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WD Blue SN550をレビュー:SN500の後継モデルだが肝心の性能は不満

「WD Blue SN550」は、コスパの良さで人気があった「SN500」の後継モデルとして登場。インターフェイスをPCIe 3.0 x2から「x4」へと拡張し、大幅な性能アップを目指しつつ、価格はほぼ据え置きな意欲的なNVMe SSDです。では、SN550とSN500で詳しく性能を比較してみます。

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WD Blue SN550のスペック

Western Digital / NAND : KIOXIA製96L TLC NAND / 性能 : 最大2400 MB秒 / 容量 : 500GB / 耐久性 : 300 TBW / 保証 : 5年
スペックWD Blue SN550
容量250 GB500 GB1 TB
フォームファクタM.2 2280
インターフェイスPCIe 3.0 x4
コントローラWestern Digital製
NANDフラッシュSanDisk製96層 3D TLC NAND
DRAMキャッシュなし
読み込みシーケンシャル2400 MB/s
書き込みシーケンシャル950 MB/s1750 MB/s1950 MB/s
読み込み4KBランダムアクセス170K IOPS300K IOPS410K IOPS
書き込み4KBランダムアクセス135K IOPS240K IOPS405K IOPS
消費電力稼働時3.5 W3.9 W4.9 W
消費電力アイドル時20 mW
保証5年
TBW書き込み耐性150 TBW300 TBW600 TBW
MSRP希望小売価格$ 54.99$ 64.99$ 99.99
参考価格6040 円7556 円13617 円
GB単価24.2 円15.1 円13.6 円

「WD Blue SN550」シリーズは、Western Digitalのエントリー向けNVMe SSDブランドのひとつです。従来の「WD Blue SN500」は接続インターフェイスがPCIe 3.0 x2しか無かったのが、SN550では「PCIe 3.0 x4」に強化されています。

加えて、従来のSN500にはラインナップされてなかった1 TBモデルが追加されたのも大きな改善です。

スペックSN550SN500
容量500 GB500 GB
フォームファクタM.2 2280
インターフェイスPCIe 3.0 x4PCIe 3.0 x2
コントローラWestern Digital製
NANDフラッシュSanDisk製96層 3D TLC NANDSanDisk製64層 3D TLC NAND
DRAMキャッシュなし
読み込みシーケンシャル2400 MB/s1700 MB/s
書き込みシーケンシャル1750 MB/s1450 MB/s
読み込み4KBランダムアクセス300K IOPS275K IOPS
書き込み4KBランダムアクセス240K IOPS300K IOPS
TBW書き込み耐性300 TBW300 TBW
MSRP希望小売価格$ 64.99$ 72.99
参考価格7556 円8448 円
GB単価15.1 円16.9 円

帯域幅が2倍に拡張され、スペック上の性能も大幅に改善しています。読み込みは1700 MB/sから2400 MB/sへ、書き込みは1450 MB/sから1750 MB/sへ更新。

使用されているNANDフラッシュはSN500では、割とスタンダードなSanDisk製の64層3D TLC NANDを使っているのに対して、SN550では1.5倍の96層3D TLC NANDに切り替えられています。

垂直NANDフラッシュは積層数が多ければ多いほど、書き込み性能とレイテンシの落ち込みを抑えられる効果があるため、SN550の性能はいい意味で期待できます。

更に嬉しいことに、SN550はこれだけの性能アップと仕様変更にも関わらず、価格は据え置きです。コストパフォーマンス最高のNVMe SSDになる可能性は十分にありますね。

耐久性能の比較

WD Blue SN550の耐久性能

WD Blue SN550の耐久性能はごく普通です。500 GBモデルで300 TBWの耐久性能は、他のライバルSSDと比較してもほとんど変わらないか、ほぼ同じ水準です。必要十分な耐久性能と言っていいでしょう。

WD Blue SN550を開封レビュー

見るからに「WD Blue」なパッケージ

WD Blue SN550(パッケージ)

青色で構成されたシンプルなパッケージデザインで、見るからにエントリー向けモデルらしい雰囲気が出ています。

WD Blue SN550(パッケージ)

パッケージ裏面もとても簡素で、これといった情報はほとんど記載されていません。

WD Blue SN550(パッケージ)

旧モデルのWD Blue SN500と比較すると、SN550のパッケージは全体的に大人しい印象です。製品名のタイトルもフォントサイズが小さく控えめになっていて、パッと見のインパクトは減っています。

