自作PCユーザーなら一度は目にしてるであろう、玄人志向の電源ユニット「KRPW-GA850W/90+」を1つ買いました。
円安インフレで電源ユニットが値上がる中、容量850 W(80 PLUS GOLD認証)の割に価格が安く、コスパの良さから大人気な様子です。
(公開:2024/12/23 | 更新:2024/12/23)
KRPW-GA850W/90+の仕様
玄人志向 KRPW-GA850W/90+ | |
---|---|
設計 (OEM) | HEC |
容量 | 850 W |
効率 |
|
静音 |
|
ケーブル | フルプラグイン |
保護 |
|
ファン |
|
セミファンレス | 対応(切り替え不可) |
サイズ | 150 x 86 x 150 mm |
規格 | ATX v2.52 |
保証 | 3年 |
参考価格 ※2024/12時点 | |
Amazon 楽天市場 Yahooショッピング |
Corsair RMeシリーズやASRock SL-Gシリーズなど。著名な電源ユニットのOEMを手掛けている電源メーカー「HEC(台湾:偉訓科技股份有限公司)」が製造する、ミドルクラスの電源ユニットです。
2021年頃から販売されているロングセラー商品だから、最近トレンドなATX 3.1規格に準拠しておらず、ATX v2.52規格に準拠しています。
RTX 4000シリーズで使われている12VHPWR(12V-2×6)ケーブルも当然ながら付属しません。PCIe 6+2 pinケーブルで、グラフィックボードに付属する変換コネクタに接続する形式です。
つまり、2021年頃の古い電源ユニットでも案外ふつうに使える互換性が確保されています。ATX 3.1マーケティングに引っかからない人にとって、依然として魅力的な電源かもしれないです。
取得している認証とレポート一覧
電源ユニットの認証規格で定番の「80 PLUS GOLD」認証に合格。最大で91%超の高い変換効率を記録しています。
なお、昨今の電源ユニットで取得が増えつつある「Cybenetics」認証は取っていません。
80 PLUS認証より費用が安くて、負荷テストも大幅に厳格な認証だから、玄人志向さんにはぜひ今後の新モデルでCybenetics認証を取得してほしいです。
KRPW-GA850W/90+を開封
パッケージと付属品
日本市場向けの電源ユニットらしく、パッケージのあちこちに日本語が使われています。英文字ロゴやアルファベットがほとんど無いのでなんだか新鮮です。
「高変換効率(90%以上)」「3年間保証」「フルプラグイン」「安定動作」「ALL 105℃日本メーカー製コンデンサ」「静音なFDBファン」などなど。
玄人志向さんが強くアピールしたいキーワードがズラッと羅列されています。
パッケージの底面からめくり上げて開封するタイプです。
高級電源にありがちな外箱をゆっさゆっさと縦に振り回して、慣性を利用して中身を押し出す必要はありません。
電源ユニット本体は分厚いプチプチの梱包シートで保護され、各種ケーブル類はビニール袋にまとめて梱包されています。
付属ケーブルの種類と長さ
KRPW-GA850W/90+に付属するケーブルは全部10本です。
平ぺったいフラット型(きしめん型)ケーブルを採用しており、裏配線スペースが狭いPCケースでも配線しやすそうです。ただし、曲げるときに少し硬いように感じます。
グラフィックボードの補助電源コネクタに電力を供給する「PCIe 6+2 pin」ケーブルです。
全部で3本(長さ70 cm / 分岐が15 cm)、分岐コネクタをあわせて6+2 pinが6個もあり、補助電源コネクタが3個以上あるハイエンドグラボ(例:RX 7900 XTX)を使えます。
PCIe 6+2 pinケーブルの線径はIntel ATX規格より少し太めの「16 AWG」で、枝分かれする分岐先コネクタが「18 AWG」でした。
某有名ブランド電源みたく「分岐コネクタ付属してるけど分岐コネクタは使わないで」などといった、間抜けな注意文の必要がありません。
消費電力300 W級のハイエンドグラボを分岐コネクタを使って接続可能です。
もし、本当に分岐コネクタを使った接続が100%完全に危険であると言い切れるなら、どうして電源メーカー各社は分岐コネクタのついたPCIe 6+2 pinケーブルを付属するのでしょうか?
