LGA1700ソケットに標準で対応しているCPUクーラーは、5000~6000円なら割とあるのですが、3000円台だとほとんど見つからないです。
しかし、ふとAmazonを眺めていると3500円の「Vetroo V5」を発見。さっそく買ってi7 12700Kで使ってみた。
Vetroo V5 CPU Coolerのスペックと仕様
Vetroo V5 CPU Cooler | |
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冷却ファン | ARGB LED対応 120 mmファン x1 |
LED対応 | +5V ARGB |
互換性 | Intel:LGA 1700 / 1200 / 115x / 775 AMD:AM4 |
保証年数 | 不明(問い合わせ先) support@vetroo.com |
参考価格 | 3499~3999 円 |
Amazonでしか売っていない謎の中華メーカー「Vetroo」製のCPUクーラー「Vetroo V5 Black」です。
LGA 1700対応かつ高さ148 mmの比較的コンパクトなサイズで、自作PCにかぎらずHPやDELL製の格安BTOパソコンで交換用に使うユーザーも多いようです。
付属のファンは120 mmサイズ、4 pinコネクタでマザーボードから回転数の制御が可能です。+5V ARGB端子にコネクタを挿し込み、ARGB LEDライティングも対応できます。
価格は3999円(500円クーポンでたまに3499円)です。虎徹Mark II Rev.Bより300~800円安く買えます。
公式サイトやAmazonページのどこを見ても保証について記載がないのが不安点です。
万が一、不具合や初期不良があった場合はAmazonで返品処理をするか、公式サイトの問い合わせ先に連絡してRMA申請をする形になりそうです。
Vetroo V5 CPU Cooler:レビュー内容
パッケージと付属品
意外としっかりしたパッケージで届きました。右下にしっかり「LGA 1700 Ready」と書いてあります。
パッケージ側面にスペックの記載あり。
ヒートシンクが歪まないように、段ボールの仕切り板で梱包が分けられています。
- ヒートシンク本体
- 120 mmファン
- CPUグリス
- インテル用マウントキット
- AMD用マウントキット
- ファン取り付けクリップ
- 説明書
付属品はごく普通の内容です。
ヒートシンクとファン
Cooler Master Hyper 212 Black Editionのような、ブラック塗装のヒートシンクです。フィンが均等に並んでいて値段の割に作りが良いです。
ヒートパイプは実測6.4 mm径が合計5本。Vetroo V5より値段が高いCooler Master Hyper 212や虎徹Mark II Rev.Bより1本多いです。
CPUから熱を回収する受熱部は「ダイレクトヒートタッチ」方式を採用。虎徹で使われている「ベースプレート」方式と比較すると、コスト面で有利ですが、冷却性能は劣るとされています。
ただ、熱回収の効率は発熱が大きいほど差が開くため、Vetroo V5の対応TDP:150 W程度ならダイレクトヒートタッチで特に問題はないのかもしれません。
冷却ファンは120 mmサイズの油圧ベアリング方式(Hydraulic)が付属します。送風量が21~52 CFM、ファン回転数は800~1700 rpm(+-10%)、騒音値は最大30.8 dBと普通のファンです。
ARGB LED対応、いわゆる光る仕様は冷却ファンの特性に不利に働く傾向があるため、性能に期待しない方がいいです。
取り付け方法を解説
今回はLGA 1700ソケット(ASUS TUF GAMING Z690 WIFI D4)に取り付けながら解説します。
付属の小ねじ(4本)を使って、受熱部にインテル用マウントキットを取り付けます。
取り付け完了。マウントキットの向きが間違っていないか要チェック。
正方形の取り付け用プレートを、マザーボードの裏側に取り付けます。
プレートの位置を先に調整しておきます。外側に引っ張るとLGA 1700に対応し、内側に引っ張るとLGA 1200やLGA 115xに対応するフレキシブルな仕様です。
CPUにグリスを塗布するのを忘れずに。筆者が使っているグリスは「SMZ-01R」です。塗りやすくて高性能で気に入っています。
マザーボードの裏側から、取り付け用プレートを挿し込みます。
ヒートシンクをプレートのネジ穴に合わせて取り付け、対角線の順番にプラスドライバーで固定していきます。
一箇所だけを締めずに、全体の圧力が均等になるイメージで順番に少しずつネジを締めるのが正しい取り付けのコツです。
ネジを締め切りました。途中でネジが回らないようにストップする機構が搭載されているので、自作PC初心者でも安心してネジを回せます。
ヒートシンクを持ち上げて、きちんと取り付けが完了しているか確認します。
