補助電源コネクタ不要で1スロット占有のロープロファイルグラボの最新作「Radeon RX 6400」を自腹で購入しました。
価格が近いRX 6500 XTやGTX 1650に対して、どれくらいの性能を出せるのか。ベンチマークしながら詳しくレビューします。
(公開:2022/5/2 | 更新:2022/5/2)
「Radeon RX 6400」の仕様とスペック
GPU | RX 6400 | GTX 1650 G6 | RX 6500 XT |
---|---|---|---|
プロセス | 6 nm製造 : TSMC | 12 nm製造 : TSMC | 6 nm製造 : TSMC |
シェーダー数CPUのコア数に相当 | 768 | 896 | 1024 |
RTコア数レイトレ用の特化コア | 12 | 0 | 16 |
ブーストクロック | 2321 MHz | 1590 MHz | 2815 MHz |
VRAM | GDDR6 4 GB | GDDR6 4 GB | GDDR6 4 GB |
理論性能(FP32) | 3.565 TFLOPS | 2.849 TFLOPS | 5.765 TFLOPS |
SLI対応 | – | – | – |
PCIe | PCIe 4.0 x4 | PCIe 3.0 x16 | PCIe 4.0 x4 |
TDP | 53 W | 75 W | 107 W |
補助電源 | – | – | 6 pin |
MSRP | $ 159 | $ 149 | $ 199 |
参考価格 | 22980 円 | 29800 円 | 25980 円 |
発売価格 | 25300 円 | 19778 円 | 27273 円 |
発売 | 2022/4/22 | 2020/4/1 | 2022/1/21 |
GPU | RX 6400 | GTX 1650 G6 | RX 6500 XT |
---|---|---|---|
世代 | RDNA 2 | Turing | RDNA 2 |
プロセス | 6 nm製造 : TSMC | 12 nm製造 : TSMC | 6 nm製造 : TSMC |
トランジスタ数 | 54.0 億 | 47.0 億 | 54.0 億 |
ダイサイズ | 107 mm2 | 200 mm2 | 107 mm2 |
シェーダー数CPUのコア数に相当 | 768 | 896 | 1024 |
TMU数Texture Mapping Unitのこと | 48 | 56 | 64 |
ROP数Render Output Unitのこと | 32 | 32 | 32 |
演算ユニット数 | 12 | 14 | 16 |
Tensorコア数機械学習向けの特化コア | 0 | 0 | 0 |
RTコア数レイトレ用の特化コア | 12 | 0 | 16 |
L1キャッシュ演算ユニットあたり | 128 KB | 64 KB | 128 KB |
L2キャッシュコア全体で共有 | 1.0 MB | 1.0 MB | 1.0 MB |
L3キャッシュコア全体で共有 | 16.0 MB | – | 16.0 MB |
クロック周波数 | 1923 MHz | 1410 MHz | 2310 MHz |
ブーストクロック | 2321 MHz | 1590 MHz | 2815 MHz |
VRAM | GDDR6 4 GB | GDDR6 4 GB | GDDR6 4 GB |
VRAMバス | 64 bit | 128 bit | 64 bit |
VRAM帯域幅 | 128.0 GB/s | 192.0 GB/s | 143.9 GB/s |
理論性能(FP32) | 3.565 TFLOPS | 2.849 TFLOPS | 5.765 TFLOPS |
SLI対応 | – | – | – |
PCIe | PCIe 4.0 x4 | PCIe 3.0 x16 | PCIe 4.0 x4 |
TDP | 53 W | 75 W | 107 W |
補助電源 | – | – | 6 pin |
MSRP | $ 159 | $ 149 | $ 199 |
参考価格 | 22980 円 | 29800 円 | 25980 円 |
発売価格 | 25300 円 | 19778 円 | 27273 円 |
発売 | 2022/4/22 | 2020/4/1 | 2022/1/21 |
「RX 6400」はAMD Radeonの最新世代(RDNA 2)で一番下のグレードに位置する、エントリークラスのグラボです。
RX 6500 XTからVRAMの容量や規格などはそのままに、シェーダーの規模を1024個から768個へ25%カットし、TDP(消費電力)を半分まで抑えています。
