お値段たった10978円で登場した「Ryzen 5 1600 AF」をレビュー & ベンチマークします。
約1.1万円でCore i3並の低価格でありながら、スペックは6コア12スレッドで一昔前のCore i5~i7クラス。驚異のコスパで売れに売れている大人気CPUの実力を確かめてみる。
Ryzen 5 1600 AFのスペックを解説
CPU | Ryzen 5 1600 AF | Ryzen 5 2600 | Core i3 9100F |
---|---|---|---|
ロゴ | |||
世代 | 2nd Zen+ | 2nd Zen+ | 9th Coffee Lake R |
プロセス | 12 nm | 12 nm | 14 nm++ |
TIMCPU内部の熱伝導材 | ソルダリング | ソルダリング | ソルダリング |
ソケット | Socket AM4 | Socket AM4 | LGA 1151 (v2) |
チップセット | AMD 300 / 400 | AMD 300 / 400 | Intel 300 |
コア数 | 6 | 6 | 4 |
スレッド数 | 12 | 12 | 4 |
ベースクロック | 3.20 GHz | 3.40 GHz | 3.60 GHz |
ブーストクロックシングルコア使用時 | ~ 3.60 GHz | ~ 3.90 GHz | 4.20 GHz |
ブーストクロック全コア使用時 | ~ 3.60 GHz | ~ 3.90 GHz | 4.00 GHz |
手動OC | 可能 | 可能 | 不可 |
L1 Cache | 576 KB | 576 KB | 256 KB |
L2 Cache | 3 MB | 3 MB | 1.0 MB |
L3 Cache | 16 MB | 16 MB | 6.0 MB |
対応メモリ | DDR4-2933 | DDR4-2933 | DDR4-2666 |
チャネル | x2 | x2 | x2 |
最大メモリ | 128 GB | 128 GB | 128 GB |
ECCメモリ | U-DIMMのみ | U-DIMMのみ | 不可 |
PCIeレーン | Gen3 | Gen3 | Gen3 |
16 + 4 | 16 + 4 | 16 | |
レーン構成 | 1×16 + 1×4 | 1×16 + 1×4 | 2×8 |
2×8 + 1×4 | 2×8 + 1×4 | 1×8 + 2×4 | |
– | – | – | |
内蔵GPU | なし | なし | なし |
GPUクロック | – | – | – |
TDP | 65 W | 65 W | 65 W |
MSRP | $ 85 | $ 159 | $ 122 |
参考価格国内Amazonの価格 | 10978 円 | 16980 円 | 9980 円 |
スゴイですね。
10978円という驚異的な安さで、6コア12スレッドを誇り、基本的なスペックはほとんどRyzen 5 2600と変わりません。ブーストクロックが300 MHz低いだけで、お値段は6000円も安い。
スペックと価格設定に文句はありません。1000円安いCore i3 9100Fのスペックを見てください・・・4コア4スレッドで、手動オーバークロックも不可です。
もちろん、スレッド数が全てだとは考えていません。しかし、1000円の差で物理コアが2個増えて、スレッドは3倍の12スレッドです。Core i3の立場は極めて苦しいと言わざるを得ないでしょう。
仕様の変更点:Ryzen 5 2600と何が違う?
Ryzen 5 1600 AFはRyzen 5 2600と、ほとんど同じCPUです。あえて仕様の変更点を挙げるなら2つあります。
- 製品名が「Ryzen 5 1600 AF」に
- ブーストクロックが300 MHz低い
ネーミングは一見すると1000番台で第1世代(Zen)と勘違いしそうになりますが、中身はちゃんと第2世代Ryzen(Zen+)が入ってるので安心してください。
2つとも並べてみた。Ryzen 5 1600 AFは刻印こそ「Ryzen 5 1600」ですが、型番をよく見ると「YD1600BBM6IAF」で、Ryzen 5 2600の型番は「YD2600BBM6IAF」です。
1600と2600だけ違っていて、他の型番はすべて一致します。
もうひとつの大きな違いはブーストクロックです。Ryzen 5 2600と比較して、Ryzen 5 1600 AFは3.9 GHz → 3.6 GHzへ、300 MHz低めに設定されています。
CPUはチップの品質によって安定して動作するクロック周波数が左右されるため、Ryzen 5 1600 AFはRyzen 5 2600ほど高クロックで動作できない低品質な個体と考えられます。
だからこそ、MSRPはわずか85ドル。日本国内で10978円という、6コア12スレッドとは思えない驚異的な安さを実現できたわけです。
BIOSの更新は必要?:Ryzen 5 2600に対応でOK
発売日的に、Ryzen 5 1600 AFは一応は新しいCPUに思えます。でも中身はRyzen 5 2600とほぼ同一です。マザーボードがRyzen 5 2600に対応しているなら、BIOSの更新をしなくても問題なく使用可能です。
2020年6月時点で市場に出回っているB450 / X570マザーボードなら、互換性は問題ないでしょう。
Ryzen 5 1600 AFのCPU性能:1.1万円なら文句なし
テスト環境
テスト環境「ちもろぐ専用ベンチ機」 | ||
---|---|---|
PC | ver.AMD | ver.Intel |
CPU | Ryzen 5 1600 AF | Core i3 9100F |
冷却 | 虎徹Mark II120 mm中型空冷クーラー | |
マザーボード | ASUS ROG STRIXX570-E GAMING | ASRockZ390 Phantom Gaming 6 |
メモリ | DDR4-2666 8GB x2使用モデル「G.Skill FlareX C14」 | |
グラボ | RTX 2080 Ti使用モデル「MSI Gaming X Trio」 | |
SSD | NVMe 250GB使用モデル「Samsung 970 EVO Plus」 | SATA 500GB使用モデル「Samsung 860 EVO」 |
SATA 2TB使用モデル「Micron 1100」 | ||
電源ユニットシステム全体 | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
電源ユニットCPUのみ | 850 W(80+ Gold)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
OS | Windows 10 Pro 64bit検証時のバージョンは「1909」 | |
ドライバ | NVIDIA 445.87 |
Ryzen 5 1600 AFの性能をベンチマークする、ちもろぐ専用ベンチ機のスペックです。比較に使うCPU以外は、ほぼすべて同じPCパーツで揃え、CPUの性能だけを比較検証できます。
メモリは容量8 GBを2枚で合計16 GB、メモリクロックはBTOパソコンで一般的なDDR4-2666です。
