ハイエンドなデスクトップPCと体感それほど変わらないレスポンスを実現する、Zen 4世代のCPU「Ryzen 5 7640HS」を搭載しながら5万円台で買えるミニPC ――。
「MINISFORUM UM760 Slim」を買ってみた。楽天市場で実質5.1万円から買える驚異的な安さです。他のミニPCと比較しながら詳しく実機レビューします。
(公開:2025/1/11 | 更新:2025/1/11)
MINISFORUM UM760 Slimの仕様とスペック
「MINISFORUM UM760 Slim」は、CPUに「Ryzen 5 7640HS(6コア12スレッド)」を、内蔵GPUに「Radeon 760M(最大2.8 GHz)」を搭載します。
珍しいスペックと価格設定です。
上位モデルのRyzen 7 7840HSなら8万円台の価格帯にゴロゴロとある一方、Ryzen 5 7640HSに切り替わった途端にラインナップが大きく減っています。
マトモなメーカーに絞り込むと、今回レビューするUM760 Slimくらいしか選択肢が無かったです。
ハイエンド級の体感性能を誇るZen4世代の6コアCPUに、高いクロックでゲームをぶん回せるRadeon 760Mを搭載しながら、実質5万円台はうまいところを突いています
その代わり、USBポートとLANポートの数が中華ミニPCの割にやや少なめですが、一般的な使い方であれば十分なポート数です。
むしろLANポートが2個あっても正直1個しか使わないから、LANをあえて1個に削って価格を下げてほしい、と思っているユーザーは少なくなかったはず。
楽天市場のMINISFORUM公式ショップにて、19%割引クーポンとポイント還元(※筆者は最低7.3%)をあわせて実質5.1万円で購入できました。
MINISFORUM UM760 Slimのデザインとパーツ構成
パッケージデザインと付属品
楽天市場で注文してから約1週間で届きました。
マットブラックカラーの背景に、濃いオレンジ色の側面と英字フォントが目立つパッケージデザインです。
パッケージの裏面に、販売メーカー名(Micro Computer HK Tech Limited)や製品スペック(16 GB + 1 TB)、PSE認証マークまで記載されています。
3段重ねの梱包です。
箱を覆っている化粧カバーを取り外して箱を開封すると、MINISFORUM UM760 Slim本体が収められた梱包ボックス、付属品の入った黒い箱が順番に入っています。
- 電源ケーブル
- HDMIケーブル
- サポート連絡先カード
- ACアダプター
- VESA変換マウントキット
- VESA固定用ネジ(6本)
- ゴム足(予備2本)
- 製品マニュアル
必要十分な付属品です。
パソコン本体をVESAマウントに取り付けられる変換キットとネジや、両面テープがついた予備のゴム足(2本)も付属します。
ACアダプターは最大120 W(19.0 V x 6.32 A)に対応。「MICRO COMPUTER株式会社」名義でPSE認証マーク取得済みです。
実測値で約119 Wまで動作確認が取れています。
Wi-Fi 6Eモジュール搭載のパソコンに必要な技適マークは、本体の底面に記載されています。
なお、総務省のデータベースで技適番号を検索しても何もデータが出てこないです。2024年9月発売のやや新しい製品だから、データがまだ反映されていない可能性あり。
説明書は付属しないからQRコードからダウンロードしてください、と書いてあります。
MINISFORUMに限らず、SDGsと称して紙の説明書を省くメーカーが増え続けています。
VESA変換マウントキットです。固定用のネジが8本も付属します。
【容量0.9リットル】手のひらサイズ設計
全面にマットブラック塗装が施された、何の変哲もないただの黒い薄型キューブ型です。天板の中央にMINISFORUMのロゴが印刷されています。
筐体の素材は側面のみコツコツと音が鳴り、プラスドライバーの先端が吸い付く金属製で、天板と底面は硬い強化プラスチックで形成されています。
本体の高さは実測5.5 cm(底面のゴム足を含む)です。
横幅は実測12.9 cm、奥行きが実測12.6 cmでした。筆者の実測で計算すると約0.894リットルと、非常にコンパクトです。
- ThinkCentre Tiny Gen2:約1.19リットル
- HP ProDesk 405 DM:約1.08リットル
- MINISFORUM UM780 XTX:約0.99リットル(991.2 ml)
- MINISFORUM UM760 Slim:約0.89リットル(893.9 ml)
- GMKtec NucBox M6:約0.85リットル(845.3 ml)
- GMKtec NucBox M5:約0.85リットル(845.3 ml)
- AOOSTAR GEM10:約0.80リットル(800.7 ml)
- GEEKOM Mini IT13:約0.66リットル(655.2 ml)
- Beelink Mini S12 Pro:約0.47リットル(469.2 ml)
