圧倒的コスパで超売れ筋なNVMe SSD「WD Blue SN550」に実質後継モデルとして「WD Blue SN570」が登場。価格はほぼ据え置きのまま、性能だけグレードアップされたSN570の実力を詳しくベンチマークします。
WD Blue SN570 NVMe【仕様】
WD Blue SN570 NVMe スペックをざっくりと解説 | |||
---|---|---|---|
容量 | 250 GB | 500 GB | 1000 GB |
インターフェイス | PCIe 3.0 x4(NVMe 1.4) | ||
フォームファクタ | M.2 2280(片面実装) | ||
コントローラ | Western Digital-designed controller | ||
NAND | SanDisk(KIOXIA) 112層 3D TLC | ||
DRAM | なし | ||
SLCキャッシュ | 非公開 | ||
読込速度 シーケンシャル | 3300 MB/s | 3500 MB/s | 3500 MB/s |
書込速度(SLC) シーケンシャル | 1200 MB/s | 2300 MB/s | 3000 MB/s |
書込速度(TLC) シーケンシャル | 非公開 | ||
読込速度 4KBランダムアクセス | 非公開 | ||
書込速度 4KBランダムアクセス | 非公開 | ||
消費電力(最大) | 3.5 W | 4.0 W | 3.5 W |
消費電力(アイドル) | 30 mW | ||
TBW 書き込み耐性 | 150 TB | 300 TB | 600 TB |
MTBF 平均故障間隔 | 150万時間 | ||
保証 | 5年 | ||
MSRP | $ 39.9 | $ 49.9 | $ 89.9 |
参考価格 | 5440 円 | 5980 円 | 11680 円 |
GB単価 | 21.8 円 | 12.0 円 | 11.7 円 |
従来モデルのWD Blue SN550(SanDisk Ultra 3D NVMe)と同じく、基本的にWestern Digital(= SanDisk)製のSSDコントローラと、キオクシア(旧東芝メモリ)製のNANDメモリを組み合わせたシンプルな部品構成のSSDです。
SSD | SN570 | SN550 |
---|---|---|
NANDメモリ | KIOXIA BiCS5 | KIOXIA BiCS4 |
積層数 | 112層 | 96層 |
記憶容量 | 1024 Gb → 8枚で1 TB | 512 Gb → 16枚で1 TB |
書き込み性能 | 非公開 | 57 MB/s |
1TB換算で | ? MB/s | 912 MB/s |
では何が変わったのか?・・・大きな違いは2つあります。1つ、搭載されるBiCSメモリの積層数、2つ目がチップあたりの記憶容量です。
SN550では96層まで重ねた容量512 Gbのチップを使っています。今回のSN570から、積層数をさらに増やした112層のBiCS5メモリを採用し、チップあたりの記憶容量も倍増して1024 Gb(=1 Tb)となりました。
製造元のキオクシアは2020年1月時点(公式プレスリリース文より)で、112層まで重ねた1 Tb製品を計画しており、発表から1年半が経過した今ようやく実戦投入というわけです。
なお、一般ユーザーにとって積層数の増加は歓迎すべき改善点ですが、チップあたりの記憶容量の増加はあまり歓迎できません。なぜなら、確実に書き込み性能が下がるから。よほどミラクルな技術革新が起きていない限り、記憶容量の倍増は書き込み性能に悪影響です。
書き込み性能に悪影響があるかにも関わらず、Western Digitalはなぜ記憶容量の増加を目指すのか。理由はただただ利益を追求するため。少ない部品数で大容量を実現できれば、価格競争力を高められ、利益率も向上できます。
(そして大多数の一般ユーザーはキャッシュ超過後の書き込み性能なんて気にしません・・・価格が安くてCrystal Disk Markが速ければ満足するでしょう)
Adobe Creative Cloudが1ヶ月使える特典
SN570には「Adobe Creative Cloud コンプリートプラン」が1ヶ月無料で使える引き換えコードが付属します。
Photoshop、Illustrator、Premiere Proなど。20以上のAdobeアプリを使えるプランです。月額およそ6000円のプランが1ヶ月無料で付いてくるのは普通にお得感強いです。
ライバル製品と価格設定の比較
シーケンシャル性能が1500 MB/sを超えている普通のNVMe SSDと価格を比較したグラフです。
WD Blue SN570(1TB)は比較した中でもっとも価格が安いNVMe SSDです。実質旧世代のWD Blue SN550とほとんど変わらない価格なので、スペックあたりのコスパは明らかにSN570が勝ってます。
1000円ほど高いSN750 SEやSamsung 980(無印)も、SN550やSN570と同じDRAMキャッシュレスSSDです。SN570の価格競争力は非常に高いです。