付属している時点でそれほど危険性がない、と考えるのが自然です。本当に100%危険だったら、分岐コネクタのついたPCIe 6+2 pinケーブルは今ごろ抹消されているはずです。
そもそも発端はSeasonic社が自社製品の説明書にて、分岐コネクタの接続を非推奨と記載したところから誤解の流布が始まっています。
当時(2020年頃)Seasonic社のブランド力はまさに日本国内最強格で、その最強格メーカーが「分岐コネクタを非推奨」と言い出すものだから、ショップ店員を含め大多数の人間がそのまま真に受けるしか無かったです。
もちろん、Seasonic社がこのような記載をするのには理由があります。
自社のPCIe 6+2 pinケーブルに細い線径「18 AWG」や更に細い「20 AWG」を使っていたせいで、RTX 3080など高い消費電力(TGP:300 W級)のグラボでPCIeケーブルが融解に至る不具合を出しました。
問題が発生した事例ではGPUマイニングなど、高負荷な状態が長時間にわたって続くメーカーの想定をたしかに上回る使い方だったのもあります。
しかし、付属品の分岐コネクタを使って融解に至る・・・ふつうに考えればメーカーの設計に100%瑕疵があると言っていい状況ですが、肝心のSeasonicは「分岐コネクタを非推奨」と記載するのみにとどまりました。
- 16 AWG:Intel ATX規格よりも太い線径
- 18 AWG:Intel ATX規格どおりの線径
- 20 AWG:Intel ATX規格よりも細い線径
※数字が大きいほど細く、小さいほど太い
当然ながら、分岐コネクタに太い線径「16 AWG」を使っていたまっとうなメーカー(Corsairなど)はRTX 3080の登場後も、融解事例の発生率を非常に低く抑えられています。
CPUに電力を供給する「EPS 4+4 pin」ケーブルです。
全部で2本(長さ70 cm)付属します。最近増えている傾向のCPU電源コネクタが2個あるマザーボードに対応できます※。
※補足:マザーボードにCPU電源コネクタが2個あっても、実用上は1個だけで正常に機能します。2個きちんと挿し込むかどうかは人それぞれです。
マザーボードに電力を供給する「ATX 24 pin」ケーブルです。長さ60 cmで、コネクタ形状は一体成型の24 pin型です。
枝分かれしていない一体成型コネクタを採用。分岐していないから、PC初心者でも安心して挿し込めます。
コネクタの太さはおおむね公差ピッタリに成形され、少し硬いけれどすんなりとATX 24 pinに挿し込みできます。
SATAデバイス(3.5インチHDDや光学ドライブなど)に電力を供給する「SATA」ケーブルです。
全部で3本(長さ55 cm / 分岐コネクタ間が10 cm)付属し、すべてのコネクタを合わせて最大9個のSATAデバイスを接続できます。
なお、分岐コネクタの長さが10 cmでちょうどいいかどうかは正直なんとも言えないです。個人的に10 cm弱あれば不便ないと感じます。
参考までに筆者がメイン機で使っている「CORSAIR HX1000i」は11.5 cmで、自作PCの組み立て時に不便を感じなかったです。
特殊仕様のサーバー向けHDDや、ケースファンコントローラに電力を供給する「Molex(ペリフェラル4ピン)」は1本付属します。
ケーブル1本につき、コネクタが3個付いています。ケーブルの長さは55 cmで、コネクタ間が10 cmずつ離れています。
電源ユニットとコンセントをつなぐ「電源ケーブル(アース線つき)」です。硬くて太いケーブルを使っていて、仮に1500 W(100 V x 15 A)流しても問題なく安全に使えます。
袋に4本入っている「小ネジ」は、電源ユニット本体をPCケースに固定するときに使います。予備が1本も付属しないから紛失しないように注意。
「12VHPWR」グラボはどうやって使うの?