発熱量が大幅に減ったおかげで、補助電源コネクタ不要かつ1スロット占有のロープロファイルグラボもラインナップされました。価格の割に性能が・・・と言われがちですが、ロープロ対応はライバルに対する明確な強みです。
あとは実際にベンチマークしてみて、価格とスペックが非常に近い「GTX 1650(G6)」にどこまで性能で迫れるかを見てみましょう。
RX 6400の性能をベンチマーク
テスト環境(スペック)
テスト環境「ちもろぐ専用ベンチ機」 | ||
---|---|---|
CPU | Core i9 12900K | |
CPUクーラー | NZXT X63 280 mm簡易水冷クーラー | |
マザーボード | ASUS TUF GAMINGZ690-PLUS WIFI D4 | |
メモリ | DDR4-3200 16GB x2使用メモリ「G.Skill Trident Z C16」 | |
グラフィックボード | RX 6500 XT | |
SSD | NVMe 1TB使用SSD「Samsung 970 EVO Plus」 | |
電源ユニット | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
OS | Windows 11 Pro(Build 22000) 修正パッチ「KB5006746」導入済み | |
ドライバ | NVIDIA 511.32 / AMD 22.4.2 Beta | |
ディスプレイ | 3840 x 2160@144 Hz使用モデル「DELL G3223Q」 |
グラフィックボードの検証に使うベンチ機のスペックです。CPUはRyzen 9 5950Xより安いのに最強クラスのゲーミング性能を持つ「Core i9 12900K」を使います。
32 GBのメモリ、容量1 TBのメインSSDなど、CPU以外のスペックは基本的に従来のセットアップと同じままです。OSは修正パッチを適用した最新版のWindows 11 Proを使用します。
グラフィックボードの足を引っ張らないよう、可能な限りCPUボトルネックを抑えたテストスペックになっているので、グラフィックボードの性能をかなり正確にテスト可能です。
テスト時のグラフィックドライバは、Radeon Driver 22.4.2 Beta(RX 6400に対応する最初のドライバ)にて検証します。
用意したグラボ
今回のRX 6400ベンチマークで使用するグラボは、玄人志向(PowerColor OEM)製「RD-RX6400-E4GB/LP」です。パソコン工房より、約25000円で自腹で購入しました。
補助電源コネクタ不要、1スロット占有、ロープロファイル対応で一番価格が安いモデルです。品質にもう少しこだわりたい方はSapphire製のロープロ対応モデルがおすすめ。
ロープロファイル対応の超コンパクト設計です。冷却ファンは40 mm径、全長155 mm、横幅67 mm(PCIeスロット含む)、厚み18 mmです(※すべて実測)。
映像出力はDisplay Port 1.4aとHDMI 2.1の2つだけです。玄人志向がケチったわけではなく、RX 6400の仕様により映像出力は最大2つに制限されます。
今どき1~2万円台のローエンドグラボでも4画面は余裕で出せるので、2画面しか出せない仕様は完全に時代錯誤です。
4K 144 Hz対応の「DELL G3223Q(レビュー記事)」にHDMI 2.1でつなぐと、4K 144 Hz(12 bit:RGB方式)で出力可能です。
RX 6400のゲーミング性能
今回のちもろぐ版グラフィックボードレビューでは、以下2つのベンチマークと12個のゲームタイトルを使って、「RX 6400」のゲーム性能を詳しくテストしました。
テスト時の解像度はフルHD(1920 x 1080)です。RX 6400は低予算なグラボなので、最高設定と中設定の2つを検証します。
- 3DMark(FireStrike / TimeSpy / Port Royaleを使用)
- VRMark(Orange / Cyan / Blueすべて使用)
- Apex Legends(ベンチマークまとめ)
- VALORANT(New !!)
- Escape from Tarkov(ベンチマークまとめ)
- フォートナイト(ベンチマークまとめ)
- Rainbow Six Siege(ベンチマークまとめ)
- Assassin’s Creed Valhalla
- Cyberpunk 2077(ベンチマークまとめ)
- Forza Horizon 5
- FF14:暁月のフィナーレ
- モンスターハンターライズ
- Microsoft Flight Simulator 2020(ベンチマークまとめ)
- マインクラフト:RTX(New !!)
