi 6対応でネットが速いがUSB 2.0は残念
左側のインターフェイスは「USB 2.0」が2つあるのみ。キーボードやマウスの接続に使います。
右側のインターフェイスは「3.5 mmオーディオ出力」「MicroSDカードスロット」「USB 3.2 Gen2 Type-C(最大10 Gbps)」「HDMI 2.0」「USB 3.2 Gen1(最大5 Gbps)」の5つです。
HDMI 2.0に「DELL G3223Q」を外部ディスプレイとして接続すると、「4K @120 Hz(YCbCr420)」で動作します。
MediaTek製「MT7921」のWi-Fi 6ネットワークは問題なく高性能です。
10G光回線につながったWi-Fi 6ルーターに5 GHz帯で接続して、OOKLA Speedtestを行うと下りが900 Mbps台、上りもほぼ900 Mbpsで快適そのもの。
原神のダウンロードでは平均80 MB/s(ピーク時に87 MB/s)を叩き出しており、ストレスフリーなネット環境です。
バッテリー持ち:省エネの権化Ryzenの割に持たない
電源モード「バランス」、画面の明るさを57%(ほぼ120 cd/m2)にて、PCMark 10のバッテリーテストを用いてVivobook Pro 15 OLEDのバッテリー時間を検証します。
バッテリー持続時間PCMark 10 Pro : Modern Office Battery Life | |
---|---|
バッテリー持続時間 | 7時間12分 |
結果は「7時間と12分(432分)」でした。Ryzenの割に持たない印象です。
バッテリー充電 | 充電スピード | 充電時間 |
---|---|---|
80%まで充電 | 60.5 W | 38分 |
100%まで充電 | 15.5 W | 122分 |
バッテリーの充電にかかった時間は、残量80%まで38分(平均60.5 W)、100%充電まで122分でした。
消費電力 (ACアダプター接続時) | ||
---|---|---|
アイドル時 (デスクトップ画面) | インターネット (Youtubeで4K HDR動画) | ゲームプレイ中 (FF14:暁月ベンチ) |
19~22 W | 45~52 W | 74~86 W |
ACアダプター接続時の消費電力は、アイドル時でおよそ20 W前後、Youtubeで4K HDR動画を再生すると50 W前後、ゲームプレイ時に80 W前後に達します。
なお、OLEDパネルの明るさを57%(約120 cd/m²)から100%(約400 cd/m²)まで引き上げても、消費電力は数Wしか変化しなかったです。
開封の儀:パッケージと付属品について
ASUS Storeで注文してから、およそ2日で普通の段ボールに入って届きました。
開封すると、ASUS Vivobookと英字フォントで書かれたおしゃれな茶箱が登場。持ち運びしやすい手提げも付いています。
見開き式のシンプルなパッケージです。ノートパソコン本体は不織布で出来た白い布で保護され、底面に付属品が収納されています。
- マニュアル(説明書)
- 広告冊子
- ノベルティグッズ
- ACアダプター
- 電源ケーブル
よく分からない広告冊子が多いですが、基本的な付属品は必要最低限の内容です。
スウェーデン出身のアーティスト「Letterboy」とコラボしたステッカーが付属します。ノートパソコンの天板に貼り付ける・・・の?
付属のACアダプターは重量437 g(ケーブル込み)で、最大出力が120 W(20 V x 6 A)です。
まとめ:惚れ惚れする高画質と程よいバランスの性能
「Vivobook Pro 15 OLED(M6500)」のデメリットと弱点
- OLEDパネルは焼き付きリスクあり
- ゲーム時の動作音は普通
- M.2スロットは1つだけ
- メモリの増設ができない(オンボード)
- フリッカーフリーではない(240 Hz)
- バッテリー持ちは普通
- ACアダプターが大きい
- 本体とアダプターで約2.2 kg
- 標準保証は1年のみ
- 唐突な値上がり(11.9万 → 15.9万)
「Vivobook Pro 15 OLED(M6500)」のメリットと強み
- 2.8K OLED(120 Hz)ディスプレイ
- Display HDR True Black 600認証
- 6コア12スレッドで必要十分な性能
- 原神やApexが動くゲーミング性能
- 無線LAN(Wi-Fi 6)がとても速い
- 不便なく打てるキーボード
- Harman Kardon製スピーカーの音質
- 冷却性能に目立った問題なし
- コストパフォーマンスが良い
- 納期が速い(1~2日)
「美しいディスプレイを備えたノートパソコンが欲しい。」という単純な目的のために、今回Vivobook Pro 15 OLEDを購入しました。結果は大正解です。
同価格帯のノートパソコンと比較すれば、値段の割にスペックが劣っていたり、拡張性がイマイチなどデメリットも相応に多いです。しかし、2.8K OLED(120 Hz)は本当に惚れ惚れする画質です。
良いお値段で、並の液晶パネルではまず不可能な高画質とほどほどの性能(Ryzen 5 + RTX 3050)が手に入ります。
以上「ASUS Vivobook Pro 15 OLEDレビュー:120HzのOLEDパネルが超高画質【M6500シリーズ】」でした。
ノートパソコンのレビューまとめ
【9/26時点】記事を書いている間に値段が大幅に上がりました。
定価だと、さすがに高く感じます・・・。
10月31日までSALEやっているみたいですね。
(5000~10000円ほど高くなっているようですが)
この記事をきっかけに買ったのですがあまりにも画質が違いすぎてしばらく感激してました。(笑)普段使っているIPSモニターがかわいく見えましたね。
普段使いにも旅先でも使い勝手がとてもよかったです。重さは及第点でしょうか。有機ELの良さが様々な方に伝わってほしいのでこの価格帯(SALE時)でのノートパソコンの種類が増えてくれると嬉しいです。
一番安いryzen5のモデル以外はほぼ据え置きでした。
ミスリード申し訳ありません。
こんにちは。同モデルの16xと迷ってるのですが、yacamochi さん的には15proのほうがおすすめな感じなのでしょうか
読みました。手間暇かけた素晴らしいレビューでした。
今ひとつ前のモデルのVivoBook Pro15 OLED(MC3500QC)を使っています。
レビューの最上位モデルとCPUは同じですが、
①OLEDの解像度が高く、②GPUが3050TIになって、③SSDが1TBに増量して、④指紋認証が付いて、⑤スピーカーがDOLBY ATOMS対応になって、⑥USB給電ができる、という凄い進化です。
ということで買いました。