ついにAMDから最新のAPU「Raven Ridge」が登場。ダイの半分を「Vega」世代の内蔵グラフィックスに充てたCPUで、Ryzenの高い処理性能をそのままに、多少のゲーミングをこなせる最強クラスの内蔵GPUを搭載するCPUというわけだ。
この記事ではRaven Ridgeのミドルクラス「Ryzen 5 2400G」と、ローエンド「Ryzen 3 2200G」の2つのAPUについて。詳しくレビューをまとめてみました。
最新世代のAPU「Raven Ridge」とは
「Raven Ridge」の基になっているAMD Ryzenのダイ(通称Zeppelin)の構造を、ものすごくアッサリと図解するとこの通りです。「CCX」と呼ばれるパッケージの中にCPUコアとキャッシュが入っている。
この2つのCCXを組み合わせて1つのCPUとして成立させたモノが「AMD Ryzen」というわけ。つまり、実質的には4コアのCPUを2個詰め込んで「8コアのCPU」に仕立て上げた。ということだ。
しかし、2つのCCXを組み合わせるために「Infinity Fabric」(インフィニティファブリック)という内部バスを経由する必要がある。このためAMD Ryzenは「レイテンシ」(遅延)が長めに発生しやすく、レイテンシに影響を受けやすいアプリ※では非効率的になるリスクを抱える。
※代表例としては「ゲーミング」など。ただ、この問題はソフト側で改善されつつある(最新のソフトを使う分には問題になりにくいが、古いソフトでは課題になりやすいということ)。
Raven Ridgeではレイテンシが改善
一方、今回の新作Raven Ridgeのダイをアッサリ図解するとこの様子。CCXは1個だけで、空いたスペースにVega世代のGPUを詰め込んだ。Ryzen 5 2400Gには「RX Vega 11」が、Ryzen 3 2200Gには「RX Vega 8」が搭載される。
CCXが1つになったため、構造上はレイテンシが改善されている。TomsHardware(画像)によれば従来のAMD Ryzenのどれよりも少ないレイテンシに達していることが分かる。
とはいえ、Raven Ridge APUはグラフィックボードを使わないという前提のCPUなので、ゲーミング性能が改善されたかどうかまでは…気にする必要性は薄いと考えます。
なお、CCXが1個になったことでレイテンシが改善されたわけですが。PCIe構成が変化してしている点は一応注意。Zen世代は「16 + 4」の合計20レーンでしたが、Raven Ridgeは「8 + 4」の12レーン構成です。
グラフィックボードを刺してもPCIe x8接続になりますが、以下の記事にもある通りレーン数が16から8に減った程度なら、ほとんどの場合は問題になりません。そもそもAPUとグラボを組み合わせるマシン構成は、確実に少数派だろう。
内蔵GPUは「RX Vega 11 / 8」
Raven RidgeにはデスクトップPC向けの内蔵グラフィックスとして、過去最強クラスのiGPUが搭載されています(iGPU : Integrated Graphics Processing Unit = 内蔵GPUの略称)。
Ryzen 5 2400Gには「Radeon RX Vega 11」が搭載されている。
演算ユニット(Compute Unit)が11個搭載されていて、ストリームプロセッサ数は合計740個(CU1個につき64個)、テクスチャユニットは合計44個(CU1個につき4個)という構成だ。
ちなみに同じVega世代のハイエンドGPU「RX Vega 64」には、64個の演算ユニットが搭載されています。期待できるグラフィック性能は単純計算でVega 64の約17.2%ということになる。
Ryzen 3 2200Gには「Radeon RX Vega 8」が搭載される。
名前の通り、演算ユニットの数が3個減って8個になっているのだ。よってストリームプロセッサ数は64 * 8で、合計512個。テクスチャユニットは合計32個という構成になります。
単純計算で性能はVega 64の約12.5%にとどまり、Vega 11と比較すると約72.3%の性能になる。まぁ…実際にどのくらい戦えるのかは、各種ベンチマークで後ほど確認していく。
Raven Ridgeのまとめ