レビューに使用するベンチマーク対象ソフトは以上の12個です。ベンチマークに使いやすいソフト、日本国内で人気のあるゲームを中心に選んでます。
定番ベンチマーク:3DMark
「3DMark」はグラフィックボード用の定番ベンチマークです。グラボの性能をざっくりとスコア化(Graphics Score)して、性能を分かりやすく比較できます。
DX11で動作するフルHD向けベンチマーク「FireStrike」では、RX 6400は11796点。スコアだけなら、GTX 1650(GDDR6)を超えています。
DX12で動作する、WQHD向けかつ比較的新しいゲーム向けの「TimeSpy」では、RX 6400は3594点。解像度が大きくなるとスコアが伸びにくくなるRDNA 2世代特有の傾向はローエンドでも健在です。
他のグラフィックボードとベンチマークスコアの比較をしたい方は、↑こちらのグラボ性能まとめ表も参考にどうぞ。
VRゲーム性能:VRMark
日本はヨーロッパ圏を超えるVRゲーム大国でして、VRゲームのためにグラボを求める人も少しずつ増えています。VRゲーム向けの定番ベンチマーク「VRMark」を使って、RX 6400のVRゲーム性能を検証します。
「Orange Room」はVRMarkで一番軽い(HTC ViveまたはOculus Riftの動作チェック的な)テストです。RX 6400のスコアは6100点、GTX 1650と大差ない性能です。
< Cyan Roomは動作せず >
「Cyan Room」はDX12で動作するVRベンチマークで、2番目に重たいです。RX 6400は残念ながらCyan Roomベンチマークを完走できませんでした。
ドライバの入れ直し等いろいろと検証を行いましたが、完走に至らず。Cyan Roomをスキップしてレビュー記事の完成を優先します・・・。
「Blue Room」は将来のハードウェアを前提として用意された、5K解像度の重量級VRベンチマークです。
Radeon RX 6000シリーズ(RDNA 2世代)は解像度が高いほど性能を出せなくなる弱点があるので、RX 6400のスコアは非常に伸びにくく、GTX 1650にすら劣ります。
VRAM容量が4 GBしかない以上、基本的にVRゲームとの相性はあまり良くないです。
Apex Legends
RX 6400平均fps最低fps(下位3%)
定番のFPSタイトル「Apex Legends」のテスト結果です。
最高設定だと平均54.8 fpsで、GTX 1650にあとわずか届かないです。中設定では平均68.5 fpsとでGTX 1650とほぼ同じ性能に並びます。
RX 6000シリーズはApex Legendsを得意とするグラボですが、RX 6400に限っては期待しているほどの性能を発揮できません。消費電力の制限が厳しく、GPUクロックが伸びないのが大きな要因と推測しています。
VALORANT
RX 6400平均fps最低fps(下位3%)
無料でプレイできる競技FPS「VALORANT」のテスト結果です。とても動作が軽いため、最高設定だけでテストします。RX 6400は平均195.4 fpsで、144 fpsを軽々と超えています。
Escape from Tarkov(タルコフ)
RX 6400平均fps最低fps(下位3%)
ロシア産の硬派なリアル系FPS「Escape from Tarkov(タルコフ)」のテスト結果です。
最高設定(Ultraプリセット)は平均36.4 fpsで、60 fps台ですら届きません。中設定(Mediumプリセット)だと平均49.8 fpsに伸びるものの、60 fps台は無理。
GTX 1050 Tiとほぼ同じ性能に終わります。RX 6000シリーズはどうもタルコフが苦手です。
フォートナイト
RX 6400平均fps最低fps(下位3%)
Apex Legendsと双璧をなす大人気FPSタイトル「フォートナイト」のテスト結果です。
最高設定で平均40.2 fpsと、60 fpsすら出ないですがGTX 1650に並ぶ性能です。中設定まで妥協すると平均86.8 fpsで普通にプレイできる動作に改善します。
フォートナイトだとRX 6400はGTX 1650とまったく同じ性能です。