- GEEKOM AX8 Pro:約0.46リットル(458.4 ml)
他の1リットルクラスと同じく、MINISFORUM UM760 Slimも「手のひらサイズ」に収まり、圧倒的な省スペース性を実現します。
本体重量が597 g、付属のACアダプターがケーブル込みで383 gでした。合計980 gで家の中で自由に持ち運べます。ポータブルモニターと合わせれば外出先でも使えるでしょう。
(コメントに困るレベルで特徴のないデザイン)
(底面に滑り止め用のゴム足)
本体の底面に滑り止めとスペーサーを兼ねるゴム足が4本取り付け済み。2つあるネジ穴はVESAマウントに変換して固定するときに使います。
フロントパネルとリアパネル(背面)はインターフェイスで敷き詰められ、サイドパネル(左右)に吸気スリット、リアパネル(背面)に排気口が設けられています。
側面から吸って背後から吐き出す、一方通行のシンプルなエアフローが確保されるシンプル設計です。
そのままデスクに横置きで設置しても通気性が良いし、VESA変換マウントなどで本体を縦置きにしても、煙突効果でいい感じに熱気が抜けていくデザインです。
15.6インチのノートパソコン、6.1インチのスマートフォン、1型センサーデジカメと並べてみると、MINISFORUM UM760 Slimの小ささがよく分かります。
32インチのゲーミングモニターと並べてみた。相変わらず優れた省スペース性です。
長尾製作所のVESA増設プレートなどと組み合わせれば、PCディスプレイの裏側に配置もできます。
かなり充実したインターフェイス仕様
- 電源ボタン
- USB 10 Gbps
- USB 10 Gbps
- ヘッドホン端子(3.5 mm)
フロント(前面)パネルにUSBポートが2つあります。
- ACアダプターポート
- LANポート(2.5G LAN)
- HDMI 2.1
最大4K(3840×2160 / 160 Hz) - USB 40 Gbps(Type-C)
DP Alt Mode / USB PD対応 - Display Port 1.4
最大4K(3840×2160 / 160 Hz) - USB 2.0
- USB 2.0
リア(裏側)パネルの内容は価格なりに、少し簡素です。上位モデルならUSB 10 Gbpsポートがさらに2個付いていたりしますが、USB 2.0ポートがあるのみ・・・。
では、各インターフェイスが仕様どおりに機能するかどうか、実機で検証します。
映像出力ポート ※クリックで画像拡大 | |
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最大4K 160 Hz対応のゲーミングモニター(TITAN ARMY P32A6V-PRO)につないで動作チェック。
USB Type-C(DP Alt Mode)とDisplay Portで4K 144 Hz(10 bit)※まで、HDMI 2.1で4K 160 Hz(10 bit)まで出力できます。
なお、4K 144 Hz(10 bit)を2台同時に接続しても問題なく映像を表示できます。
※4K 160 Hzに設定すると「YCbCr422」形式かつ8 bitに切り替わります。なぜかRGB 10 bit出力は144 Hzまででした。
USB 40 Gbps対応のエンクロージャー(中身:SK Hynix Platinum P41 1TB)を使って、USBポートのデータ転送速度を実測します。
USB 40 Gbps(Type-C)ポートは約3800 MB/s前後、USB 10 Gbpsポートにて約1000 MB/s前後の転送速度を確認できました。
メーカー仕様表で特にアピールされてないですが、USB Type-Cポートで最大15 W(5.0 V x 3.0 A)のUSB給電(USB Power Delivery規格)に対応します。
Type-C給電に対応するモバイルモニターを、Type-Cケーブル1本だけで外部ディスプレイ化できて便利です。
LANポートは2.5G LAN(Realtek製RTL8125BGチップ)を搭載。
10G光回線に接続して、IPA CyberLab 400Gでテストするとダウンロードで約2360 Mbps、アップロードで約2370 Mbpsと爆速インターネットです。
Wi-Fi(無線LAN)はMediaTek製MT7902チップ搭載で、最大1201 Mbps対応。
Wi-Fi 7対応ルーターに1201 Mbpsでリンクアップでき、ダウンロードで約970 Mbps、アップロードで約950 Mbpsを叩き出し、一般的な有線LANポート(1G)と並ぶ通信速度です。
ELECOM製の格安Wi-Fi 7ルーターで、有線と無線(Wi-Fi)どちらも検証しています。
MINISFORUM UM760 Slimの分解とパーツ増設
ケースの開封
少し先端が細めな「PH1」規格のプラスドライバーを用意します。
MINISFORUM UM760 Slimの開封はやや面倒くさいです。底面パネルに両面テープで貼ってある「ゴム足」を4箇所すべて剥がします。