グラフィックボードはレビュー時点で最強性能の「RTX 2080 Ti」を使用しました。CPUのゲーミング性能を計測するのが目的なので、検証に使うグラフィックボードはなるべく高性能な方が良いです。
システムストレージはどちらもSSDで揃え、アプリケーションやベンチマークはSATA接続の2TB SSDから起動しています。おおむね、CPU本体の性能差をテストできるスペック環境です。
「Ryzen 5 1600 AF」と比較するCPUたち | |
---|---|
Ryzen 5 3500 | 第3世代Ryzen(6コア6スレ) |
Ryzen 5 2600 | Ryzen 5 1600 AFとほぼ同じスペック |
Core i5 9400F | Ryzen 5 2600と競合する6コアCPU |
Core i3 9100F | Ryzen 5 1600 AFより1000円安い4コアCPU |
今回、Ryzen 5 1600 AFと性能をバトってもらうCPUは以上の4つです。
1万円前後で価格が近いライバルが意外と少ないので、6000円ほど価格が高い「i5 9400F」「Ryzen 5 3500」を加えています。
レンダリング性能
「Cinebench R15」は日本国内だけでなく、国際的にもCPU用の定番ベンチマークソフトです。内容はレンダリングで、CPUが持っている理論上の性能がハッキリと反映されやすいです。
CPUのすべてのコアを100%使用した場合の性能を叩き出すため、理論上の目安になります。ただし、あくまでも目安であり、CPUの性能を代表するスコアではない点は注意してください。
Cinebench R15 / マルチスレッド性能
すべてのコアを使用した場合の「マルチスレッド性能」は、Ryzen 5 1600 AFが2位。トップはRyzen 5 2600。たった1.1万円で、1.6~1.7万円のCPUに匹敵するマルチスレッド性能です。
Cinebench R15 / シングルスレッド性能
1コアあたりの性能を示す「シングルスレッド性能」は、比較した5つの中でもっとも低いスコアに。やはり選別落ちのZen+世代は、シングルスレッドは遅いです。
Cinebench R15の後継バージョン「Cinebench R20」も検証しておきました。
Cinebench R20 / マルチスレッド性能
マルチスレッド性能はCinebench R15とおおむね同じ傾向。Ryzen 5 1600 AFはあと少しでRyzen 5 3500に追いつかれるところでした。
Cinebench R20 / シングルスレッド性能
シングルスレッド性能はやはり遅いです。
Cinebenchだけでなく、実際に「Blender」というレンダリングソフトを使って処理速度を計測。内容はスポーツカー「BMW」を生成するのにかかった時間で比較します。
Blender 2.79.7 / 「BMW」の生成時間
Ryzen 5 1600 AFは約5分20秒でクリア。Ryzen 5 2600より13秒ほど遅い記録で、ブーストクロックの差がきっちりと現れています。
計算速度
Geekbench 4.1はマルチプラットフォーム対応のベンチマークソフトです。内容は多種多様なテストのパッケージで、AESなど暗号処理系の計算速度が問われています。主にCPUの計算速度をスコア化することになります。
Geekbench 4.1 / シングルスレッド性能
シングルスレッドの計算速度は、第3世代Ryzen(Zen2)やインテルCPUの方がずっと得意です。第2世代RyzenのRyzen 5 1600 AFとRyzen 5 2600は、4000点台にとどまります。
Geekbench 4.1 / マルチスレッド性能
マルチスレッドの計算速度は、Cinebenchなどと同様、コア / スレッド数に比例します。Ryzen 5 1600 AFは、Ryzen 5 2600とほぼ同じスコアです。
動画エンコード
「動画エンコードにかかる時間」は、CPUの性能を知るうえで分かりやすい指標のひとつです。
まずは定番のフリー動画エンコードソフト「Handbrake」を使ってエンコード性能を検証します。約1 GBのフルHD動画(.mkv)を、Handbrakeの標準プリセットを使ってエンコードして、ログに表示される「平均処理速度」で性能比較します。
Handbrake / Fast 480p(x264)
さすが6コア12スレッド。選別落ちの第2世代Ryzenといえど、12スレッドですからマルチスレッドが効きやすい処理なら、かなり効率よく性能を発揮できます。
Handbrake / Fast 1080p(x264)
更に負荷が重たいフルHD → フルHDへのエンコードだと、更にマルチスレッド性能の差がハッキリと現れます。とても1.1万円の性能とは思えません。
Handbrake / Fast 480p(x265)
しかし、処理が複雑なH.265 MKVプリセットでエンコードすると、Zen+勢は苦戦を強いられます。12スレッドなのに、6スレッドのCPUに性能で劣ってしまうのです。
Handbrake / Fast 1080p(x265)
同じ設定のまま解像度だけをフルHDに変更すると、若干性能差は緩和されますが、Ryzen 5 3500のトップは変わりません。
- x264guiExをダウンロード(rigaya氏の公式サイト)
日本では大人気の動画編集ソフト「Aviutl」も検証します。rigaya氏が開発した拡張プラグイン「x264guiEx」と「x265guiEx」を使って、2400フレームの動画をエンコード。
Aviutl / x264guiExエンコード
x264guiExのテスト結果です。意外なことに、6スレッドのi5 9400FやRyzen 5 3500が10秒ほど速くエンコードを終えています。
Aviutl / x265guiExエンコード
x265guiExも傾向はほとんど同じです。
どうして12スレッドあるRyzen 5 1600 AFとRyzen 5 2600が、6スレッドのCPUに動画エンコードで劣ってしまう場合があるのか。理由は「設計の問題」です。
ザックリ言うと、第1~2世代のRyzenは動画エンコードの処理を半分ずつしか出来ないから効率が悪く、最新の第3世代ではきちんと100%ずつ処理できるように設計を改善して効率アップしてます。
専門的な話になるので、詳しく知りたい人は以下の解説もどうぞ。
動画エンコードソフトは「AVX2」と呼ばれる命令セットを使って、動画のエンコードを爆発的に高速化しています。
しかし第1~2世代Ryzenは、このAVX2という命令を半分ずつしか処理できません。毎回データを半分に切り分けて、幅が128 bitしかない細いベルトコンベアに乗せて処理しているので、非常に効率が悪いです。
だから従来のRyzenは、多くの動画エンコードソフトで本来の処理性能を発揮できないという弱点を抱えていました(※一部のソフトは、開発者が最適化することでRyzenでの高速処理を可能にしていた)。
この弱点を解消するべく、第3世代Ryzen(Zen2)ではAVX2を処理するために使うベルトコンベアの幅を2倍の256 bit幅に拡張し、一度に処理できるデータ量を2倍に改善。