- 中に入ってるCPU(= CCX)が1個になり、レイテンシが改善した
- PCI Express 3.0のサポートレーン数が16本から8本へ半減
- 過去最強クラスの内蔵GPU「Radeon RX Vega」が搭載されている
AMD Ryzen(Zen)から大きく変わったポイントは、主に以上の3つになります。他にも細かい話はあるけれど…これだけ知っていればRaven Ridgeの前提知識としては十分だと思います。
Ryzen 5 2400G & Ryzen 3 2200Gの仕様
CPU | Ryzen 5 2400G | Ryzen 5 1400 | Ryzen 3 2200G | Ryzen 1200 |
---|---|---|---|---|
ソケット | Socket AM4 | |||
コア数 | 4 | |||
スレッド数 | 8 | 4 | ||
ベースクロック | 3.6 Ghz | 3.2 Ghz | 3.5 Ghz | 3.1 Ghz |
ブーストクロック | 3.9 Ghz | 3.4 Ghz | 3.7 Ghz | 3.2 Ghz |
内蔵GPU | RX Vega 11 | – | RX Vega 8 | – |
GPUクロック | 最大1250Mhz | – | 最大1100Mhz | – |
L1 Cache | 384 KB | |||
L2 Cache | 2 MB | |||
L3 Cache | 4MB | 8MB | 4MB | 8MB |
対応メモリ規格 | DDR4-2933 | DDR4-2666 | DDR4-2933 | DDR4-2666 |
PCIe 3.0 | x8 | x16 | x8 | x16 |
汎用レーン数 | x4 | |||
TDP | 65W | |||
プロセスルール | 14nm+ | 14nm | 14nm+ | 14nm |
MSRP | $ 169 | $ 99 | $ 109 |
プロセスルールが14nmから若干微細化して「14nm+」に進化した。それに伴い、定格時のクロック周波数も大幅に伸びている(ベースクロックは+400Mhz、ブーストクロックは+500Mhz)。
他にも色々とカタログスペック(仕様)が変化しているので、ザーッとまとめてしまいます。
- Vega世代の内蔵GPUが実装
- 対応メモリ規格が若干向上(2666 → 2933)
- MSRP(価格)は据え置き
- L3 Cacheの容量が50%減少(8MB → 4MB)
- PCI Express 3.0のレーン数が半減(16 → 8)
全体的には、特に問題は無い。むしろ「APU」というコンセプトを考えれば、ふさわしい内容のカタログスペックに仕上がっているとすら言える。価格も完全に据え置きで嬉しい。
ソケットは引き続きSocket AM4が続投しているので、乗り換えもしやすい。「内蔵グラフィックスがデタラメに強くなったCore i3」と言ったところかな。
CPU性能編:第8世代のCore i3も怖くないよ
基本的にクロック周波数が大幅に伸びたため、CPUとしての処理性能も着実な進化を遂げているはずだ。…というわけで、各種ベンチマークのデータを見ていきます。
ベンチマークデータは米TechSpot「Ryzen CPU + Vega Graphics on a Chip: AMD Ryzen 5 2400G & Ryzen 3 2200G Review」より参照。
Cinebench R15
CinebenchはCPUにレンダリングを実行させ、その処理速度を「スコア化」するベンチマークソフト。非常に分かりやすいスコアを2種類(シングル / マルチ)出せるため、国際的に人気 & 知名度の高いベンチマークです。
Cinebench R15 – シングルスレッド性能
Raven RidgeZenCoffee Lake
クロック周波数が500Mhz伸びた分、シングルスレッド性能も当然伸びている。Zen版と比較して約10cbは伸びているので、多コアが要求されないアプリケーションの動作などで改善が見込めるだろう。
Cinebench R15 – マルチスレッド性能
1コアあたりの処理性能が伸びたことで、全てのコアを使用するマルチスレッド性能も進化した。「1200」が485 cbに対して「2200G」は554 cbと約15%もマルチスレッド性能が伸びました。
