グラボの生産量世界1位の超大手メーカー「Palit」さんより、「RTX 3070 Ti GameRock OC」を提供してもらったので、冷却性能や動作音やオーバークロック耐性など。まるまる詳しくレビューします。
(公開:2021/7/17 | 更新:2021/7/17)
スペックと仕様を解説
RTX 3070 Ti GameRock OCのスペック
製品 | Palit RTX 3070 Ti GameRock OC | NVIDIA RTX 3070 Ti |
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シェーダー数CPUのコア数に相当 | 6144 | 6144 |
RTコア数レイトレ用の特化コア | 48 | 48 |
ブーストクロックデフォルト設定 | 1845 MHz(+4%) | 1730 MHz |
VRAM | GDDR6X(Micron)8 GB | GDDR6X(Micron)8 GB |
VRAMクロック | 19 Gbps | 19 Gbps |
PCIe | Gen 4.0 | Gen 4.0 |
TDP | 330 W | 290 W |
補助電源 | 8 + 8 pin | 12-pin |
寸法(cm) | 30.4 x 13.6 x 6.0 cm | 26.7 x 11.2 x 3.9 cm |
占有スロット | 2.7 | 2 |
US価格 | $ 649 | $ 599 |
参考価格 | 105000 円 | 89890 円 |
「Palit RTX 3070 Ti GameRock OC」は、Palitが日本国内で販売するRTX 3070 Ti搭載の空冷モデルとして、事実上の最上位に位置づけられるハイエンドモデルです。
- GameRock OC(今回レビューするモデル)
- GameRock(↑の無印モデル)
- GamingPro(廉価モデル)
ブーストクロックは1845 MHz(+4%)までオーバークロックされ、TDP(消費電力の目安)は290 Wから330 Wへ増えてます。
消費電力が増えた分だけ冷却性能も要求されるため、ボードデザインも大型化。NVIDIAのリファレンスモデルと比較して一回り大きいです。厚みは60 mm(2.7スロット占有)に達し、肉厚なヒートシンクで放熱性能を稼ぎます。
希望小売価格は、NVIDIAの示すMSRPにおそらく50ドルを足したくらいです。国内販売価格はドスパラWebにて105000円(2021年7月時点)。同モデルのRTX 3070版が113000円ですので、相対的に安いとは言えます・・・(相対的に)。
絶対的に見れば、649ドルが105000円に跳ね上がっているわけですから、まぁ高いですよね。国内代理店がマトモな値付けをしていた頃のレートを採用すると、649ドルは8.8~8.9万円が適正です。
外観とデザインをチェック
ファンシーな雰囲気のパッケージデザインです。
開けやすくて個人的に好きな、底からめくり上げるタイプのパッケージ。1段目にノベルティやマニュアルが、2段目にグラフィックボード本体と分岐ケーブルが収納されてます。
付属品は「マニュアル」「Palitオジリナルカレンダー2021」「電源分岐コネクタ」など、必要最低限です。
グラフィックボード本体のLEDライティングを制御するための「ARGB SYNCケーブル」も付属します(マザーボード上の+5V ARGBヘッダーで使用可能)。
ボードデザインはとても大きいです。全長30.4 cmは明らかにPCケースを選びます。シュラウドやバックプレートは金属製でチープさを感じませんが、サーマルパッドが挟まっていないので冷却性能への恩恵は少ないです。
横からボードを眺めるとアルミニウム製のヒートシンクがみっちり詰まってます。ボードの厚みを実際に測ると60 mmでした。公称値で2.7スロット占有、しかし実際はほぼ3スロット相当のスペースを占有します。
TDP:330 Wに対応するボードデザインと考えればそれほど狂気ではないものの、やはり全長30.4 cmの厚み60 mmはかなり巨大です。PCケースを選ぶ可能性が高いので注意が必要です。
冷却ファンは実測90 mmの大型トリプルファンを搭載します。
冷却ファンのブレード枚数は9枚です。
バックプレートの一部は「ベント」デザインを採用しています。冷却ファンが吸い取った空気を、そのままバックプレート側からまっすぐに排出できるデザインです。
PCIeスロット | 最大75 W |
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補助電源(8ピン) | 最大150 W |
補助電源(8ピン) | 最大150 W |
合計 | 最大375 W |
補助電源コネクタは「8 + 8ピン」です。PCIeスロットと合わせて、仕様上は最大375 Wの給電能力が確保されています。