WD Blue SN550(パッケージ)

スライドして中身を引っ張り出すスタンダードな梱包です。中身は、保証書(説明書)とWD Blue SN550本体だけでした。

プラスチック製の簡易スペーサーに収まっています。

基板コンポーネントを確認

WD Blue SN550の基板コンポーネントをチェックします。

WD Blue SN550(コンポーネント)

基板上に実装されているコンポーネントは驚くほど少ないです。表面はSSDコントローラーとNANDフラッシュが1枚だけ載ってるだけで、面積のほとんどはパッケージシールで占められています。

WD Blue SN550(コンポーネント)

裏面には何もコンポーネントは実装されていません。片面実装のM.2 SSDです。

WD Blue SN550(コンポーネント)

旧モデルのSN500と基板を比較すると、M.2規格が「Key B+M」から「Key M」へと変更されています。PCIe 3.0 x2は「Key B+M」がよく採用される傾向ですが、PCIe 3.0 x4は基本的に「Key M」です。

WD Blue SN550(コンポーネント)

SSDコントローラーはWestern Digital製をアピールしつつも、実際に見てみるとSanDiskの刻印が入っています。Western DigitalはSSDの部品を製造する能力は持っていないため、SanDisk製にならざるを得ないのです。

やかもち
補足すると、SanDiskはWestern Digitalに買収されています(※2016年)。
WD Blue SN550(コンポーネント)

NANDフラッシュメモリも、同様にSanDiskの刻印が入っていました。しかし、SN550では96層の3D TLC NANDを採用しているため、どちらかと言えば東芝メモリ製のNANDフラッシュと言えます。

Western Digitalは2017年頃に、「BiCS4」という名称で96層3D TLC NANDを発表しており、開発は東芝WD連合が行っていました。だから実質的には東芝メモリ製のNANDフラッシュです(※見た目も見るからに東芝メモリ)。

初心者もち
あれれ、DRAMキャッシュはないのコレ~?

WD Blue SN550とSN500共通の特徴は、指摘のとおりDRAMキャッシュが一切搭載されていないこと。おそらく、SSDコントローラーのチューニング(調整)と、高品質なNANDフラッシュを1枚だけ使った構成で性能低下を凌ぐ設計と推測しています。

高品質なNANDフラッシュが1枚ならレイテンシもそれほど悪化しないでしょうし、DRAMキャッシュが無いとは思わせないような性能を見せるのではないでしょうか。

WD Blue SN550の性能をベンチマーク

テスト環境

WD Blue SN550のテスト環境
テスト環境「ちもろぐ専用ベンチ機」
CPUCore i9 9900K
CPUクーラー虎徹Mark II
マザーボードASRock Z390 Phantom Gaming 6
メモリDDR4-2666 8GB x2
グラフィックボードRTX 2060
SSDSATA 500GB使用SSD「Samsung 860 EVO」
電源ユニット1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」
OSWindows 10 Pro 64bit検証時のバージョンは「1903」

ちもろぐ専用ベンチ機にて、WD Blue SN550の性能を検証します。

Crystal Disk Mark 7

日本だけでなく、世界的にも定番のSSDベンチマークソフトである「Crystal Disk Mark 7」を用いて、WD Blue SN550の基本的なパフォーマンスをチェックします。

WD Blue SN550(Crystal Disk Mark 7)WD Blue SN550(Crystal Disk Mark 7)
WD Blue SN550(Crystal Disk Mark 7)WD Blue SN550(Crystal Disk Mark 7)
WD Blue SN550(Crystal Disk Mark 7)WD Blue SN550(Crystal Disk Info7)

性能の変化を確かめるため、標準設定の「1 GiB」に加えて64 MiB ~ 32 GiBの4パターンを追加してテストを行い、それぞれの結果をグラフにまとめました。

WD Blue SN550(Crystal Disk Mark 7)

まずほとんどのユーザーが注目するであろう「シーケンシャル速度(SEQ1M Q8T1)」は、64 MiB ~ 4 GiBのテストサイズでは、公称値どおりの性能が出ています。しかし、16 GiB以上では書き込み性能が落ち込み気味です。

WD Blue SN550(Crystal Disk Mark 7)