価格が近い「i3 8100」とも互角のスコアを叩き出しているため、Raven Ridgeは今度こそCore i3を脅かす存在になったかな…。普通のRyzen 3ではCore i3を倒しきれなかったので。
PCMark 10
PCMark 10は主にオフィス系のアプリケーションを実行させて「普通の業務をどれくらいこなせるか。」をスコア化するベンチマーク。割りとシングルスレッド性能に影響を受けやすいです。
PCMark 10 – Office Benchmark
結果はこんな感じで、シングルスレッド性能が高めのCoffee Lakeが全体的に高いスコアを示している。まぁ5000点前後も出ていれば、普通に使う分にはまったく問題のない水準ではある。
Excel 2016
Excel 2016 – モンテカルロシミュレーション(秒)
Excel 2016における計算速度は10%ほど高速化。シングルスレッド性能が伸びたため、やっぱりZen世代の同スペック品よりは速くなったことが分かる。
7-Zip Benchmark
フリーウェアの解凍ソフト「7-Zip」に付属するベンチマーク。MIPSという単位でCPUの解凍と圧縮の処理速度をスコア化する。基本的にマルチスレッド性能が高いCPUほど、高いスコアを出しやすい。
7-Zip Benchmark – 解凍(MIPS)
2200GはRyzen 3 1200から約20%、2400GはRyzen 5 1500Xを上回るまでに進化。
7-Zip Benchmark – 圧縮(MIPS)
圧縮も2200Gは同じ傾向で、2400GはRyzen 5 1500Xとほぼ同格。
Adobe Premiere Pro CC
Adobe Premiere Pro CC – 4K 60fps H.264 エンコード(秒)
2200Gは416秒で、Ryzen 3 1200より約60秒もエンコードの処理速度が向上。2400GはRyzen 5 1500X並の処理速度に向上しており、概ねCinebench通りの結果になった。順当な進化といったところです。
Blender
オープンソースのレンダリングソフト。オープンソースのため、Intel / AMD両方のCPUに最適化が進んでいる傾向が強く、マルチスレッド性能が純粋に反映される。
Blender – レンダリング所要時間(秒)
結果はこの通りで、ほぼほぼCinebenchのマルチスレッドスコアに相関した結果に。2200Gは1200より15秒も速くなり、2400Gは1500Xと同格の性能にまで進化。
CPU性能のまとめ
定格時のクロック周波数が500Mhzも伸びたことで、全体的に15~20%の性能アップに成功していることがわかった。世代を更新し、しっかりと順当な進化を遂げたということだ。
Ryzen 3 2200GはRyzen 3 1300X相当でRyzen 5 2400GはRyzen 5 1500X相当の性能に進化したため、CPU性能の部分だけを見れば同じ価格で「X付きのRyzen」を買えることを意味する。
第8世代Coffee Lakeの4コア型「Core i3」に対しても良い勝負をしている。Office系などシングル性能重視のアプリでは性能を発揮しにくいが、レンダリングやエンコードなどマルチ性能重視のアプリでは優位に立てている。
内蔵GPU性能編:GT 1030に迫る、最強のiGPU
Vega世代のハイエンドGPU「Vega 64」の約15~20%に相当するとされる、内蔵型Vegaグラフィックス。リークしていたFireStrikeのグラフィックスコアを見る限り、RX 460に相当する性能が伺えるが…実際はどれくらいのモノなのか。
ゲーミング時における平均フレームレートにて確認していく。
CS : GO
CS:GOは「Counter-Strike : Global Offensive」の略称で、国際的に人気の高いMOFPSの1つ。Steamでは1日あたり50万人のアクティブユーザー数を抱える超人気タイトルだ。
Counter-Strike : Global Offensive – 720p / 最高品質(平均fps)
Raven Ridge APUBristol Ridge APUIntel + iGPU or GPU