ゴム足を剥がすと、ネジが露出します。プラスドライバーで4箇所のネジを取り外します。
ネジを押し込む力が90%:ネジを回す力は10%の比率がコツです。ネジを回す方向に力を入れすぎると、ネジ山が舐めて(潰れて)しまうので注意。
底面パネル(フタ)をようやく取り外せました。
勢いよく底面パネル(フタ)を剥がして、うっかりファンコネクタを切断しないように注意してください。
MINISFORUM UM760 Slim(Ryzen 5 7640HSモデル)の標準搭載パーツです。
標準搭載のNVMe SSDは「Kingston OM3PGP41024P-A0」でした。
一般流通しないOEM向けモデルです。基板サイズがとても小さい(M.2 2230規格)から、長さを調整するため金属板にテープで固定されています。
PCIe 4.0 x4対応のそこそこ高性能なNVMe SSDです。
Kingstonの民生向けSSDはガチャ要素があったりして個人的にあまり好まないですが、性能要件がきびしい産業向けSSDなら大丈夫でしょう。
MINISFORUM UM760 Slimのメモリは、Micron製(Crucialブランド)のDDR5-4800規格です。
案件レビューだとシングルチャネル(1枚)だったと聞きますが、楽天市場で購入した市販モデルはきちんとデュアルチャネル(2枚組)に切り替わっています。
シングルとデュアルで内蔵グラフィックスの性能が大幅に変わるから、デュアルチャネルに変更してくれて良かったです。
コメントで教えてもらった情報によると、標準搭載のメモリ枚数はおそらくランダム出荷です。
購入する時期やロット次第で、デュアルチャネル(2枚組)とシングルチャネル(1枚)が入れ替わっています。どちらが良いかは人それぞれ。
標準スペックそのままで使うならデュアルチャネル(2枚組)が有利だし、自分でメモリを1枚足して32 GBにするならシングルチャネル(1枚)のほうが都合が良いです。
厚み1 mmの極薄ヒートシンクに、M.2 SSDとSODIMMメモリの放熱を促す56 mm径ファンが搭載されています。サーマルパッドを経由してヒートシンクに熱を伝え、最大2枚のNVMe SSDをまとめて冷却する狙いです。
Wi-Fiチップは「MediaTek MT7902」でした。最大1.2 Gbpsのネットワーク速度と、Bluetooth 5.3に対応します。
有線LANチップは「Realtek RTL8125BG」でした。安定性に定評があるド定番の2.5G LANチップです。
パーツの拡張性をチェック
標準パーツをすべて取り外した様子です。
- M.2スロット(2280サイズ / NVMe SSD)
- M.2スロット(2280サイズ / NVMe SSD)
- メモリスロット(DDR5 / SODIMM)
- メモリスロット(DDR5 / SODIMM)
メモリスロットが2枚(※使用済み)、NVMe SSD対応のM.2スロットが2本(※内1本使用済み)あります。
OS用に使用済みのM.2スロットはPCIe 4.0 x4、空いているもう1本のM.2スロットもPCIe 4.0 x4対応です。
増設できるSSDが1枚に限られています。なるべく大容量のSSDを増設したいです。
試しに「Hanye HE80 4 TB」を増設してみます。
付属の小ネジを使って、NVMe SSDをM.2スロットに固定します。
底面パネル(フタ)を閉じて、4本のネジでしっかりと固定して完了です。
しっかり固定しないとサーマルパッドとヒートシンクが接触せず、熱をうまく伝えられません。必ずネジを締め切ってください。
増設したNVMe SSDは問題なくPCIe 4.0 x4接続で認識され、シーケンシャル性能で約7000 MB/s前後(PCIe 4.0 x4規格の上限近い)を出せています。
BIOS(UEFI)画面について解説
パソコンの電源スイッチを入れて即座にF7を連打して、ブートドライブ変更画面を開きます。
ブートドライブ変更画面が開いたら、「Enter Setup」を選んでEnterキーを押してください。
セットアップ画面が開きます。左下にある「Setup」をクリックします。
ようやくBIOS(UEFI)画面にアクセスできました。
BIOS(UEFI)レイアウト |
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モバイル向けAMD Ryzenプラットフォームにありがちな基本的な項目が揃っています。
特に重要な項目「Power Configuration」「Secure Boot」「UMA Frame buffer Size」については、以下のタブにて詳しく解説します。
興味のある方はクリックして中身を展開してください。
Advancedタブ → AMD CBSを開きます。
NBIO Common Optionsを開きます。
GFX Configurationを開きます。
iGPU Configurationを「UMA_SPECIFIED」に変更します。
UMA Frame buffer Sizeから、任意のVRAM容量を選択します。
