垂直統合型のNANDメーカーはサムスンとSK Hynixが有名ですが、Crucialで知られる米国Micronも一部の製品で完全自社製造モデルをリリースしています。
その名も「Crucial P5 Plus」です。Micron製のパーツだけで構成された(ある意味)レアなNVMe SSDの性能を検証します。
(公開:2023/7/8 | 更新:2023/7/8)
Crucial P5 Plusのスペックと仕様
Crucial P5 Plus スペックをざっくりと解説 | |||
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容量 | 500 GB | 1000 GB | 2000 GB |
インターフェイス | PCIe 4.0 x4(NVMe 1.4) | ||
フォームファクタ | M.2 2280(片面実装) | ||
コントローラ | Micron DM02A1 | ||
NAND | Micron 176層 3D TLC NAND | ||
DRAM | LPDDR4メモリ | ||
1024 MB | 2048 MB | ||
SLCキャッシュ | 非公開 | ||
読込速度 シーケンシャル | 6600 MB/s | ||
書込速度 シーケンシャル | 4000 MB/s | 5000 MB/s | |
読込速度 ランダムアクセス | 360K IOPS | 630K IOPS | 720K IOPS |
書込速度 ランダムアクセス | 700K IOPS | ||
消費電力(最大) | 非公開 | ||
消費電力(アイドル) | 非公開 | ||
TBW 書き込み耐性 | 300 TB | 600 TB | 1200 TB |
MTBF 平均故障間隔 | 200万時間 | ||
保証 | 5年 | ||
MSRP | $ 43 | $ 60 | $ 123 |
参考価格 2023/7時点 | 7300 円 | 10070 円 | 20000 円 |
GB単価 | 14.6 円 | 10.1 円 | 10.0 円 |
「Crucial P5 Plus」は、米国の大手NANDメーカーMicron(マイクロン)が自社で製造と設計を行う、垂直統合型ハイエンドNVMe SSDです。
NANDメモリに「Micron B47R(176層 3D TLC NAND)」を使い、自社設計のSSDコントローラ「DM02A1」を組み合わせます。
DRAMキャッシュにMicron製LPDDR4メモリ(1024 MB)を搭載し、キャッシュを駆使してTLC NAND本来の性能をうまく隠蔽する狙いです。
SSDを構成する主要コンポーネントすべてがMicronによる自社製造品で統一されており、メーカー純正品らしい高い信頼性をアピールします。
SSD | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
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Crucial P5 Plus | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
Lexar NM790 (Lexar NM790:レビュー) | – | 1000 TBW | 1500 TBW |
HIKSEMI FUTURE SSD (HIKSEMI FUTURE SSD:レビュー) | – | 1800 TBW | 3600 TBW |
SK Hynix Gold P31 (SK Hynix Gold P31:レビュー) | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
WD_BLACK SN770 (WD_BLACK SN770:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
KIOXIA EXCERIA PLUS G2 (KIOXIA EXCERIA G2 PLUS:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
KIOXIA EXCERIA G2 (KIOXIA EXCERIA G2:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
WD Blue SN570 (WD Blue SN570 NVMe:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | – |
Crucial MX500 (FireCuda 530:レビュー) | 180 TBW | 360 TBW | 700 TBW |