解像度をHD画質(1280×720)にし、グラフィック設定はウルトラにて計測された。RX Vega 11は平均215fpsを叩き出し、RX Vega 8の方は平均189fpsを出した。ローエンドGPUのGT 1030は平均216fps。
…紛れもなく、Raven RidgeのRX Vegaは過去最強クラスの内蔵グラフィックスです。一方Core i3に搭載されているUHD 630は平均110fps程度と半分に留まっています。内蔵Vegaの圧勝ですね。
Counter-Strike : Global Offensive – 1080p / 最高品質(平均fps)
解像度をFHD画質(1920×1080)に引き上げても傾向は変わらない。依然、Vega 11や8はUHD 630の2倍以上のフレームレートを叩き出し、ローエンドグラボのGT 1030とも互角の性能を発揮している。…最強だ。
PlayerUnknown’s Battlegrounds
日本でも人気のMOTPS / FPSです。Steamによれば1日あたりのアクティブユーザー数は300万人を突破しており、これはSteam史上最大の規模。今もっとも遊ばれているゲームと言っても過言ではないかも。
PlayerUnknown’s Battlegrounds – 720p / 低品質(平均fps)
PUBGはとても重たいため、グラフィック設定は「低い」にして計測された。結果はGT 1030に一歩劣るものの、既存の内蔵グラフィックスに対しては圧勝という形に。GT 1030にVega 11や8が負けたのは最適化の問題ではある。
もともとPUBGはNVIDIA GeForceに最適化されており、AMD Radeon RXには今ひとつの状態が長く続いています。
PlayerUnknown’s Battlegrounds – 1080p / 低品質(平均fps)
FHD画質でも傾向は同じ。内蔵Vegaはだいたい30fps以上を出し、GT 1030は平均46fpsに留まった。他の内蔵グラフィックスは10~20fpsしか出ておらず、全滅状態。
Fortnite Battle Royale
Unreal Engineで知られるEpic Gamesが製作した、PUBGにゲームルールが酷似したMOTPS。無料で遊べるため、1日300万人ものアクティブユーザーを抱えるまでに急成長した。
Fortnite Battle Royale – 720p / 中間品質(平均fps)
HD画質なら問題なく行けてます。RX Vega 11は平均75fpsも叩き出し、Vega 8は58fpsでほぼ60fpsを記録している。GT 1030は82fpsでさすがと言ったところ。Intel UHD 630は全然ダメダメで使い物になりませんね。
Fortnite Battle Royale – 1080p / 中間品質(平均fps)
FHD画質では60fpsを大きく割れてキツそうな展開。Fortniteは比較的軽いゲームだが、この程度のゲームでも内蔵GPUで平均60fpsを目指すのはやや厳しいか…。
Overwatch
Overwatch – 720p / 中間品質(平均fps)
OverwatchはCS:GOと同様とても軽いゲームの1つ。HD画質なら軽々と平均60fpsを突破して平均93~98fpsを記録。GT 1030は平均98fpsなので、RX Vega 11はGT 1030並の内蔵グラフィックスということに…、強すぎだろ。
Overwatch – 1080p / 中間品質(平均fps)
FHD画質では、RX Vega 11が平均59fps、Vega 8が平均52fpsを記録。最高画質ではないが、Ryzen 5 2400Gならグラフィックボード無しでOverwatchをプレイすることは十分に可能と言える。一方、Intel UHD 630はボロボロ。
DOTA 2
DOTA 2 – 720p / 最高品質(平均fps)
ピーク時には1日100万人以上がプレイしている、世界でも最も成功したMOBAである「DOTA 2」。RX Vega 11はUHD 630の約3倍に値する平均75fpsを出した。Vega 8も優秀で、平均69fpsと十分なフレームレートを出す。
DOTA 2 – 1080p / 最高品質(平均fps)
FHD(1920×1080)画質にすると60fpsを維持できなくなるが、それでも内蔵GPUとしては最強の性能を発揮している。グラフィック設定を妥協すれば、グラボ無しでDOTA 2は十分に遊べるだろう。
