前回アップしたレビューで要望が多かった「HIKSEMI FUTURE NVMe SSD」の2 TB版を、自腹で買ってレビューしました。結論、最高のDRAMレスSSDです。テクノロジーの進化を確実に感じられます。
(公開:2023/4/7 | 更新:2023/5/18)
HIKSEMI FUTURE SSD 2TBのスペックと仕様
FUTURE70-02TB スペックをざっくりと解説 | ||
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容量 | 1024 GB | 2048 GB |
インターフェイス | PCIe 4.0 x4(NVMe 1.3) | |
フォームファクタ | M.2 2280(片面実装) | |
コントローラ | Maxio MAP1602A | |
NAND | YMTC 232層 3D TLC NAND YMTC:長江存儲科技(中国) | |
DRAM | なし | |
SLCキャッシュ | 非公開 | |
読込速度 シーケンシャル | 7450 MB/s | |
書込速度(SLC) シーケンシャル | 6600 MB/s | 6750 MB/s |
書込速度(TLC) シーケンシャル | 非公開 | |
読込速度 4KBランダムアクセス | 860K IOPS | |
書込速度 4KBランダムアクセス | 670K IOPS | 690K IOPS |
消費電力(最大) | 3.9 W | |
消費電力(アイドル) | 非公開 | |
TBW 書き込み耐性 | 1800 TB | 3600 TB |
MTBF 平均故障間隔 | 200万時間 | |
保証 | 5年 | |
MSRP | – | – |
参考価格 | 10880 円 | 17880 円 |
GB単価 | 10.6 円 | 8.73 円 |
「HIKSEMI FUTURE SSD(型番:FUTURE70-02TB)」は、中国のメーカーHikvisionが販売するPCIe 4.0対応のハイエンドNVMe SSDです。
前回レビューした1 TB版と同じく、YMTC製232層 3D TLC NANDと、Maxio Tech製コントローラを組み合わせたDRAMレス(HMB方式)SSDです。
PCIe 5.0対応のハイエンドNVMe SSDで使われる200層超えNANDがなぜ格安品に採用され安く売られているのか、事情の推測については過去のレビューで確認してください。
ざっくり説明すると、世界で初めて232層NANDの量産に至った中国のNANDメーカーYMTCが、米国の禁輸リストに登録されて製品を出荷できなくなったためです。大量の在庫をさばくため、コンシューマ向けに安くバラまいている可能性が考えられます。
ちなみにYMTCだけでなく、HIKSEMIブランドを販売しているHikvisionもアメリカから規制を受けているメーカーです。
SSD | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
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HIKSEMI FUTURE SSD (HIKSEMI FUTURE SSD:レビュー) | – | 1800 TBW | 3600 TBW |
SK Hynix Gold P31 (SK Hynix Gold P31:レビュー) | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
WD_BLACK SN770 (WD_BLACK SN770:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
KIOXIA EXCERIA PLUS G2 (KIOXIA EXCERIA G2 PLUS:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
KIOXIA EXCERIA G2 (KIOXIA EXCERIA G2:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
WD Blue SN570 (WD Blue SN570 NVMe:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | – |
Crucial MX500 (FireCuda 530:レビュー) | 180 TBW | 360 TBW | 700 TBW |