WD Blue SN570 NVMeを開封レビュー
パッケージデザイン & 開封
今回レビューで使用するWD Blue SN570 1TBは、筆者がAmazonから自腹で購入しました(約1.1万円)。発売当初は1.3~1.4万円でしたが、あっさり値下がりしましたね。
パッケージデザインはいつもどおり、WD Blueらしい青色と白色のシンプルなデザインです。裏面のシールに「CFD」と書いてあるので、販売代理店はCFDのようです。
中身を引っ張り出すとプラスチック製のケースにWD Blue SD570と付属品が収納されてます。付属品は説明書のみ。
基板コンポーネント
基板の色が従来モデルより変わってます。WD Blueらしい青色から、キオクシアっぽさを感じる濃い緑っぽい青色に。基板コンポーネントは2つだけで、部品の間に製品シールが貼ってあります。
部品の少なさを見る限り、作ろうと思えばM.2 2242規格まで小型化できそうです。2世代前のSN500だと、部品がすべてM.2コネクタ側に寄っていたので、真ん中で切断してM.2 2242化する魔改造が(ごく一部のユーザー)で行われています。
基板の裏面はコンポーネントなし。
設置スペースが狭いPS5やノートパソコンに搭載しやすい、片面実装の薄型M.2 SSDです。
NANDメモリ、SSDコントローラ、DRAMそれぞれの拡大図をまとめて掲載します。
部品 | 内容 | 型番(刻印) |
---|---|---|
コントローラ | Western Digital-designed controller | 20-82-10023-A1 1306ZTM17C8 |
DRAMメモリ | なし | なし |
NANDメモリ | KIOXIA BiCS5 112層 3D TLC NAND | 014130 1T00 1366DCHN802J |
SSDコントローラはWestern Digitalのオリジナルモデル(詳細不明)です。従来モデルと同様、SanDisk刻印が入ってます。ホストバッファメモリ(最大64 MBまで)対応のコントローラです。
DRAMキャッシュはありません。メインメモリから64 MBを拝借してキャッシュの代替として使います。NANDメモリはキオクシアのBiCS5メモリを搭載、112層まで積み上げた3D TLC NANDで、記憶容量は1テラビット(1Tb)に倍増してます。
コンポーネントの構成はWD Blue SN550やSanDisk Ultra 3D NVMeとまったく同じ、主な違いはNANDメモリのみ。
WD Blue SN570 NVMeの性能をベンチマーク
テスト環境を紹介
テスト環境 「ちもろぐ専用:SSDベンチ機」 | ||
---|---|---|
CPU | Ryzen 9 5950X16コア32スレッド | |
CPUクーラー | NZXT X63280 mm簡易水冷クーラー | |
マザーボード | ASUS ROG STRIXX570-E GAMING | |
メモリ | DDR4-3200 16GB x2使用メモリ「G.Skill Trident Z C16」 | |
グラフィックボード | RTX 3070 8GB | |
SSD | WD Blue SN570 NVMe 1TB | |
電源ユニット | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
OS | Windows 10 Pro 64bit検証時のバージョンは「1909」 | |
ドライバ | NVIDIA 471.41 | |
ディスプレイ | 3840 x 2160@60 Hz使用モデル「BenQ EL2870U」 |
980 PROのレビュー以降、SSDをテストするベンチマーク機を更新しました。PCIe 4.0に対応するプラットフォーム「Ryzen 5000」と「AMD X570」をベースに、適当なパーツを組み合わせます。
CPUは16コア32スレッドの「Ryzen 9 5950X」です。16コア32スレッドの圧倒的なCPU性能があれば、最大7000 MB/sのSSDが相手でもボトルネックになる可能性はほぼ皆無です。
マザーボードはASUS製「ROG STRIX X570-E GAMING」を採用。テスト対象のNVMe SSDをCPU直結レーンのM.2スロット、またはPCIeスロットに挿し込んで各ベンチマークを行います。
SSDを熱から保護するサーマルスロットリングによって性能に悪影響が出ないように、以下のような手段でテスト対象のSSDを冷却しながらベンチマークを行います。
- マザーボード付属のヒートシンクを装着
- ケースファンを使ってヒートシンクを冷やす
SSDを徹底的に冷やして、サーマルスロットリングがテスト結果に影響を与えないように対策しています。5分間の発熱テストのみ、ヒートシンクを外してケースファンも使いません。
- インターフェース:NVM Express
- 対応転送モード:PCIe 3.0 x4
- 対応規格:NVM Express 1.4
- 対応機能:S.M.A.R.T.