インテルCPUと同様のベルトコンベアを装備したため、きちんとCPUのコア数に見合ったエンコード処理速度を発揮できるように進化しました。
動画編集
「Davinci Resolve」はフリー動画編集ソフトとして、Aviutlと並んで完成度の高いソフトです。カラーグレーディングやVFX合成などプロ仕様な機能に加え、PCスペックをフルに活用できる洗練された設計が大きな強み。
今回の検証ではPuget Systems社のベンチマークプリセットを使って、Davinci Resolve 16における動画編集のパフォーマンスを計測します。バッチ処理でDavinci Resolveを動かして、それぞれの処理にかかった時間からスコアを出す仕組みです。
Davinci Resolve / 4K動画編集
Davinci Resolveにおける4K動画編集は、コア数とスレッド数が多いほど処理性能がアップします。12スレッドあるRyzen 5 1600 AFは、6スレッドCPUより効率よくDavinci Resolveを動作可能です。
しかも値段は1.1万円。ほんとに値段不相応なコスパモンスターCPUですよ。
Davinci Resolve / 4K動画編集 | |||||
---|---|---|---|---|---|
テスト内容 | Ryzen 5 1600 AF | Ryzen 5 3500 | Ryzen 5 2600 | Core i5 9400F | Core i3 9100F |
Overall Score | 760/1000 | 684/1000 | 761/1000 | 697/1000 | 567/1000 |
Basic Grade | 60.3 | 54.3 | 62.7 | 51.3 | 37.6 |
OpenFXLens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 86.1 | 77.1 | 80.1 | 79.2 | 62.7 |
Temporal NRBetter 2 Frames | 85.2 | 73.2 | 86.1 | 77.8 | 65.5 |
3x Temporal NRBetter 2 Frames | 92 | 87.1 | 91.4 | 92 | 84.6 |
Optimized Media | 56.2 | 50.5 | 60.1 | 48 | 33.3 |
テスト内容 | Ryzen 5 1600 AF | Ryzen 5 3500 | Ryzen 5 2600 | Core i5 9400F | Core i3 9100F | 単位 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
4K | Overall Score | 760 | 684 | 761 | 697 | 567 | Score |
4K Test Average | Basic Grade | 60.3 | 54.3 | 62.7 | 51.3 | 37.6 | Score |
4K Test Average | OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 86.1 | 77.1 | 80.1 | 79.2 | 62.7 | Score |
4K Test Average | Temporal NR – Better 2 Frames | 85.2 | 73.2 | 86.1 | 77.8 | 65.5 | Score |
4K Test Average | 3x Temporal NR – Better 2 Frames | 92 | 87.1 | 91.4 | 92 | 84.6 | Score |
4K Test Average | Optimized Media | 56.2 | 50.5 | 60.1 | 48 | 33.3 | Score |
4K CinemaRAW Light | Codec Average | 77.8 | 67.7 | 80.9 | 68.9 | 58.1 | Score |
4K H264 150Mbps 8bit | 74.1 | 71.9 | 75.6 | 73.9 | 62.7 | Score | |
4K ProRes 422 | 77.9 | 73.4 | 80.3 | 76.6 | 63 | Score | |
4K ProRes 4444 | 73.6 | 63.8 | 67.7 | 63.7 | 49.9 | Score | |
4K RED | 76.4 | 65.4 | 75.9 | 65.1 | 50 | Score | |
4K CinemaRAW Light | Basic Grade | 25.62 | 23.74 | 27.58 | 22.98 | 17.11 | FPS |
OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 17.67 | 15.29 | 17.7 | 16.13 | 13.29 | FPS | |
Temporal NR – Better 2 Frames | 14 | 10.02 | 14.15 | 10.54 | 10.85 | FPS | |
3x Temporal NR – Better 2 Frames | 7.21 | 6.91 | 7.28 | 7.18 | 6.33 | FPS | |
Optimized Media | 50.72 | 47.75 | 58.98 | 44.54 | 28.2 | FPS | |
4K H264 150Mbps 8bit | Basic Grade | 31.56 | 27.82 | 29.79 | 26.52 | 19.14 | FPS |
OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 17.4 | 16.25 | 16.97 | 16.61 | 14.31 | FPS | |
Temporal NR – Better 2 Frames | 17.18 | 16.43 | 17.42 | 18.31 | 15.05 | FPS | |
3x Temporal NR – Better 2 Frames | 7.55 | 7.41 | 7.6 | 7.76 | 7.56 | FPS | |
Optimized Media | 30.09 | 35.28 | 38.03 | 33.22 | 24.71 | FPS | |
4K ProRes 422 | Basic Grade | 25.57 | 27.28 | 30.43 | 25.35 | 18.38 | FPS |
OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 17.62 | 16.43 | 17.62 | 17.62 | 13.63 | FPS | |
Temporal NR – Better 2 Frames | 18.06 | 16.43 | 18.07 | 18.77 | 15.37 | FPS | |
3x Temporal NR – Better 2 Frames | 7.76 | 7.48 | 7.76 | 7.89 | 7.76 | FPS | |