2行目の「シーケンシャル速度(SEQ1M Q1T1)」も同じような傾向です。16 GiB以上では書き込み性能が大きく下落しています。

WD Blue SN550(Crystal Disk Mark 7)

「ランダムアクセス速度(RND4K Q32T16)」は、キャッシュサイズに収まっている範囲なら悪くない結果ですが、テストサイズが大きくなるにつれて性能を失います。

WD Blue SN550(Crystal Disk Mark 7)

SSDの実質的な進化を示す4行目の「ランダムアクセス速度(RND4K Q1T1)」は、書き込みが165~168 MB/sでまずまずのスピードです。読み込みは27~33 MB/sで、お世辞にも速いとは言えません。

WD Blue SN550(Crystal Disk Mark 7で応答時間)

応答時間は読み込みが122.73 μs※で、書き込みは24.28 μsです。遅いですが、同じ価格帯のSATA SSDよりは悪くない性能です。

やかもち
エントリー向けの安価なNVMe SSDとしては、全体的にかなり頑張っている性能でした。

※「μs」はマイクロ秒。100万分の1秒です。

AS SSD Benchmark 2.0

WD Blue SN550(AS SSD Benchmark)

非圧縮データをテストに用いる「AS SSD Benchmark」でWD Blue SN550の性能をスコア化。

AS SSD Benchmark 2.0 Score

  • WD Blue SN550
    3767
  • WD Blue SN500
    3462
  • WD Black SN750
    4951
  • XPG SX8200 Pro
    4301
  • Intel 760p
    2736
  • Samsung 970 EVO Plus
    4051
  • Samsung 970 EVO
    3263
  • Samsung 860 EVO
    1193
  • Crucial MX500
    1172
  • Colorful SL500
    791

過去データと比較します。率直に言って、価格の割には非常に優秀なハイスコアです。旧モデルのSN500より1割ほどスコアが伸びており、ピーク時の性能改善がスコアアップにつながっています。

ATTO Disk Benchmark

複数のテストサイズを一括でテストして、SSDの性能の一貫性や性格を分かりやすく示してくれるATTO Disk Benchmarkを検証。

WD Blue SN550(ATTO Disk Benchmark)

意外と安定した結果です。ただし、ATTO Disk Benchmarkの画面では少し分かりづらいため、他のSSDの結果とまとめてグラフ化して視覚的に違いを分かりやすくします。

WD Blue SN550(ATTO Disk Benchmark)

WD Blue SN550のグラフはかなりキレイです。読み込み速度は約2500 MB/sあたりで安定していて、SN500より1.5倍も速い性能を出せるように。

WD Blue SN550(ATTO Disk Benchmark)

書き込み速度もグラフは直線的で割と安定している様子です。SN550は約1700 MB/sの書き込み速度で、SN500の約1460 MB/sより確実に高速化しています。

HD Tune Pro

約3500円で購入できる、シェアウェアのストレージ用ベンチマークです。ディスク領域全体に渡って書き込みを実行するテストがあるので、キャッシュの挙動(=下駄の履かされ具合)を確認しやすい便利なソフトです。

WD Blue SN550(HD Tune Pro)

読み込み速度は、それなりに一貫していて良好な結果です。若干ブレる部分もありましたが、エントリー向けのNVMe SSDなら十分です。アクセスタイムは0.022 ミリ秒で、意外と速いですね。

WD Blue SN550(HD Tune Pro)

書き込み速度はベンチマーク開始直後は、1000 MB/sを超えていますが、わずか5 GBほど書き込んだところでキャッシュを失って素の性能に戻りました。キャッシュが切れた後は、400 MB/s前後の性能を維持しています。

SLCキャッシュサイズが小さいため、アクセスタイムは0.058 ミリ秒で少し遅めです。

SLCキャッシュの有無

WD Blue SN550(HD Tune Pro)

100 GBの連続テストで、SLCキャッシュの挙動を調べました。書き込み(オレンジのグラフ)を開始して、やはり5 GBほど書き込んだところでキャッシュを失って性能が大幅に落ち込んでしまいました。

旧モデルのWD Blue SN500は、全容量のだいたい1%にあたる容量をSLCキャッシュとして利用していたので、おそらくSN550も同様に約1%しかキャッシュとして使えない可能性は高いです。

キャッシュが切れた後の性能は約450 MB/s前後しかないので、NVMe SSDらしい書き込み速度を期待している人は注意してください。あくまでもWD Blue SN550はエントリー向けであって、一貫した超高速書き込みは提供できません。