Rainbow Six Siege
戦略的思考が求められるMOFPS「R6S」。サービス開始から2年ほどが経過し、着実にユーザー数を伸ばしているタイトル。最近はピーク時に10万人を突破するようになった。
Rainbow Six Siege – 720p / 低品質(平均fps)
低品質、HD画質なら余裕。Vega 11は平均129fps、Vega 8は平均112fpsとなった。GT 1030は平均116fpsにとどまり、UHD 630は40fps程度。
Rainbow Six Siege – 1080p / 低品質(平均fps)
FHDに引き上げると3桁フレームレートは出なくなるが、それでもVega 11 / Vega 8ともに平均60fps以上を維持しており動作に問題はなし。
ローエンドGPUとの比較
Overwatch – 720p / 中間品質(平均fps)
10000円前後で入手可能なローエンドGPUはNVIDIAからは「GT 1030」、AMDからは「RX 550」が市場に投入されています。驚くべきことに、Vega 11はこういったローエンドグラボと互角の性能を示している。
従来の内蔵グラフィックスで同じ性能を出そうと思うと、必ず10000円前後のGT 1030やRX 550が必要だった。しかしRaven Ridge APUはそれをCPU単体で実現してみせた。間違いなく低予算PCの大きな味方になると思う。
Overwatch – 1080p / 中間品質(平均fps)
FHD画質でもほぼ同じパフォーマンスを発揮する。RX 550やGT 1030に一歩届かないものの、従来の内蔵グラフィックスとは一線を画する圧倒的な性能なのは間違いないです。
GPUの性能はオーバークロックで更に凄いことに
Raven Ridge APUはCPU本体のクロック周波数と、iGPUのクロック周波数をオーバークロック可能(倍率ロックフリー)。しかし付属のリテールクーラー(Wraith Stealth)では両方OCすると軽く90度に達する。
よってベンチマークでは、内蔵グラフィックスのみを1600Mhzにオーバークロックして計測が行われました。
Fortnite Battle Royale – 720p / 中間品質(平均fps)
Raven Ridge OCRaven Ridge 定格Intel + GPU
定格ではあと一歩GT 1030に届かなった性能が、1.6Ghzまでオーバークロックすることで追いついてきた。特にRX Vega 8の方はオーバークロックの効果が大きく出ていて、OCを施すことでRX Vega 11並の性能に伸びている。
率で見るとVega 11はクロック周波数を28%伸ばして性能は+8%、Vega 8は45%もクロック周波数が伸びて性能は+28%ほど。クロックあたりの性能の伸び率は明らかにVega 8の方が優れているため、OC前提ならRyzen 3 2200Gは非常に魅力的だ※1。
Fortnite Battle Royale – 1080p / 中間品質(平均fps)
解像度をFHDに引き上げても傾向は変わらない。やはりオーバークロックの効果はVega 11よりもVega 8の方が2倍ほど良いことが分かります。そしてOCすることで明確にGT 1030と並ぶ性能を発揮できる。うーん…凄いiGPUですね。
CPU温度 & 消費電力
消費電力(システム全体) – Blender実行時
Raven Ridge OCRaven Ridge 定格Intel + iGPU
Ryzen 5 2400Gの消費電力はシステム全体で98Wほど。Vega 11を1.6Ghzまでオーバークロックしている状態だと124Wに。Core i3に省電力性では負けているが、あの圧巻のグラフィック性能を考えればワットパフォーマンスで勝っているのは明確だろう。
消費電力(システム全体) – Overwatch実行時
ゲーミング時は更に消費電力が伸びますが、興味深いことにRyzen 3 2200Gは逆に消費電力が下がっています。ワットパフォーマンスで比較すると、2200Gは2400Gだけでなく、Core i3に対しても圧倒的に優れていることが分かった。