Optimized Media | 87.94 | 76.59 | 90.9 | 72.55 | 51.79 | FPS | |
Basic Grade | 16 | 14.16 | 16.59 | 12.94 | 9.71 | FPS | |
OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 14.02 | 11.94 | 8.59 | 11.55 | 8.75 | FPS | |
Temporal NR – Better 2 Frames | 12.13 | 10.17 | 12.34 | 9.96 | 7.52 | FPS | |
3x Temporal NR – Better 2 Frames | 7.25 | 6.78 | 6.94 | 7.48 | 6.62 | FPS | |
Optimized Media | 67.44 | 53.76 | 67.5 | 52.71 | 36.18 | FPS | |
4K RED | Basic Grade | 17.16 | 13.37 | 16.78 | 13 | 9.34 | FPS |
OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 11.62 | 10.3 | 11.81 | 10.29 | 7.43 | FPS | |
Temporal NR – Better 2 Frames | 10.69 | 9.5 | 10.85 | 9.43 | 7.4 | FPS | |
3x Temporal NR – Better 2 Frames | 6.04 | 5.4 | 6.01 | 5.59 | 4.84 | FPS | |
Optimized Media | 24.9 | 19.92 | 23.68 | 18.98 | 13.12 | FPS |
スコアの詳細をまとめました。Ryzen 5 1600 AFの総合スコアは760点(1000点満点)です。浮いた予算で、メモリやSSDの容量を増やせば、もっと快適なスコアを目指せます。
ゲーム実況配信
ゲーム配信ソフトで特に有名な「OBS(略:Open Broadcaster Software)」を使って、CPUの配信性能を検証します。
なお、あくまでもCPUの性能評価としてOBSを使うだけであって、現時点では「ゲーム配信するならNVEncが有利」です。Turing世代のNVEncは高画質かつ、ゲーム中のフレームレートの下落も少ないです。
では、CPUを使ったゲーム配信の性能を検証しましょう。
配信中のドロップフレーム率設定は「veryfast」で固定 | ||||
---|---|---|---|---|
上限 | CPU | レンダリングラグ | エンコードラグ | 平均fps |
144 fps | Ryzen 5 1600 AF | 0.0% | 2.9% | 87.1 fps |
Ryzen 5 3500 | 0.5% | 5.2% | 73.9 fps | |
Ryzen 5 2600 | 0.0% | 0.0% | 84.4 fps | |
Core i5 9400F | 0.0% | 32.1% | 101.0 fps | |
Core i3 9100F | 0.4% | 78.3% | 110.2 fps | |
60 fps | Ryzen 5 1600 AF | 0.0% | 0.0% | 56.3 fps |
Ryzen 5 3500 | 0.4% | 13.5% | 59.0 fps | |
Ryzen 5 2600 | 0.0% | 0.0% | 57.3 fps | |
Core i5 9400F | 0.0% | 10.7% | 57.3 fps | |
Core i3 9100F | 0.0% | 74.1% | 57.8 fps |
6コア12スレッドのおかげで、「veryfast」設定ならほとんどコマ落ちせずに録画配信ができます。
圧縮と解凍
ファイルの圧縮と解凍のスピードを、有名なフリー解凍ソフト「7-Zip」を使って計測。付属のベンチマークツールで、圧縮と解凍のスピードを「MIPS」という単位で分かりやすく表示してくれます。
7-Zip Benchmark / 圧縮
Ryzen 5 1600 AFは12スレッドなのに、6スレッドのRyzen 5 3500に追いつかれそうな状況です。動画エンコードと同じく、「圧縮」も第1~2世代Ryzenにとって苦手な処理です。
7-Zip Benchmark / 解凍
「解凍」は従来のRyzenから得意な処理で、きちんとマルチスレッド性能に比例したスコアが出ます。
ブラウザの処理速度
ブラウザ上で動作するベンチマーク「mozilla kraken 1.1」を使って、CPUがブラウザ上のWebアプリをどれだけ速く処理できるかを検証する。単位はミリ秒なので、短いほど処理が速いです。
Mozilla Kraken 1.1 / ブラウザの処理速度
基本的にシングルスレッド性能に比例して速くなるテストなので、シングルスレッド性能が遅いRyzen 5 1600 AFは1000ミリ秒台にとどまります。
Photoshop CC
写真編集の定番ソフト「Photoshop CC」を検証。バッチファイルを使って実際にPhotoshopを動かして、それぞれの処理に掛かった時間からスコアを算出します。
Photoshop CC / 総合的な処理性能
Photoshopはマルチスレッドよりも、シングルスレッド性能が効きやすいソフトです。よって12スレッドあってもシングルが遅いRyzen 5 1600 AFは、比較した5つのCPUでもっともPhotoshopの処理が遅い・・・。
CPU | Ryzen 5 1600 AF | Ryzen 5 3500 | Ryzen 5 2600 | Core i5 9400F | Core i3 9100F |
---|---|---|---|---|---|
総合スコア | 673/1000 | 791/1000 | 700.4/1000 | 748.6/1000 | 711.4/1000 |
一般処理のスコア | 60.7 | 71.9 | 63.5 | 69 | 66.2 |
フィルタ系のスコア | 71.1 | 81 | 74 | 78 | 72.2 |
GPUスコア | 73.3 | 81.9 | 75.2 | 80.1 | 73.8 |
Photomergeのスコア | 72.9 | 89.7 | 75.2 | 80.3 | 78.9 |
スコアをまとめました。見ての通り、Core i3 9100Fにすら劣る結果です。Photoshopをよく使うなら、Ryzen 5 1600 AFではなく第3世代Ryzenを選んだほうが後悔しないと思います。
CPU | Ryzen 5 1600 AF | Ryzen 5 3500 | Ryzen 5 2600 | Core i5 9400F | Core i3 9100F |
---|---|---|---|---|---|
総合スコア | 673/1000 | 791/1000 | 700.4/1000 | 748.6/1000 | 711.4/1000 |