レインボーシックスシージ
RX 6400平均fps最低fps(下位3%)
かなり競技性の強いFPSタイトル「レインボーシックスシージ」のテスト結果です。
最高設定で平均90.6 fps、高設定で平均89.6 fpsでした。設定を下げてもフレームレートが変化しません。かなり不可解な挙動です。
Assassin’s Creed Valhalla
RX 6400平均fps最低fps(下位3%)
動作の重たい重量級ゲームで知られる「アサシンクリード:ヴァルハラ」のベンチマーク結果です。
最高設定では平均わずか23.3 fps、設定を妥協しても平均31.7 fpsで、快適な動作とはまったくいえません。RX 6400で重量級ゲームは厳しいです。
サイバーパンク2077
RX 6400平均fps最低fps(下位3%)
超高画質なサイバーパンク系RPG「サイバーパンク2077」のベンチマーク結果です。
ウルトラ設定だと平均22.7 fps、まったくダメ。中設定まで下げて平均40.9 fpsで、どうにかプレイできる水準に。設定次第でサイバーパンク2077はプレイできます。
Forza Horizon 5
RX 6400平均fps最低fps(下位3%)
超美麗グラフィックのレーシングゲーム「Forza Horizon 5」のベンチマーク結果です。
エキストリーム設定だと平均18.9 fpsで、パラパラマンガ状態でした。中設定では平均44.8 fpsまで改善し、それなりに遊べるレベルにはなります。
FF14:暁月のフィナーレ
RX 6400平均fps最低fps(下位3%)
定番MMORPG「FF14:暁月のフィナーレ」のベンチマーク結果です。
最高設定で平均70.3 fps、普通にプレイできます。標準設定だと平均136.6 fpsです。
モンスターハンターライズ
RX 6400平均fps最低fps(下位3%)
モンハンシリーズ最新作「モンスターハンターライズ」のテスト結果です。
とても動作が軽いゲームなので、最高設定(150%スケーリング)でも平均68.9 fpsと・・・思っていたよりギリギリの動作でした。中設定(150%)だと平均87.1 fpsです。
GTX 1050 Tiとほとんど性能差が出ていません。
RX 6400はモンハンライズのように、スペックの割になぜか性能がまったく出せないゲームがあります。ドライバが22.4.2(ベータ版)だから成熟し切っていない可能性があるのでしょうか?
Flight Simulator 2020
RX 6400平均fps最低fps(下位3%)
重量級フライトシミュレーター「Flight Simulator 2020」のテスト結果です。
国会議事堂から羽田空港へルートを設定して、オートパイロットモードで飛行させるだけのシンプルなフライトプランを使ってテストしました(天候は午前12時の晴天で固定)。
最高設定(ULTRA設定)では平均20.2 fpsと厳しい動作です。中設定(MEDIUM設定)だと平均38 fpsでなんとかフライトを楽しめるレベルに。
【1920 x 1080】フルHDゲーミングの性能
ここまでテストしたデータを平均化※して、RX 6400のフルHD(最高設定)の平均パフォーマンスをグラフにまとめました。
RX 6400のフルHDゲーム性能は「平均44.6 fps(下位3%:35.4 fps)」です。GTX 1650と比較して、約13%低い性能です。RX 6400とGTX 1650の価格差は約1.2倍なので、コスパ的には一応合格です。
※フレームレートが高すぎる「VALORANT」は平均から除外します。
RX 6400のフルHD(中設定)の平均パフォーマンスをグラフにまとめました。
RX 6400のフルHDゲーム性能(中設定)は「平均67.4 fps(下位3%:50.3 fps)」です。GTX 1050 Tiより約21%高く、GTX 1650より約15%低いパフォーマンスを示します。
なお、平均値の比較は真剣に受け止めないように注意してください。プレイするゲームによってはGTX 1650を超えている場合もあるし、逆にGTX 1050 Ti相当まで落ちてしまうゲームもあります。
RX 6400はPCIe 4.0と3.0で性能が変わる?