内蔵グラフィックスの場合、「2G」「3G」「4G」のいずれかを選べば十分です。今回は「4G」を選んで、VRAM容量を4 GB(4096 MB)に変更しました。
Save & Exitタブ → Save Changes and Exitをクリックします。
「OK」で変更内容を確定して、自動的にシステムが再起動されて設定完了です。
くまなくBIOSメニューを探し回りましたが、電力制御に関する項目がどこにも見当たらなかったです。
「Power Configuration」や「Cooling Profile」等、CPUの電力制御に関わっていそうな項目は一切ありません。「PPT」「EDC」を任意の数値に変更する項目すらないです。
Windowsのライセンス状況
MINISFORUM UM760 Slimを起動後、インターネットに接続すると自動的に「デジタルライセンス認証」されます。
- ライセンス種別:OEM_DM channel(リテール版)
- ライセンス状況:ライセンスされています
コマンドプロンプトに「slmgr /dli」と入力して、MINISFORUM UM760 SlimのWindowsライセンスを確認しました。
結果は「OEM_DM channel」、正規のOEM版ライセンスがインストールされています。
MINISFORUM UM760 Slimの性能をベンチマーク
「MINISFORUM UM760 Slim(Ryzen 5 7640HS)」の性能をベンチマークやゲーミングで検証します。
Windowsの電源管理などを「バランス」から変更せず、初期設定のままテストしました。
BIOS画面から設定できる電力制限も特に見当たらなかったため、そのまま初期設定で検証します。
レンダリング / 3DCG系の性能
CPUの定番ベンチマーク「Cinebench R23」の比較です。
Ryzen 5 7640HSの性能は平均的。
平均的といっても、一応デスクトップ版のCore i5 12400Fを超えられる程度の性能です。
体感動作に影響が大きいシングルスレッド性能は、デスクトップ向けのCore i5 13400Fに匹敵します。
体感的にハイエンドPCとそれほど差がない印象で、サクサクとレスポンスが良いです。
右クリックでコンテキストメニューを開く、Win + Eキーでエクスプローラーを開くなど。細かいアクションの反応がスッと出てきます。
複数のアプリを起動するマルチタスク時の性能はそこそこ快適ですが、ゲームのアップデートを複数同時にやらせると「もたつき」を感じるシーンがありました。
こればかりは6コアCPUだと気付かされるシーンです。
懐かしい「Cinebench R15」の結果も参考程度に掲載します(※数年ぶりにCinebenchスコアを見に来た人向け)。
Intel N100の4倍超え、同じ6コアのRyzen 5 6600Hより約30%くらい性能アップです。シングルスレッド性能では、Core i9やCore i7を超えています。
動画エンコード
動画エンコードは無料ソフト「Handbrake」を使って検証します。容量が約1 GBのフルHDアニメを「Fast 480p30(x264)」「Fast 1080p30(x264)」プリセットでエンコード。
Intel N100に対して約4倍、Ryzen 5 6600Hから約1.3倍もの高いエンコード性能を発揮します。
デスクトップ版のCore i5 13400F(10コア16スレッド)すら超えていて、CPU世代の性能差が残酷に反映されています。
Microsoft Office
Microsoft Officeのベンチマーク | |
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Edge | 15070 |
Word | 9570 |
Excel | 18132 |
PowerPoint | 15029 |
総合スコア | 14079 |
PCMark 10 Professional Editionを使って、オフィスワークの代表例「Microsoft Office」の処理速度をチェック。
スコアの目安はPCMark 10公式いわく「4500点」です。Ryzen 7 7640HSが叩き出したスコアはどれも4500点を軽く超えていて、総合スコアは約14000点です。
Zen 4世代らしい優れたシングルスレッド性能がゴリゴリと効いて、EdgeやWordのスコアが高いです。Excelのデータ処理もなかなか速いですが、同世代の8コア以上のCPU(例:8845HSなど)には勝てません。
他のミニPCと比較すると、Ryzen 5 7640HSはトップクラスのOffice処理性能でした。
写真編集(Photoshop)
写真編集は「Adobe Photoshop」で処理速度をテスト。Puget Systems社が配布しているベンチマーク用のバッチファイルを使い、実際にPhotoshopを動かして性能をスコア化します。
マシン | MINISFORUM UM760 Slim | AOOSTAR GEM10 |