付属のファンクリップで冷却ファンをヒートシンクに取り付けます。ファンに向きが書いてあるので、ヒートシンクに向かって風がふくように取り付けてください。
コンパクトで干渉しづらいデザイン
全体的にコンパクトなデザインで、背の高いオーバークロックメモリやVRMヒートシンクと干渉(ぶつかり)しづらいです。
メモリを4本挿し込める余裕があります。余ったファンクリップを使って、デュアルファン化(ファンを追加)も対応できそうです。
ファンから伸びているARGBコネクタを「+5V ARGB」ヘッダに挿し込むと光ります。
Vetroo V5 CPU Coolerの冷却性能
テストスペック
テスト環境 | |
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CPU | Core i7 12700K (レビュー記事) |
CPUグリス | SMZ-01R熱伝導率:13.2 W/mk |
マザーボード | ASUS TUF GAMING Z690 WIFI D4 |
メモリ | DDR4-3200 16GB x2使用メモリ「G.Skill FTridentZ C16」 |
グラフィックボード | GTX 1650使用グラボ「Palit KalmX」 |
SSD | NVMe 1 TB使用SSD「Samsung 970 EVO Plus」 |
電源ユニット | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 |
OS | Windows 11 Pro検証時のバージョンは「22000」 |
第12世代Alder Lake世代に人気のある「Core i7 12700K」を使って、Vetroo V5 CPU Coolerの性能をテストします。
グリスは「SMZ-01R」を使います。9点盛りにしたあと、マスキングテープとクレジットカートを使って平坦に塗布してから、CPUクーラーを取り付けます。
なお、Alder Lake世代ではマザーボードによってはソケット圧が強すぎてCPU側が歪んでしまう仕様※があり、CPUクーラーの性能をテストするときに問題です。
ぼくが使っているCore i7 12700Kと、ASUS TUF GAMING Z690 WIFI D4のソケット(Lotus製ソケット)には、「歪み」が生じていないかどうか当然チェック済みです。
※インテルいわく「仕様」扱いとなりました。ワッシャーや金具を使って圧力を分散するノウハウが流通していますが、仕様外の方法で使った場合の悪影響が予想できないので、レビューでは使いません。
最後に「CPUクーラーをどれくらい動かすか?」ですが、距離50 cmで動作音が35 dBになるようにファンの回転数を調整します。35 dBはとても静かです。
- クロック周波数:自動
- コア電圧:自動
- メモリ電圧:1.350 V(固定モード)
- Load Line Calibration:自動
- 電力制限(Power Limit):190 W(※i7 12700Kの最大TDP)
今回のレビューで使用したCore i7 12700Kの設定です。基本的にCore i7 12700Kの最大TDP(= 190 W)で動かしますが、設定に変更を加えた場合はグラフに別途記載します。
静かな設定(35 dB)の冷却性能
静かな設定の冷却性能は最大90℃、平均86℃です。Core i7 12700K(定格)の消費電力は200 W近いですが、Vetroo V5は意外と冷やせています。
ファン全開(100%)時の冷却性能
ファン回転数を100%(全開)に変更して、同じテストを行います。
ファン全開時の冷却性能は最大86℃、平均82℃でした。静かな設定より平均4℃も下がっています。ファンを全開まで回せば、200 WのCore i7 12700Kに耐えられます。
142 Wに制限したときの冷却性能
↑こちらの記事で解説している「電力制限設定」を使って、Core i7 12700Kの消費電力を142 Wに抑えた状態で同じテストをします。
142 Wに制限すると一気に温度を抑えられます。最大76℃、平均73℃です。標準設定より最大で14℃も温度が下がっています。
ファン回転数を100%(全開)に変更すると、最大75℃、平均70℃まで下がります。Vetroo V5は対応TDP:150 Wだけあって、142 W程度なら余裕で処理できる冷却性能です。
サーマルスロットリング(Cinebench R23)
CPUの定番ベンチマーク「Cinebench R23」のストレステストモード(10分間)で、どれくらい性能に変化が見られるかを確認します。
設定 | 平均 | 性能変化 |
---|---|---|
35 dB | 22166 cb | -0.3 % |
ファン100% | 22225 cb | 0.0 % |
35 dB(142W) | 21186 cb | -4.7 % |
