SeagateといえばHDDメーカーだが、2018年に一般向けSSD「BarraCuda SSD」をひっそりと発売している。シーゲイトが一般向けSSDを出すのは、2013年以来(5年ぶり)のこと。
「あのシーゲイトが作ったSSD!」という響きがネタ的に面白いので、さっそく購入して試してみることにした。
BarraCuda SSDの仕様とスペック
スペック | Seagate BarraCuda SSD | |||
---|---|---|---|---|
容量 | 250 GB | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
フォームファクタ | 2.5 inch | |||
インターフェイス | SATA 3.0 | |||
コントローラ | Seagate SSD Controller中身はPhison S10 | |||
NANDフラッシュ | 東芝製BiCS FLASH64層 3D TLC NAND | |||
DRAMキャッシュ | Nanya製 DDR3-1600 | |||
128 MB | 256 MB | 512 MB | 1024 MB | |
読み込みシーケンシャル | 560 MB/s | |||
書き込みシーケンシャル | 530 MB/s | 535 MB/s | 540 MB/s | 540 MB/s |
読み込みランダムアクセス | 90000 IOPS | |||
書き込みランダムアクセス | 90000 IOPS | |||
消費電力高負荷時 | 2.6 W | 2.6 W | 2.8 W | 3.1 W |
消費電力アイドル時 | 185 mW | 192 mW | 221 mW | 225 mW |
消費電力スリープ時 | 5 mW | |||
保証 | 5年 | |||
TBW書き込み耐性 | 120 TB | 249 TB | 485 TB | 1067 TB |
MSRP希望小売価格 | $ 52.99 | $ 84.99 | $ 149.99 | $ 349.99 |
参考価格Amazon価格 | 6999 円 | 9999 円 | 17999 円 | 39999 円 |
クーポン適用時 | 5499 円 | 8499 円 | 14999 円 | 36999 円 |
GB単価 | 22.0 円 | 17.0 円 | 15.0 円 | 18.5 円 |
ブランド名はHDDと同じく「BarraCuda」なので、さも「シーゲイトが作ったSSD」のように見えてしまうが、実際のところは「東芝製のSSD」と言った方が正しいです。
SSDの記憶域であるNANDフラッシュには、東芝のBiCS FLASHが採用されており、内容は「64層の3D TLC NAND」。64層なので、スピードを維持しやすく、耐久性も高めやすいのが特徴。
SSDのスピードに下駄を履かせてくれるDRAMキャッシュは、Nanya製のDDR3メモリを搭載している。容量全体の2000分の1に相当するサイズのキャッシュが積まれています。
そしてSSDの総合性能に大きな影響を持つコントローラは、Phison製の「S10」を採用。Phisonといえば、格安SSD向けにコスパの良いコントローラを開発・販売しているメーカーです。
「S10」は決して最新のコントローラではないが、SATA SSD用としては十分なスペックを持っているので、コスパを重視する格安SSDならお似合いなコントローラと言っていい。
安いが耐久性能と保証は魅力的
BarraCuda SSDの耐久性能(TBW)は、競合する他のSATA SSDと比較してみると意外と良いラインです。
日本で人気があるWD BlueやMX500と比較すると、すべての容量(250 GB~2 TB)でBarraCuda SSDは高い耐久性を持つ。ただ、ぼくがイチオシしている860 EVOには…やはり届きません。
BarraCuda SSDのスペックまとめ
- そこそこ高い耐久性能
- コストパフォーマンスは良さげ
- 5年保証
スペック的には、なかなか良い雰囲気です。では、実際に使ってみて、どのくらいのモノなのかを確かめていく。
BarraCuda SSDを開封レビュー
開封と、内部コンポーネント(部品)のチェックは、こちらの動画版からピックアップしながら解説します。
「シーゲイト」らしいパッケージング
パッケージングは見ての通り、廉価HDDブランドの「BarraCuda」と全く同じものを使っている。ひと目で「あっ、シーゲートだ。」と分かる、仕事してるデザインですね。
梱包は最近のSSDにしては珍しく、静電気除去袋に入っている。HDDと同じ梱包なので、ミニチュア版BarraCuda HDDのようにも見えるのが可愛い。
シャーシはアルミ製。表面のデザインは、マットブラック塗装の表面にSeaGateのロゴを刻印しただけ。
裏面はHDDと同様、BarraCudaデザインのシールが貼ってあります。
中身を開いてコンポーネントをチェック
シャーシを分解ベラでこじ開けて、BarraCuda SSDの内部コンポーネントを確認しておく。SeaGateのSSDではあるが、中身を見れば本当にそうなのかが分かりますから。
まず、SSDの性能に大きな影響を持つ「SSDコントローラ」は、やはり事前に判明している情報通り「Phison S10」という格安SSD向けのコントローラを搭載していた。