FireCuda 530 (FireCuda 530:レビュー) | 640 TBW | 1275 TBW | 2550 TBW |
CFD PG4VNZ | 350 TBW | 700 TBW | 1400 TBW |
Plextor M10PGN | 320 TBW | 640 TBW | 1280 TBW |
Crucial P5 Plus | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
Samsung 980 PRO (980 PRO:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
WD Black SN850 (SN850:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
耐久性能評価(TBW)は非常に高く、2 TBモデルで3600 TBWをアピールします。
仮にゲーミングPCでシステムストレージとして使った場合、かなり過剰に見積もっても1日あたり平均50 GB程度の書き込みです。
3600 TBWを50 GB(0.050 TB)で割ると72000日で、耐久値を使い切るのに約196年もかかる計算に。おそらくNANDメモリの寿命が尽きるより先に、SSDコントローラが経年劣化で故障する確率のほうが高いです。
ライバル製品と価格設定の比較
PCIe 4.0対応のハイエンドNVMe SSDと価格を比較したグラフです。
2023年4月時点、HIKSEMI FUTURE SSDの2 TBモデルが約1.8万円です。タイムセール時だと約1.6万円で、7000 MB/s超えをアピールするSSDとして圧倒的な最安値です。
価格が約6000円も高いSamsung 980 PROや、約16000円近い差額があるFireCuda 530にどこまで対抗できるのか、とても楽しみです。
HIKSEMI FUTURE SSD 2TBを開封レビュー
パッケージデザイン & 開封
今回レビューで使うサンプルはAmazon(販売ページはこちら)より、約1.5万円にて2 TBモデルを自腹で購入しました。
意外と安っぽさを感じさせない、黒色を基調としたシンプルなパッケージデザインです。パッケージ表面に代理店の保証シールが貼ってあります。
購入する時期によって、貼ってあるシールの保証年数が違います。実際の保証年数はAmazonの販売ページに記載があるとおり「5年保証」です。
- hiksemi@taurus-digital.co.jp
上記メールアドレスがメーカー(代理店)への問い合わせ先です。
説明書や小ねじが同封されています。プラスチック製のケースにSSD本体がすっぽりと収まっています。
M.2ソケット用の小ねじとプラスドライバーが付属します。
基板コンポーネント
ハイエンドSSDらしくマットブラック塗装のプリント基板上に、SSDを構成するコンポーネントを覆い隠すように製品ラベルシールが貼られています。
ラベルシールを剥がすと5年間の製品保証が無効となるリスクが高いため、別途M.2ヒートシンクを取り付ける場合はシールを剥がさずにそのまま取り付けましょう。
裏面にコンポーネントはありません。各国の認証ロゴや、交換保証(RMA)申請時に必要となるシリアルナンバー(S/N)が記載されたラベルシールが貼られています。
表面だけにコンポーネントが実装されているシンプルな片面実装のNVMe SSDです。取り付けスペースが狭いノートパソコンで問題なく使えます。
ヒートシンクを兼ねている分厚いシールを剥がして、基板のコンポーネントを目視で確認します(※5年間の製品保証が切れる行為ですので、真似しない方が安全)。
- コントローラ:Maxio Tech MAP1602A
MAP1602A-F2C AAM2C711311 2304 - DRAM:なし
- NAND:YMTC 232層 3D TLC NAND
YMC6G008Tb78DA1C0 2306P YAA2B00S8
SSDコントローラとNANDメモリのみ搭載する、DRAMレス設計です。
SSDコントローラはMaxio Techが自社で開発するARM Cortexベースの「MAP1602A」を搭載。
TSMC 12 nmプロセスで製造されるARM Cortex-R5(シングルコア)を搭載し、DRAMレス(最大64 MBのHMB方式)に対応するSSDコントローラです。