普通のグラフィックボードは接続インターフェイスに「PCIe 3.0 x16」か「PCIe 4.0 x8」のように、x8~x16幅のインターフェイスを使います。
しかし、ローエンドのRX 6400ではコストカットの影響でインターフェイスがたったx4幅に制限されています。x8~x16なら性能にほとんど影響が出ないですが、さすがにx4は悪影響が出る可能性が高いので実際にテストした結果がこちら。
平均パフォーマンスはPCIe 4.0 x4で平均44.6 fpsで、PCIe 3.0 x4にすると平均41.6 fpsまで下がります。実に7%もの性能低下が見られ、やはりx4幅は削りすぎです。
RX 6500 XTのレビューでも同じ指摘をしたとおり、バス幅の削減はx4ではなくx8幅に抑えるべきです。
最近は第12世代インテルCPUのおかげで、手頃な価格でPCIe 4.0 x16を実装しているBTOパソコンも増えていますが、まだPCIe 3.0 x16の方が多い状況です。
平均値の中身は以上のとおりです。
負荷の軽いゲーム(モンハンライズやVALORANT)だと性能差はわずかで、負荷の重たいゲーム(アサクリ:ヴァルハラなど)では30%強の性能低下が見られます。
定番FPSタイトル(フォートナイトやApex Legends)の性能低下は5~10%程度です。
もとのフレームレートが小さいため体感できるほどの性能差ではないとはいえ、あまり気持ちのいい性能差とは言えないです。
かと言ってRX 6400に求められているニーズを想定すると、RX 6400のためにPCIe 4.0に対応した環境を用意するのもコストに対するメリット(= 費用対効果)が微妙すぎます。
PCIe 4.0に対応した最安値のCPUが約9500円(Pentium G7400)、対応するH610マザーボードが約1.1~1.2万円から買えます。2万ちょっとで揃うため導入のハードルは意外と低いです。
PCIe 3.0で妥協したからと言って価格が1万円まで下がるわけでもない(せいぜい1.6~1.7万円が限界な)状況ですし、これから初めて自作PCを組むならPCIe 4.0環境で良いでしょう。
RX 6400のクリエイティブ性能
グラフィックボードはゲームだけでなく、3Dレンダリングやゲームの録画配信もこなせます。
GPUレンダリングの定番ソフト「Blender」、動画エンコード「Aviutl」、ゲーム実況配信ソフト「OBS」を使ってRX 6400のクリエイティブ性能をテストします。
「OBS」でゲームの録画配信
ゲーム実況配信の定番ソフト「OBS Studio」を、グラフィックボードを使って快適に動くかどうかをチェックします。
OBSの録画配信は非常に負荷が重たいリアルタイムエンコードですが、グラボに搭載されているハードウェアエンコード機能を使うと、CPUにほとんど負荷をかけずに快適な録画と配信が可能です。
GeForce系のグラボは「NVEnc」、Radeon系だと「VCE」と呼ばれるハードウェアエンコード機能でリアルタイムなエンコードができます。
解像度はフルHD(1920 x 1080)、フレームレートは60 fps、ビットレートは9000 kbpsです。録画と配信どちらも同じ設定で、同時に実行します。
テストに使用するゲームは「Apex Legends(最高設定)」で、ゲーム側に144 fpsのフレームレート上限をかけています(※上限なしだとエンコードが安定しない場合があるため)。
OBSでゲーム配信と録画 | ||
---|---|---|
ドロップフレーム率 | 評価 | |
RX 6400 | 動作しない | |
RX 6500 XT | 動作しない | |
GTX 1650 G6 | 0 % | 快適 |
GTX 1050 Ti | 0 % | 快適 |
RTX 3050 | 0 % | 快適 |
GTX 1660 Super | 0 % | 快適 |
RX 6600 XT | 0 % | 快適 |
残念ながら、RX 6400は動画エンコードに対応していません。
一般的に、Radeonシリーズには「VCE」と呼ばれるハードウェアエンコード機能が搭載されているのですが、RX 6400は非対応となっています。
RX 6500 XTと同じく、2022年発売の最新グラボでハードウェアエンコード非対応は時代錯誤感が強いです。今どきローエンドCPU(Pentium)でも、動画エンコード(QSVエンコード)に対応しているのに・・・。
OBSでゲーム配信と録画 | |||
---|---|---|---|
フレームレート | 配信中 | 減少率 | |
RX 6400 | 動作しない | ||
RX 6500 XT | 動作しない | ||
GTX 1650 G6 | 58.5 fps | 49.8 fps | -14.9 % |
GTX 1050 Ti | 38.1 fps | 32.0 fps | -16.1 % |
RTX 3050 | 89.9 fps | 76.2 fps | -15.3 % |
GTX 1660 Super | 91.5 fps | 75.0 fps | -18.1 % |