SATA SSD用には悪くないコントローラです。S10は最大で8チャネルのNANDと接続できる仕様なので、複数のNANDフラッシュを束ねることで、容易に速度を稼げるのが強み。
DRAMキャッシュも、事前情報通りやっぱりNanya製のDDR3メモリを搭載。容量は256 MBなので、SSD容量の2000分の1にあたる大きさです。
ちょっと少ないような気もするが、おそらくSLCキャッシュでなんとかする仕組みでしょう。
最後にNANDフラッシュをチェック。搭載されているのはSeaGate製…なわけがなく、東芝の「BiCS FLASH」ブランドのNANDフラッシュを搭載しています。
64層の3D TLC NANDなので、キャッシュが切れても速度は落ちにくく、単体での性能もそれほど遅くない。
そして贅沢なことに、BarraCuda SSDにはNANDフラッシュが合計で8枚取り付けてある。
コントローラ「Phison S10」は最大8チャネル対応なので、NANDを8枚接続することで、速度を大幅に水増しできるというわけ。イメージとしては、RAID 0に近いですね。
BarraCuda SSDの性能を検証(ベンチマーク)
Crystal Disk Mark 6
国内だけでなく、国際的にも定番のSSDベンチマークである「Crystal Disk Mark 6」を使って、BarraCuda SSDのシーケンシャル速度や、SSDの質が出やすいランダムアクセス速度を検証する。
性能に一貫性があるかどうかを確かめるため、複数のテストサイズも実行しておいた。
50 MB
もっとも小さい50 MBサイズだと、すべての処理において割りと速い結果に。ただ、ランダムアクセス速度(4KiB Q1T1)には、品質がしっかりと現れている。
860 EVOやMX500だと100 MB/sを突破できるので、安いなりにこういうところは速度が出づらい。だが、ゲーミングやオフィスユースで不満を感じることはまず無いですね。
1 GB
もっとも標準的な1 GBサイズは、ほとんど50 MBサイズと同じ結果です。書き込みが530 MB/s超え、読み込みは560 MB/sに達している。SATA SSDとして、ほぼ限界の速度を出せている。
4 GB
やや大きい4 GBサイズでは、全体的に速度が落ちたものの、依然として速いスピードを維持しています。
16 GB
更に大きい16 GBサイズにすると、全体的に低下。
32 GB
もっとも大きい32 GBサイズだと、シーケンシャルも含めて全体的に速度が落ちました。
他のライバルSSDと比較してみると、シーケンシャル速度は互角レベルの速度ですが、ランダムな処理になればなるほど他のSSDとの差がしっかりと出ていることが分かった。
NANDを8枚も使ってブーストしているのに、なぜ…?と思うかもしれないが、このあたりにSSDコントローラとNANDフラッシュの質が現れやすい。
とはいえ、個人的には東芝やPhisonなどの安価パーツで、かなり頑張っているな~という印象。
AS SSD Benchmark 2.0
AS SSD Benchmarkは非圧縮データをテストに用いる。そのため公称値通りのパフォーマンスが出にくいが、BarraCuda SSDはシーケンシャルに関しては踏ん張ってる。
4K速度や、書き込みのアクセスタイムは、やはり最新鋭のコントローラを搭載する「860 EVO」などには劣る。
AS SSD Benchmark 2.0
スコアの比較はこの通り。
ATTO Disk Benchmark
様々なテストサイズで一括テストができるATTO Disk Benchmark。SSDの良し悪しが分かりやすいソフトです。
読み込み、書き込みともにスピードの立ち上がりは意外と速い。これだけだと分かりづらいので、Samsung 860 EVOとも比較してみよう。
意外なことに、読み込み速度は序盤(4 B~64 B)でBarraCuda SSDの方が高速です。
書き込みは全体的に860 EVOの方が優秀ではあるが、どちらもSATA SSDとして限界のスピードにたどり着いている様子。
HD Tune Pro
約3500円するシェアウェアのストレージベンチマークです。ディスク全体に渡って書き込みを実行するテストがあるので、キャッシュの挙動(=下駄の履かされ具合)を確認しやすい。
読み込み速度
読み込み速度はシーケンシャル自体は優秀だが、よくみるとアクセスタイムが上下にブレているのが特徴。原因はおそらく、NANDが8枚もある都合だと思われる。
書き込み速度
書き込み速度は意外な結果です。25~50 GBあたりで一旦キャッシュ切れが目に見えるが、それ以降は驚くほど安定した速度を叩き出した。
てっきり途中でキャッシュが切れて、150 MB/sくらいに落ち着くと思っていただけに、この結果は面白い。考えられる理由としては、元の速度が非常に速い…ということ。
キャッシュが切れても、SATAの上限に近い速度を維持できる程度に、元のスピードが速いのだろう。
ゲームのローディング時間
ロード時間 | 860 EVO | BarraCuda SSD | 比較 |
---|---|---|---|
シーン#1 | 1.837 秒 | 2.292 秒 | -19.9% |
シーン#2 | 2.351 秒 | 2.818 秒 | -16.6% |
シーン#3 | 1.945 秒 | 2.263 秒 | -14.1% |