最大2400 MT/sのスループットで、最大4チャネルのNANDメモリに接続できます。最大4チャネルだとスループットを稼ぎにくくなりますが、Maxioはデータシートで最大7200 MB/sのスループットをアピールします。
NANDメモリは中国YMTCが製造する「232層 3D TLC NAND」です。
2つのウェハを重ね合わせて多層化を可能にする「Xtacking 3.0」技術で製造され、200層超えのNANDメモリで最高の記録密度(15.03 Gbit/mm²)を実現します。
今回のHIKSEMI FUTURE 2TBに搭載されている「YMC6G008Tb78DA1C0」は、記憶密度が1024 Gb(= 128 GB)のチップを8枚重ねにして、合計16384 Gb(= 2048 GB)の容量に。
FUTURE70-02TB | Samsung 980 PRO 2TB |
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|
|
= 2個使って容量2 TB (1024 x 8 x 2 = 16384 Gb) | = 2個使って容量2 TB (512 x 16 x 2 = 16384 Gb) |
NANDメモリの構成を表にまとめました。
競合する他社のNANDより記憶密度が非常に高いため、Samsung 980 PROの半分のNANDメモリで同じ容量に仕上がります。少ない部品で高い性能を目指す、少数精鋭的なコンポーネント構成です。
DRAMメモリを搭載しませんが、232層まで積み上げた超高性能なNANDメモリと、SRAMを内蔵するMaxio MAP1602Aコントローラの特性でTLC NAND本来の性能をうまく底上げする狙いが見えます。
HIKSEMI FUTURE SSD 2TBの性能をベンチマーク
テスト環境を紹介
テスト環境 「ちもろぐ専用:SSDベンチ機」 | ||
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CPU | Ryzen 9 5950X16コア32スレッド | |
CPUクーラー | NZXT X63280 mm簡易水冷クーラー | |
マザーボード | ASUS ROG STRIXX570-E GAMING | |
メモリ | DDR4-3200 16GB x2使用メモリ「G.Skill Trident Z C16」 | |
グラフィックボード | RTX 3070 8GB | |
SSD | HIKSEMI FUTURE70-02TB 2TB | |
電源ユニット | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
OS | Windows 10 Pro 64bit検証時のバージョンは「1909」 | |
ドライバ | NVIDIA 471.41 | |
ディスプレイ | 3840 x 2160@160 Hz使用モデル「Innocn 27M2V」 |
980 PROのレビュー以降、SSDをテストするベンチマーク機を更新しました。PCIe 4.0に対応するプラットフォーム「Ryzen 5000」と「AMD X570」をベースに、適当なパーツを組み合わせます。
CPUは16コア32スレッドの「Ryzen 9 5950X」です。16コア32スレッドの圧倒的なCPU性能があれば、最大7000 MB/s超のSSDが相手でもボトルネックになる可能性はほぼ皆無です。
マザーボードはASUS製「ROG STRIX X570-E GAMING」を採用。テスト対象のNVMe SSDをCPU直結レーンのM.2スロット、またはPCIeスロットに挿し込んで各ベンチマークを行います。
SSDを熱から保護するサーマルスロットリングによって性能に悪影響が出ないように、以下のような手段でテスト対象のSSDを冷却しながらベンチマークを行います。
- マザーボード付属のヒートシンクを装着
- ケースファンを使ってヒートシンクを冷やす
SSDを徹底的に冷やして、サーマルスロットリングがテスト結果に影響を与えないように対策しています。5分間の発熱テストのみ、ヒートシンクを外してケースファンも使いません。
- インターフェース:NVM Express
- 対応転送モード:PCIe 4.0 x4
- 対応規格:NVM Express 1.4
- 対応機能:S.M.A.R.T. / TRIM / VolatileWriteCache
「HIKSEMI FUTURE70-02TB」の初期ステータスをCrystal Disk Infoでチェック。特に問題が見当たりません。
