最近、ドスパラを筆頭にBTO各社で採用され始めている「Colorful SL500」という中華製SSD。ドスパラマシンを検証するついでに、このSL500という信頼し難いSSDを詳しく検証したのでレビューとして本記事にまとめます。
Colorful SL500のカタログスペック
スペック | SL500 640GB | MX300 525GB |
---|---|---|
規格 | 2.5 inch | 2.5 inch |
コントローラ | Silicon Motion SM2258XT | Marvell 88SS1074 |
DRAM | なし | Micron LPDDR3 |
NAND | Intel 3D TLC | Micron 384Gb 32層 3D TLC |
読み込み(Seq) | 最大540 MB/s | 最大530 MB/s |
書き込み(Seq) | 最大450 MB/s | 最大510 MB/s |
4kB Random Read QD32 | 75000 IOPS | 92000 IOPS |
4kB Random Write QD32 | 75000 IOPS | 83000 IOPS |
TBW | 不明 | 160 TB |
保証 | 3年 | 3年 |
MSRP | $129.99 | $ 129.99 |
価格が非常に近い、Crucial MX300のスペックとまとめてみた。残念ながらColorfulのSSDは情報公開に乏しく、透明性に欠けます。
NANDフラッシュはIntel製の「29F04T2AWCMG2」が使われているが、これはIntelのデータシートに掲載されておらず、過去IntelのSSDに採用された事例は一件もありません。
Intel ARK内で「SSD 640GB」と検索をかけてくまなく調査しましたが、過去Intelが640GBのSSDを販売したことは無さそうです。よってSSDに使われた実績のあるNANDなのかどうか怪しい。
次にSSDコントローラ。代理店のリンクスインターナショナルによれば…
「Silicon Motion製コントローラIC SM2258XTを搭載しています。高速転送と優れたランダムアクセス性能を実現します。」
という触れ込みだが、SM2258は比較的ローエンドのSSDに広く採用される傾向のあるコントローラです。しかも「SM2258XT」はキャッシュ非対応型なので、下位版とも言える。
Colorful SL500はDRAMキャッシュを一切載せていないので、たしかにSM2258XTが適任のコントローラではあるんですけどね。…そう、DRAMキャッシュが無いんですよ。
じゃあどこをキャッシュとして使って、公称値の書き込み540 MB/sと書き込み450 MB/sを実現するのって話になります。恐らく、予備領域の一部をSLCキャッシュとして使う仕組みです。
実はSL500に使われているNANDフラッシュは768GBの容量があります。実際に使えるのは640GBで、余った128GBを「予備領域」として活用していると推測できる。
Colorful SL500の外観をチェック
パッケージングは簡素です。マットブラックなアルミケースに、COLORFULのログマークが刻印されているのみ。
裏面にシールが貼られている。
Micron 1100 SSDの性能を検証(ベンチマーク)
Crystal Disk Mark 6
まずは国内で定番のストレージ向けベンチマークである「Crystal Disk Mark 6」から試してみよう。
テストの内容は、指定したサイズのファイルをSSDに読み書きを行い、その速度を計測するというもの。サイズを変えることにより、テスト対象のSSDが持つ特徴を確かめることが可能。
50MB
Crystal Disk Mark 6で検証可能な最も小さいサイズ「50MB」のテスト結果。小さいサイズほどSSDは公称値通りのパフォーマンスを出しにくくなるが、まぁまぁ速度が出ています。
読み込みは503.4 MB/sで公称値に遠いが、書き込みは464.2 MB/sで公称値を上回っている。カタログスペックの時点では期待していなかったが、案外行けるんだな。
1000MB
標準的な「1GB」サイズ。書き込みはやはり公称値には遠い。そしてキューを重ねた時の性能が全体的に低下。書き込みはさほど変化なしです。
4000MB
大きめの「4GB」サイズ。SLCキャッシュが効きやすいのか、シーケンシャル速度は良い感じに改善したが…それ以外のパフォーマンスは更に低下しています。
16000MB
更に大きな「16GB」サイズ。シーケンシャル速度は安定しているが、キューを重ねたり、ランダムアクセス速度となると悪化する一方ですね。