シーン#4 | 2.528 秒 | 3.221 秒 | -21.5% |
シーン#5 | 4.815 秒 | 5.864 秒 | -17.9% |
シーン#6 | 1.003 秒 | 1.098 秒 | -8.7% |
合計 | 14.479 秒 | 17.558 秒 | -17.5% |
FF14のベンチマークはローディング時間を計測してくれるので、それを利用してロード時間を検証しました。結果は860 EVOに対して、約17.5%遅いものになった。
SSDの動作温度を確認
ベンチマーク時のセンサー温度を計測
負荷の大きいCrystal Disk Mark 6の32 GBサイズテスト実行時に、SSDのセンサー温度を計測した。最大でも40℃にしかならず、速度への悪影響も全く見られない。
サーマルスロットリングが起きる心配は一切必要ないですね。
SSD自体の発熱をサーモグラフィーで見る
サーモグラフィーカメラを用いた、SSDそのもの発熱を検証。
- コントローラ:50~55℃
- NANDフラッシュ:37~40℃
- DRAMキャッシュ:37~40℃
まったく問題無し。気温27℃でこんな感じなので、夏場でもサーマルスロットリングに見舞われる可能性は、ほとんどゼロと言って良い。
まとめ「BarraCuda SSDはよく出来てる」
ぼくが一番推しているSATA SSD「860 EVO」と比較すると、ランダムアクセス速度が若干遅いけれど、キャッシュが切れても速度を維持できているのは素直に驚きでした。
サムスンのSSDは「NAND単体でここまで高速。」というイメージで、今回のBarraCuda SSDは「NANDを8枚使って、ゴリ押しで高速化。」というスタイルです。
NANDフラッシュチップを8枚も束ねることによって、キャッシュが切れてもSATAの上限速度を維持するという…なかなかの力技を見ることが出来た。
あとは価格を頑張って欲しい…
ぼくはクーポン適用価格で購入できたのでコスパは良いのですが、クーポンの無い通常価格だとイマイチ。特に最近は860 EVOもMX500も、安くなっています。
性能的には860 EVOが本当に強いので、BarraCuda SSDが明確に優位になるには、860 EVOより安くなければならない。それもクーポン価格ではなく、通常価格で。
参考価格Amazon価格 | 250 GB | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
---|---|---|---|---|
BarraCuda SSD | 5499 円 | 8499 円 | 14999 円 | 36999 円 |
Samsung 860 EVO | 6422 円 | 7980 円 | 15580 円 | 44894 円 |
Crucial MX500 | 5378 円 | 8680 円 | 20682 円 | 37199 円 |
ぼくが購入した時の価格をまとめると、どこのSSDも売れ筋である500GB版でしのぎを削っているのが分かる。860 EVOが8000円を切っている以上、BarraCudaも切らないとコスパ微妙な印象です。
- (クーポン時)のコスパは良い
- キャッシュが切れても上限速度を維持
- 5年保証と優れた耐久性能
- (通常価格)のコスパは微妙
- ランダムアクセス速度は競合に若干劣る
というわけで、SeaGateの5年ぶりの新作SSDはそれなりに良く出来た製品ですね。あとはSeaGateの強みである「価格の安さ」をなんとか実現すれば、もっとオススメしやすいSSDになる。
現状は「SeaGateが好きな人」や「東芝製NAND搭載のSSDが好きな人」。あるいは「クーポン出てて安いから。」と、コスパの良いタイミングに当たった人にオススメなSSDです。
以上「BarraCuda SSDをレビュー:5年ぶりSeagate製SSDの実力は?」でした。
ぼくがおすすめするSSDまとめはこちら。
動画にてsamsung 860がsata ssdでは最速とおっしゃっていますがシーケンシャル読み書きメーカー公称値はsamsung860よりsandisk ultra や wd blueのほうが読み書きともに10ずつ上回っていますがsamsungはどの辺が最速なのでしょうか?
初めまして。デスクトップ新調にあたりちもろぐを参考にさせていただきました。
Seagateが新たに3ブランドでSSDを出しましたね。nvmeで高TBW・低発熱ならCドライブ用にも魅力的ですし、SSDの性質を考えるとNAS向けやリカバリーサービスは珍しいと思います。やかもちさんは検証する予定はありますか?
2020年版が出てます。
250GB:¥5,480
500GB:¥6,646
1TB:¥1,2828
2TB:¥2,7180
TBWは最高1170TB。しかしその下では1067TB。
容量ごとのTBWの違いの情報は無し。
NANDが東芝製ならどんなに安くても買う価値はないですね、、、
東芝製NANDと仰っていますが、どこにもロゴなくないですか?あとPHISON SSDはベンチマークなのでちゃんと実際のファイル転送もやってほしいです。
素晴らしいレビューですね!BarraCuda SSDの性能が期待以上だったことに驚きました。特に読み書き速度の向上は魅力的です。Seagateが5年ぶりに出した製品ということで、今後のさらなる進化にも期待したいです。