一般処理のスコア | 60.7 | 71.9 | 63.5 | 69 | 66.2 |
フィルタ系のスコア | 71.1 | 81 | 74 | 78 | 72.2 |
GPUスコア | 73.3 | 81.9 | 75.2 | 80.1 | 73.8 |
Photomergeのスコア | 72.9 | 89.7 | 75.2 | 80.3 | 78.9 |
テストの詳細結果(単位:秒) | |||||
RAW画像の展開 | 1.73 | 1.16 | 1.46 | 1.39 | 1.33 |
500MBへのリサイズ | 1.39 | 1.28 | 1.39 | 1.32 | 1.34 |
回転 | 1.34 | 1.04 | 1.32 | 1.11 | 1.28 |
自動選択 | 17.33 | 15 | 16.68 | 15.46 | 15.2 |
マスク | 5.29 | 4.79 | 5.12 | 3.83 | 3.95 |
バケツ | 2.67 | 2.4 | 2.59 | 2.45 | 2.42 |
グラデーション | 0.44 | 0.4 | 0.43 | 0.46 | 0.61 |
塗りつぶし | 7.34 | 6.02 | 6.85 | 7.49 | 8.49 |
PSD保存 | 8.31 | 7.48 | 8 | 7.35 | 7.48 |
PSD展開 | 3.85 | 3.31 | 3.69 | 3 | 2.96 |
Camera Raw フィルタ | 6.7 | 5.92 | 6.41 | 6.28 | 7.12 |
レンズ補正フィルター | 18.9 | 16.21 | 17.72 | 16.49 | 16.01 |
ノイズ除去 | 22.41 | 20.63 | 21.24 | 24.3 | 27.31 |
スマートシャーペン | 26.54 | 22.78 | 25.14 | 24.06 | 28.71 |
フィールドぼかし | 17.43 | 15.14 | 16.87 | 15.48 | 16.37 |
チルトシフトぼかし | 17.65 | 15.36 | 16.84 | 15.85 | 17.34 |
虹彩絞りぼかし | 18.98 | 17.92 | 18.83 | 17.57 | 19.72 |
広角補正フィルター | 22.48 | 18.77 | 21.95 | 20.12 | 20.99 |
ゆがみツール(Liquify) | 4.85 | 4.2 | 4.69 | 4.07 | 4.33 |
Photomerge(2200万画素) | 93.99 | 75.97 | 90.93 | 84.65 | 86.11 |
Photomerge(4500万画素) | 129.14 | 105.56 | 125.46 | 117.98 | 120.23 |
※「Puget Systems Adobe Photoshop CC Benchmark」を使用しました。
Microsoft Office
PCMark 8を使って、Microsoft Officeの処理速度を計測します。オフィスソフトはマルチスレッドよりシングルスレッド依存のタスクになるため、基本的に第3世代RyzenやインテルCPUが有利です。
Microsoft Word / 平均処理時間
Wordの処理速度は、ほぼほぼシングルスレッド性能で決まっています。Ryzen 5 1600 AFは1秒オーバーで、他のCPUよりも0.2秒ほど遅い結果に。
Microsoft Excel / 平均処理時間
Excelの処理速度は、シングルスレッドとほどほどのマルチスレッド性能が求められます。Ryzen 5 1600 AFは、この中では一番Excelの処理が遅いです(※0.15秒の差を体感できるかは別)。
Microsoft PowerPoint / 平均処理時間
PowerPointは、Ryzen 5 3500がトップです。Ryzen 5 1600 AFはやはり最下位でした。
Microsoft Office系は、全体的にシングルスレッド性能が効きやすいソフトなので、Ryzen 5 1600 AFは12スレッドある割には上手く性能を発揮できません。
ビデオチャット(VC)の処理性能
コロナウイルスの流行によって、テレワーク(在宅勤務)の導入が進んでいます。ビデオ会議に使われるビデオチャット(VC)ソフトも出番が増えてきたため、「ビデオチャットの性能」を検証します。
検証方法は「PCMark 10」のビデオチャットテストを使います。内容はビデオチャットを再生したときのフレームレート、顔認識の処理速度、エンコード(アバター着用など)の処理速度などが含まれ、総合スコアを算出できます。
PCMark 10 / ビデオチャットの総合スコア
ビデオチャットの総合的な性能は、Ryzen 5 2600とほぼ横並びです。顔認識が特にマルチスレッド性能を要求するため、総合スコアは12スレッドあるRyzen 5 1600 AFが高スコアになりやすいですね。
なお、PCMark 10の開発元によれば、ビデオチャットを含む基本的なテストなら4100点以上あれば十分とのこと。つまり、ここに掲載したCPUは「スコアの差」こそあれど、実用上はどれを選んでも違いが分かるどうかは分かりません。
PCMark 10 / ビデオチャットの性能
顔認識やアバター着用など複雑なタスクをせず、ただビデオチャットを再生するだけなら性能は頭打ちです。
「IPC」でCPUの真の進化をチェック
最後は「IPC(クロックあたりの処理性能)」をテストします。IPCが高いとは、つまるところ「同じクロックなのに性能が高い」わけですから、CPUのクロック周波数を固定してベンチマークを行えばある程度は明らかにできます。
方法はシンプルで、クロック周波数を3.5 GHzに固定してCinebench R15をシングルスレッドモードで実行するだけ。
Cinebench R15 / シングルスレッド性能@3.5 GHz
これでIPCの違いをキレイに抽出できます。グラフを見て分かる通り、CPUの世代や設計が新しいほどIPCは改善されます。
Ryzen 5 1600 AFは第2世代Ryzen(Zen+)なので、IPCは最新のインテルCPUに劣ってます。IPCの遅さは、ソフトウェアによって性能が上手く発揮されない原因のひとつです。
あらゆる用途で万能性を求めるなら、Ryzen 5 1600 AFは適任ではありません。IPCが現行トップクラスの第3世代Ryzen(Zen2)、または歴史の長いインテルCPUを選びましょう。
という人は、Ryzen 5 1600 AFで問題ないです。
Ryzen 5 1600 AFのゲーミング性能:i3より安定感
ゲームで高フレームレートを出すなら、グラフィックボードの性能が重要です。しかし、グラフィックボードが高性能なほど、CPUの性能も影響が大きくなります。
現時点で最強のグラボである「RTX 2080 Ti」を使って、FF14:漆黒の反逆者ベンチマークを実行してみると、同じグラボなのに実際の性能に差が出るのが分かります。
これが「CPUボトルネック」と呼ばれる現象です。果たしてRyzen 5 1600 AFは、RTX 2080 Tiの性能をどこまで引き出せるのか?・・・検証です。
Apex Legend