ファームウェアは「SN08193」と表示されており、中華SSDのMiWhole CT300などとまったく同じです(参考:中華の格安SSD MiWhole CT300 2TB を試してみました!)。
おそらく、まったく同じコンポーネント構成のNVMe SSDがHIKSEMI以外のメーカーでも出回っている可能性が高いです。
フォーマット時の初期容量は「1.86 TB」でした。
Crystal Disk Mark 8
「Crystak Disk Mark 8」は、日本どころか世界で一番有名と言っても過言ではない、定番のSSDベンチマークソフトです。性能の変化をチェックするため、初期設定の「1 GiB」に加え、最大設定の「64 GiB」もテストします。
Crystal Disk Mark 8の結果※クリックで画像拡大します | |
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テストサイズ:1 GiB(MB/s) | テストサイズ:64 GiB(MB/s) |
テストサイズ:1 GiB(レイテンシ) | テストサイズ:64 GiB(レイテンシ) |
読み込み速度が約7423 MB/sで、書き込み速度は約6684 MB/sを記録。おおむねメーカー公称値に近い性能が出ています。
テストサイズを64 GiBまで引き上げると、シーケンシャル速度がやや下がり、ランダムアクセス性能も悪化します。
体感性能や実用性能に影響が大きい、4KBランダムアクセスのレイテンシ(応答時間)の比較グラフです。
HIKSEMI FUTURE SSD 2TBは46.68 μsで、1 TB版とほぼ同じ。大手メーカーのハイエンドNVMe SSDにも引けを取らない性能を出せています。
書き込みレイテンシもハイエンドモデルに近い性能です。
ATTO Disk Benchmark
ATTO Disk Benchmarkは、512 B~64 MB(合計21パターン)のテストサイズでスループットを測定し、SSDの性能が安定しているかどうかを視覚的に示してくれるベンチマークソフトです。
ベンチマーク結果からSSDの評価が非常に分かりにくいので、表計算ソフトを使ってグラフ化して他のSSDと比較します。
読み込み速度は7000 MB/s前後でピークに達したあと、おおむね安定した性能を維持します。1 TB版と大差ない特性です。
書き込み速度は6200 MB/s前後で安定します。キャッシュの範囲内なら、おおむねスペックに近い性能を示しており、特に問題ありません。
HD Tune Pro
HD Tune Proは有料のSSDベンチマークソフトです。SSDの容量全域に渡ってテストを実行して、SSDの性能変化(SLCキャッシュの有無や、キャッシュが剥がれた後の性能など)を手軽に調べられます。
HD Tune Proの結果※クリックで画像拡大します | |
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HD Tune Proで注目するのは「書き込み速度の変化」です。
3枚目のファイルベンチマーク(250 GB分)を見ると、テストを開始してから終了するまで一貫して6300 MB/s前後の猛烈な書き込み性能を維持して見せます。
ただし、HD Tune Proの書き込みテストは実際の性能以上の数値が出る傾向があります。過去のレビューではPhisonコントローラに顕著で、今回のMaxioコントローラもやや疑わしいです。
空き容量が2 TBもあれば、理論上は3分の1にあたる667 GBまでSLCキャッシュ化が可能なのであり得なくは無いものの、参考程度に見ておきましょう。
HIKSEMI FUTURE SSD 2TBを実運用で試す
ゲームのロード時間を比較
FF14:暁月のフィナーレ(ベンチマークモード)で、ゲームロード時間を測定します。ベンチマーク終了後に、ログファイルからロード時間を読み取ります。
HIKSEMI FUTURE SSD 2TBのロード時間はなんと「6.26 秒」で、名だたるハイエンドNVMe SSDを打ち負かしてトップクラスに入ります。SN770より1秒近くも速く、Optane 905Pにあと一歩で届きます。
なお、DRAMレス(HMB方式)でありながらDRAM搭載のハイエンド以上のロード時間を出せる理由は、おそらくSLCキャッシュの生成が動的かつスピーディーだからです。
基本的に、DRAMやOptaneに近い性質であればあるほどゲームロード時間が速くなります。