PCMark 8 Storage

WD Blue SN550(PCMark 8 Storage Test)

PCMark 8のストレージテストは、日常的な使用で想定されるアプリケーション(Adobe系ソフトやOffice系ソフトなどを中心)における実効速度を計測して、SSDの性能を評価します。

PCMark 8 Storage Test / スコア

  • Optane 905P
    5131
  • Optane 900P
    5128
  • WD Blue SN550
    5075
  • WD Blue SN500
    5054
  • WD Black SN750
    5072
  • XPG SX8200 Pro
    5076
  • Intel 760p
    5058
  • Samsung 970 EVO Plus
    5075
  • Samsung 970 Pro
    5098
  • Samsung 860 EVO
    4992
  • Crucial MX500
    4943
  • CFD CG3VX
    4907

基本的な性能が揃っているNVMe SSDなら、PCMark 8のストレージスコアはだいたい5000点を突破します。頭一つ抜けているのはIntel Optaneシリーズくらいで、既存の技術でこれ以上のスコアアップはほぼ不可能です。

PCMark 8 Storage Test / 実効帯域幅

  • Optane 905P
    1528.5 MB/s
  • Optane 900P
    1409.5 MB/s
  • WD Blue SN550
    572.3 MB/s
  • WD Blue SN500
    469.6 MB/s
  • WD Black SN750
    560.9 MB/s
  • XPG SX8200 Pro
    683.9 MB/s
  • Intel 760p
    474.1 MB/s
  • Samsung 970 EVO Plus
    562.0 MB/s
  • Samsung 970 Pro
    764.7 MB/s
  • Samsung 860 EVO
    303.3
  • Crucial MX500
    236.4
  • CFD CG3VX
    200.7

PCMark 8を実行中のスループット(転送速度)は、WD Black SN750をわずかに超えるなど、エントリーモデルにしては驚くほど優れた実効性能を記録しています。

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WD Blue SN550の性能を実運用で試す

連続書き込みテスト

1 MBサイズのブロックファイルを約15分間、連続して書き込み続けるハードなテストを本レビューより追加しました。HD Tune Proの全域テストではなぜか素の性能を暴けないSSDがあったので、より過酷なテストでSSDの素の性能を引き出します。

WD Blue SN550(連続書き込みテスト)

結果は予想を裏切り、64層3D TLC NANDを採用している旧モデルのSN500の方が、なぜかキャッシュを切らした後の書き込み速度が速いのです。一方、96層のNANDを採用したSN550は約450 MB/s前後しか出ません。

ピーク時の性能こそSN550が圧倒的ですが、5 GB以上のファイルを書き込んだ後の書き込み速度はSN500の方が有利です。

WD Blue SN550(連続書き込みテスト)

当然ながら、時間あたりの書き込み量もSN500の方が優秀です。15分間でSN500は約567 GBを書き込んだのに対して、SN550は約379 GBしか書き込めませんでした。

やかもち
それにしても、なぜ96層NANDが64層に負けてしまったのか…不可解な現象です。
重要な追記

読者さんのコメントより、上記の不可解な現象を説明する分かりやすい解説をいただいたので、こちらに引用します。

何人かの方が指摘されていますが、キャッシュ切れ後の速度が遅くなったのは、NANDのDie当たりの容量が変わったからです。「SN500では、256Gbit DieのNAND16個で設計。SN550では、512Gbit DieのNAND8個で設計。」となっているのだと思います。

BiCS3のDie当たりの記録速度は、TLCで50MB/sぐらい。BiCS4が60MB/sぐらいだと思うので、ほぼ本記事の計測結果と一致しています。

NANDフラッシュメモリのダイあたりの容量の違いが、原因という指摘です。「BiCS4が60MB/sぐらい」は、PC Watchの福田昭による記述が根拠だと思われます。

東芝-WD連合が前年のISSCC 2018で発表した96層のTLC方式512Gbitチップでは、書き込みスループットが57MB/sだった。

3D NANDフラッシュの技術開発を先導し始めた東芝-WD連合(PC Watch)」より

BiCS3の方は詳しいデータシートや記述を発見できませんでしたが、とりあえずここまでの情報を表にまとめてみます。

モデルSN500SN550
ダイあたりの容量256 Gbit512 Gbit
チップの数16個8個
容量4096 Gbit容量:512 GB
ダイあたりの性能50 MB/s57 MB/s
理論値800 MB/s456 MB/s
実測値約790 MB/s約450 MB/s