RTX 4090など、補助電源コネクタに「12VHPWR(12V-2×6)」を使うグラフィックボードは、グラボに付属する変換コネクタを使って接続します。
たとえばRTX 4090なら、12VHPWR(12V-2×6)→ PCIe 6+2 pin x4に変換するコネクタが付属します。
PCIe 6+2 pinケーブルを2本用意して、分岐コネクタも使って変換コネクタに接続するだけで大丈夫。
しいて言うなら、玄人志向さんが電源ユニット用の12VHPWR(12V-2×6)ケーブルを別売りしてくれたら嬉しいです。分岐コネクタを使うと、どうしても見た目がごちゃごちゃして美しくない・・・。
フルモジュラー仕様のすっきりデザイン
全面が黒色に塗装され、のっぺりした質感の電源ユニットです。ファングリルの独特なサークル形状がすごく既視感があります。
すべてのケーブルを着脱できる「フルモジュラー(フルプラグイン)」方式です。使うケーブルだけ任意で取り付けられるから、配線を最小限に抑えたスッキリした自作パソコンを組み立てられます。
135 mm口径の冷却ファンを搭載。玄人志向いわく、耐久性と静音性に定評があるFDB(流体軸受)ベアリングファンを採用しているらしいです。
本体の底面は何もなし。
電源ユニットのサイドパネルに出力表が貼ってあります。
KRPW-GA850W/90+(出力表) | |||||
---|---|---|---|---|---|
AC入力 | 100 ~ 240V(50 ~ 60Hz) | ||||
DC出力 | +3.3V | +5V | +12V | -12V | +5Vsb |
出力電流 | 20A | 20A | 70.5A | 0.3A | 3A |
合計出力 | 120W | 846W | 3.6W | 15W | |
総合出力 | 850W |
現代のPC向け電源ユニットで定番のシングルレール方式です。CPUやグラフィックボードなど、主要なPCパーツが接続される+12Vレールにて、最大846 Wの出力に対応します。
電源ユニット側の対応コネクタをチェック。
- 1個:マザーボード用(ATX 20+4 pin)
- 2個:CPU用(EPS12V 4+4 pin)
- 4個:SATA / Molex用(SATA / Molex 4 pin)
- 3個:グラフィックボード用(PCIe 6+2 pin)
KRPW-GA850W/90+単体で、ハイエンドなゲーミングPCを構成できます。9割くらいのPCゲーマーにとって十分な拡張性が確保されています。
コンセント側のインターフェイスです。
- 1個:電源コネクタ
- 1個:電源のオンオフボタン
セミファンレスモードを切り替えるボタンはどこにも見当たりません。・・・セミファンレス制御を無効化できないから、もし好みに合わない挙動だったら困りそうです。
左右のサイドパネルは密閉されているだけで何もデザインがなく、徹底したコストカット感が見られます。
でも電源ユニットなんてPCケースに入れてしまえば見えないわけで、外装デザインにこだわる理由はもっぱらマーケティングの都合です。
たとえば、筆者に酷いトラウマを植え付けた「Seasonic Ultra Prime Titanium」の外装デザインがこちら。文句なしにクールでスタイリッシュです(PCケースに入れたら完全に見えないけど)。
内部コンポーネント(腑分け写真)
「開封すると保証無効」など警告マークがどこにも見当たらないから、フタを開けて内部コンポーネントを目視でチェックします。
密閉されたサイドパネル(側面)に小ネジが4本あります。PH1規格のプラスドライバーで小ネジを外して、フタをずりずりとスライドするだけであっさり開封できました。
冷却ファンは「PY-13525M12S」です。中国Poweryear(Shenzen Poweryear Electronics Technology)製、135 mm径FDB(流体軸受ベアリング)方式の静かな冷却ファンが搭載されています。
ラベルに記載の仕様は「DC 12V 0.38A」です。
ファンコネクタは小さな2ピンで、一般的なケースファン(PWM 3~4 pin)に交換できません。
電源ユニット内部のレイアウトです。中央に位置する青くて大きな個体コンデンサがよく目立ってます。
既視感の正体が「EVGA SuperNOVA GT」シリーズでした。レイアウトが本当によく似ています。
KRPW-GA850W/90+の製造元(OEM)は「HEC(台湾:偉訓科技股份有限公司)」の可能性がかなり高いです。
ALL 105℃日本メーカー製コンデンサは本当?