SLCキャッシュ状態はOptaneの一歩手前の性質を持つため、広大なSLCキャッシュを展開できるHIKSEMI FUTURE SSDがトップクラスのロード時間を出せるのも、割りとあり得る話です。
ファイルコピーの完了時間
Windows標準のコピペ機能と目視によるストップウォッチでは正確性に欠けるので、ファイルコピーに便利なフリーソフト「DiskBench」を使って、ファイルコピーに掛かった時間を計測します。
- ゲームフォルダ(容量62 GB / 76892個)
- 写真ファイル(容量113 GB / 6000枚)
- 圧縮データ(容量128 GB / zip形式)
ファイルコピーに使う素材は以上の3つ。ファイルコピーの基準となるストレージは、PCIe 4.0対応かつ書き込み性能が高速なSamsung 980 PRO(1 TB)です。
書き込み(980 PRO → HIKSEMI FUTURE SSD 2TB)速度です。
ゲームフォルダの書き込みは同じ価格帯のNVMe SSDと大差ないですが、写真フォルダとZipファイルの書き込みは980 PROやSN850に匹敵するハイエンド級です。
次は読み込み(HIKSEMI FUTURE SSD 2TB → 980 PRO)のコピペ時間です。
ゲームフォルダの読み出しは平凡ですが、980 PROやSN770に近い性能です。写真フォルダとZipファイルの読み出しは、ハイエンドモデルに引けを取らない水準にいます。
Premiere Pro:4K素材プレビュー
動画編集ソフト「Adobe Premiere Pro」で、1秒あたり448 MBの4K動画素材をプレビューします。Premiere Proのプレビューは、素材を配置しているストレージの性能に影響を受けやすく、SSDの性能が不足すると「コマ落ち」が発生しやすいです。
コマ落ちしたフレーム数はPremiere Proの標準機能「コマ落ちインジケータ」で3回測定して平均値を出し、動画素材の総フレーム数で割り算してドロップフレーム率を計算します。
4Kプレビューのドロップフレーム率は約12.9%です。
シーケンシャル性能と応答速度どちらも要求されるテスト内容ですが、広大なSLCキャッシュを迅速に展開できるHIKSEMI FUTURE SSDにとって、Premiere 4Kプレビューも相手にならないようです。
名だたるハイエンドモデル(980 PROやSN770)を軽く打ち負かし、はるかに高額な983 ZETやOptane 905Pすら上回る驚異的なプレビュー性能を発揮します。
PCMark 10:SSDの実用性能
PCMark 10 Professional Editionの「Storage Test」を使って、SSDの実際の使用シーンにおける性能を測定します。
- PCMark 10(UL Benchmarks)
Storage Testには23種類のテストパターン(Trace)が収録されており、パターンごとの転送速度や応答時間を測定し、SSDの実用性能をスコア化します。
なお、SSDは空き容量によって性能が大きく変化する可能性があるため、空き容量100%だけでなく容量を80%埋めた場合(= 空き容量20%)のテストも行いました(※2回:約2時間)。
HIKSEMI FUTURE SSD 2TBのストレージスコアは「3438点(空き容量20%時)」です。空き容量100%なら3656点で、空き容量による性能低下はわずか5.9%です。
100%スコア・20%スコアともに過去レビューしたTLC NAND型SSDで最高のスコアを記録し、Maxioコントローラ + 232層 3D TLC NANDの圧倒的な性能特性を示します。
採算度外視の最先端技術(= YMTC製232層NAND)を搭載したSSDを相手に、Western DigitalやSamsungが手掛ける有名SSDがこうもたやすく打ち負かされる光景は・・・そこそこメンタルに来るモノがあります。
PCMark 10ストレージテストの細かい内訳を確認します。
HIKSEMI FUTURE SSD 2TBはAdobeスコア、ゲームロードスコア、OfficeスコアにおいてTLC NAND型SSDで最高のスコアです。
ファイルコピースコアのみ2242点で最高ではありませんが、FireCuda 530とわずか2%の差に過ぎません。価格を考えるとHIKSEMIの圧勝といっていいでしょう。
実用スコアの内訳 Full System Drive Benchmark | |