「WD Blue SN570 1TB」の初期ステータスをCrystal Disk Infoでチェック。特に問題なし。
Crystal Disk Mark 8
「Crystak Disk Mark 8」は、日本どころか世界で一番有名と言っても過言ではない、定番のSSDベンチマークソフトです。性能の変化をチェックするため、初期設定の「1 GiB」に加え、最大設定の「64 GiB」もテストします。
Crystal Disk Mark 8の結果※クリックで画像拡大します | |
---|---|
テストサイズ:1 GiB(MB/s) | テストサイズ:64 GiB(MB/s) |
テストサイズ:1 GiB(レイテンシ) | テストサイズ:64 GiB(レイテンシ) |
読み込み速度が3500 MB/s超え、書き込み速度は3000 MB/s超えでシーケンシャル性能は公称スペックどおりです。
ただし、テストサイズを64 GiBまで引き上げると、シーケンシャル書き込み性能とランダムリード性能が下がります。
体感性能や実用性能に影響が大きい、4KBランダムアクセスのレイテンシ(応答時間)の比較グラフです。
従来モデルのSanDisk Ultra M.2や、Samsung 980(無印)より応答時間が短いです。
書き込みレイテンシは旧モデルより悪化しています。
ATTO Disk Benchmark
ATTO Disk Benchmarkは、512 B~64 MB(合計21パターン)のテストサイズでスループットを測定し、SSDの性能が安定しているかどうかを視覚的に示してくれるベンチマークソフトです。
ベンチマーク結果からSSDの評価が非常に分かりにくいので、表計算ソフトを使ってグラフ化して他のSSDと比較します。
読み込み速度は3500 MB/s前後でピークに達したあと、安定した性能を維持します。シーケンシャル読み込み速度は他のNVMe SSDとほぼ横並びで、旧モデルより約1200 MB/sも速いです。
書き込み速度はピーク時に3000 MB/s前後に達します。こちらも旧モデルより約1200 MB/sほど速い結果で、公称スペックどおりシーケンシャル性能では大幅な性能アップを実現します。
ただし、ATTO Disk Benchmarkのテストは基本的にキャッシュ範囲内に収まる内容ゆえに、上記のテスト結果だけでは本当の性能をまったく判断できないので注意が必要です。
HD Tune Pro
HD Tune Proは有料のSSDベンチマークソフトです。SSDの容量全域に渡ってテストを実行して、SSDの性能変化(SLCキャッシュの有無や、キャッシュが剥がれた後の性能など)を手軽に調べられます。
HD Tune Proの結果※クリックで画像拡大します | |
---|---|
| |
| |
|
HD Tune Proで注目するのは「書き込み速度の変化」です。3枚目のファイルベンチマーク(250 GB分)を見ると、13 GB書き込んだあたりで書き込み速度が600 MB/sにまで落ち込みます。
従来モデル(SanDisk Ultra M.2 NVMe)比で、SLCキャッシュサイズはほぼ同じ、キャッシュサイズが切れた後の書き込み性能は約200 MB/sほど下がっています。予想通り、記憶容量の倍増(512 → 1024 Gb)化が書き込み性能に悪影響です。
WD Blue SN570 NVMeを実運用で試す
ゲームのロード時間を比較
FF14:暁月のフィナーレ(ベンチマークモード)で、ゲームロード時間を測定します。ベンチマーク終了後に、ログファイルからロード時間を読み取ります。
ランダムリード性能が改善した割には、ゲームロード時間が伸び悩んでいます。それでもSATA SSDより格段に速いです。
ファイルコピーの完了時間
Windows標準のコピペ機能と目視によるストップウォッチでは正確性に欠けるので、ファイルコピーに便利なフリーソフト「DiskBench」を使って、ファイルコピーに掛かった時間を計測します。
- ゲームフォルダ(容量62 GB / 76892個)
- 写真ファイル(容量113 GB / 6000枚)
- 圧縮データ(容量128 GB / zip形式)
ファイルコピーに使う素材は以上の3つ。ファイルコピーの基準となるストレージは、PCIe 4.0対応かつ書き込み性能が高速なSamsung 980 PRO(1 TB)です。
書き込み(980 PRO → WD Blue SN570)速度はやはり従来モデルより悪化が見られます。キャッシュサイズ(13 GB前後)を大幅に超えるファイルをコピーする場合、シーケンシャル性能ほどの速さは期待できません。