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CPU | Ryzen 5 7640HS | Ryzen 7 6800H |
GPU | Radeon 760M | Radeon 680M |
RAM | 16 GBDDR5-4800 | 32 GBLPDDR5-6400 |
総合スコア | 937 | 939 |
一般処理のスコア | 111.0 | 85.5 |
フィルタ系のスコア | 76.3 | 109.6 |
GPUスコア | 95.0 | 78.2 |
Ryzen 5 7640HSのPhotoshopスコアは「937点」です。Photoshopの基本的なタスクをサクサクと処理できる性能です。
CPUのシングルスレッド性能が改善したおかげで「一般処理」のスコアが大幅アップ、一方でメモリ容量16 GBに足を引っ張られて「フィルタ」処理で大きく点を落とします。
高解像度なRAW写真を編集素材に使うため、メモリ容量が少ないと不利なベンチマークです。
ビデオチャット(VC)の処理速度
PCMark 10の「Video Conference(ビデオ会議)」モードを使って、ビデオチャットの快適さをテストしました。
PCMark 10でテスト | |
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総合スコア | 84525000点以上ならOK |
ビデオチャットの快適度 | 29.9 /30.0 fps |
結果は8452点で、5000点以上を余裕でクリア。複数人とビデオチャットを同時に行った場合の、映像のスムーズさ(フレームレート)はほぼ30 fpsで、上限の30 fpsに迫ります。ビデオ通話は余裕で動きます。
内蔵GPU「Radeon 760M」の性能
Ryzen 5 7640HSの内蔵グラフィックスは「Radeon 760M(512コア)」です。モバイル向けのRadeon Graphicsとして、ほぼ現行世代の内蔵GPUを搭載しています。
512シェーダーを備え、動作クロックは最大2600 MHzです。
- Iris Xe Graphics 96EU:最大1500 MHz(768シェーダー)
- Radeon RX Vega 8:最大1900 MHz(512シェーダー)
- Radeon 660M Graphics:最大1900 MHz(384シェーダー)
- Radeon 680M Graphics:最大2000 MHz(768シェーダー)
- Radeon 760M Graphics:最大2600 MHz(512シェーダー)
- Radeon 780M Graphics:最大2700 MHz(768シェーダー)
シェーダー数(コア数)こそ上位モデルの680Mや780Mに劣っていますが、大幅に増えたクロック周波数と、CPUの性能アップで意外と高性能を出せる可能性あり。
さっそく定番のGPUベンチマークで比較してみましょう。
定番ベンチマークで性能比較
基本的なGPUベンチマークの結果まとめです。
スコアだけだと何が何やら分からないので、他のミニPCと比較します。
ゲーミングPC向けの高負荷ベンチマーク「FireStrike」の結果です。
GPUの性能を示すGPUスコアが6265点で、上位モデルの「Radeon 680M」や「Radeon 780M」に対して約20%くらい性能が下がります。
1世代前の「Radeon 660M」と比較すると、約1.3倍の性能アップです。
モバイル向けの軽量ベンチマーク「Night Raid」の結果です。
従来世代のRadeon 660Mと比較して、Radeon 760Mは約1.3倍強の性能です。
マルチプラットフォーム対応の軽量ベンチマーク「Wild Life」の結果です。
引き続きFire StrikeやNight Raidと似た傾向になり、Radeon 660Mより約1.3倍強の性能に進化してます。
実際にゲームをプレイして性能をテスト
- 平均120 fps:ヌルヌルとした映像で入力遅延も少ない「とても快適」
- 平均60 fps:最低限「快適」といえるギリギリの最低ライン
- 平均30 fps:体感できる入力遅延が目立つ紙芝居レベルの動作
内蔵グラフィックスでゲームプレイをする場合、できれば「平均60 fps」以上が望ましいです。
Apex Legends 射撃訓練場でテスト | |
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フルHD 中設定 | 平均 : 47.5 fps |
下位1% : 20.6 fps | |
フルHD 低設定 | 平均 : 51.8 fps |
下位1% : 22.1 fps | |
オーバーウォッチ2 マップ「KING’S ROW(4 vs 4)」で撃ち合い | |
フルHD (ノーマル設定 + 100%) | 平均 : 80.5 fps |
下位1% : 68.2 fps | |
VALORANT マップ「トレーニングエリア」でテスト | |
フルHD (最高設定 + MSAA x4) | 平均 : 112.0 fps |