Core i3 8100や8350Kとそう変わらない消費電力で、CPU性能は同格 & 内蔵グラフィックス性能は2~3倍ですから。誰の目から見てもRaven Ridge APUは圧倒的に凄い。
CPU温度 @Wraith Stealth / シーン別
Ryzen 5 2400GRyzen 3 2200G
Raven Ridgeに付属するリテールクーラーは「Wraith Stealth」です。Ryzen 5 2400Gでは最大74度、Ryzen 3 2200Gだと最大67度に抑えられているため定格運用であれば問題ない。
課題:依然、メモリクロックの影響が大きい
以前からAMD Ryzenはメモリクロックに影響を受け易いことが知られている。以下の記事にもある通り、メモリクロックが高いほどフレームレートが向上する現象が確認されています。
この傾向がRaven Ridgeでは更に顕著です。
メモリクロック別フレームレート / CS:GO(720p – 最高品質)実行時
デュアルチャネルシングルチャネル
一般的なDDR4-2400と、オーバークロックされたDDR4-3466では38%もフレームレートに差が生じていることが分かる。メモリクロックが遅いだけで38%も性能が変わってしまう…、これはRaven Ridge最大の弱点になる。
しかもメモリクロックだけでなく、デュアルチャネルかシングルチャネルかの違いでもフレームレートに大きな差が出ています。これは困った話で、低予算で組みたいのに「あえて高価なオーバークロックメモリを選ばなければならない」。
なんて選択肢が浮かぶわけです。38%の性能差は無視出来ないですからね。これが10%くらいしか変わらないという話なら、妥協も出来るんですが38%はいささか大きすぎる差です。妥協するかしないか悩ましいところでしょう。
Ryzen 5 2400G & Ryzen 3 2200Gのレビューまとめ
ここまで一通り「Ryzen 5 2400G」と「Ryzen 3 2200G」の性能を確認してきました。かなり内容が多いので、最後にRaven Ridge APUの強み・弱みをまとめ、レビューを締めていきたいと思います。
Ryzen 5 2400G & Ryzen 3 2200Gのメリット:最強のAPU
Cinebench R15 – マルチスレッド性能
Raven RidgeZen
なんと言ってもRaven Ridgeの強みは、AMDの出してきたAPUの中で間違いなく「過去最強」ということ。CPUとしての性能は同スペックのAMD Ryzenを10~20%は上回るし、内蔵グラフィックス性能においては「最強」です。
Fortnite Battle Royale – 720p / 中間品質(平均fps)
定格の時点で、Intel UHD 630やIris Graphicsは「RX Vega 11」「RX Vega 8」に対して全く歯が立ちません。GT 1030やRX 550に対してはあと一歩ですが、これもオーバークロックまで含めば追いついてしまう。
内蔵グラフィックスは決してローエンドGPUに勝てないのが普通でした。しかしRaven Ridgeの内蔵VegaはようやくローエンドGPUに追いついてしまったということ。
- CPU性能は同スペックのRyzenより10~20%高い
- 定格で「RX Vega 11」「RX Vega 8」に勝てる内蔵GPUは、今のところ皆無
- オーバークロック状態なら「GT 1030」「RX 550」と互角の性能を発揮
軽いゲーム(MinecraftやCS:GO、Overwatchなど)を低予算で動かせるマシンを作るなら、2018年2月時点でもっとも適役なCPUと言えます。
Ryzen 5 2400G & Ryzen 3 2200Gのデメリット:メモリクロック
メモリクロック別フレームレート / CS:GO(720p – 最高品質)実行時
Raven Ridge最大の弱みはメモリクロックに影響を受けすぎること。DDR4-3466(2ch)と、DDR4-2133(2ch)でグラフィック性能は38%も変動する。しかしメモリ価格の差はそれ以上になる。
- W4U2133PS-4G(DDR4-2133 / 2枚組):11000円
- F4-3200C16D-8GVK(DDR4-3200 / 2枚組):15000円
- F4-3466C16D-8GVK(DDR4-3466 / 2枚組):16000円