玄人志向さんがメーカー仕様表でアピールしている「ALL 105℃日本メーカー製コンデンサ」を目視で確認します。
中央の青い大容量個体コンデンサは、エーアイシーテック(AIC tech)社の容量680 μF(定格105℃)品でした。
初耳のメーカーですが企業情報を見る限り、栃木県に本社がある日本のメーカーです。製造委託先が海外の可能性はあるけれど、一応日本メーカーブランドのコンデンサと言えます。
黒色の細長い個体コンデンサは、ニチコンの定格105℃品です。
スマブラのロゴマークのようなデザインに鍋マークが入った小さなコンデンサ群が、日本ケミコンの導電性高分子コンデンサです。プラグインコネクタ側にもびっしり敷き詰められています。
黒色がニチコンの固体コンデンサ、小豆色が日本ケミコンの固体コンデンサです。105℃品かどうかは写真から判断できません。
細長い小豆色も日本ケミコンの固体コンデンサ(定格105℃品)です。
まとめると、目に見える範囲の固体コンデンサはすべて日本メーカーブランドだけを使っていて、メーカーの謳い文句どおり「ALL 105℃日本メーカー製コンデンサ」です。
KRPW-GA850W/90+を実際に使ってみる
テストPCスペックを紹介
テスト環境 「ちもろぐ専用 Intelベンチ機(2024 / 旧)」 | ||
---|---|---|
スペック | 使用パーツ | |
CPU | Core i9 13900K | 0x12B適用済み(PL1 = PL2:253 W) |
CPUクーラー | 280 mm水冷式クーラー | NZXT Kraken 280(2023) |
メモリ | DDR5-5600 32GB(16GB x2) | Micron CT32G56C46U5 |
マザーボード | Intel Z690チップセット | ASUS TUF GAMING Z690-PLUS WiFi (BIOS ver 3901 Beta / Intel 0x12B) |
グラボ | RTX 4090 24GB | GIGABYTE RTX 4090 GAMING OC |
SSD | 1 TB(NVMe SSD) | Samsung 970 EVO Plus |
電源ユニット | 【テスト対象】 KRPW-GA850W/90+ | |
OS | Windows 11 Pro 24H2 (KB5041587適用済み) | Windows 11 Pro(パッケージ版) |
第12~14世代Intel Coreシリーズ用のベンチ機を流用します。
最大253 W対応のCPU「Core i9 13900K」に、最大450~600 W対応のグラフィックボード「RTX 4090(GIGABYTE GAMING OC)」を組み合わせて、ピーク時900 W級の負荷(スパイク時1000 W級)を再現可能です。
各電圧レールの測定には、Cybenetics Labs謹製のPMD(Power Measurement Device)を使い、0.001 V(1 mV)単位かつ毎秒最大1000サンプル(1ミリ秒)の刻み値で記録します。
安物の8ビットマルチメーターやオシロスコープの安物プローブを、マザーボードやコネクタの隙間にぶっ刺すよりも、いくぶん精度が高いです。
容量スレスレの高負荷でも安定動作
消費電力 | システム(DC側) | コンセント(AC側) | 効率 |
---|---|---|---|
平均値 | 875 W | 1014 W | 86.3% |
中央値 | 898 W | 1026 W | 87.5% |
上位1% | 951 W | 1033 W | – |
上位0.01% | 979 W | – | – |
- CPU負荷:Prime95 Small FFTs(TDP:253 W)
- GPU負荷:FurMark 2 1920 x 1080(TGP:510 W)
以上のベンチマークで、コンセント側(AC側)で約1020 W前後、システム側(DC側)で約890 Wの負荷を連続して掛けられます。