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Adobe Score | Adobe Acorbatの起動 Adobe After Effectsの起動 Adobe Illustratorの起動 Adobe Premiere Proの起動 Adobe Lightroomの起動 Adobe Photoshopの起動 Adobe After Effets Adobe Illustrator Adobe InDesign Adobe Photoshop(重たい設定) Adobe Photoshop(軽量設定) |
Game Score | Battlefield Vの起動(メインメニューまで) Call of Duty Black Ops 4の起動(メインメニューまで) Overwatchの起動(メインメニューまで) |
Copy Score | 合計20 GBのISOファイルをコピー(書き込み) ISOファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) ISOファイルをコピー(読み込み) 合計2.37 GBのJPEGファイルをコピー(書き込み) JPEGファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) JPEGファイルをコピー(読み込み) |
Office Score | Windows 10の起動 Microsoft Excel Microsoft PowerPoint |
15分間の連続書き込みテスト
約1 MBのテストファイルを15分間に渡って、ただひたすら連続して書き込み続ける過酷な検証方法です。
一般向けに販売されているほとんどのSSDは、数分ほど連続して書き込むだけで「素の性能」を明らかにできます。SLCキャッシュの有無やサイズ、キャッシュが切れた後の性能低下などなど。
15分の連続書き込みテストによって、SSDのいろいろな挙動が判明します。
ハイエンドNVMe SSDの2 TBモデルと比較しました。テスト開始時に4500 MB/s前後を叩き出し、約291 GB書き込んだあたりで2500 MB/s前後に下がります。さらに約1520 GB書き込み、平均890 MB/s前後で落ち着きます。
前回レビューした1 TBモデルと同じく、3段階キャッシュに対応します。
時間あたりの書き込み量を比較したグラフです。
15分間の書き込み量で比較すると、HIKSEMI FUTURE SSD 2TBはSamsung 980 PRO 2TBより約200 GBも書き込み量が多いです。しかし、DRAMを搭載するFireCuda 530には、さすがに勝てませんでした。
SSDの動作温度をテスト
高負荷時のセンサー温度
モニターソフト「HWiNFO」で表示できる温度センサーは2つです。
- ドライブ温度:NANDメモリの温度
- ドライブ温度2:SSDコントローラの温度
SSDコントローラの温度はNANDメモリより高く表示されるため、NANDメモリだけに温度センサーを搭載するのが一般的な対応です。
あえて温度センサーを2つ搭載しているHIKSEMIは、消費者に対して良心的な姿勢を取っているメーカーと受け取っていいでしょう。
参考までに、NANDメモリとSSDコントローラそれぞれにセンサーを搭載するメーカーは(筆者の知る限り)サムスンとSK HynixとHIKSEMIの3社だけです。
ヒートシンクを取り外し、ケースファンによるエアフローを一切与えない環境で、SSDが激しく発熱しやすい「連続書き込みテスト」を5分間実行しました。
1 TB版と比較して、SSDコントローラの発熱が大きく増加します。温度上昇を抑えるためギザギザとグラフが乱高下しており、80℃に達したあたりでサーマルスロットリングらしき症状も見られます。
次はサーモグラフィーカメラを使って、実際の温度を確認します。
サーモグラフィーで表面温度を確認
テスト開始から5分経過したあたりで、サーモグラフィーカメラを使って撮影。
- SSDコントローラ:67 ~ 68℃
- NANDメモリ(右):71 ~ 72℃
- NANDメモリ(左):72 ~ 73℃
NANDメモリの表面温度が70℃台で、SSDコントローラの表面温度が少し下がって67℃台です。HWiNFOに表示される温度とズレが大きく、特にNAND側の温度は完全に乖離しています。
ラベルシールがヒートシンクを兼ねているため、熱が分散されて表面温度とセンサー温度がズレる可能性もありますが、それにしてもNAND側の温度がズレ過ぎです。