メモリクロックが違うだけで50%は価格差があります。今回の場合、メモリクロックによる性能の伸びはDDR4-3200あたりに頭打ち感がある。よって、多少予算が張ってもいいから性能重視で行くならDDR4-3200で良い。
予算重視の場合は、適度に最適なメモリを選ぶことになる。ぼくの考えとしては「価格差 < 性能差」が保たれている限界ラインのメモリを選べば、最適な選択になりやすい。以下のようなイメージだ。
結局DDR4-3200が最適ラインに。…うーん、予算を気にするならDDR4-2933あたりで決着させるのが良いと思いますね(あるいはDDR4-3000)。
結論:低予算PCにとって最高の選択肢
去年の低予算における「予算王」はPentium G4560でした。そして、今年の現時点における「予算王」はコストあたりの性能を加味して「Ryzen 3 2200G」だろう。MSRPはわずか99ドル。
たったの99ドルで手に入るRyzen 3 2200G(OC含む)は、「Ryzen 3 1300X並の処理性能 + GeForce GT 1030」とほぼ同格の性能を提供してくれる。他のCPUで同じ性能を実現しようとした場合、グラボを避けられない。
よって100ドル以下のCPUでは間違いなくコスパ最強に位置すると言えます。個人的な評価は文句なく「Sランク」。マイクラ用PCも極めて安価に作れそうだ(自作の構成例は後ほど)。
99ドルの2200Gに対して、2400Gは169ドルと70%も割高。SMT搭載で確かに処理性能は高いが、OC時のVegaの性能の伸びが半分くらいなこと。何より「低予算でこそ輝く」という強みを考えると、2200Gより弱い印象があるのは拭えない。
というわけでRyzen 3 2200Gは「Sランク」で、Ryzen 5 2400Gは「A+ランク」とします。
【参考】Raven Ridgeを使った自作PC例
価格コムの最安値(2018/2月時点)で試算してみた。
低予算ゲーミングマシン | ||
---|---|---|
CPU | Ryzen 3 2200G | 13824 |
マザーボード | AB350M-HDV | 6780 |
メモリ | CMK8GX4M2B3000C15R | 13839 |
SSD | UVS10AT-SSD120 | 5000 |
電源 | SMART 350W STANDARD | 3850 |
ケース | 舞黒透 | 3395 |
合計 | 46688 |
Ryzen 3 2200Gの国内価格がかなり高いのと、メモリが高騰しているせいで4.6万円くらいに構成になった。やはりメモリが最大のネックになりますね。まぁ…同じ性能をIntelで作ろうとすると…
同格品をIntelで作ろうとすると… | ||
---|---|---|
CPU | Core i3 8100 | 13980 |
GPU | GT 1030 | 9087 |
マザーボード | Z370M Pro4 | 14482 |
メモリ | F4-2133C15D-8GNT | 9990 |
SSD | UVS10AT-SSD120 | 5000 |
電源 | SMART 350W STANDARD | 3850 |
ケース | 舞黒透 | 3395 |
合計 | 59784 |
1.3万円ほど割高になるため、「限られた予算で、最高の総合性能を目指す」のであれば、Raven Ridgeほど適役なCPUは現状ない。
Cinebench R15 – シングルスレッド性能
Cinebench R15 – マルチスレッド性能
CPU性能を犠牲にしてグラフィック性能を求めるなら「Pentium G4560 + GTX 1050 Ti」という最強コンボがあるので、ゲーム性能をもっと求めるなら…また違った評価になりそうではある。
以上「【レビュー】Ryzen 5 2400G & Ryzen 3 2200G:限られた予算で輝くAPU」について書きました。格安PCを組もうと思っている人や、BTOでAPUマシンを検討している方の参考になれば幸いです。
( ゚∀゚)とても参考になりました。ありがとうございますm(_ _)m
dGPUを使えない、又は使わないで構成するなら一見の価値がありますね
ただゲーミング用途ではやっぱり力不足かなと思います、仕方ないですけど
ノートパソコンとかに導入されてくるでしょうか?