32000MB
最も大きい「32GB」サイズ。酷いですね。データサイズを大きくすればするほど、キューを重ねる複雑な処理は低速化し、ランダムアクセス速度も悪化してしまう。
データサイズ | 50MB | 32000MB | ||
---|---|---|---|---|
速度 | 読み込み | 書き込み | 読み込み | 書き込み |
シーケンシャル | 503.4 MB/s | 464.2 MB/s | 519.5 MB/s | 461.7 MB/s |
4KB Q8 / T8 | 204.2 MB/s | 336.4 MB/s | 181.6 MB/s | 134.1 MB/s |
4KB Q32 / T1 | 204.0 MB/s | 337.9 MB/s | 181.7 MB/s | 134.1 MB/s |
4KB Q1 / T1 | 24.9 MB/s | 98.6 MB/s | 20.8 MB/s | 67.9 MB/s |
というわけで、DRAMキャッシュが無いと一貫したパフォーマンスは期待できないことを実証してしまった形に。
Colorfulよりも安い、超格安SSDと比較
最近ポータブルSSD用に購入した「Micron 1100 2TB」とパフォーマンスを比較してみた。
見ての通り、すべての項目でColorful SL500が勝っている要素はゼロ。この時点でSL500を選ぼうという気は、…おそらく起きないだろう。
AS SSD Benchmark 2.0
テストデータに非圧縮データを使うのが特徴的なAS SSD Benchmarkを検証。どちらも公称値にほど遠い結果になっているが、思っているより落ち込みは少ない。
総合スコアは791点。ローエンドSSDの域です。
- SL500 640GB:791点
- Micron 1100 2TB:1132点
- Crucial MX500 525GB:1224点
- Samsung 960 Pro 2TB:4415点
キャッシュ搭載のSATA SSDだと、最近は1000点を超えるのが当たり前の状況になってきた。
ATTO Disk Benchmark
様々なテストサイズで一括テストができるATTO Disk Benchmark。SSDの良し悪しが分かりやすいソフトです。
意外にも割りと安定しています。扱うデータ量が大きくない内はSLCキャッシュが上手く機能するようです。
最大の弱点、大容量ファイルの書き込みがダメ
ここまでのベンチマーク結果を見る限り、Colorful SL500は想像以上に悪くないSSDだと思ってしまう。某秋葉原のレビューサイトでも、「想像以上のSSD」と評されているとおりです。
しかし、DRAMキャッシュは無いし、SSD採用歴が怪しいNANDを使っているわけです。欠陥が無いとは思えない…そこで、Steamゲーム(256GB分)の書き込みを実行させてみた。
予想は的中。転送速度が全く安定しません。書き込みサイズが80GBを超えたあたりから、頻繁に速度が1~6MBまで落ち込みます。
残り10分と表示されているが、実際に256GBの書き込みが終わるのに掛かった時間は…64分ほど。最後の方になるにつれて、転送速度は低下していきました。
録画倉庫や写真倉庫として、大量のデータを格納しようと思っているならSL500は選択肢から外したほうが良いですね。特に録画はダメでしょう。
PS4用に使う場合も、データ移行にものすごく時間がかかることを覚悟したほうが良い。データが大きいほど、書き込みが終わるのにかかる時間は伸びます。
256GBの移動に今回は1時間弱ですが、仮に500GBだと3時間くらいかかるかもしれない。1TBならどこまで伸びるのだろうか、8~9時間掛かっても違和感無いな。
まとめ「典型的な、安かろう悪かろう」
ハッキリ言って、他人に自信を持ってオススメできるSSDではありません。一貫したパフォーマンスを出せないため、事前に用途をハッキリさせておく必要がある。
- 古いノートパソコンのリノベーション
- 格安自作PCのシステムストレージ用
こういう使い方に、お似合いなSSDです。まぁ…上記2つが目的なら、Silicon Power S55の方が適任なので、あえてSL500を選ぶ必要性は無かったりするが。
不透明な部分が多いのも問題
性能だけでなく、情報に不透明な部分が多いことも、SL500をオススメしない理由です。
- 書き込み耐性(TBW)は非公表
- SL500で採用されているNANDはSSD採用歴無し
- Colorful公式ページのスペックシートがテキトーすぎる