FireCuda 530 (FireCuda 530:レビュー) | 640 TBW | 1275 TBW | 2550 TBW |
Samsung 980 PRO (980 PRO:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
WD Black SN850 (SN850:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
書き込み保証値(TBW)は他社の有名ブランド品と同等クラスです。流行りの格安中華ハイエンドと比較すると少なく見えますが、実用上はまったくもって十分。
仮にゲーミングPCでシステムストレージとして使った場合、かなり過剰に見積もっても1日あたり平均50 GB程度の書き込みです。
600 TBWを50 GB(0.050 TB)で割ると12000日で、耐久値を使い切るのに約33年もかかる計算に。NANDメモリの寿命が尽きるより先に、SSDコントローラが経年劣化で故障する確率のほうが高いです。
ライバル製品と価格設定の比較
PCIe 4.0対応のハイエンドNVMe SSDと価格を比較したグラフです。
2023年7月時点、Crucial P5 Plusの 1 TBモデルが約1万円ほど、タイムセール時のポイント還元込みで9000円台とリーズナブルな価格設定。
Crucial P5 Plusを開封レビュー
パッケージデザイン & 開封
今回レビューで使うサンプルはAmazon(販売ページはこちら)より、約1.2万円にて1 TBモデルを自腹で購入しました。
MicronのCrucialシリーズらしい、紺色の背景カラーにシンプルな白いフォントで「P5 Plus」と描かれたパッケージデザインです。
パッケージ右上に「国内正規品」のシールが、パッケージ裏側に国内代理店CFDのシールが貼ってあります。
説明書と小ネジが付属品です。プラスチック製のケースにSSD本体がすっぽりと収まっています。
基板コンポーネント
マットブラック塗装のプリント基板上に、SSDを構成するコンポーネントを覆い隠すように製品ラベルシールが貼られています。
ラベルシールを剥がすと5年間の製品保証が無効となるリスクが高いため、別途M.2ヒートシンクを取り付ける場合はシールを剥がさずにそのまま取り付けましょう。
裏面にコンポーネントはありません。各国の認証ロゴや、交換保証(RMA)申請時に必要となるシリアルナンバー(S/N)が記載されたラベルシールが貼られています。
表面だけにコンポーネントが実装されているシンプルな片面実装のNVMe SSDです。取り付けスペースが狭いノートパソコンで問題なく使えます。
薄っぺらいラベルシールを剥がして、基板のコンポーネントを目視で確認します(※5年間の製品保証が切れる行為ですので、真似しない方が安全)。
- コントローラ:Micron DM02A1
DM02A1 TPPRX618 EAZ31114 TAIWAN - DRAM:Micron LPDDR4 1024 MB
2QF47 D8BMZ - NAND:Micron 176層 3D TLC NAND(B47R)
2SE2D NY124
SSDコントローラ、DRAM、NANDメモリすべてMicron自社製です(※PMICの90540QX102のみ詳細不明)。
SSDコントローラはMicronが自社で開発するARM Cortexベースの「DM02A1」を搭載。
MicronはDM02A1について、詳しい情報を何ひとつ開示していないため、コントローラのスペックや製造プロセスは不明なままです。
DRAMはMicron製LPDDR4メモリを1024 MB搭載します。
FPGAコード「D8BMZ」を、Micron型番検索にかけると「MT53B512M16D1NP-046」と返ってきます。LPDDR4-1866メモリです。
NANDメモリはMicron製176層 3D TLC NANDです。ブランド名「Micron B47R」で知られています。
176層まで積み上げて記憶密度が512 Gb、帯域幅が最大1600 MT/sで当時としては最高峰の3D TLC NANDでした。
Crucial P5 Plus 1TB | HIKSEMI FUTURE 1TB |
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|
|
= 2個使って容量1 TB (512 x 8 x 2 = 8192 Gb) | = 2個使って容量1 TB (1024 x 4 x 2 = 8192 Gb) |
Crucial P5 Plusでは、記憶密度が512 Gb(= 64 GB)のチップを8枚重ねにして、合計8192 Gb(= 1024 GB)の容量に。