約45分間そのまま放置して、何事もなく安定してベンチマークが正常に稼働しつづけます。
つまり、容量850 Wの電源ユニットは、消費電力900 W近い容量オーバーのシステムにきちんと耐えられます。
瞬間的に約1000 Wの負荷も掛かっていますが、何事も無かったかのように安定して動作します。
KRPW-GA850W/90+のフル負荷付近+12Vリプル電圧はざっくり46 mV(0.046 V)前後です。
付属ケーブルにノイズフィルター用のコンデンサが入っていないから、おおむね違和感のない変動幅です。
負荷が上昇すると、各電圧レールが分かりやすく低下します。
KRPW-GA850W/90+は「ATX v2.52」規格に準拠した電源ユニットなので、各電圧レールの許容範囲は±5%です※。
※補足:ATX 3.0規格からATX +12Vの許容範囲が-5% → -7%へ下方修正されています。+12Vレールの許容値に限っていえば、ATX v2.52の方がむしろ有利です。
PCIe 12V [RTX 4090] | 変動幅 | |
---|---|---|
最大値 | 12.06 V | 0.50%(< 5.00%) |
最低値 | 11.76 V | -1.99%(> -5.00%) |
EPS 12V [Core i9 13900K] | ||
最大値 | 12.06 V | 0.53%(< 5.00%) |
最低値 | 11.77 V | -1.88%(> -5.00%) |
ATX +12V | ||
最大値 | 12.09 V | 0.73%(< 5.00%) |
最低値 | 11.95 V | -0.38%(> -5.00%) |
ATX +5V | ||
最大値 | 4.98 V | -0.32%(< 5.00%) |
最低値 | 4.95 V | -1.10%(> -5.00%) |
ATX +3.3V | ||
最大値 | 3.32 V | 0.70%(< 5.00%) |
最低値 | 3.29 V | -0.42%(> -5.00%) |
すべての電圧レールが問題なくATX v2.52規格で定められた許容範囲(±5%)に収まっています。
連続的で急激な負荷変動でも安定動作
- CPU負荷:Prime95 Small FFTs(TDP:253 W)
- GPU負荷:FurMark 2 1920 x 1080(TGP:510 W)
連続負荷ベンチマークを実行した状態で、FurMark 2でスペースバーを押しっぱなしにします。すると、グラフィック描画が500ミリ秒ごとにオンオフを繰り返し、連続的な負荷変動を再現可能です。
500ミリ秒ごとに負荷が止まって470 W前後まで下がり、また500ミリ秒たつと負荷が再開して960 W前後まで上昇・・・を延々と繰り返す過渡応答に似た状況です。
これほどの急激な負荷変動でも一貫して安定した動作を維持します。連続負荷を1分つづけても、システムが不安定になったり強制終了しそうな挙動は一切発生しません。
ちなみに、負荷変動時に電源ユニット内部から異常音が発生しなかった点も素直に好印象。電源ユニットによっては「キュルキュルギーギー」とピーキーな音を立てます。
負荷の変動に合わせて、各電圧レールが分かりやすく乱高下します。
PCIe 12V [RTX 4090] | 変動幅 | |
---|---|---|
最大値 | 12.06 V | 0.50%(< 5.00%) |
最低値 | 11.76 V | -1.99%(> -5.00%) |
EPS 12V [Core i9 13900K] | ||
最大値 | 12.06 V | 0.53%(< 5.00%) |
最低値 | 11.77 V | -1.88%(> -5.00%) |
ATX +12V | ||
最大値 | 12.09 V | 0.73%(< 5.00%) |
最低値 | 11.95 V | -0.38%(> -5.00%) |
ATX +5V | ||