下位1% : 82.9 fps | |
フルHD (最高設定 + MSAA x2) | 平均 : 137.7 fps |
下位1% : 96.6 fps | |
鳴潮 マップ「リナシータ」でソアー高速飛行 | |
フルHD (グラフィック優先) | 平均 : 42.7 fps |
下位1% : 24.5 fps | |
フルHD (バランス) | 平均 : 47.0 fps |
下位1% : 28.5 fps | |
フルHD (パフォーマンス) | 平均 : 55.3 fps |
下位1% : 33.1 fps | |
原神(Genshin Impact) マップ「神に捨てられた殿閣」でテスト | |
フルHD (プリセット:高) | 平均 : 43.4 fps |
下位1% : 31.3 fps | |
フルHD (プリセット:中) | 平均 : 52.7 fps |
下位1% : 39.1 fps | |
フルHD (プリセット:低) | 平均 : 70.4 fps |
下位1% : 51.6 fps | |
崩壊スターレイル マップ「星槎海中枢」でテスト | |
フルHD (プリセット:高) | 平均 : 52.9 fps |
下位1% : 30.3 fps | |
フルHD (プリセット:中) | 平均 : 59.3 fps |
下位1% : 49.2 fps | |
フルHD (プリセット:低) | 平均 : 94.9 fps |
下位1% : 71.1 fps | |
ゼンレスゾーンゼロ マップ「ルミナスクエア」でテスト | |
フルHD (プリセット:高) | 平均 : 38.2 fps |
下位1% : 24.5 fps | |
フルHD (プリセット:中) | 平均 : 50.0 fps |
下位1% : 34.9 fps | |
フルHD (プリセット:低) | 平均 : 56.6 fps |
下位1% : 40.4 fps | |
マインクラフト 「PORTAL PIONEERS RTX」でテスト | |
フルHD (32チャンク) | 平均 : 138.6 fps |
下位1% : 94.2 fps | |
フルHD (16チャンク) | 平均 : 200.8 fps |
下位1% : 127.2 fps | |
ストリートファイター6 「LUKE vs RYU」でテスト | |
フルHD (NORMAL設定) | 平均 : 29.8 fps |
下位1% : 10.0 fps | |
フルHD (LOW設定) | 平均 : 59.7 fps |
下位1% : 54.8 fps |
Ryzen 5 7640HSの内蔵グラフィックス「Radeon 760M」は、512コアしか入ってない割に悪くない性能です。
Radeon 660Mよりワンランク上の性能で、ゲーム次第でRadeon 680Mをわずかに超えています。たとえば、マインクラフトや崩壊スターレイルなど。
CPUボトルネックが出やすいゲームタイトルなら、Radeon 680MよりRadeon 760M(7640HS)が高性能でした。
と言っても所詮は内蔵グラフィックスの範疇を出ません。ギリギリ快適な「平均60 fps」でゲームをプレイするには、ゲーム側のグラフィック設定を妥協する必要があります。
原神や崩壊スターレイルはプリセット:低で快適にプレイ可能な一方、最新グラフィックのゼンレスゾーンゼロや鳴潮(Wuthering Waves)は低設定でも平均60 fpsを出せなかったです。
幸い、Radeon 760MならRadeonドライバソフトからフレーム挿入機能「AFMF 2」を有効化して、見た目上のヌルヌル感を2倍に改善できます。
ただし、激しく動くシーンで効果が大幅に減衰するようで、フレームレートが常に2倍になる効果は無いです。入力遅延も増大するからFPSゲームと相性が悪いから注意。
Radeon 680M(Ryzen 7)と性能比較
MINISFORUM UM760 Slimと同じく、5万円台から買える「Ryzen 7 6800H(Radeon 680M)」とゲーム性能を比較します。
Radeon 760M(512コア)はRadeon 680M(768コア)と比較して、平均わずか3%だけ高性能です。
シェーダー数(コア数)が768コアから512コアへ減っても、GPUクロックが2000 → 2600 MHzまで上昇し、CPU本体の性能アップでボトルネックを軽減できたのが効いています。
MINISFORUM UM760 Slim の温度と騒音
動作温度をチェック
ベンチマーク中のCPU温度 ※CPUに100%の負荷がかかった状態 |
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CPUに100%の負荷がかかるCinebench R23ベンチマーク中のCPU温度は最大で92℃、平均89℃です。
内蔵グラフィックスにも負荷がかかるFF14ベンチマークでは、最大70℃、平均60℃です。