Crucial P5 Plusの性能をベンチマーク
テスト環境を紹介
テスト環境 「ちもろぐ専用:SSDベンチ機」 | ||
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CPU | Core i7 13700K16コア24スレッド(TDP:125 W) | |
CPUクーラー | 虎徹Mark III120 mmサイドフロー空冷 | |
マザーボード | BIOSTARZ790 Valkyrie | |
メモリ | DDR5-6000 16GB x2G.Skill Trident Z5 Neo RGB | |
グラフィックボード | RTX 4060 Ti | |
テスト対象 | Crucial P5 Plus 1TB | |
システムSSD | HIKSEMI FUTURE70-02TB 2TB | |
電源ユニット | 850 WCorsair HX850i 2021 | |
OS | Windows 11 Pro検証時のバージョンは「22H2」 | |
ドライバ | NVIDIA 536.40 WHQL | |
ディスプレイ | 3840 x 2160@160 Hz使用モデル「Innocn 27M2V」 |
SSDベンチマークに使用する専用の機材です。
最大15.76 GB/sまで対応できるPCIe 5.0世代の「Intel Z790」マザーボードに、シングルスレッド性能が非常に速い「Core i7 13700K」を搭載。
Ryzen 9 5950X超えのマルチスレッド性能と、現行最強クラスのシングルスレッド性能で、最大14000 MB/s超えの次世代Gen 5 SSDも難なく処理できます。
原則として、CPUに直結したM.2スロットまたはPCIeスロットにテスト対象のSSDを接続します。チップセット経由だと応答速度が低下※してしまい、SSD本来の性能を検証できません。
ベンチ機に採用した「Z790 Valkyrie」は、PCIe 5.0対応のM.2スロットを1本、PCIeスロットを2本備えます。複数の爆速SSDをCPUに直結できる稀有なマザーボードです。
※チップセット経由による性能低下はAMDチップセットだと緩和されますが、CPU直結時と比較して性能が下がる傾向自体は同じです。
SSDを熱から保護するサーマルスロットリングによって性能に悪影響が出ないように、以下のような手段でテスト対象のSSDを冷却しながらベンチマークを行います。
- M.2ヒートシンク「Thermalright HR-09」を装着
- 120 mmケースファンを至近距離に設置して冷却
SSDを徹底的に冷やして、サーマルスロットリングがテスト結果に影響を与えないように対策しています。
なお、10分間の温度テスト時のみM.2ヒートシンクとケースファンを取り除いて、温度の上昇を観察します。
SSDドライブ情報と利用できる容量
- インターフェース:NVM Express
- 対応転送モード:PCIe 4.0 x4
- 対応規格:NVM Express 1.4
- 対応機能:S.M.A.R.T. / TRIM / VolatileWriteCache
「Crucial P5 Plus」の初期ステータスをCrystal Disk Infoでチェック。特に問題が見当たりません。
フォーマット時の初期容量は「931 GB」でした。
Crystal Disk Mark 8
「Crystak Disk Mark 8」は、日本どころか世界で一番有名と言っても過言ではない、定番のSSDベンチマークソフトです。性能の変化をチェックするため、初期設定の「1 GiB」に加え、最大設定の「64 GiB」もテストします。
Crystal Disk Mark 8の結果※クリックで画像拡大します | |
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テストサイズ:1 GiB(MB/s) | テストサイズ:64 GiB(MB/s) |
テストサイズ:1 GiB(レイテンシ) | テストサイズ:64 GiB(レイテンシ) |
読み込み速度が約6750 MB/sで、書き込み速度は約5020 MB/sを記録。どちらもメーカーが主張するスペック通りの性能です。
テストサイズを64 GiBに変更しても、シーケンシャル性能とランダム性能に変化が見られません。
体感性能や実用性能に影響が大きい、4KBランダムアクセスのレイテンシ(応答時間)の比較グラフです。
Crucial P5 Plusは51.68 μsを記録し、競合するライバル製品や格安中華ハイエンドに一歩劣る位置に。