映像出力端子は4つあります。
- DisplayPort 1.4a(4K @120 Hz / 8K @60 Hz)
- DisplayPort 1.4a(4K @120 Hz / 8K @60 Hz)
- DisplayPort 1.4a(4K @120 Hz / 8K @60 Hz)
- HDMI 2.1(4K @120 Hz / 8K @60 Hz)
同時出力は4画面まで対応。HDMI 2.1とDisplayPort 1.4aは、4K @120 Hzまたは、8K @60 Hzに対応可能です(参考:HDMI規格と対応してるリフレッシュレートを解説)。
バックプレート後方に位置するスイッチは「BIOS切り替えボタン」です(※出荷時はP MODEにスイッチが入っています)。
- P MODE:Performance Mode(ファンを回して性能を重視)
- S MODE:Silent Mode(ファン回転数を抑えて静音性アップ)
スイッチをスライドして切り替えるだけで、性能重視 or 静音特化のBIOSに切り替えができます。BIOSによってどの程度、冷却性能や静音性能が変化するかは後ほど詳しくテストします。
LEDライティングについて
Palit RTX 3070 Ti GameRock OCは、ボード一面が宝石か氷のような装飾の中にLEDライティングを搭載。
側面はGeForce RTXとGameRockのロゴが光ります。
LEDライティング(参考) | |
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「Palit RTX 3070 Ti GameRock OC」の性能テスト
テスト環境(スペック)
テスト環境「ちもろぐ専用ベンチ機」 | ||
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CPU | Ryzen 9 5950X | |
CPUクーラー | Corsair H100i Pro RGB240 mm簡易水冷クーラー | |
マザーボード | ASUS ROG STRIXX570-E GAMING | |
メモリ | DDR4-3200 16GB x2使用メモリ「G.Skill Trident Z C16」 | |
グラフィックボード | Palit RTX 3070 Ti GameRock OC | |
SSD | NVMe 500GB使用SSD「Samsung 970 EVO Plus」 | |
SATA 2TB使用SSD「Micron 1100」 | ||
電源ユニット | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
OS | Windows 10 Pro 64bit検証時のバージョンは「2009」 | |
ドライバ | NVIDIA 466.77 / AMD 20.8.3 | |
ディスプレイ | 3840 x 2160@60 Hz使用モデル「BenQ EL2870U」 |
「Palit RTX 3070 Ti GameRock OC」をテストする、ちもろぐ専用ベンチ機の最新スペックです。
CPUはコンシューマ向けで最強の性能を持つ「Ryzen 9 5950X」です。マザーボードは、5950Xを問題なくブーストできる「ROG STRIX X570-E GAMING」を使ってます。メモリは容量を32 GB、クロックはDDR4-3200です。
その他のパーツは適当に組み合わせています。テスト時のグラフィックドライバは、NVIDIA 466.77(RTX 3070 Ti対応ドライバ)です。
ゲーム向け定番ベンチマーク
3DMarkベンチマークの「FireStrike(DX11)」「TimeSpy(DX12)」をテスト。Turing世代で最上位のGeForceだった「RTX 2080 Ti」とほぼ同じスコアです。
VRゲーム性能:VRMark
VRゲーム向けの性能を評価する「VRMark」のテスト結果です。基本的にRTX 2080 Tiと同じ性能を示しますが、Blue Room(5K解像度)はVRAM容量の差が出てしまった様子。
【1920 x 1080】フルHDゲーミングの性能
「Palit RTX 3070 Ti GameRock OC」のフルHDゲーミング性能は約158 fpsです。RTX 3080とRTX 3070の間を埋める性能です。
RTX 3070 Ti平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
フルHDゲーム(1920 x 1080)における、検証したそれぞれのデータをまとめた↑スライドです。
【2560 x 1440】WQHDゲーミングの性能
「Palit RTX 3070 Ti GameRock OC」のWQHDゲーム性能は平均118 fpsで、RTX 3070を約8%上回る性能です。