M.2ヒートシンクは無いよりあった方が良いです。高負荷時の若干サーマルスロットリングらしい症状が見られ、SSDコントローラの温度もやや高いです。
マザーボードにヒートシンクが付属しているなら装着するくらいでOKです。ただし、マザーボード付属のヒートシンクはネジの締めすぎに要注意。締めすぎると基板に圧力がかかりすぎてSSDの故障につながります。
まとめ:最強のDRAMレスNVMe SSD
「HIKSEMI FUTURE SSD 2TB」のデメリットと弱点
- DRAMキャッシュなし
- いつも同じ部品が入っていれば嬉しい
※未だにADATAのトラウマを引きずる筆者 - 素の書き込み性能は平凡
- 高負荷時の温度がやや高い
「HIKSEMI FUTURE SSD 2TB」のメリットと強み
- 最大7450 MB/sのシーケンシャル性能
- 低価格ながらハイエンド並の実用性能
- 空き容量による性能変化が少ない
- やや速いランダムアクセス速度
- トップクラスのゲームロード時間
- 広大かつ迅速なSLCキャッシュ
- 3段階のキャッシュ構造で書き込み性能を維持
- 耐久性が非常に高い(1800 ~ 3600 TBW)
- 大容量モデルあり(最大2 TB)
- 極めて高いコストパフォーマンス
- YMTC製232層 3D TLC NAND搭載
- 5年保証
HIKSEMI FUTURE SSD 2TB(FUTURE70-02TB)は、現時点で最強の性能を誇るDRAMレスSSDであり、定番ハイエンドモデルより安い価格でハイエンド以上の性能を発揮します。
優れた性能特性をもつYMTC製232層 3D TLC NANDに、スピーディーなSLCキャッシュ展開を可能にするMaxio製コントローラ(MAP1602A)を組み合わせ、Samsung 980 PROやWD Black SN770すら超える性能を実現。
書き込み耐性も2 TB版で3600 TBWをアピール、普通に使っていれば100年たっても使い切れない耐久値です。
ただし、本製品を販売しているメーカー「Hikvision」への信頼性は不透明です。
ADATAやKingstonのように、発売初期のみ高性能パーツ採用で販売し、人気が出てから安価なパーツに置き換える「おみくじ商法」を取る可能性がゼロとは・・・とても言い切れません。
レビューで測定された性能にもとづいて、HIKSEMI FUTURE SSD 2TB(FUTURE70-02TB)を強くおすすめできます。
とりわけ安価で高性能な2 TBを探している方に最適です。が、信頼性については完全に未知数です。あとから購入して性能が大きく違ったら返品してください。
以上「HIKSEMI FUTURE SSD(2TB)レビュー:名だたるハイエンドを打ち負かす最高のDRAMレスSSD」でした。
HIKSEMI FUTURE SSD 2TBを入手する
2023年4月時点、HIKSEMI FUTURE SSD 2TB(FUTURE70-02TB)の国内販路はAmazonとYahooショッピングで確認済み。
何かしらタイムセールがあると1割引に近いセールが行われ、実質1.5万円を切る価格で買えます。文句なしにコスパが良いので中華メーカーSSDに抵抗がなければ、買ってみていいと思います。
なお、信頼性を重視する方は「WD Black SN770」や「Seagate FireCuda 530」をどうぞ。
NVMe SSDのおすすめレビュー記事
おすすめなSSDを解説
存在が許されないデスノート送りの性能という米国のお墨付きを得るだけありますね
次の世代以降が制裁で陽の目に当たらなさそうなのが幸い?ですが
ほんととんでもない性能ですね…
なんか尼でMonster Storageってのもあるけどこれもスペック見るとCT300と同じなのかな。2TBで1万4000円とめちゃくちゃ安いですけど
原神なんかの読み込み速度の違いが感じられるか気になるので、HIKSEMIの方は試してみたいですね
同じくモンスターストレージの2GB(G75)版買いましたが
このHIKSEMIと同じYMTC 232+Maxio1602でした。
性能もシーケンシャルリード7300と公称近く。
これを13000で出されたら他メーカーは辛いでしょうね
まさに昨日MONSTER2TB注文しました
明日届くのでドキドキ
MINISFORUM UM773 Lite に入れてみるつもりです
本体のヒートシンクが片面にしかあたらないので
片面実装が安心
事後報告!