次は読み込み(WD Blue SN570 → 980 PRO)のコピペ時間です。
おおむね、従来モデルのSanDisk Ultra M.2 NVMeを上回る読み込み性能が見られます。ランダムリード性能とシーケンシャル読み込み性能の改善が効いています。
Premiere Pro:4K素材プレビュー
動画編集ソフト「Adobe Premiere Pro」で、1秒あたり448 MBの4K動画素材をプレビューします。Premiere Proのプレビューは、素材を配置しているストレージの性能に影響を受けやすく、SSDの性能が不足すると「コマ落ち」が発生しやすいです。
コマ落ちしたフレーム数はPremiere Proの標準機能「コマ落ちインジケータ」で3回測定して平均値を出し、動画素材の総フレーム数で割り算してドロップフレーム率を計算します。
4Kプレビューのドロップフレーム率はなんと40%台に。ランダムリード性能が伸びているため、てっきり従来モデルよりコマ落ちを抑えられると思いきや、逆にドロップフレーム率が悪化しています。
PCMark 10:SSDの実用性能
PCMark 10 Professional Editionの「Storage Test」を使って、SSDの実際の使用シーンにおける性能を測定します。
- PCMark 10(UL Benchmarks)
Storage Testには23種類のテストパターン(Trace)が収録されており、パターンごとの転送速度や応答時間を測定し、SSDの実用性能をスコア化します。
なお、SSDは空き容量によって性能が大きく変化する可能性があるため、空き容量100%だけでなく容量を80%埋めた場合(= 空き容量20%)のテストも行いました(※2回:約2時間)。
WD Blue SN570のストレージスコアは「1830点(空き容量20%時)」です。
従来モデル(SanDisk Ultra M.2)から約10%の改善で、価格の高いSamsung 980(無印)やSamsung 970 PROに迫る性能。さらに、上位モデルであるはずのWD Black SN750 SEを約1.6倍も高いスコアに驚きます。
価格の割に実用性能スコアはかなり高く、普通の使い方が前提ならWD Blue SN570のコストパフォーマンスは相当に優秀です。
Adobe系ソフト、ゲームロード時間の評価スコア、ファイルコピー性能のスコア、Microsoft Office系ソフトの評価スコア。それぞれの実用性能スコアは以上の通りです。
Adobeスコアは従来モデルと完全に同じ、ゲームロード時間はランダムリード性能が効いているのか約30%ものスコアアップ、ファイルコピーはキャッシュ超過後の性能低下が響いて従来モデルから約10%の悪化。
Officeソフトのスコアは従来モデルより2割伸びています。使い方によって性能の傾向が違うものの、トータルで見ると従来モデル比で一応性能アップです。
実用スコアの内訳 Full System Drive Benchmark | |
---|---|
Adobe Score | Adobe Acorbatの起動 Adobe After Effectsの起動 Adobe Illustratorの起動 Adobe Premiere Proの起動 Adobe Lightroomの起動 Adobe Photoshopの起動 Adobe After Effets Adobe Illustrator Adobe InDesign Adobe Photoshop(重たい設定) Adobe Photoshop(軽量設定) |
Game Score | Battlefield Vの起動(メインメニューまで) Call of Duty Black Ops 4の起動(メインメニューまで) Overwatchの起動(メインメニューまで) |
Copy Score | 合計20 GBのISOファイルをコピー(書き込み) ISOファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) ISOファイルをコピー(読み込み) 合計2.37 GBのJPEGファイルをコピー(書き込み) JPEGファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) JPEGファイルをコピー(読み込み) |