書き込みレイテンシも今回テストした中でワースト1位に。Micron製コントローラの素性はあまり期待できそうにないです。
ATTO Disk Benchmark
ATTO Disk Benchmarkは、テストファイルを小刻みに分割してSSDのスループット(シーケンシャル性能)を測定し、SSDがピーク性能を出しやすいファイルサイズを探るベンチマークソフトです。
ベンチマーク結果からSSDの評価が非常に分かりにくいので、表計算ソフトを使ってグラフ化して他のSSDと比較します。
読み込み速度は512 KBから他社より一歩遅い位置で、8 MBでピークに達します。拡大グラフを見ると、小さいファイルサイズで性能が出づらい傾向を確認できます。
書き込み速度も全体的にライバル製品よりやや遅め、1 MBにピークに達したあと性能が若干低下します。拡大グラフで遅い傾向が明らかです。
Crucial P5 Plusを実運用で試す
FF14のロード時間を比較
FF14:暁月のフィナーレ(ベンチマークモード)で、ゲームロード時間を測定します。ベンチマーク終了後に、ログファイルからロード時間を読み取ります。
Crucial P5 Plusのロード時間は「6.20秒」でした。
Samsung 980 PROをわずかに超え、格安中華ハイエンド(LexarやHIKSEMI)に届きません。
DRAMキャッシュを備えている割にロード時間が遅いです。格安中華ハイエンドはどれもDRAMレス(メインメモリの一部を拝借するHMB方式)です。
FPSタイトルのロード時間を比較
PCMark 10 Professional Edition(有償版)で利用できる機能を使って、「Battlefield V」「Call of Duty Black Ops IV」「Overwatch 2」のロード時間を測定します。
なお、測定されたロード時間は各スコアから逆算された概算値(ざっくりとした予想値)です。実際のロードとは異なっているので注意してください。
テストした3タイトルすべてで、FF14のロード時間と似た傾向を確認できます。Samsung 980 PROより速く、格安中華ハイエンド(LexarやHIKSEMI)に勝てません。
「原神」のロード時間を比較
大人気RPGタイトル「原神」のロード時間を実際にテストします。
- 初回ロード(データロード0%からクリック可能になるまで)
- 初回ロード(クリックしてから操作可能になるまで)
- モンドから千尋の砂漠へワープ
- 千尋の砂漠からスメールシティへワープ
- スメールシティから稲妻城へワープ
- 稲妻城からモンドへワープ
上記6パターンを録画ソフト(120 fps)を使って記録し、動画編集ソフトに取り込んでフレーム単位でロード時間を比較しました。
Crucial P5 Plusは「37.74秒」でした。WD Black SN770(DRAMレス)とほぼ同じロードタイムです。
Optane 905Pや格安中華ハイエンド(LexarやHIKSEMI)に1段と引き離されています。
各シーン別のロード時間(※グラフの左から順番にパターン1~6並び)です。
初回ロードで大きく差がつきやすい傾向が見られます。Crucial P5 Plusの場合、一番最初のロードでも手こずっており、タイム差が広がる原因に。
DirectStorageのロード時間を比較
Windows 11はゲームのロード時間を大幅に短縮する「DirectStorage API」に対応しています。
SSDに保存されているゲームデータをメインメモリに送り込み、メインメモリからVRAMに流し込みます。入ってきたデータをGPUの凄まじい演算性能で展開(解凍)し、ゲームロード時間を短縮する技術です。
NVMe SSDからメインメモリにデータを転送する部分で、SSDのシーケンシャル性能が重視されます。SATA SSDよりNVMe SSD、同じNVMe SSDでもPCIe 4.0やPCIe 5.0の方が有利になる可能性が高いです。
CPUで展開する場合はCPUの演算性能がボトルネックになってしまい、SSDの性能差がそれほど確認できません。
GPU展開(RTX 4060 Tiで展開)では、シーケンシャル性能に比例した性能差がハッキリと出ます。
と言ってもロード時間があまりにも速すぎて、絶対値で見るとわずか0.1~0.2秒の差です。PCIe 5.0世代で性能が2倍になっても実際のロード時間はがっかりする結果になりそうです。
ファイルコピーにかかった時間
Windows標準のコピペ機能と目視によるストップウォッチでは正確性に欠けるので、ファイルコピーに便利なフリーソフト「DiskBench」を使って、ファイルコピーに掛かった時間を計測します。
- ゲームフォルダ(容量85.3 GB / 81424個)