RX 6600 XT | 133.7 fps | 121.8 fps | -8.9 % |
ゲーム実況配信を考えている方は、RX 6400を避けてください。同じ理由で1つ上位のRX 6500 XTも選ばないように。
「Aviutl」で動画エンコード
無料で使える有名な動画編集ソフト「Aviutl」に、rigaya氏の拡張プラグイン「NVEnc」「VCEEnc」を入れて、動画エンコードにかかった時間を比較してみる。
当然ながら、動画エンコードは実行されません。
グラボを使って動画エンコードやゲーム実況配信をするなら、GTX 1650で妥協するか予算をもう少しがんばってGTX 1660 SuperやRTX 3050を選ぶほかないです。
RTX 3050はTuring世代のNVEncエンコーダーを搭載しているので、予測変換とBフレームに対応した高画質かつ超高速の動画エンコードが可能です。
テスト時のエンコード設定 | |
---|---|
出力設定 | H.264/AVC High @ Level 5.2 1920 x 1080 @60 fps オーディオ:AAC(192 kbps) |
品質 | NVEnc:Quality VCE:slow |
ビットレート | 9000 kbps(VBR) |
最大ビットレート | 288000 kbps(VBR) |
VBVバッファ | 9000 kbit |
Lookahead | 32フレーム |
Bフレーム | NVEnc:3フレーム VCE:不可 |
参照フレーム | 3フレーム |
GOP長 | 600 |
その他 | deblock |
かなり細かい設定まで手動で決め打ちして、なるべく同じ内容のエンコードを実行できるように工夫してます。
上記のエンコード設定で容量1.5 GBの元ファイルが、NVEncだと192 MB前後、VCEでは197 MB前後に仕上がります。若干VCEのほうが容量が大きいので、ベンチマーク比較としてはRadeon(VCE)側が有利です。
「Blender」でGPUレンダリング
Blenderの公式サイトで無料配布されているCycles Render向けのベンチマーク「Blender Benchmark」を使って、GPUのみ使用する設定でレンダリングを行います。スコアが高いほど高性能です。
最新版のBlenderベンチマークでは、RX 6400のスコアは276.6点で、GTX 1050 Tiより少しだけ高性能です。GTX 1650との性能差はほぼ2倍です。
動画再生支援(デコード機能)をチェック
Youtube再生で頻繁に使用される動画の圧縮方式「AV1」「VP9」のデコード機能について、「【MMD 8K】ヒビカセ YYB式初音ミク 高ビットレートHEVC版」にて動作確認を行います。
AV1デコード機能はおそらく未実装です。GPUの使用率も多少上がりますが、CPU側の使用率も90%前後まで上昇してしまいます。
VP9デコード機能は問題ないです。CPU使用率ほぼ0%で、グラボ側だけで処理を終えています。
2022年5月時点、Youtubeのほとんどの動画はまだVP9方式で配信されているため、AV1デコード非対応はまったく問題にならないです。
RX 6400の消費電力と温度
消費電力を実際に計測
電力ロガー機能のついた電源ユニットを2台使って、CPUとマザーボード(CPU以外)に電力供給を分割します。
テスト環境 | ||
---|---|---|
電源ユニット #1システム全体 | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
電源ユニット #2CPUのみ | 850 W(80+ Gold)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 |
FF15ベンチマークを実行中に、CPU以外の消費電力をロガー機能で測定した後、グラフィックボードを取り外した状態で再び同じテストを実行して測定を行います。
- A:グラボを取り付けた状態で消費電力を測定
- B:グラボを外した状態で消費電力を測定
以上2つのデータを取得したら、「AをBで引き算」でグラフィックボード本体の消費電力を抽出できる仕組みです。
グラボの消費電力はソフト読み(HWiNFO)で確認は可能ですが、グラフィックボードのモデルやメーカーによって表示される数値に差が生じる可能性があるので、ロガー機能のついた電源ユニットを使って測定しています。
FF15ベンチマーク(2560 x 1440 / 高品質)を実行中に、2台の電源ユニットを使ってグラフィックボード本体の消費電力を計測します(※システム全体ではなくグラボ単体の消費電力)。
測定した結果をグラフにまとめました。
RX 6400の消費電力は平均わずか48 Wで、公称スペックのTDP:53 Wに収まります。
性能が近いGTX 1050 TiやGTX 1650よりも少ない消費電力です。RX 6500 XTと比較するとほぼ半分にまで消費電力が減っており、ブーストクロックの制限が省エネ化に大きく貢献しています。
ワットパフォーマンスは?