ダイあたりの性能にチップの数を掛け算して求めた理論値と、実際に計測した実測値はほとんど同じです。指摘はほぼ間違いないので、原因が分かってスッキリしました。

要するにSN550は、少ないチップ数で同じ容量を作れるようになったから「低コスト化」に成功したが、チップの数が減っているので書き込み性能は稼ぎにくい。ということです。

やかもち
今後も3D NANDは「積層化」が進んでいくけど、同じ容量だと書き込み性能が逆に下がってしまう可能性を示唆していますね。Samsungの後継EVOシリーズ、ちょっと心配になってきた。

ゲームのロード時間

「FF14:紅蓮のリベレーター」ベンチマークを使って、ロード時間を計測します。計測方法はベンチマーク終了後に記録されているログファイルを読み取るだけです。

WD Blue SN550(FF14のロード時間)

WD Blue SN550のロード時間は「11.968 秒」で、SN500よりわずかにロード時間が短縮されています。WD Black SN750よりもほんのわずかに速いので、ゲーム用には十分な性能です。

Premiere Proプレビューの「コマ落ち」

Premiere Proの動画プレビューは動画素材を置いているストレージ性能に影響を受けやすく、高ビットレート(=1秒あたりの転送量が多い)な素材であればあるほど「コマ落ち」が発生しやすいです。

この検証ではコマ落ちの頻度を計測することで、SSDの性能を評価します。コマ落ちの計測にはPremiere Proの標準機能「コマ落ちインジケータ」を使って、総フレーム数に対するコマ落ち比率で比較しました。

WD Blue SN550(Premiere Proプレビュー)
動画素材WD BlueSN550 500GBWD BlueSN500 500GBIntel Optane905P 480GBAdata XPGSX8200 Pro 512GBSamsung970 EVO Plus 250GBIntel760p 250GB
4K @448MB/s46.74%51.90%18.28%41.90%36.39%45.81%
3K @251MB/s12.08%19.90%0.00%0.00%0.00%7.66%
2K @176MB/s0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%
4K @108MB/s0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%
1080p @99MB/s0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%

プレビューの快適さは、SN500と比較して若干改善しています。1秒あたり251 MBの動画素材では、1割ちょっとしかフレームを落としませんでした。1秒あたり448 MBの素材では、プレビューはマトモにできないです。

アクセス集中時の応答時間

SSDの品質の差は、アクセス(I/O)が集中したときにどれくらい早く応答できるか?で、ある程度判断が可能です。もし品質の悪いSSDなら、本テストによってプチフリーズも観測できます。

テスト方法は非常にシンプルで、約2500枚の4K写真(全部で約56 GB)を同じストレージ上でビットマップ画像にエンコードするだけ。読み書き両方を頻繁に使い、1枚のエンコードが終わるたびにタスクが中断されるため、意外とストレスの大きい処理です。

WD Blue SN550(平均応答時間)

まずはCPUを25%(4スレッド)しか使わない、イージーモードでテストを実行します。キャッシュが効いている間はほぼゼロミリ秒に近い応答時間ですが、キャッシュが切れた後は8.15 ミリ秒で推移しました。

SSDWD BlueSN550 500GBWD BlueSN500 500GBWD BlackSN750 500GBCrucialMX500 1TBSamsung970 Pro 1TB
読み込み13.64 ms10.73 ms5.68 ms33.51 ms4.86 ms
書き込み8.15 ms3.88 ms2.89 ms10.05 ms2.06 ms
エンコード時間219.72 秒186.82 秒175.42 秒262.99 秒161.02 秒

SN550と旧モデルのSN500を同じテスト方法で比較すると、アクセス集中時の性能は残念ながらSN500の方が優秀な結果になりました。なぜSN500が上回ってしまうのか、理由は単純で…キャッシュが切れても速いからです。

では、更に条件を厳しくしてもう一度テストを実行してみましょう。

WD Blue SN550(平均応答時間)