RTX 3070 Ti平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
WQHDゲーミング(2560 x 1440)における、検証したそれぞれのデータはこちら↑のスライドをじっくり見てください。
【3840 x 2160】4Kゲーミングの性能
「Palit RTX 3070 Ti GameRock OC」の4Kゲーム性能は平均67.3 fpsで、快適とされる平均60 fps台に乗っています。NVIDIA DLSS対応のゲームなら、4Kゲーミングを余裕でプレイできる性能です。
RTX 3070 Ti平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
4Kゲーミング(3840 x 2160)における、検証したそれぞれのデータはこちら↑のスライドをじっくり見てください。
なお、RTXシリーズならではの独自機能「NVIDIA RTX(レイトレ)」や「NVIDIA DLSS」を使用したときの性能については、↑こちらのレビュー記事で詳しくデータを解説しています。
熱と消費電力を実測テスト
ゲーミング時の実効GPUクロック
検証タイトル | FF15 | FF14 (漆黒のヴィランズ) | 3DMark TimeSpy |
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最大値 | 2010 MHz | 2010 MHz | 2010 MHz |
平均値 | 1979 MHz | 1959 MHz | 1989 MHz |
ブーストクロック | 1845 MHz |
ゲーム中のGPUクロックは、平均値で1959 ~ 1989 MHzです。
Palit RTX 3070 Ti GameRock OCの出荷時のブーストクロック設定は1845 MHzで、実際のGPUクロックは問題なく仕様値を上回っています。
グラボ温度とファンの動作音(騒音)
グラフィックボードの温度(GPUコア温度)は、FF15ベンチマーク(4K)実行中で最大67.8℃(平均64.8℃)です。TDP:330 Wのボードの割にはよく冷えていますが、動作音はどうでしょうか?
グラフィックボードから50 cmの距離で、デジタル騒音ロガーを使って動作音(騒音値)を1秒ずつ測定します。ファン回転数は平均1683 rpmで、騒音値は43.9 dbでした。
40 dBを超えてしまうと、残念ながらあまり静かとは言えない動作音です。
BIOS切り替えボタンを「P MODE(Performance Mode)」から、静音重視の「S MODE(Silent Mode)」に切り替えて、同じテストを行います。
FF15ベンチマーク(4K)実行中で最大68.2℃(平均64.4℃)です。BIOSモードを切り替えても温度はほとんど変化なし。
ファン回転数は平均1695 rpmで、P MODEとほとんど変わってません。ファン回転数が変わっていないので、動作音も平均44.3 dBでほぼ変化が見られません。
消費電力を実測してテスト
FF15ベンチマーク(高品質)を実行中に、電源ユニットの消費電力ロガー機能(1秒ずつ)を使って、グラフィックボード単体の消費電力を測定した結果です。
- フルHD:244.3 W
- WQHD:267.1 W
- 4K:282.4 W
Palit RTX 3070 Ti GameRock OCのTDPは公称値で330 Wです。実際の消費電力はフルHD時に約244 W、4Kゲーミング時に約282 Wでした。TDP以内に収まる消費電力です。
1時間のストレステストを試す
3DMark TimeSpy StressTest(GPU使用率は常時100%近い状態)を使って、「Palit RTX 3070 Ti GameRock OC」に1時間ほどストレスを掛け続けてみます。
GPU使用率100%の負荷を、1時間に渡ってかけ続けても動作はとても安定しています。GPU温度は平均69℃(ホットスポットで平均79℃)です。TimeSpy Stress Testの安定性評価は98.8%で余裕のクリア(※3DMarkによると97%以上で合格)。
GPUクロックも安定した動作です。1時間のグラフだとデータが多すぎて見づらいので、20分間に拡大したグラフをチェック。
ストレステスト中に測定されたGPUクロックは、最大で2010 MHzに達し、平均値では1982 MHzです。今回レビューした個体は、公称値の1845 MHzを大幅に超えるクロックで動作します。
サーモグラフィカメラで表面温度を撮影
ストレステストを開始して50分あたりで、サーモグラフィカメラを使って「Palit RTX 3070 Ti GameRock OC」の表面温度を撮影しておきました。