ファン100%(142W) | 21215 cb | -4.5 % |
平均値と性能変化率を表にまとめました。
ファンの設定で冷え方に差があっても、性能には影響が出づらいです。静音設定の方が若干スコアが下がりやすいように見えて、平均値だとわずか0.2~0.3%程度。誤差といってもいいレベルです。
温度がガクッと下がる142 W設定による性能低下はせいぜい4~5%に抑えられており、Ryzen 9 5900Xに匹敵する性能(20500~21500 cb)を維持できています。
ファン回転数ごとの動作音(騒音)
ファンの回転数を10%ずつズラしながら、騒音値とファン回転数を測定したグラフです。ファン46%で35 dB前後、ファン100%で47.7 dBです。
ファン設定 | ファン回転数 | 騒音値 |
---|---|---|
0 % | 924 rpm | 32.8 dB |
10 % | 924 rpm | 32.8 dB |
20 % | 924 rpm | 32.8 dB |
30 % | 931 rpm | 32.6 dB |
40 % | 1128 rpm | 33.9 dB |
50 % | 1284 rpm | 36.1 dB |
60 % | 1432 rpm | 38.5 dB |
70 % | 1572 rpm | 40.9 dB |
80 % | 1694 rpm | 43.0 dB |
90 % | 1805 rpm | 45.2 dB |
100 % | 1964 rpm | 47.7 dB |
70%を超えるとファンの騒音が気になります。静音重視で行くなら40~55%が限度に感じますが、PCケース内に閉じた状態ならもう少しファンの設定を上げても大丈夫でしょう。
騒音値(dBA) | 評価 | 目安 |
---|---|---|
30 ~ 32.49 | 極めて静か | 耳を近づければ聞こえるレベル |
32.5 ~ 34.9 | 静か | ファンが回っているのが分かる |
35 ~ 39.9 | やや静か | 扇風機を「小」で回したくらい |
40 ~ 42.49 | 普通 | エアコンよりは静かな音 |
42.5 ~ 44.99 | やや騒音 | エアコンの動作音に近い |
45 ~ 50 | 騒がしい | 扇風機を「中~大」で回した音 |
50 ~ | うるさい・・・ | 換気扇を全力で回した音 |
まとめ:LGA 1700対応の安いCPUクーラーならコレ
「Vetroo V5 CPU Cooler」の微妙なとこ
- ファン70%以上で動作音が大きい
- 200 Wを冷やすにはやや不足
- 製品保証の内容があいまい
「Vetroo V5 CPU Cooler」の良いところ
- 142 Wを余裕で冷やせる性能
- ARGB LEDライティングに対応
- ファン55%までなら静音動作
- 価格の割につくりが良い
- 高さ148 mmのコンパクト設計
- ファンの回転数を自由に設定可
- 標準でLGA 1700に対応
- かんたんな取付方法
正直にいうと、期待以上のクオリティです。
LGA 1700に標準対応するサイドフロー型CPUクーラーで最安値に近いにもかかわらず、作りがしっかりしてます。
バリのない丁寧に塗装されたマットブラックのヒートシンクは無骨でいいデザインですし、Vetroo V5より高価なクーラーよりヒートパイプの本数が1本多いです。
接地面は安価なダイレクトヒートタッチ方式とは言え、Core i7 12700K(142 W)を冷やすのに十分な性能を得られています。高さ148 mmで使いやすいサイズ感も評価が高いです。
LGA 1700に対応した低価格なCPUクーラーを選ぶなら、Vetroo V5はかなりおすすめできます。
以上「Vetroo V5レビュー:3500円で買えるLGA1700対応の空冷CPUクーラーが意外と冷える件」でした。
ハイエンド製品じゃなくてこういう手が届くロー・ミドル製品のレビューが一番助かる
ローエンド品のレビュー自体は過去にもあったけどamazonの怪しい格安中華レビューは珍しいから新鮮
小型PCケース用にトップフローのVetroo L5もあります。こちらもぜひ(๑•̀ㅁ•́๑)✧
VもLもカラーが白黒あるのも地味にポイントです
光らなければもうちょっと価格は抑えられた気がするw
原価で数十円、販売価格でも100円くらいしか変わらないと思うよ
最近は中華系クーラーの質が上がってきたので、虎徹みたいに設計古いままの安価クーラーはもう敵わなくなってきてるね。
6コアCPUまでなら現役でいけるけど、そうするともっと安くて使えるクーラーあるし、ヒートパイプ4本のまま戦うのはもう限界か。
少し古い10700にv6を付けたけどocctを30分やってクロック下がらず完走出来たからすげぇなと思ったわ。変える前が90mmのツインファンだったから冷やしきれなかったってのもあるかもしれないけど