FF15ベンチマークの平均フレームレートを、先ほど実際に測定した消費電力で割り算して、ワットパフォーマンス(= 消費電力1 Wあたりのフレームレート)を求めます。
RX 6400のワットパフォーマンス(電力効率)は非常に優秀です。
基本的に製造に使用したプロセスの質でワッパは大きく変わります。RX 6400ではTSMC 6 nmプロセスが使用されており、比較したグラボの中で最先端のプロセスです。
RX 6500 XTのようにブーストクロックも無理していないおかげで、非常に高いワットパフォーマンスが可能に(※GPUクロックを上げるほど電力効率は悪化します)。
グラボの温度をチェック
FF15ベンチマーク(2560 x 1440 / 高品質)を実行中に、HWiNFOを使ってグラフィックボードの温度(GPUコア温度)を測定します。テスト時の気温は27℃前後です。
なお、グラフィックボードの温度はテストに使用したオリファンモデルの出来によって完全に左右されるため、各GPUの比較は参考程度に見てください。
平均温度(Avg)最大温度(Max)
RD-RX6400-E4GB/LPの温度は、最大82℃、平均77.7℃でした。
50 Wちょっとの消費電力(発熱)だからもっと冷えるかと思いましたが、厚み18 mmと40 mm径の小型ファンだとあっさり80℃前後に達します。
ファンの動作音もそれなりに大きいです。1スロット型のロープロファイルモデルに、冷却性能と静音性を求めるのは無理があるようです。
まとめ:最高のロープロファイル対応小型グラボ(一部除く)
「RX 6400」のデメリットと弱点
- 進化の少ない性能
- 4 GBのVRAM容量
- レイトレ性能はほぼない
- インターフェイスが狭い(x4幅)
- 実質的にPCIe 4.0が必須
- 動画エンコード機能なし
- AV1デコード機能なし
- 映像出力は最大2つまで
- 価格が高い(RX 6500 XTに近い)
「RX 6400」のメリットと強み
- 補助電源コネクタ不要
- 1スロット占有のロープロファイル
- ワットパフォーマンスが高い
- GTX 1650の9割くらいの性能
- 安定した在庫状況
RX 6400は低価格なオフィスパソコンのゲーミングPC化や、低予算自作パソコンを組みたい方に、条件付きでおすすめできるグラボです。
基本的に性能が目当てなら、価格が近い「RX 6500 XT」を選んでください。RX 6500 XTにはGTX 1650を明確に上回る性能があり、特にApex Legendsで猛威をふるいます。
それでもあえてRX 6400を選ぶ理由は、やはり補助電源コネクタが不要で、1スロット占有のロープロファイルモデルが販売されているのが大きな強みです。
たとえば「ThinkCentre Neo 50t Tower Gen 3」のような、格安小型オフィスパソコンをゲーミングPC化するなら、RX 6400ほどの適任者はいません。
一方で、格安ゲーミングPCをイチから組む場合は、RX 6400を選ぶメリットはほぼ無いです。あと2000円足すだけでGTX 1650を超えるRX 6500 XTに手が届きます。
普通のコスト感覚ならRX 6500 XTを選ぶでしょうし、ゲーム配信も考えているなら結局GTX 1650を選ばざるをえないです。AMDはRX 6400とRX 6500 XTに動画エンコード機能(VCE)を付けるべきでした・・・。
というわけで、ちもろぐの個人的な評価は「B+ランク」とします。手頃な価格で購入できる最高のロープロファイルグラボですが、人を選びます。
以上「RX 6400ベンチマーク & レビュー:ロープロファイル対応でGTX 1650に迫る性能?」でした。
「RTX A2000」です。TDP:70 W(補助電源なし)で、性能はRX 6600(無印)とRTX 3060の間に位置します。なお価格はおよそ10~11万円です。