最大値 | 4.98 V | -0.32%(< 5.00%) |
最低値 | 4.95 V | -1.10%(> -5.00%) |
ATX +3.3V | ||
最大値 | 3.32 V | 0.70%(< 5.00%) |
最低値 | 3.29 V | -0.42%(> -5.00%) |
すべての電圧レールが問題なくATX v2.52規格で定められた許容範囲(±5%)に収まっています。急激な負荷変動に対しても問題なく正常動作です。
各ケーブルや電源本体の表面温度
約890 Wの連続負荷テストを約45分つづけたあと、サーモグラフィカメラで電源ユニット本体の表面温度を撮影します。
ファングリル正面の表面温度です。冷却ファンが勢いよく回っているから、正常な温度をまったく取れません。
コンセント側から撮影すると、電源ユニット内部の温度を確認できます。もっとも熱いエリアで77℃台に達します。
KRPW-GA850W/90+に使われている固体コンデンサの多くが日本メーカーブランドの「定格105℃」品で、80℃程度の負荷なら特に問題なく耐えられる試算です。
プラグインコネクタ周辺の表面温度です。ケーブル1本で330 W前後の電力を流す「EPS 12V(CPU)」が約40℃前後、PCIe 6+2 pinやATX 24 pinはたった30℃前後に収まります。
某ハイエンド電源メーカーが恐れる「PCIe分岐コネクタ」の表面温度です。
合計で500 W超もの電力が流れていても、ほとんど無視できる程度の発熱にとどまっています。せいぜい30℃(Δ6℃)に過ぎず、融解に程遠いです。
システム側の12VHPWR(12V-2×6)変換コネクタと、EPS 12V(CPU)コネクタの表面温度です。
330 W前後の電力が流れるCPUコネクタが約50℃(Δ26℃)に迫っていて、けっこう熱くなる印象を受けます。熱を分散する意味合いで、CPUコネクタを2本使うメリットはあるかもしれません。
負荷ごとの電源ユニットの騒音値
電源ユニットから約50 cmほど離れた位置に「デジタル騒音計」を設置して、負荷ごとに最低1分ほど騒音値(デシベル値)を測定して平均値を出します。
消費電力(DC側) | 騒音値 |
---|---|
0 W | 31.8 dB |
70 W | 31.8 dB |
120 W | 31.8 dB |
160 W | 32.1 dB |
210 W | 32.3 dB |
270 W | 32.7 dB |
310 W | 33.1 dB |
350 W | 33.6 dB |
400 W | 33.9 dB |
450 W | 34.5 dB |
500 W | 35.4 dB |
550 W | 35.7 dB |
610 W | 36.8 dB |
650 W | 37.5 dB |
700 W | 40.7 dB |
760 W | 43.3 dB |
800 W | 46.0 dB |
850 W | 49.5 dB |
890 W | 51.1 dB |
デジタル騒音計による測定値は以上のとおりです。
ただ、電源ユニットの騒音値(dB)データだけだと主観的な音のうるささを表現できません。参考程度に、負荷ごとに聴いてみた主観的なコメントを書いておきます。
消費電力(DC側) | コメント |
---|---|
0 W | 完全に無音(至近距離で何も聞こえない) |
70 W | |
120 W | ごくわずかに「ジリジリ・・・」電子音が聞こえる(距離50 cmなら何も聞こえない) |
160 W | ファンが「コロコロ・・・」と回っては止まるを繰り返す挙動。静かだけど微妙に気になる動作音。 |
210 W | |
270 W | 5~6回くらい波打つようなファンの回転制御をしたあと、ファンがしばらく停止する挙動。210 W時よりファンが回っている時間が伸びたかも。 |
310 W | 波打つようなファン回転制御を続けていて、310 W時よりもファンが回っている時間が格段に伸びた。距離50 cmならとても静か。 |