CPU使用率を100%(16スレッド)にしてテストを実行しました。平均応答時間のバラツキは大人しくなり、全体的に応答が悪くなります。

SSDWD BlueSN550 500GBWD BlueSN500 500GBWD BlackSN750 500GBCrucialMX500 1TBSamsung970 Pro 1TB
読み込み18.06 ms15.62 ms8.31 ms42.46 ms6.79 ms
書き込み19.53 ms12.31 ms9.21 ms28.22 ms1.89 ms
エンコード時間144.22 秒95.18 秒77.05 秒221.02 秒61.48 秒

逆転はしないです。むしろ、イージーモードでは33秒しか差が無かったエンコード時間が、ハードモードでは50秒差まで引き離されています。

読み書きの両方を激しく使うようなタスクなら、旧モデルのWD Blue SN500の方が有利です。新モデルのWD Blue SN550は、ピーク性能こそ優秀ですが素の性能はなぜか劣化しています。

素の性能が悪いと、こういったアクセス(I/O)集中時のレイテンシ(応答時間)は基本的に不利にならざるを得ないです。

SSDの動作温度を確認

ベンチマーク時のセンサー温度

WD Blue SN550(SSD温度)

性能が落ちた分だけ、発熱もSN500と比較してかなり大人しくなりました。SN500では70℃を軽く超えていたのが、新モデルのSN550は60℃すら超えないです。別途、ヒートシンクを付ける必要はありません。

もちろん、サーマルスロットリングもまったく観察できませんでした。

サーモグラフィーで表面温度を確認

WD Blue SN550(サーモグラフィー)

SSDコントローラーの表面温度は65~68℃で推移しています。やはり性能が大人しいだけあって、コントローラーの温度も非常に低いです。ハイエンドNVMe SSDなら、普通に100℃は軽く超えてしまいます。

WD Blue SN550は、せいぜいコントローラーが70℃に届かない程度の温度で、NANDメモリ側も57~61℃で低温です。ヒートシンクがなくても問題なく運用が可能です。

まとめ:96層化で逆に性能が低下した実例が誕生

WD Blue SN550(レビューまとめ)

500 GBモデルがわずか約7600円。PCIe 3.0 x4接続のNVMe SSDとは思えない低価格で登場したため、検証に入る前の気持ちはホントにハイテンションでした。ついにSX8200 Proを打ち負かす時が来たのではないかと。

しかしいざ検証してみると、あまりにも振るわない結果に落胆です。特に疑問なのが素の性能の悪さです。なぜ64層NANDのSN500の方が、96層NANDのSN550より1.7~1.8倍も書き込み性能が高速なのか?

サムスンは96層化によって見事に性能を改善してみせました(970 EVO → 970 EVO Plus)。一方、東芝メモリとWestern Digital(SanDisk)が共同開発した「BiCS4」は、残念ながら性能向上どころか逆に悪化です。

思わず口から「96層まで積み上げてこの程度なの?」と、感想が溢れるくらいにWD Blue SN550にはがっかりしました。

「WD Blue SN550」の良いところ

  • ピーク時の性能は「SN500」より大幅アップ
  • SATA SSDと並ぶ価格で、SATA以上の性能
  • ランダムアクセス性能はやや改善
  • スタンダードな耐久性能
  • ヒートシンク不要なほど温度が低い
  • たっぷり5年保証
  • コストパフォーマンスは良いです
  • 「1 TB」モデルが追加されました

WD Blue SN550単体で見るなら、SATA SSDとおおむね同じ価格帯で、SATA SSD以上の性能を提供してくれる点においては強いポジションを取っています。

いくら素の性能が悪化したとはいえ、Samsung 860 EVO(500 GB)よりはまだ高速です。500 GBモデルが約7600円である限り、あえて同じ価格帯のSATA SSDを選ぶ合理性を大幅に削りきっています。

エントリー向けNVMe SSDとしては、間違いなくコストパフォーマンスに優れた選択肢です。温度もM.2ヒートシンクが不要なほど低いため、安全運用もしやすいです。

「WD Blue SN550」の微妙なとこ

  • 素の性能は旧モデル「SN500」の方が優秀
  • 96層NANDなのに64層より性能が劣化
  • 「SN500」より安くないなら買う意味は薄い

ベンチマークソフトで高い数値を眺めるなら「SN550」をオススメしますが、素の性能を重視するなら「SN500」を選んだほう良いです。

と思ったのですが、SN550の発売後にSN500が値上がり気味です。ぼくは約7600円でSN500を購入していますが、記事執筆時点(2020/01)では約8700円にまで値上がりしています。