- 写真ファイル(容量113 GB / 5012枚)
- 圧縮データ(容量256 GB / zipを2個)
以上3つの素材をファイルコピーテストに使います。ソース(基準となるストレージ)は安定した性能に定評がある「Optane SSD P5810X 400GB」です。
書き込み(Optane P5810X → Crucial P5 Plus)のコピペ時間です。
想定よりも優秀な書き込み性能です。ゲームフォルダ、写真フォルダ、Zipファイルどれも頭打ちラインに並びます。256 GB程度なら吸収しきれるキャッシュを展開できるようです。
次は読み込み(Crucial P5 Plus → Optane P5810X)のコピペ時間です。
書き込みと同じく、読み込みも意外と善戦します。Zipファイルと写真フォルダは横並びラインに、ゲームフォルダはP41 Platinumに抜かされますが、おおむねトップクラスです。
比較グラフをよく見ると、シーケンシャル性能の割にコピー時間が遅いSSDがポツポツと見られます。
なぜシーケンシャル性能の割に遅いSSDが出てしまうのか。理由は単に「間髪入れずに次のコピーテストを実行」しているからです。
- Zip(256 GB)→ 写真(113 GB)→ ゲーム(85.3 GB)の順番
SSDは書き込み性能を稼ぐためにSLCキャッシュを使って耐える製品が多いですが、このSLCキャッシュの回復が遅いと・・・次のコピーテストに間に合わずTLC NAND本来の性能でテストが実行されます。
SLCキャッシュをスピーディーに再展開できるかかどうかも実力の内と(筆者は)考えているので、コピーテストは間髪入れず次から次へと実行します。
Premiere Pro CC:4K動画プレビュー
動画編集ソフト「Adobe Premiere Pro CC」に、4K動画素材(448 MB/s)と2K動画素材(175 MB/s)を読み込み、2つの動画を同時にプレビューします。
Premiere Proの動画素材プレビューは、素材を配置しているストレージの性能に影響を受けやすく、SSDの性能が不足すると「コマ落ち」が発生しやすいです。
Premiere Proの標準機能「コマ落ちインジケータ」で落としたフレームを測定し、動画素材の総フレーム数で割ってドロップフレーム率を計算します。
4K + 2K動画プレビューのドロップフレーム率は約16.5%です。
シーケンシャル性能だけでなく、ランダム性能も要求されるため、ランダム性能がやや遅いCrucial P5 Plusだと妥当な結果に思えます。
従来の4K動画プレビューでは約8.3%でした。
PCMark 10:SSDの実用性能
PCMark 10 Professional Editionの「Full System Drive Benchmark」を使って、SSDの実際の使用シーンにおける性能を測定します。
- PCMark 10(UL Benchmarks)
Full System Drive Benchmarkには23種類のテストパターン(Trace)が収録されており、パターンごとの転送速度や応答時間を測定し、SSDの実用性能をスコア化します。
なお、SSDは空き容量によって性能が大きく変化する可能性があるため、空き容量100%だけでなく容量を90%埋めた場合(= 空き容量10%)のテストも行いました(※2回:連続で約2時間のワークロード)。
Crucial P5 Plusのストレージスコア(空き容量10%時)は「2592点」です。空き容量100%なら3481点で、空き容量による性能低下は約25.5%と大きいです。
Samsung 980 PROより多少マシな程度で、P41 Platinumや格安中華ハイエンド(HIKSEMI等)には派手に負けています。
PCMark 10ストレージテストの細かい内訳を確認します。
Adobeスコア、ゲームロードスコア、OfficeスコアでSamsung 980 PROを確実に上回り、WD Black SN770にあと一歩届かない性能です。
ファイルコピースコアのみ、Samsung 980 PROに届きません(※PCMark 10 Proのコピーテストは基本的にキャッシュの範囲内に収まるため)。
実用スコアの内訳 Full System Drive Benchmark | |
---|---|
Adobe Score | Adobe Acorbatの起動 Adobe After Effectsの起動 Adobe Illustratorの起動 Adobe Premiere Proの起動 Adobe Lightroomの起動 Adobe Photoshopの起動 Adobe After Effets Adobe Illustrator Adobe InDesign Adobe Photoshop(重たい設定) Adobe Photoshop(軽量設定) |