Apex Legends1920 x 1080 / 最高設定 / 射撃訓練 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
Apex Legendは、Ryzenだと性能が頭打ちな傾向です。
Battlefield V
Battlefield V 1920 x 1080 / 最高設定(DX11) / 最後の虎 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
Battlefiled VはCPU負荷が大きいゲームでありながら、ハイパースレッディングが効きにくいゲームです。Core i5 9400Fがトップで、次にRyzen 5 3500でした。
CS : GO
Counter Strike : Global Offensive1920 x 1080 / 最高設定 / Dust II |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
CS:GOはどのCPUを使っても余裕で240 fps以上を出せており、わずかな性能差は実用上ほとんど意味を持ちません。
Call of Duty : Black Ops IV
Call of Duty : Black Ops IV1920 x 1080 / 最高設定 / Contraband |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
コールオブデューティーはマップ「Contraband」で計測。トップはi5 9400Fで、Ryzen 5 1600 AFはメモリをDDR4-3200にしても、Ryzen 5 3500に追いつけません。
Fortnite : Battle Royale
Fortnite : Battle Royale1920 x 1080 / 最高設定 / ミスティ・メドウズ |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
フォートナイトはマップ「ミスティ・メドウズ」で、ゲーム内の正午(12時)頃に計測しました。
インテルCPUの方が効率よくフレームレートを伸ばせていて、トップはやはりCore i5 9400Fです。Ryzen 5 1600 AFはCore i3 9100Fにすら僅差で届かず・・・。
Overwatch
Overwatch 1920 x 1080 / エピック設定(100%) / 練習場 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
オーバーウォッチはどのCPUを使っても、平均240 fpsは余裕でオーバー。若干インテルCPUの方が伸びやすいように見えますが、実用上はかろうじて無視できる性能差です。
PUBG
PUBG1920 x 1080 / ウルトラ設定 / 練習場 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
PUBGは練習場を走って計測。方向転換をする時は、すばやくエイムを振っています。
エイムを振った時のフレームレートの落ち込みは、Ryzenの方が大きいため、PUBGはインテルCPUの方が安定したフレームレートが出やすいですね。トップはi5 9400Fで、i3 9100Fは4コア4スレッドで踏ん張ってます。
Rainbow Six Siege
Rainbow Six Siege 1920 x 1080 / 最高設定 / ファベーラ |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
レインボーシックスシージは「ファベーラ」にて計測しました。意外な結果に思えますが、レインボーシックスシージはある程度、マルチスレッド性能を要求するゲームです。
6スレッドだと不足気味で、12スレッドになってから効率よくフレームレートが伸びています。シージ用ならRyzen 5 1600 AFはかなりコスパが良いです。
ARK Survival Evolve
ARK Survival Evolve 1920 x 1080 / 高設定 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
じわじわと日本国内でも人気が出てきたARK Survival Evolveも検証。なお、最高設定はあまりにも重たすぎて非現実的なので、ひとつ下の高設定でテストします。
結果はインテルCPUの方がド安定で、Ryzenは全体的にイマイチ。シングルスレッド性能が足を引っ張っているだけでなく、ソフト最適化の問題も垣間見えます。
FF14
FF14 : 漆黒のヴィランズ 1920 x 1080 / 最高品質 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
FF14(漆黒の反逆者)ベンチマークはスクエニ製のゲームだけあって、インテルCPUによく最適化されています。トップはCore i5 9400Fで、Core i3 9100Fですら2位です。
Shadow of the Tomb Raider
Shadow of the Tomb Raider 1920 x 1080 / 最高設定(SMAA / DX11) |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」も、スクエニ製のゲームです。FF14と同様、Ryzenに最適化されていないのがよく分かる結果になってしまいました。
モンスターハンターワールド
Monster Hunter World1920 x 1080 / 最高設定 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
モンスターハンターワールドはCPU負荷が重たいゲームのひとつです。ある程度はマルチスレッド性能が無ければ、平均フレームレートは良くても最低フレームレート(3%)はやや不安定。
Ryzen 5 1600 AFは低価格ながら、Core i5 9400Fに匹敵するフレームレートを叩き出してます。
黒い砂漠
黒い砂漠 1920 x 1080 / リマスター品質 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
黒い砂漠は無料MMORPGでは、世界最高峰のグラフィックを誇るタイトルですが、ソフトウェアの最適化は未だにダメな部分が多いです。
データを見て分かる通り、ハイパースレッディングの有無でフレームレートが大きく左右されます。HTT非対応のi5 9400F、i3 9100F、Ryzen 5 3500は圧倒的です。
逆にHT対応のRyzen 5 1600 AFとRyzen 5 2600は、黒い砂漠で効率よくフレームレートを出せません。
※なお、測定方法はゲーム内時刻を午前11:30~午後12:30(正午付近)に限定したうえで、負荷が重たい「首都カルフェオン」を馬で走るのみ。
平均パフォーマンス
平均フレームレート 1920 x 1080 / RTX 2080 Tiに対して |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
ここまでの検証結果を平均パフォーマンスとしてまとめました。