同じ価格なら間違いなく「SN500」を推したいところを、Western Digitalはうまい具合に価格を調整しましたね。8000円後半を払うなら、ADATAの「XPG SX8200 Pro」でOKです。

つまり、低価格なNVMe SSDの実質的な選択肢は、「WD Blue SN550」か「XPG SX8200 Pro」のどちらかに限定されます。価格が元に戻れば「WD Blue SN500」も選択肢に入りますが、8000円後半では魅力を感じません。

WD Blue SN550(パッケージ)

というわけで、WD Blue SN550は「どうせ似たような値段なら、SATAじゃなくてNVMeを使ってみたい。」と考えているユーザーに強くオススメです。NVMe SSD入門モデルとして、依然として十分な競争力があります。

Western Digital / NAND : KIOXIA製96L TLC NAND / 性能 : 最大2400 MB秒 / 容量 : 500GB / 耐久性 : 300 TBW / 保証 : 5年
Western Digital / NAND : KIOXIA製96L TLC NAND / 性能 : 最大2400 MB秒 / 容量 : 1TB / 耐久性 : 600 TBW / 保証 : 5年

以上「WD Blue SN550をレビュー:SN500の後継モデルだが肝心の性能は不満」でした。

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32 件のコメント

  • 今回解説されているSSDは熱問題がなさそうとの見解ですが、
    CPU近辺にM.2スロットがある場合、空冷CPUクーラーがトップフローとサイドフローでは
    どれくらい冷却差や性能差が出るものなんでしょうか?
    話の本筋とは逸れますが、ご意見を伺ってみたいです。

    • トップフローの方が冷えやすいです。92 mmファンでゆるく風を当てるだけで50℃くらいにまで温度を抑えられるので、トップフローのこぼれ風でも冷却性能はそこそこ期待できます。
      性能差は970 ProやWD Black SN750なら出ると思いますが、SN550のように元から温度が低いSSDでは性能アップは期待できません。

      • 大変遅くなりましたが、ご返信ありがとうございます。
        現在、色々と構成を考えているのでちもろぐさんのブログがとても参考になります。
        今後の更新も楽しみにしております。

  • レビューお疲れ様です。
    読み込み主体の場合上位モデルのSN750と同等かそれ以上の性能を出している事を考えると96層NANDフラッシュ自体は順当に性能が向上してるように思えました。
    的外れかもしれないですが性能低下の要因としては、SN500はSSDコントローラーとNANDフラッシュがすぐ近くに配置されているのに対し、SN550は熱対策なのか基盤の限界まで使って両者を離した配置になっているので配線が長くなり高負荷時の性能面で足を引っ張ってるんじゃないかと個人的には考えます(ここまでくるともう個人では調べようがないですが)。
    SN500には無かった1TBモデルの存在とそれでいて引き続きSATA SSDとほぼ変わらない容量単価はやはり魅力的ですし、コンセプトから考えてもゲーム用ストレージなど大規模な読み書きを頻繁に行わない用途であれば性能向上を純粋に実感できそうかなと。

  • 耐久性能の比較のグラフにおいて、SN500の1TBモデルは存在しないのではないでしょうか?

  • これはファームウェア更新が来る可能性がありますね。前モデルよりも劣化しているという状況はまずいでしょうから。

  • 暮れの記事で、とても推しておられたので、XPG SX8200 Proを買いましたが、
    両面実装で取り付けられず、wd blackを買いなおしました。
    容量重視なら、今回のwd blueも悪くないのではないでしょうか。

  • キャッシュがキレた後の書き込み速度の低下は新コントローラーが1Tモデル向けにデザインされている為だと思われます。1Tモデルだと、キャッシュが切れても~850MB/sの書き込み速度を維持出来ているのですが、500GモデルだとNANDがコントローラーと完全にマッチしていない為、書き込み速度も半減しているのだと思われます。

  • 更新おつかれさまです
    最近のSSDは安いですね
    温度の事も踏まえると確かにSATAからのお試し付け替えにも良さそうですね

    ところでどんなもんかと思い某密林で調べてみたら、内容(特に画像)を転載したようなレビューがありました
    …ご本人でしたら申し訳ないです

  • NANDフラッシュチップは1枚ですが中身は複数のダイを積層しています。
    96層化したことでダイあたりの容量が増えたため積層される数が減り≒(並列度が下がり)書き込み速度が低下したものと考えられます。
    1TB版の追記を希望します。

    • Ryzen環境は平均応答時間の計測に苦労しているので、今のところは過去データも豊富で比較がしやすいIntel環境でテストを実行しています。

  • いつも分かりやすい記事をありがとうございます。
    昨年春にドスパラでデスクトップPCを買ってから拡張が楽しくて仕方ありません。機器を増設してはひとりでニヤリ。そして昨年末にNVMeの誘惑にたまらずSN500(7,480円)を買いました。(だってそこに取付スペースがあるから・・・!!)