Office Score | Windows 10の起動 Microsoft Excel Microsoft PowerPoint |
15分間の連続書き込みテスト
約1 MBのテストファイルを15分間に渡って、ただひたすら書き込み続ける過酷な検証方法です。
一般向けに販売されているほとんどのSSDは、数分ほど連続して書き込むだけで「素の性能」を明らかにできます。SLCキャッシュの有無やサイズ、キャッシュが切れた後の性能低下などなど。
15分の連続書き込みテストによって、SSDのいろいろな挙動が判明します。
価格が近いライバル製品と比較したグラフです。
従来モデルとまったく同じで、約13 GBの書き込みでSLCキャッシュが完全に切れます。キャッシュが切れた後の性能は、従来モデルが平均870 MB/s、SN570だと平均600 MB/sで約31%の性能低下です。
NANDメモリの積層数が96 → 112層に増えても、記憶容量が倍増(512 → 1024 Gb)したため、容量あたりの書き込み性能が下がっています。容量1 TBの場合、512 Gbなら16個、1024 Gbだと半分の8個しか使えません。
NANDメモリ1個あたりの書き込み性能をかんたんに求めると・・・
SSD | BiCS5(1024 Gb) | BiCS4(512 Gb) |
---|---|---|
書き込み性能 | 600 MB/s | 870 MB/s |
容量1 TBに | 8個 | 16個 |
1個あたり | 75 MB/s | 54.4 MB/s |
と計算できます。仮にWD Blue SN570の容量2 TBモデルなら、約1200 MB/sの書き込み性能を出せる計算です(※2021/12時点、2 TBモデルの販売予定なし)。
NANDメモリそのものの性能は従来比で約38%の改善ですが、同時に使う個数が減っているためにキャッシュ超過後の書き込み性能が悪化しています。
「96層積層プロセスを用いたBiCS FLASHのメモリセルと比べて単位面積あたりのメモリ容量を約20%向上しました。」
キオクシアのプレスリリースいわく、112層のBiCS5メモリは96層のBiCS4メモリより面積あたりのメモリ容量が20%改善したそうです。細かい話を抜きにして単純化すると、同じ容量で製造コストは1~2割(16%前後)減らせる計算です。
1024 Gb化は明らかに書き込み性能を悪化させます。でも製造コストを1~2割も減らせるなら、作る側としてはやるしかないですよね。シーケンシャル性能はちゃっかり大幅改善しているので、大部分の人にとっては順当な後継モデルですし、普通に売れると思います。
時間あたりの書き込み量を比較したグラフです。5分~15分すべての範囲で、Samsung 980(無印)に打ち勝ちます。ただし、BiCS4(256 Gb)品を使った旧モデル(SN550とSanDisk Ultra M.2)には5~15分すべてで劣る結果です。
SSDの動作温度をテスト
高負荷時のセンサー温度
モニターソフト「HWiNFO」で表示できる温度センサーは1つです。
- Drive Temperature:NANDの温度
- Drive Temperature 2:なし
NANDメモリより発熱しやすいSSDコントローラの温度は表示されない仕様です。
ヒートシンクを取り外し、ケースファンによるエアフローを一切与えない環境で、SSDが激しく発熱しやすい「連続書き込みテスト」を5分間実行しました。
テスト開始5分でSSDコントローラの温度は76℃に達しますが、性能の乱高下は一切見られません。サーマルスロットリングより先にキャッシュ切れが原因で性能が低下するため、SSD温度の高さは問題にならないです。
次はサーモグラフィーカメラを使って、実際の温度を確認します。
サーモグラフィーで表面温度を確認
テスト開始から5分経過したあたりで、サーモグラフィーカメラを使って撮影。
- SSDコントローラ:80 ~ 81℃
- NANDメモリ:76 ~ 77℃
HWiNFOに表示される数値とおおむね一致しています。温度センサーの精度に問題はないでしょう。
WD Blue SN570でサーマルスロットリングは見られなかったので、M.2ヒートシンクの必要性は人によります。高負荷時の80℃近い温度を気にするならつけてもいいし、性能に影響がないなら無視していいと考えるなら不要です。
最近のマザーボードはM.2ヒートシンクが付属しているので、わざわざ買わなくても付属のヒートシンクを取り付けておけば大丈夫です。