既にアマゾンのレビューにベンチマーク貼られてるけど
自分のもちゃんと速度出てます
発熱も少ない気がするしコレ結構良いかも
自分もMONSTARのGen4 2TBを買ったので、Windowsのコマンドプロンプトからcipherコマンドでワイプを実行してみました。
最初の0x00での書き込みでは5GB/s、
次のの0xFFでの書き込みでは2.6GB/s、
最後の乱数での書き込みでは800~900MB/s、
という結果になりました。
0xFFの時はデータが書かれた直後の上書きなのでそんなもんかなと思いますが、
このコントローラーは乱数の扱いは結構苦手なようです。
まあそんな使い方をする事は通常はないので、ゲームや動画編集ならコスパは良い
と思います。
なお、速度はタスクマネージャーのパフォーマンスで確認しました。
助かります。尼の報告がgen3で検証だったのでもう少しデータ出るまで待ってました
いえいえ、お礼はやかもちさんへドゾ
何故に禁輸リストに載ったのか、これがわからない
半導体雑誌のEE Timesを読むと、YMTCの禁輸リスト入りは他の中国メーカーに巻き込まれて “とばっちり” を受けた感がありますね。「Xtacking 3.0」は制裁するほど先を行っている技術ではなく、単にコスト度外視で作っている側面が強いだけなので・・・。
とばっちりだとするとYMTCが不憫でしかないですね・・・SSDの5年保証が切れる頃にはYMTCがこの市場から消えてる可能性もあるし・・・なんだかなぁ。
前々からめちゃくちゃ気になってたモデルなのでレビューとてもありがたいです
次にセールがあれば買うつもりですがその時まで何も変わってないといいなぁ…
やかもちさん、2TBのレビューありがとうございました。想像した通り1TBから更に飛躍した素晴らしい性能ですね。残るはご指摘のあった信頼性、耐久性ともうひとつ今後も安定して供給がされるかが鍵を握るのではないでしょうか?もしこれが両方とも解決されたとしたらSSDのゲームチェンジャーになり得ると思います。ここしばらくSSDの価格が急激に下がっている様に見受けられます。まさかとは思いますがもしかして因果関係があったりしてw
最後にやかもちさんの予言
「おそらく、まったく同じコンポーネント構成のNVMe SSDがHIKSEMI以外のメーカーでも出回っている可能性が高いです。」
どおりにアマゾンにもFuture同等品が続々と現れている様に感じております。
>3600 TBWを50 GB(0.050 TB)で割ると72000日で、耐久値を使い切るのに約196年もかかる計算に。おそらくNANDメモリの寿命が尽きるより先に、SSDコントローラが経年劣化で故障する確率のほうが高いです。
これもう使用者が先に経年劣化で死亡するレベルだろw
どっかで見覚えあるメーカーだと思ったら恵安が扱ってたSSDのメーカーじゃないか
とてもじゃないが万単位の機器購入なんて出来ないわ
ここまで安いと外付けSSD化もアリかなぁと思ってしまいます。
HMBだとスコアを大幅に落としそうですが……
このSSDですけど、”3段階”のキャッシュではなく、SLCキャッシュ->TLC領域へのダイレクトライト->SLCキャッシュからTLC領域へのデータの移動をともなうライト、という感じで書き込み方法が推移しているだけではないのでしょうか。
つまり、2番目のライト速度は、キャッシュのような一次記憶領域を経ることなく、本来の記録領域に直接記録を行っているわけです。そして、もっとも遅い速度が、多くのユーザーが気にされているSLCキャッシュ枯渇後の速度になります。
最初の速度で記録できたデータの量(TLC領域換算にする必要あり)と2番めの速度に落ちてから記録したデータ量を合計すると、搭載NANDメモリの容量とほぼ一致するのであれば、2番めの書き込みはダイレクトライトとみて間違いないと思います。
このSSDとてもコスパ良さそうに見えるんですけど
intel10世代 Gen3環境でも買いですかねー?
970 EVO Plus 2TBと迷っているんですけど…
970 EVO Plusは新型は低発熱、旧型は高発熱
2TBは旧型の報告が多いのでHIKSEMI をおすすめしますが、信頼性不明なのでバックアップは必要です。
いつもありがとうございます。
早速一本買わせて頂きました。
もう一本欲しいと思っていますが同じものを買うのも何だかつまらないのでこちらでより一層コスパ最高なssdがレビューされ次第飛び付く予定です。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
YMTCのチップは本物の232層だったようです。
第三者機関のお墨付きが出たので、Sランク入りしてもいいかもしれません??
>YMTCの232層3D NANDをYoleが分解、複数の先進技術を採用していることを確認 -マイナビTech+
https://news.mynavi.jp/techplus/article/20230728-2737449/
製造装置が制裁で入らないのかBGA 2個で4TBの構成は取れないようですね
DRAM搭載したHIKSEMI FUTURE PROが本当に出るっぽいですね。
https://www.hiksemitech.com/en/hiksemi/all-products/solid-state-drive/hs-ssd-future-pro.html