    今回のタイトルを見て、しまった!旧バージョンだったのか!と一瞬後悔を感じましたが、検証結果を見るとSN500で良かった・・と安堵しております。
    初めてのM.2増設で感じたのは、まず取付ビスが無いこと、これは以前PC内部を見たときに把握していたので一緒に注文しました。取付作業を開始したら、あら、スタッドがない!ということでおあずけ。追加でスタッドを注文。ここらへん、皆さんハマってませんかね?
    ということで、動画のほうも楽しみにしております!

  • 本SSDをパーテーション分けしてシステムドライブとゲーム用ストレージにした場合、プチフリーズの発生率やマップのテクスチャ読み込みの遅れなどはSSDを2つ用意してそれぞれに入れた場合と比べると増えますか?

    • ゲームするくらいなら、WD Blue SN550でプチフリーズはまず発生しないです。予算の問題でSSDを分けられないなら、同じSSD上にOSもゲームも入れてしまって大丈夫です。

      • すみません補足でゲームプレイ中に裏でChromeで300タブほどとHTML5のブラウザゲームを開いた場合ではどうでしょうか

  • BiCS4は一部をQLCにするという挙動があるらしいので、性能劣化はそのせいではないでしょうか?
    Gen4のものもそうですが、キャッシュを剥がすような使い方は想定してないとか?

  • 通りすがりに失礼します。
    古い記事ですが、PC Watchに「PCIeの高速化と3D NANDの低速化による性能ギャップがSSDで顕在化」という記事があるので御一読されると良いかも。
    (PC Watch>イベント>Flash Memory Summit>2019)

  • パソコンショップのアークさんだとmsi等のノートをBTO出来たりするんで、低発熱でそこそこ高速、TBWも512GBで300TBWあるなら標準SSDから取り替えるにはいい選択なのではないかなあとは思いました。ノートなら猶更、低発熱の方がいいと思うし。

  • 何人かの方が指摘されていますが、キャッシュ切れ後の速度が遅くなったのは、NANDのDie当たりの容量が変わったからです。
    SN500では、256Gbit DieのNAND16個で設計。SN550では、512Gbit DieのNAND8個で設計。
    となっているのだと思います。
    BiCS3のDie当たりの記録速度は、TLCで50MB/sぐらい。BiCS4が60MB/sぐらいだと思うので、ほぼ本記事の計測結果と一致しています。

    • 非常に分かりやすい指摘、ありがとうございます。記事にも追記させて頂きました。
      BiCS4の性能は、2018年に発表されたデータによれば「57 MB/s」のようです。8を乗ずると「456 MB/s」で、実測値とほぼ一致しました。

  • たいへん参考になりました。
    ただ、高々容量500GBのディスクで 450MB/s以上の書き込み性能が必要になる機会ってありますかね?SSD to SSDのコピーぐらいしか思いつきませんが、5TB以上のディスクコピーを頻繁にするような人はストレージにHDD使いませんか?
    それとも、保存の必要な有意なデータを 450MB/sで生成することがあるのでしょうか?

  • 他のレビューではキャッシュを使い切ったあとも800MB/s程度の速度が出ているようですが、この差は何なんでしょうか?

  • 1TBモデルならキャッシュ切れたあとも900MB/s近い速度が理論上出るはずだしコスパがヤバすぎるのでオススメ

  • SN550を今使っているのですが、ClystalDiskMark8.0.1のRND4KQ32T1(ReadとWrite)の測定値が390MB/S近くと低いように感じるのですが正常でしょうか?
    また、二ヶ月前ほどに使っていたときはWindowsの起動中のぐるぐる?が表示されないほど早かったのですが、今はSATA SSDと同じくらいの速度になってしまってます。これは修理に出したほうが良いでしょうか?
    教えていただけると助かります。

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