RX 6400を入手する
価格変動が激しいので、ショップごとに「RX 6400」と検索した場合のリンクをまとめておきました。
現状の適正価格は2.2~2.3万円前後で、2.5万円を超えているとコスパが悪いです。
RX 6400を搭載するBTO
RX 6400を標準で搭載するBTOパソコンはどこもコスパが悪いです。Lenovoの格安BTOパソコンを買ってきて、自分で増設するのを強く推奨します。
こちら↑の記事で、自腹で購入したNeo 50t Tower Gen 3にグラボを増設する方法を解説しています。合計10万円ちょっとで、自作PCやBTOなら13~14万円かかるスペックが入手可能です。
単にロープロだけならGTX1650にもあるので、1スロでより消費電力が低いというのがポイントですかね
ゲーム性能以外の部分が完全にローエンドなのが問題ですが
> ゲーム性能以外の部分が完全にローエンドなのが問題ですが
ですよね~・・・、AV1デコードもVCEエンコード機能も無いなんて。今の価格だとかなり割高です。
相変わらずAMDグラボは実効性能低いな
PCIex4問題はAMDからすると「重いゲームで差が出る?重いゲーム向け製品じゃないからコスト最優先したんだよ」って事になりそう。
4GBメモリも同じく。
そっちよりもRX6500XTとほとんど変わらない価格設定の方が大問題で売れそうにないけど、そこは時間が解決するか。
1スロットで済む製品を望む人は間違いなく居るだろうけど、省スペースPCにグラボ積んで使おうって層はそんなに多く無いだろうし、価格落ちるまで売れ無さそう。
RADEONでの待望の1スロットLP+補助電源無しが久しぶりに出たのは歓迎
価格は円安が全て台無しに
どっかファンレスとか出さないかな
パリット(Palit)が一時期ファンレスシリーズ(KarmX)を出していたのですが、GTX 1650を最後に出ていないので期待薄・・・、アリエキで謎の業者が売ってる可能性はあります。
どうしてもファンレス化するなら、付属のクーラーを取り外し、NH-D15みたいな巨大なヒートシンクをダイに直置きです。ヒートシンクを基板に固定できない場合は、ベンチ台で横置きにすればなんとかなります(重力に頼る)。
性能に期待するというよりも、グラフィックのないCPUに最低限、何か映る機能を補う、という位置づけでしょうか。
「最低限、何か映る機能を補う」が目的なら、GT 730やGT 1030でいいと思います。
RX 6400は映るだけにしては性能が高いかわりに、値段もそれなりにします。GT 1030なら1万ちょっとで買えます。
RX6500が発売してからある程度期間が経過してるので値下がってて、価格差ほとんどないのがキツイな〜。
かつてのGTX1650と同じ値段、1万5千円くらいなら魅力が増すんだが・・・。
国策で円安にしてるからなぁ
輸出してる会社は喜ぶが海外製品欲しい俺らは(´;ω;`)…
円相場が130円前後の今では、1.5万円は厳しそう。
参考までに、GTX 1650(G5)発売時の円相場が110.8円、GTX 1650(G6)発売時で106.9円でした・・・(なんてこったい)
AV1デコードは8kには対応していない、という可能性はないでしょうか
WikipediaによればRX6000シリーズはav1デコード対応なので、あり得るのは4k30pまで、とか
ロープロの1スロット
T600という選択もありかな
玄人志向(PowerColor)版のヒートシンクはアルミのみで、Sapphire版はヒートパイプ付きの違いがありますよね。Youtubeで動画上げていらっしゃる方によれば、Sapphire版の方はそれなりに静からしいです。
可能であれば、動作音の比較をしてみても良さそうでしょうか。需要は無いでしょうけど…。