MINISFORUM UM760 SlimのRyzen 5 7640HSは、消費電力が65 Wにセットされているため、高さ55 mmの比較的厚みがある設計でも冷却に苦労します。
特にCPU高負荷時のCPU温度がけっこう苦戦していて、ファンの動作音も大きいです。
負荷時の電力制御 ※クリックで画像拡大します | |
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CPU側 | 内蔵GPU側 |
平均値まとめ | |
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MINISFORUM UM760 Slim の電力制御をチェック。
CPUクロックはテスト開始直後に4600 MHz前後に達し、その後すぐに4400 MHz前後まで下がります。65 Wに達するのは一瞬だけで、ほとんどのシーンで59 Wにとどまります。
サーマルスロットリングらしい症状はおそらく無く、おおむね横一直線のグラフです。
内蔵GPUのクロックは平均2500 MHz前後で安定しており、Radeon 760Mの定格クロック(2600 MHz)の一歩手前で動作します。
目立って分厚くもない薄型設計ながら、けっこう攻めた電力制御です。
サーモグラフィーカメラで負荷時の放熱をチェック。
左右のサイドパネルにある吸気用スリットから外気を取り込み、リアパネル(背面)にある排気用スリットから勢いよく熱風を吹き出しています。
排気用スリットから40℃超の生ぬるい温風がダダ漏れです。冬場はちょうどいい卓上ミニヒーターになりそう。
56 mm径ファンが付いている大型M.2ヒートシンクがある底面はよく冷えています。
底面を開封して、高負荷時のケース内部温度をチェック。もっとも熱いエリアで58℃前後です。
M.2 SSD本体は表面わずか35℃程度に抑えられていて、DDR5メモリはたった30℃でした。
M.2スロット周辺の熱を回収するヒートシンクの温度は22℃前後で、周辺の気温と大差ないレベル。
ACアダプターは連続負荷時でも、50℃台前後にしかならないです。
MINISFORUM UM760 Slimに付属するACアダプターの場合、変換効率が約94%前後と非常に高く、高負荷時の放熱量(ロス)が約5~6 Wくらいです。
室温でも不安なく冷やせます。
静音性能を騒音計で検証
動作音(騒音)をテスト (本体から50 cmの距離で測定) | ||
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シャットダウン (電源オフ時) | 31.1 dB | |
アイドル時 (何もしない状態) | 32.3 dB | |
ゲームプレイ中 (FF14:黄金のレガシー) | 33.2 dB | |
CPU高負荷時 (Cinebench R23) | 36.9 dB |
校正済みのデジタル騒音メーターを使って「MINISFORUM UM760 Slim」の動作音(騒音レベル)を、シーン別に測定しました。それぞれの測定結果は中央値です。
騒音値(dBA) | 評価 | 目安 |
---|---|---|
30 ~ 32.49 | 極めて静か | 耳を近づければ聞こえるレベル |
32.5 ~ 34.9 | 静か | ファンが回っているのが分かる |
35 ~ 39.9 | やや静か | 扇風機を「小」で回したくらい |
40 ~ 42.49 | 普通 | エアコンよりは静かな音 |
42.5 ~ 44.99 | やや騒音 | エアコンの動作音に近い |
45 ~ 50 | 騒がしい | 扇風機を「中~大」で回した音 |
50 ~ | うるさい・・・ | 換気扇を全力で回した音 |
MINISFORUM UM760 Slimは、オフィスワークから軽いゲームなど軽~中程度の負荷なら、おおむね静かなミニPCです。
動画エンコードやゲーム開始時のシェーダーコンパイル、複数のWindows Updateなど、重量級のタスクでCPUに負荷が集中するとファンが元気よく送風音を奏でます。
CPU高負荷時のファン制御はどうやら2段階あって、そこそこ静かな状態と、ノートパソコンのような「フオーーーン」といった甲高い状態を行き来します。
テストで測定された33.2 dB(中央値)は「静か(32.5~34.9 dB)」に分類されますが、高負荷時に限って「普通(40~42.5 dB)」の一歩手前です。
なお、BIOS設定からCPUの電力を抑えてファンの動作音を抑えるようなモードは見当たりませんでした。
コンセント経由の消費電力をテスト
消費電力 (ACアダプター接続時) | ||
---|---|---|
アイドル時 (デスクトップ画面) | 15.7 W | |
CPU負荷 (Cinebench R23) | 82.6 W | |
ゲームプレイ中 (FF14ベンチ) | 71.4 W |
ACアダプター接続時の消費電力はアイドル時でおよそ16 W前後、Cinebench R23でCPUに負荷をかけて83 W前後ほど。
ゲームプレイ(内蔵GPU)時の消費電力が71 W前後です。