ただし、M.2スロットの位置によって注意が必要です。特にグラフィックボードの排熱をもろに受ける位置だと、まったく冷えない場合があるので「アドインカード」タイプのヒートシンクも選択肢のひとつです。
まとめ:実用性能の向上と書き込み性能の低下
「WD Blue SN570 NVMe」のデメリットと弱点
- 旧型より素の書き込み性能が低下(870 → 600 MB/s)
- SLCキャッシュが狭い(13 GB程度)
- DRAMキャッシュレス
「WD Blue SN570 NVMe」のメリットと強み
- 最大3500 MB/sのシーケンシャル性能
- そこそこのゲームロード時間
- 空き容量による性能低下が少ない(1 TB版)
- DRAMレスとは思えない実用性能
- 必要十分な耐久性(150 ~ 600 TBW)
- サーマルスロットリングなし
- Adobe CC(1ヶ月)の引き換えコード付き
- 高いコストパフォーマンス
- 5年保証
WD BlueのNVMe版はおおむね優秀なNVMe SSDであり続けています。
新モデルが出るたびに書き込み性能が下がっていますが、シーケンシャル性能やランダムリード性能、PCMark 10 Proで測定できる実用性能スコアは確実な改善が見られます。
書き込み性能を特に必要とする動画クリエイターにとっては微妙なSSDかもしれません。とはいえ、WD Blue SN570はDRAMキャッシュレスSSDゆえ、動画編集者は最低でもSamsung 970 EVO Plusを選択肢に入れるべきでしょう。
現時点で価格もほぼ据え置きのようですし、トータルで見たときのコストパフォーマンスは従来モデルを上回ります。月額6000円相当のAdobe CCコンプリートプランが1ヶ月無料で付いてくる特典も美味しいです。
ちもろぐの個人的な評価は「A+ランク」で決まりです。
SATA SSDとほとんど同じ価格で、SATA SSDをサクッと上回る性能が魅力的です。今後は「SSD選びで迷ったらとりあえずコレ:第1位」にWD Blue SN570を挙げます。
以上「WD Blue SN570 NVMeをレビュー:書き込み性能は下がりましたが」でした。
レビューお待ちしてました。ありがとうございます。
SATA SSDで写真のデータ倉庫してましたが、読み込み早いの考えるとコチラに移行しても良いかと考えていますがネックなどありますか⁇
教えていただけると幸いです。
SATA SSDからSN570 NVMeに移行して、性能的なデメリットはまったく無いです。
強いて言えば、もっと容量が欲しくなったとき、M.2スロットの数しか増設できないのがネックですかね。
ただ、M.2スロット不足問題は、PCIeスロットに挿し込んでM.2スロットを増設できる拡張カード(https://www.amazon.co.jp/dp/B08QDFMDG8/ など)があるので、その気になればどうにでも解決できると思います。
ご助言いただきありがとうございます。
最近は870evoがジリジリ値上がりしてるので、こちらを移行の候補にする予定です。
写真データも増えてるので、もう少し待って2TB出るタイミングを狙おうか悩みます。
アドバイスありがとうございました。
詳細なテストで参考になります。
ゲーマーだと全く問題無く使えそうですね。
読み書き全てが重要になるクリエイト系職業の方はそもそもキャッシュレス型の安価SSDを選んではいけないのでしょうが、個人的な趣味範囲の利用ならまだ何とか…
エアフローのしっかりした環境なら新型も発熱を気にする必要が無さそうなのは安心しました。
追加のM.2に何を買えばいいのか探していて、こちらの記事にたどり着きました。
元々SN550を使っていたのもあってSN570を購入しました。ありがとうございます。
ただ、SN550と570で片方にOS、もう片方にゲームの置き場所にするつもりです。
その際、どちらの方が良い、と言ったのはあるでしょうか。
(個人的にはSN570にOSを入れた方が良いのかな?と思っています)
お手数ですが教えていただけると幸いです。
Crystal Disk Mark 8の結果のところ、画像の右上と左下が入れ替わってる気がしますね…
同じ DRAMキャッスレスのSN770はクリエイト用途として使えますか?
Very detailed benchmark. Thanks for your hard work. This is truly useful. Maybe the best
SSD benchmark I have seen so far.