ノートパソコン向けには既に「Ryzen 5 2500U」など、モバイル向けRaven Ridgeが市場に投入されています。ただ、分厚いゲーミングノートPCならデスクトップ版Raven Ridgeを搭載する…変態なマシンが出てきてもおかしくは無いですね。
→ 「Ryzen 5 2500U」の性能解説:脅威的な内蔵GPUでIntelを攻める
このAPU搭載パソコンを購入する人はまず最低限の投資でゲームができないか画策して、無理ならグラボを増設する考えだと思うので現在コスパに優れる1060と来年発売される2060が到達するレベルだという1070を搭載した場合のボトルネックがどの程度なのか、検証解説があったらいいなと思いました。
GPU性能的には完全にGT1030以下を無用の長物にするほどの破壊力ですね。
グラボの私的愛用メーカーのELSAはいまだにGT1030の製品を作ってませんが、今更出してもしょうがないでしょうね。
それ以前にそこのGT710/730の製品の店頭在庫が大量に残ってる状態ですし(汗
おぉこれはわかりやすいCPU2個あってこういう風になってたのか…それでゲーム性能落ちてたんだね。
そういえばAPUとグラボって共有?CrossFire?して使ったりできるって何か聞いたことあるんだけれどアレってどういう理屈なんだろう?
https://www.amd.com/ja-jp/innovations/software-technologies/dual-graphics
こちらのことでしょうか?
おぉこれだよこれこれ
今回のと新しいRadeonGPUで実際性能上がるのかってのが知りたい、てかデュアル・グラフィックスっていうのか。
まぁ載せてくれたホームページ見てきたけどRadeonシリーズの見方覚えてないから何がなんやらわからなかったけど、なんか性能低いグラボしか載ってないような?
AMDのローエンドdGPU撲滅計画、着々と進行中ですな。
しぶとく生き残っているファンレスビデオカードも、そろそろ年貢の納め時か?
メモリ価格早く落ちてくれ。
とりあえず2666メモリをOCして凌ぐ。
情報の真偽でCPUの性能は変わらないので、どうでもいいかもしれませんが。
> プロセスルールが14nmから若干微細化して「14nm+」に進化した。
「14nm+」はIntelの呼称です。
それぞれ文面に当てはめると「14LPP」、「12LP」(旧称:14LPP+)ではないでしょうか?
また、Raven Ridgeは14LPPはないでしょうか?
はい!(手を挙げる)
質問です!
ryzen5 2400G(vega11) + GTX1050ti 4GB
もしかしてこれでGTX1060相当になったりしますか?
いや、ならないでしょう
デュアルグラフィックス(APU+GPU)をするなら
AMDAPUとAMDGPUを組み合せないと……
AMDAPU+NvidiaGPUではそれぞれ別々に動くだけですよ。
i3にGT1030を加えたぐらいの性能になるんですね。
個人的にはグラフィックス性能はこのくらいで十分なんですが、CPU性能がもっと欲しいのでひじょ~~~に惜しいです。
でも、ものすごく魅力的に見えます。初めて自作する時にこれがあったら即買いでした。
[…] Geforceのローエンドグラフィックボードで有名なGT1030に迫る性能と言われていた2200Gの後継機種なので、軽いゲームであれば十分でしょう。 […]