350 W | ファンの風切り音はほとんど気にならない一方で、回転数が変化したときの「カラコロ」とした軸音が目障り(距離50 cmでも聞こえます)。 |
400 W | 350 W時と大差なし。 |
450 W | |
500 W | だいぶ安定してファンが回るようになり、十分に静かといえる動作音。 |
550 W | 常にファンが低回転で回っているおかげで、とても静かに感じる動作音。 |
610 W | ファンの動作音が550W時よりもやや上昇し、静かとは言えない動作音になってきた感。 |
650 W | ファンの動作音が610W時よりもやや上昇し、静音ケースに入れないと「静か」とは言えない動作音。 |
700 W | ファンの動作音が大きい。「静か」とはとても言えない。 |
760 W | ファンの動作音が扇風機並みに大きい。「静か」とはとても言えない。 |
800 W | 扇風機「中」くらいの送風音が鳴っている・・・明らかに静かじゃない。 |
850 W | ゲーミングノートパソコンを思わせる大きな送風音。うるさいです。 |
890 W | ゲーミングノートパソコンを思わせる大きな送風音。850W時よりもうるさいです。 |
温度制御を使った動的なセミファンレス制御を導入していますが、ややクセが強い挙動です。
150 W前後まで完全な無音状態で文句なし・・・しかし、160 Wあたりから温度的にセミファンレスが発動しやすくなり、ファン回転始動時の軸音が妙に鳴ってます。
録音した波形データです。
「コロコロ・・・」と回ったと思いきや、すぐにファンが停止して、ふたたび「コロコロ・・・」と回転を始めてまた停止する中途半端な挙動を延々と繰り返します。
ファンが回っても軸音がなければまったく気にならないものの、KRPW-GA850W/90+の冷却ファンは「コロコロ・・・」と分かりやすい軸音を鳴らしてしまう仕様です。
横置きや縦置きでも軸音が特に変わりません。
個人的に、ファンが回ったり止まったりを繰り返す200~450 Wエリアが逆に目障りに感じて、ファンが低回転で安定して回る500~600 Wがむしろ静音動作です。
650 W以上から明確にファンの風切音が大きくなり、800 W超えで異論なくうるさいノートパソコンの送風音へ変貌を遂げます。
USBポートの電圧(5V)を測定
(平均4.5 Wの負荷を掛けて電圧変動をチェック)
USBポート経由の+5V電圧を、専用のUSB PDテスターを使って測定します。
負荷がかかった瞬間に電圧が一気にカツンと落下したあと、おおむね安定した電圧を推移します。
USB +5V電圧 | 変動の程度 (分散) |
---|---|
KRPW-GA850W/90+ | 727 mV |
Corsair HX850i 2021 | 47 mV |
HX850i 2021と比較すると変動幅が大きめですが、実用上の問題はまったく無いです。
【参考程度】電源ユニットの変換効率を測定
KRPW-GA850W/90+はCybenetics ETA認証を取っていないので、変換効率の詳しいデータがほとんど無いです。
だから参考程度にちょっと調べてみます。
- ベンチマーク機材の消費電力(DC側):Cybenetics PMDで測定
- コンセント側の消費電力(AC側):ラトックシステムで測定
DC側とAC側それぞれの消費電力を個別に測定して割り算すると、いわゆる「変換効率」をざっくり計算できます。
(DC消費電力 / AC消費電力 = 変換効率)
負荷率30%にかけて急激に変換効率が上昇したあと、なだらかに右肩下がりのグラフを描きます。
玄人志向の電源ユニットでよく使われていそうな、ミドルクラスのPCスペックが位置する可能性が高い200~500 Wエリアの効率がかなり高いです。
まとめ:RTX 4090すら安定動作するマトモな電源
「KRPW-GA850W/90+」の微妙なとこ
- 中途半端なセミファンレス制御(間欠運転)
- ファン始動時の軸音が気になる
- セミファンレスを切り替えられない