Ryzen 5 1600 AFの平均フレームレートは、残念ながら今回比較したCPUの中では、もっとも低いパフォーマンスでした。メモリをDDR4-3200に引き上げても、Ryzen 5 3500にやっと並ぶレベルです。
ただし、結果を個別に見ていくと12スレッドの効果は大きいです。特にレインボーシックスシージや、モンハンワールドなど、CPU負荷の重たいゲームではCore i3 9100F(4コア4スレ)を圧倒します。
1万円前後のCPUでは、おそらくRyzen 5 1600 AFはトップクラスのゲーミング性能です。
もちろん、予算をもう少し足してRyzen 5 3500やRyzen 3 3300Xを選ぶのも選択肢。差額でグラフィックボードをアップグレード、またはオーバークロックメモリを選ぶのも良いでしょう。
消費電力とオーバークロック
CPUの消費電力といえば、まず頭に浮かぶのは「TDP」です。しかし、TDPはあくまでも「これくらいの発熱量があるから、発熱量に対応したCPUクーラーを使ってね。」という意味合いの方が強く、イコール消費電力ではない。
よって本レビューでは電力ロガー機能のついた電源ユニットを使って、CPU本体の実際の消費電力を計測します。たとえば、電源ユニットから100 Wの電力が供給されていれば、CPUの消費電力は約100 Wと判断できます。
テスト環境 | ||
---|---|---|
電源ユニット #1システム全体 | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
電源ユニット #2CPUのみ | 850 W(80+ Gold)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 |
電源ユニットを2台使ってCPUとそれ以外のパーツで供給を完全に分割しているため、CPUに給電している電源ユニットの計測値を見れば、CPU本体の消費電力が明らかになる仕組みです。
消費電力とワットパフォーマンス
消費電力は、Handbrakeで「Fast 1080p(x264)」プリセットでエンコードしながら測定します。10コア20スレッドCPUまでなら、この方法でCPU使用率は常時100%に張り付き、CPU本体の消費電力をほぼフルに引き出せます。
消費電力(+12Vレールの実測値)
さすが「選別落ち」。Ryzen 5 2600と性能はほとんど変わらないのに、消費電力は若干増えています。
動画エンコード中のクロック周波数は、Ryzen 5 1600 AFが3.4 GHz前後、Ryzen 5 2600は3.6 GHz前後です。200 MHzの差があるにも関わらず、消費電力はRyzen 5 1600 AFの方が多めに出てしまいます。
ワットパフォーマンス(動画エンコード時)
1ワットあたりの動画エンコード速度(= ワットパフォーマンス)はかなり悪いです。Core i3 9100Fにすら劣る結果で、お世辞にもワッパは良いとは言えません。
CPU温度は虎徹で十分に冷やせます
CPU温度(中央値)
動画エンコード中(CPU使用率100%)の状態で、虎徹Mark IIで冷やしたデータです。
消費電力が増えた分だけ、Ryzen 5 1600 AFはRyzen 5 2600より約2℃高い温度になりました(※Ryzen 5 3500が消費電力の割に温度が高いのは、チップの面積が小型化して熱密度が増加したためです)。
虎徹Mark IIで65℃前後に抑えられているなら、まったく問題なく冷やせるCPUです。ファンの動作音を気にしない人なら、付属CPUクーラーでも問題ないでしょう。
オーバークロックと「低電圧化」を試す
オーバークロックは4.0 GHzまで確認。4.1 GHzはコア電圧を1.5 Vまで掛けても安定しませんでした。「選別落ち」なので、オーバークロックの伸びしろは当然のごとくダメダメです。
CPU温度は4.0 GHz(1.4 V)で、最大81℃に到達。Ryzen 5 1600 AFをオーバークロックするなら、少なくとも虎徹Mark IIクラスのCPUクーラーが必要です。
消費電力は、4.0 GHzで平均127 Wに。逆にクロックと電圧を落とす「低電圧化」は、3.5 GHz(1.2 V)で検証したところ、消費電力を平均83 Wまで抑えられました。
クロック | コア電圧 | 最大温度 | 消費電力 | エンコード速度 | 効率 |
---|---|---|---|---|---|
Auto | Auto | 65.6 ℃ | 90.8 W | 41.6 fps | 0.46 fps |
3.50 GHz | 1.200 V | 63.3 ℃ | 82.5 W | 44.2 fps | 0.54 fps |
4.00 GHz | 1.400 V | 80.1 ℃ | 127.2 W | 50.0 fps | 0.39 fps |
オーバークロックで簡単にRyzen 5 2600以上の性能です。消費電力とCPU温度は相応に増えるし、冷やすためにCPUクーラーへの投資も必要など。良いことばかりではありません。
それでも、オーバークロックすら出来ないCore i3 9100Fよりは、自由度があって楽しいです。
オーバークロックとは逆方向の「低電圧化」も、依然として効果はてきめん。今回は3.5 GHz固定で、1.2 Vまでしか検証していませんが、個体によってはもっと低い電圧で動作する可能性は十分あります。
クロック | Cinebench R15 | |
---|---|---|
Auto | 154 cb | 1198 cb |
3.50 GHz | 147 cb | 1210 cb |
4.00 GHz | 168 cb | 1372 cb |
ただし、低電圧化はクロック周波数を固定するので、マルチスレッド性能は維持できてもシングルスレッド性能は維持できません。
動画エンコードやレンダリングなど、マルチスレッド重視の使い方なら低電圧化のメリットは極めて大きいです。逆にシングルスレッド重視なら、低電圧化はせず定格クロックのまま使うのが無難ですね。
まとめ:「低予算CPUの覇者」が誕生
Ryzen 5 1600 AFは「低予算CPUの覇者」です。
Ryzen 5 2600より6000円も安く、ほぼ同じクリエイティブ性能とゲーミング性能を提供します。選別落ちなのでブーストクロックは低いですが、手動OCで性能差はかんたんに埋められます。
Zen+世代ゆえ、ソフトによっては上手く性能を発揮できないなど、弱点はあります。しかし・・・6コア12スレッドはやはり強いです。
約1万円で4コア4スレッドのオーバークロック不可なCore i3 9100Fか、1000円足して6コア12スレッドでオーバークロックも可能なRyzen 5 1600 AFを買うか?、答えは明白です。
Ryzen 5 1600 AFが存在する限り、Core i3 9100Fはよほどの理由がない限り、出る幕はありません。Ryzen 5 1600 AFは、あまりにも価格設定が脅威的です。
「Ryzen 5 1600 AF」のデメリットと弱点
- オーバークロックは伸びない
- シングルスレッド性能は遅い
- ワットパフォーマンスは平凡
- 内蔵グラフィックスなし
- 在庫状況が不安定(生産終了?)