Game Score | Battlefield Vの起動(メインメニューまで) Call of Duty Black Ops 4の起動(メインメニューまで) Overwatchの起動(メインメニューまで) |
Copy Score | 合計20 GBのISOファイルをコピー(書き込み) ISOファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) ISOファイルをコピー(読み込み) 合計2.37 GBのJPEGファイルをコピー(書き込み) JPEGファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) JPEGファイルをコピー(読み込み) |
Office Score | Windows 10の起動 Microsoft Excel Microsoft PowerPoint |
15分間の連続書き込みテスト
1 MBのテストファイルを15分間に渡って、ただひたすら連続して書き込み続ける過酷な検証方法です。
一般向けに販売されているほとんどのSSDは、数分ほど連続して書き込むだけで「素の性能」を明らかにできます。SLCキャッシュの有無やサイズ、キャッシュが切れた後の性能低下などなど。
15分の連続書き込みテストによって、SSDのいろいろな挙動が判明します。
(1枚目:比較グラフ / 2枚目:強調グラフ)
テスト開始時に5000 MB/s前後を叩き出し、およそ100 GB書き込んだあたりで1300 MB/s前後に下がります。テスト開始から約1000 GBに達すると、さらに400 MB/s上昇して1700 MB/s前後に落ち着きます。
各段階ごとのざっくりとした内訳は・・・
- SLCキャッシュで爆速
- SLCキャッシュからTLC NANDへのデータ移動モードに変化
(= おそらくTLC NAND本来の性能) - SLCキャッシュがわずかに回復してデータ移動モードと混在
(= 混在しているから平均値が上昇)
Micronは自社製コントローラの挙動をまったく開示していないため、実際に何が起こっているか正確な判断は難しいです。
空き容量が減っているのにSLCキャッシュが回復?・・・と直感的に違和感ですが、SK Hynix P41 PlatinumやSolidigm P44 Proなど、空き容量が減るとSLCキャッシュを瞬時に再展開するSSDはたしかに存在します。
時間あたりの書き込み量を比較したグラフです。
最初の5分間、5~10分区間、10~15分区間どこをとっても冴えない書き込み量に終わります。DRAMレスの格安中華ハイエンドにも追いつけておらず、落胆のため息が漏れます。
SSDの動作温度をテスト
高負荷時のセンサー温度
モニターソフト「HWiNFO」で表示できる温度センサーは2つです。
- ドライブ温度:NANDメモリの温度
- ドライブ温度2:NANDメモリの温度
しかし、どちらも同じ温度が表示されてしまい、実質1つのセンサーです。肝心のSSDコントローラ温度を表示できません。
ヒートシンクを取り外し、ケースファンによるエアフローを一切与えない環境で、SSDが激しく発熱しやすい「連続書き込みテスト」を10分間実行しました。
NAND温度がじわじわと上昇しつづけ、8分あたりでサーマルスロットリングが発生。温度が下がると再びサーマルスロットリングが発生します。
70℃台でサーマルスロットリングが発生するとは思えないので、サーモグラフィーカメラを使って実際の温度を確認します。
サーモグラフィーで表面温度を確認
テスト開始から9分経過したあたりで、サーモグラフィーカメラを使って撮影。
- SSDコントローラ:99 ~ 100℃
- NANDメモリ(右):90 ~ 91℃
- NANDメモリ(左):85 ~ 86℃
SSDコントローラ周辺はなんと100℃近くまで上昇します。サーマルスロットリングが発生するのも納得できる凄まじい発熱です。
NANDメモリは右側で90℃近く、左側で80℃後半と発熱が多め。HWiNFOに表示されるセンサー温度との乖離は10℃に達しており、センサーの信頼性も低いです。
Crucial P5 Plusは高負荷時の発熱が非常に大きいため、過酷なワークロードを想定しているならM.2ヒートシンクの装着を強くおすすめします。
少なくとも、マザーボードの付属M.2ヒートシンクにケースファンで風を当ててあげると安心です。
M.2スロットの場所が悪ければ、別売りのヒートシンクで高さを稼いでケースのエアフローが当たりやすいように配置するといいでしょう。
まとめ:現状はMicronのファン向け製品か?