- 肝心なところが掲載されていない代理店のスペックシート
信頼に足るSSDベンダーである「Samsung」「Micron」「Intel」の3社は、基本的にWebページまたはPDF形式の詳細なスペックシートを公開しています。
しかし、Colorfulのスペックシートは意味のないモノですし、国内代理店リンクスインターナショナルの製品ページもTBWが非掲載など、情報が少ない。
SSD選びの基本は、中身がいったい何なのか分かりにくいSSDを選ばないこと。中国語で検索する技術があれば何とかなるが、それを踏まえたとしてもSL500は微妙です。
Colorful SL500 640GB / レビューまとめ
- 容量単価は確かに安い(2018年6月時点)
- リノベーション用なら悪くない
- 一貫性の無い、不安定な性能
- TBWが非公表だから寿命を推測できない
- メーカー側の不透明で、不誠実な姿勢(代理店含む)
- 某レビューサイトのべた褒め記事の存在…
- そもそも「Micron 1100」に、容量単価で30%も負けている
「オススメのSSDです。」とは言えないな…。
以上「Colorful SL500 640GBをレビュー:噂の中華製SSDは買いか?」に対するファイナルアンサーは、「買う必要性は薄い。」でした。
2018/06時点:容量単価で最安かつ、高信頼のSSD
国内にどれだけの在庫が存在するのか不明ですが、2018年6月時点では「Micron 1100 SSD」が過去に例がないGBあたり17円を実現しています。
レビューした結果、信頼に足る優秀なSSDなので「安くて大容量、更に信頼性も欲しい。」という煩悩の多い方にオススメのSSDですよ。
なぜドスパラで採用したのだろうか。初期のSSDとかよりはましだろうけど・・・
ドスパラの電源評判なくなってきたのに今度はSSDになりそうだ。
それに〇の中にIntel入ってないのにIntel製とはたまげたなぁ
格安レイド構成ぐらいなら使えるかな?
< それに〇の中にIntel入ってないのにIntel製とはたまげたなぁ
実は、IntelのNANDフラッシュはそういう印字なんですよね。
この画像はIntel Optane SSD 900p(元画像はAnandtechより)ですが、見ての通りロゴマークの中にIntelの文字は印字されていません。
Colorfulを擁護するつもりはないですが、偽チップかどうかまでは断定できないのです…。
なるほどそうでしたか
全部Intel入ってるとばかり思ってました
有難うございます
レビューお疲れ様、気になっていたので助かりました。
お勧めする、Silicon Power S55にSL500と同じテストを実施して公表して頂けませんか?
(特に250GB連続書き込み)
このブログ内を探しているのですが見つからないので・・・お勧め品とSL500でどう違うかを知りたいです。
そういえばHD Tune Proは使わないのかな?タスクマネージャーで十分?
今更こんな古い記事にコメントするのもなんですが、このColorfulと代理店であるリンクスインターナショナルは偽造粗悪チップの件について言い訳と隠蔽を繰り返していたので絶対に買わないほうがいいと思います。
低品質なのはもちろん、詐欺師にお金を払うことになります。
古いモノへのコメントになります。
娘が購入したFRONTIERというメーカーのディスクトップパソコン(ミドルタワー)に搭載されていた480GB(SL500)のSSDでしたが、ある日から極めて動作が遅くなりました。だけなら良いのですが、データーの変更を一切受け入れず、ファイル削除やフォーマットもできない状況になりました。
換装を考えて、データーを消すためにネットで調べてdiskpartコマンドやCCクリーナーのドライブワイパーを実行しても、完了まではしますが再起動するとゾンビのごとく元の状態に戻っています。
最後は電子レンジ(危ないと思ったのですがこれもネットで調べた方法)で30秒ほどを暖かくなるまで、3回繰り返しましたが、変化無く最後はハンマーで物理的に破壊しました。
中国製恐るべしでした。Wi-Fi環境ですから初めからSSDに悪意あるプログラムが入っていたら情報流出の恐れも。NANDフラッシュ(不揮発どころでない)もインテルの皮を被った中国製なんではないでしょうか?あはは考えすぎですね。
自分も2018年あたりにFRONTIERでPCを購入した際にこのSSDが搭載されていて、動作がおかしくなった覚えがあります。
今は別のメーカーのM.2 SSDが搭載されているらしいですが、あの頃にPCを買ってしまった人は不遇だったと思いますね…