なお、USB Type-CでUSB PD(最大15 W)を使ったり、ポータブルSSDを挿し込むと追加で4~15 Wほど増える場合があります。
まとめ:予算5万円台で特に推せる高コスパ型ミニPC
「MINISFORUM UM760 Slim」のデメリットと弱点
- 重量級ゲーミングは厳しい
- ゲームは設定を妥協する前提
- SATA SSDを増設できない
- SDカードスロットなし
- USB 5~10 Gbpsポートが少なめ
- 物足りない拡張性
- 高負荷時の動作音はやや大きめ
- 標準メモリの枚数はランダム出荷
(シングルチャネル or デュアルチャネル) - メーカー1年保証(楽天とAmazon)
「MINISFORUM UM760 Slim」のメリットと強み
- Ryzen 5 7640HS(6コア12スレッド)
- 軽量ゲーミングなら快適
- オフィス用途に十分な性能
- 手のひらサイズで置き場に困らない
- USB 40 Gbps(USB PD対応)
- 2.5G LANポートあり
- VESA変換マウントキット付属
- M.2 SSDにヒートシンク搭載
- 消費電力が少ない
- Windows 11 Pro(OEM版)
- メーカー保証2年(直販限定)
MINISFORUM UM760 Slimはコストパフォーマンスに特化したミニPCです。
インターフェイスと接続性を全体的に一回りカットしてコストを節約し、未だ高価なZen 4世代のAPU「Ryzen 5 7640HS」を5万円台で搭載します。
体感性能がキビキビとしているZen 4世代を、おそらく国内トップクラスの手頃な価格で手に入れられるコスパの良さが最大の魅力です。
動作音はCPUベンチなど極端な高負荷時のみ目立っていて、オフィスワークやゲーミング程度なら、たいてい静かな状態を維持できます。
Zen 4世代でサクサク高性能、そこそこ静音、必要十分なインターフェイスをそなえて5万円台。
予算5万円台でミニPCを買う場合、MINISFORUM UM760 Slimは第1候補に挙がってくる名機と評価できそうです。
以上「MINISFORUM UM760 Slimレビュー:5万円台で「Ryzen 5 7640HS」搭載なミニPC」でした。
「MINISFORUM UM760 Slim」を入手する
楽天市場のMINISFORUM公式ショップが一番安く買えます。
19%割引クーポンとポイント還元(※筆者は最低7.3%)をあわせて実質5.1万円で購入できるようです。筆者やかもち も楽天市場で購入しています。
MINISFORUM UM760 Slimの代替案
CPU性能よりも足回りを重視して選ぶなら、同じく5万円台の「AOOSTAR GEM10」が代替案です。
Ryzen 7 6800H(Zen 3+世代 / 8コア16スレッド)搭載で、M.2スロットをなんと3本(PCIe 4.0 x4対応)も備えます。
ミニPCのおすすめレビュー記事
ついにちもろぐでもKotomi Premiumから、最強のType-Cテスター(POWER-Z KM003C)に更新されておる…
小型で高性能なところが気に入っています。ファームウェアの更新もまめに来ていて、妙な不具合が治ったりして好感度高め。その割にAliexpressで凄く安いから助かる。
「MINISFORUM UM760 Slim」のメリットと強み
メーカー保証2年
保証2年はMINISFORUM直販のみで楽天及びAmazon公式は保証1年
AmazonでKODLIX(MINISFORUMサブブランド)として販売している商品は保証18ヵ月
えっ ・・・え~・・・ どうしてそんな残念仕様に。
ざっくり調べた限り、本当に直販のみ2年保証らしいので記載を修正しました。
ポート少なめとかSATA増設不可とかデメリットに挙げてるのに、メリットにインターフェイスが充実とか矛盾してません?
何のインターフェイスが充実なのか書いてくれないと。
メモリ増設が可能とかですかね?
「インターフェイス」:ケース外に露出している部分
「拡張性」:ケース内部にパーツを増設できる部分
で使い分けています。
相対比較で少ない or 多いとか書いてるので、ややこしい表記に・・・ とりあえず修正しましたが、より良い表現が思いついたら再度修正を加えます。
詳細なレビュー楽しかったです。
当方が楽天で買った同モデルのメモリは、16GB(5600)の1枚挿しでした。
購入時期は2024年12月中旬頃で、到着が12月27日です。
増設予定はなかったのですが、同一のメモリを購入して32GB化。
更に快適になりました。
個人的にはもう自作することは無いかもしれません・・・
2024年10月に注文して約1週間で届いた個体で、8 GB x2搭載でした。
たぶんメモリの枚数はその時々の供給状況で入れ替わってる可能性ありそうですね。個人的に仕様は確定している方が嬉しいので、「微妙なところ」に追記しました。
メモリですが8G2枚の構成と16G1枚の構成をランダムに出荷しているそうです
5600の16G1枚だったので問い合わせみました
増設を考えるなら1枚構成の方が良いかも
こういうミニPCすぐ壊れるって噂があるので手が出ない><。