「Crucial P5 Plus」のデメリットと弱点
- やや物足りない実用性能
- 空き容量による性能変化あり
- 素の書き込み性能は平凡
- 高負荷時の温度が非常に高い
- 平凡なコストパフォーマンス
「Crucial P5 Plus」のメリットと強み
- 最大6700 MB/sのシーケンシャル性能
- DRAMキャッシュ搭載
- 大容量ファイルの書き込みが速い
- それなりのランダムアクセス速度
- 十分な耐久性(300 ~ 1200 TBW)
- 大容量モデルあり(最大2 TB)
- Micronによる完全自社製造モデル
- 5年保証
Crucial P5 Plusは、残念ながら期待を下回る性能の垂直統合型ハイエンドNVMe SSDです。
自社ですべての部品を開発製造する試みは高い信頼性を担保できる一方、性能面で遅れを取りつつあります。
Micronが心血を注いで開発した完全な自社製造モデルよりも、最新世代の高性能パーツを組み込んだ格安中華ハイエンドSSDの方が高い性能とコスパを実現します。
Micron自身も2023年発売のフラグシップモデル「T700」において、自社コントローラではなく外注品(Phison製コントローラ)を採用するなど、垂直統合型の限界が見えています。
Crucial P5 Plusを積極的におすすめする理由は見つからないです。個人的にMicron(Crucial)のファンでMicronを応援したい、Micronにお布施したい方なら選択肢に入るでしょうか。
以上「Crucial P5 Plusレビュー:Micronによる自社製造モデルですが・・・」でした。
Crucial P5 Plusを入手する
2023年7月時点、Crucial P5 Plusは約1.1万円から買えます。タイムセール時のポイント還元も込みなら実質1万円を切れそうです。
なお、コストパフォーマンスを重視する方は「Crucial T500」をどうぞ。書き込み性能でやや劣るものの、実用性能はP5 Plusを上回ります。
垂直統合型でもうまく行った実例
価格が高い割にトップチャートの性能を出せないから不満が多いSSDですが、垂直統合型メーカーとしてSamsungは依然として上手く立ち回っています。
NVMe SSDのおすすめレビュー記事
おすすめなSSDを解説
元々、ベンチや過酷な使い方よりも普段遣いに特化したせっけいらしいので、妥当な結果ですね(それでも発売当初ならトップクラスの性能ですし)
私もシステムドライブで1TBモデルを使ってますが、普通に使う分には何の不満もないですね
あと中華より安心感ある(大事なプラシーボ)
Micron社製232層NANDチップも去年の今頃には量産開始して出荷も始まったはずなのに
一体いつになったら一般層が気軽に買える製品にまで普及して来るのやら
自社製品で信頼性はあるけど性能がイマイチな元親会社と性能とコスパは良いけど部品おみくじがありうる元傘下の記事の並びで笑う
マイクロンは中国のお返しで制裁受けてしまいましたし猶更ピンチですねぇ
似た価格のEXCERIA PRO の実測値知りたいですねぇ。
検証ありがとうございました。
Crucial信者の私としては残念な結果となりました。
P3 Plusの正体といい、かなり落ちぶれてきた感があります。
逆に、WDのBlack SN770の凄まじさが際立ちます。
WDは以前NAS向けHDDのRed無印をSMRと隠して販売、信用を地に落としましたが、名誉挽回に本気で取り組んでいたのでしょう。
現状SSD / HDDはWD一択かもしれません。
これ自体は2年前の製品ですからね…
今としては積極的に選ぶ理由はちょっと無いですね
プライムセールで2枚買ったけど、これより安いSN770の方が良かったかな
今日(7/14)に発売されたWD Blue SN580のレビューおねがします
このSSD、arkのBTOで安く選択できるんですよね。単体で買うとなると…ですが。
arkやサイコム等ではコレが定番ですね
人気落ち着いてるから値下がりしててちょうどよい選択肢なんだと思います
サイコムさんは別に安さを売りにしてるわけではないのでいいんですが、arkはあれだけカスタマイズできて激安なので、(Crucial P5 Plus含めて)おすすめ(布教)していきたいと思います。
数ヶ月前に組んだPCでSN770を使用していたが、試しにP5 Plusを購入して
交換してみたら、実使用において明らかにSN770より劣っている様に感じる。
大きなファイルの転送速度だけが優秀で、ソフトの起動や読み込みの開始その
ものが遅いと感じた。