バックプレートの温度は40℃前後で、チップの密集地帯は45~48℃ほど、特に問題なく冷えている様子です。
ファン側から撮影したヒートシンクは32 ~ 37℃前後です。
側面から基板本体の温度を見てみると、52 ~ 58℃前後で推移しています。
補助電源コネクタの接続部は47℃程度でした。
オーバークロックを検証
手動オーバークロックで2 GHz以上を狙う
RTX 3070 Ti GameRock OCを手動でオーバークロックして、2 GHz以上の動作を狙います。使用したソフトは「MSI Afterburner」です。スライドを動かし、以下のような設定を施しました。
手動オーバークロック | Power Limit:109% Temp Limit:85℃ Core Clock:+130 MHz(1975 MHz) Memory Clock:+1000 MHz(21 Gbps) Fan Speed:70%に固定 |
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コア電圧は追加できなかったので、電力制限のみ109%に引き上げます。GPUコアクロックは+130 MHz(1975 MHz)、メモリクロックは+1000 MHz(= 21 Gbps)です。
さらに、ファン回転数を70%に固定して冷却性能を稼ぎます。RTX 3070 Tiは自動OC機能「GPU Boost」に対応しているので、基本的に冷やせば冷やすほどGPUクロックが伸びやすいです。
オーバークロックと性能
定番ベンチマークの3DMarkとVRMarkでは、オーバークロックで5.8~7.5%の性能アップを確認。
Watch Dogs Legion、FF15、Cyberpunk 2077、Assassin’s Creed Valhallaの4タイトルを4K解像度でベンチマーク。
オーバークロックの伸び幅は最大13.5%です。平均すると約8.4%の性能アップで、ブーストクロックの伸び幅(1845 MHz → 1975 MHzで約7.0%)におおむね比例した効果が得られています。
GPUクロック、温度、消費電力
FF15ベンチマーク(高品質)を4K解像度でテスト中に、HWiNFOを使って「GPUクロック」「GPU温度」「消費電力」の変化を記録。GPUコアクロックから見ていきます。
GPUクロック(平均値)はオーバークロック時で平均2092 MHz、出荷設定だと1979 MHzでした。設定した+130 MHzに届きませんが、およそ100 Mhzはブーストクロックが伸びています。
同じグラフィックボードの比較ですので、実測ではなくソフト読みで比較します。
グラボ本体の消費電力は290W → 297 Wへ、約2.4%増えました。設定で109%まで電力制限を引き上げた割に、実際の消費電力はほとんど増えていないようです。
実は、GPUは冷やすと消費電力が下がる傾向があるので、おそらくファン回転数を70%に固定した積極的な冷却が原因で消費電力が伸びにくいです。
まとめ:見た目は派手だが性能は真面目
「Palit RTX 3070 Ti GameRock OC」のデメリットと弱点
- 全長30.4 cm(PCケースに注意)
- 分解すると保証無効(封印シールあり)
- 動作音はやや大きい(43~44 dB)
- 「S MODE」が静音じゃない
- 国内1年保証
「Palit RTX 3070 Ti GameRock OC」のメリットと強み
- 標準で+4%のオーバークロック
- オーバークロックの余地あり
- RTX 3070 Tiを余裕で冷やす性能
- 60 mm厚 & 大口径トリプルファン
- ボード一面を覆うLEDライティング
- デュアルBIOS仕様
「Palit RTX 3070 Ti GameRock OC」はボード一面がLEDライティングで覆われたファンシーな見た目と、Palitの最上位シリーズらしい優れた冷却性能を両立するオリファンモデルです。
ジュエリーを意識した派手なデザイン性は明らかに人を選ぶものの、依然としてトレンドのひとつである「光るゲーミングPC」を自作するうえで確実にニーズがあります。LEDで派手に光らせたいし、性能も普通に欲しいゲーマーにベストな選択肢です。
なお、注意点は2つあります。1つは出荷設定のファン回転数。かなり積極的に冷やす設定なので静音性はイマイチ、BIOSモードの「S MODE」も動作音はほとんど変化しません。静音性を求めるなら、自分でファン回転数を設定してください。
2つ目はサイズです。厚み60 mm(実質3スロット占有)かつ、全長が30.4 cmに達する巨大なボードデザインゆえ、PCケースを若干選びます。PCケースが入り切るかどうか、事前に調査する必要があります。
以上「Palit RTX 3070 Ti GameRock OCをレビュー:派手に光る冷える高性能グラボ」でした。