- 12VHPWRケーブル付属なし
(※グラボの付属品で変換する必要あり) - 完全な無音状態は150 Wまで
(※気温や周辺温度に左右されます) - 高負荷時の動作音がうるさい
- メーカー3年保証
「KRPW-GA850W/90+」の良いところ
- 日本メーカー「105℃」個体コンデンサ
- 容量850 Wを110%使えます
- 許容範囲内に収まる安定した電圧
- 変換効率がおおむね高い傾向
- 太さ16 AWGのPCIe 6+2 pinケーブル
- フラット型で配線しやすいケーブル
- まったく問題ない表面温度
- 性能に対するコスパは悪くない印象
容量850 Wをわずかに超える強烈な連続負荷から、470~960 Wの激しい負荷変動まで、たいていの用途に問題なく耐えられる「マトモな電源ユニット」です。
ただし、冷却ファンが回転し始めるときに鳴る軸音が目立った弱点。「カラカラ・・・」「コロコロ・・・」と音が鳴ります。
間欠運転を繰り返しやすい低~中程度の負荷だと、そこそこの頻度で軸音を繰り返します。
イヤホンやヘッドホンをつけてゲームプレイするPCゲーマーや、消費電力が軽く500 Wを超えるハイエンド構成を想定しているなら問題なく使える性能です。
以上「玄人志向の電源「KRPW-GA850W/90+」をレビュー【超売れ筋モデルの性能を検証】」でした。
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【予算別】ゲーミングPC自作ガイド
【PCパーツ別】おすすめ解説ガイド
静音もこだわるならHydro PTM PROとかcorsair HXiみたく2万5000辺りからが候補になるかやっぱ、電源ユニットがカラカラうるさいの嫌だしなぁ
価格comのレビュー欄でカラカラ音の対策案?が投稿されてますね。
ファンさえ交換できれば楽勝ですが、そうはいかない(保証も切れるし)のがつらいところですね。
静音化のためにフタを開けてケースファンを別途購入して・・・という手間を考えると、あと3000円くらい足して定評のある電源にした方がよさそう。RM850xか、Cooler Master GX III GOLDなど。
数年前まで旧日立化成グループに勤めていた者です。
エーアイシーテック社はWebサイトの会社沿革に記載のとおり、過去は日立グループの連結子会社でした。旧社名は「日立エーアイシー」で、旧日立化成工業の子会社(日立製作所から見たら孫会社)でしたが、事業整理により分離独立し現在に至っています。
ニチコン、日本ケミコンといった競合大手と比較して売上規模は小さいですが、100% Made in Japan で品質は高かったです。但しコストが高く、収益性はそれほど良くありませんでした。
AIC techさん、ちゃんとした日本メーカーのようで良かったです。
12年前の自作からクロシコ電源650w→750wと乗り換えて使ってます。
今は850wなんですね。
750wは新しいケースに移植した時に底面電源設置にケーブル長が対応してたのが地味に嬉しかった。
コスパ考えるとクロシコ電源を買っちゃう。
昨今の物価高を考慮すると、KRPW-GAはコスパ良い感じました。
冷却ファンのコロコロ音を避けて、あえて高負荷域(ハイエンド構成)で使えば動作音も気にならないです。ただ、ハイエンド構成を組む予算がある人は、この電源を選ばない予感がしてしまった。
写真にちらりと写っている謎の白電源…これは…
次のネタですかね?
ぜひやってほしいですけども
一般人には電源ユニットを定量的に評価するのは難しいので助かります。カメオ出演の白いGOLD(?)電源のレビュー、待ってます。
「半分しか使えない」はめっちゃ古い電源のトラウマかなぁ?
どこぞとどこぞのラインが共有されていて…みたいな時代
5000円くらいの激安電源だと、負荷100%時に落ちる電源があるらしいと聞きます。
高い電源のレビューはたくさん出回っているので、今後はそういった安い電源のレビューも書いてみる予定。