Ryzen 5 2600の出来損ないを、AMDが「おこぼれ」として格安で提供しているCPUゆえ、絶対的なパフォーマンスだけを見ると大したCPUではありません。
オーバークロックは選別落ちだから伸びないし、設計は第2世代(Zen+)なのでシングルスレッドは遅いです。用途によってはCore i3に劣る場合すらありますが、約1.1万円という価格なら許せます。
レビュー記事を書いた時点で、もっとも問題なのは「在庫」です。ぼくが購入した頃は潤沢な在庫があるように思えたのですが、6月時点では在庫が消滅しています。
「おこぼれ」の数がなくなり次第終了、だったら非常に惜しいですね。
「Ryzen 5 1600 AF」のメリットと強み
- 約1.1万円で6コア12スレッド
- 1万円台で屈指のマルチスレッド性能
- ゲーミング性能はCore i3より安定感アリ
- 大人しいCPU温度
- 「低電圧化」のメリットがある
- CPUクーラーが付属する
- 手動オーバークロック対応
- コストパフォーマンスは脅威的 !!
Ryzen 5 1600 AFのメリットは、なんと言っても「安さ」です。
多少の弱点やデメリットは、約1.1万円(正確には10978円)という破格の安さによって、おおむね相殺されます。少なくとも、同じ価格帯にいるCore i3 9100Fより、コスト以上に得られるメリットは多いです。
インテルCPUは廉価なマザーボードだとメモリのオーバークロックすら出来ません。一方、Ryzen 5 1600 AFはB450マザーボードで、CPUとメモリのオーバークロックが可能です。
性能を伸ばせる余地が残されている分、コストパフォーマンスはさらに改善します。1万円前後で低予算なCPUをお探しなら「Ryzen 5 1600 AF」を強くおすすめできます。
というわけで、個人的な評価は「A+ランク」で決まりです。給付金の影響で流行っている予算10万円パソコンを自作するなら、かなり魅力的です。
以上「Ryzen 5 1600 AFをレビュー:異次元のコスパでCore i3に圧勝」でした。
記事おつかれさまです!
やかもちさん!十万円給付されますし、OS込みで十万のゲーミングPC構成を記事にしませんか?
3300Xや1600AFにしろいい感じでいけるきがします
今、予算別まとめ記事を書き直してるとこです。OS込みで10万円も掲載する予定です~。
オラ、ワクワクしながらまってっぞ!!
楽しみにしてまってます!
なんで2600 AFにしなかったんでしょうかね
AFのRyzenとしては第一世代だからでしょ(語彙力不足)
執筆お疲れ様でした
ところで、ryzen5 2600の型番がYD2600BBM6IAFになってます。
正しくはYD2600BBM6IAEのはずですので、修正よろしくお願いしますm(._.)m
ぼくが持ってるRyzen 5 2600は、型番が「YD2600BBM6IAF」なんですよね・・・。なぜか「AE」ではないです。
一応AMDの公式サイトで確認すると「YD2600BBM6IAF」で間違いなさそうですが。
コメントありがとう御座います^ ^
こちらで確認したところryzen5 1600AEが第一世代で、第二世代の2600はその型番だったみたいで、こちらが勘違いしていました(>人<;)
お騒がせしてしまい申し訳御座いませんm(_ _)m
メリットの所、「1.1万円で6コア12スレッド」が重複してると思います、ご自愛下さい。
ありがとうございます。重複しているので修正しました。
とても参考になりました。
最近のAMDの躍進を見て、Core i7 950をそろそろ卒業しようと思います。
一点聞かせていただきたいのですが、Ryzen5 1600AFはフライトシミュレーターのようなゲームにも十分な能力を持っていると考えていいのでしょうか?
またフラシムにはシングルスレッドとマルチスレッド、どちらを重視すべきでしょうか?
フライトシュミレーター2020ならマルチスレッド重視で問題ないだろうけど、
旧作の事を指してるなら1コアしか働かないからシングル重視の方が良いのでは?
と言ってもフラシム旧作はRyzen3 1200でも十分動作可能なくらいだからRyzen5 1600AFもあればオーバースペックなくらいだと思う
2020も視野に入れるなら1600AFだと少し厳しいかも
ありがとうございます。
2020の方を検討しています。
Microsoftの推奨スペックがRyzen5 1500X以上(理想スペックだと1700X)だったので、1600AFでも行けるのかと思っていました。
1600AFで厳しいなら、3700かzen3まで待ってみます。
推奨Ryzen1500X以上とするとR15で大雑把にマルチスレッド性能1240cb前後
1600AFだと絶妙に足りない。
景色を楽しむゲームでもあるので所々でカクンとなったら萎えますよね。
それこそ合格品のRyzen5 2600がちょうどピッタリ当てはまるポジションになるかと。
余裕を持たせるならRyzen5 3700やzen3まで待つのも良いかもしれません。
CPUよりもその他のパーツやモニターの方が高く付きそうですが・・・。
3500がイマイチすぎる
出た時は「SMT切っただけの3600が2/3のお値段で」って感じでお買い得感あったんだが…