先日Sonyの軽量1型デジカメ「Sony a7CII」を購入。ついでにProGrade Digitalの定番SDXCカード「GOLD V60(128 GB)」と「COBALT V90(128 GB)」も買ってみた
せっかく2種類のSDXCカードが手元に揃ってしまったので、どれくらい性能が違うのか? SSDオタクの筆者が詳しく検証してみます。
(公開:2024/7/31 | 更新:2024/7/31)
ProGrade SDXC:GOLDとCOBALTのスペック
ProGrade Digital SDXC UHS-II スペックをざっくりと解説 | ||||
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モデル | GOLD | COBALT | ||
容量 | 128 GB | 256 GB | 128 GB | 256 GB |
規格 | UHS-II V60 | UHS-II V90 | ||
NANDメモリ | TLC方式 | pSLC方式 | ||
読み込み速度 シーケンシャル | 250 MB/s | 300 MB/s | ||
書き込み速度 シーケンシャル | 100 MB/s | 130 MB/s | 250 MB/s | |
TBW 書き込み耐性 | 非公開 | |||
耐久性 | 耐熱性(-25~85℃) / 耐X線 | |||
サイズ | 24 x 32 x 2.1 mm | |||
製造 | 台湾 | |||
保証期間 | 3年間 | |||
参考価格 2024/7時点 | 8300円 | 27300円 | 20800円 | 38000円 |
GB単価 | 64.8 円 | 106.6 円 | 162.5 円 | 148.4 円 |
GOLDとCOBALTの違いを1行で言うと、製造原価が3倍違います。
- GOLD:TLC方式(1つのセルに3倍のデータ保存量)
- COBALT:pSLC方式(TLCをSLCとして使う = 1つのセルに1倍のデータ保存量)
GOLD版は一般的なUSBメモリやSSDで広く使われているTLC NAND方式を採用します。
TLC = Triple Level Cell
1つのセルに3倍のデータを保存できるためコスト効率が良く、性能もほどほどに速いです。
SLC = Single Level Cell
一方COBALT版はデータセンターやエンプラ向けのSSD製品で使われている、pSLC(疑似SLC)方式を採用。NANDメモリ自体はTLC方式ですが、容量を3分の1に減らす代わりにSLCとして振る舞います。
SLC方式はTLC方式よりも、はるかに高性能です。特に性能の一貫性(持続性)と耐久性において、TLC NANDを未だに凌駕しており、安定した性能と耐久性を要求される業務向けのストレージで使われている傾向です。
NAND方式 | TLC | pSLC |
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ピーク性能 |
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持続性能 |
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耐久性 |
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製造コスト |
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位置づけ |
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コスパ |
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pSLC方式のCOBALTはプロ用途向け、安価なTLC方式のGOLDはホビー用途(一般向け)と言えそうです。
ProGrade SDXC UHD-IIカードを開封
ProGrade SDXCカードを開封します。今回のGOLD V60とCOBALT V90は、Amazon.co.jpで販売している正規代理店品です。
「ProGrade SDXC GOLD」は紙製のパッケージと、プラスチック製の梱包ボックスに収納されています。
「ProGrade SDXC COBALT」も同じく紙製のパッケージですが、厚紙のような素材でできたホコリっぽい梱包ボックスに収納されています。
中身が粉だらけです。値段が6割も安い、GOLDの方がなぜか梱包状況が良かったです。
GOLD版は「250 MB/s」が記載されているのみ、COBALT版は「Read:300 MB/s」「Write:250 MB/s」どちらも記載されています。
ProGrade GOLD vs COBALTの性能比較
テスト環境(ベンチマーク方法)
テスト環境 「ちもろぐ専用:SSDベンチ機」 | ||
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CPU | Core i7 13700K16コア24スレッド(TDP:125 W) | |
CPUクーラー | 虎徹Mark III120 mmサイドフロー空冷 | |
マザーボード | BIOSTARZ790 Valkyrie | |
メモリ | DDR5-6000 16GB x2G.Skill Trident Z5 Neo RGB | |
グラフィックボード | RTX 4060 Ti | |
テスト対象 | ProGrade SDXC GOLD V60 128GB ProGrade SDXC COBALT V90 128GB | |
システムSSD | HIKSEMI FUTURE70-02TB 2TB | |
電源ユニット | 850 WCorsair HX850i 2021 | |
OS | Windows 11 Pro検証時のバージョンは「22H2」 | |
ドライバ | NVIDIA 536.40 WHQL | |
ディスプレイ | 3840 x 2160@160 Hz使用モデル「Innocn 27M2V」 |
SSDベンチマークに使っているテスト用機材をそのまま流用します。
SDXCカードの接続方法は「SDXC → PCIe 3.0 x4変換カード」を考えましたが、普通ならSDXCカードリーダーを使うのが一般的なのでProGrade純正モデルを用意しました。
USB 10 Gbps(最大1250 MB/s)の転送速度に対応する、ProGrade純正のSDXCカードリーダーです。
テスト用のソースストレージ(ベンチマーク用ファイルの送り出し元)は、「Intel Optane SSD P5810X」です。
負荷や使用状況に関係なく、一貫して4000 MB/s以上のシーケンシャル性能を維持するエンプラ向けSSDを使って、ProGrade SDXCカードに対して負荷を与えます。
ProGrade SDXCカードより遥かに性能が高いストレージだから、送り出し元の性能不足(ボトルネック)がベンチマーク結果に悪影響を与えるリスクをほぼゼロに減らせます。
連続書き込み性能を比較
Optane P5810XからProGrade SDXCカードに約117 GBのブロックファイルをコピペして、書き込み速度を1秒ずつ記録したグラフです。
- ProGrade GOLD:約150.9 MB/s
- ProGrade COBALT:約275.9 MB/s
正直、思っていたよりGOLD版の書き込み性能がマトモでした。
てっきり途中で性能が派手に落ち込むものと予想したものの、テスト終了まで一貫して平均150 MB/s前後の書き込み性能を維持します。メーカー公称値の100 MB/sより1.5倍も高い数値です。
COBALT版はさすがの高性能。たまに150 MB/sまで落ち込む瞬間がありますが、おおむね平均275 MB/s前後の書き込み性能です。メーカー公称値の250 MB/sをきっちり上回る数値を示します。
GOLD版が示した平均150 MB/sをMbps換算すると、1200 Mbps相当です。Sony a7CIIによる4K 60 fps撮影(200 Mbps)もすんなりと耐えられます。
ほとんどの人にとって、COBALT版の平均275 MB/s(2200 Mbps相当)は過剰な性能になるでしょう。非圧縮RAW + X.FINE JPEGの高速連写(10 fps以上)でもしない限り、GOLD版で間に合いそうです。
連続読み込み性能を比較
ProGrade SDXCカードからOptane P5810Xに、約117 GBのブロックファイルをコピペして読み出し速度を1秒ずつ記録したグラフです。
- ProGrade GOLD:約270.7 MB/s
- ProGrade COBALT:約302.7 MB/s
GOLD版とCOBALT版、どちらもメーカー公称値どおりのシーケンシャル読み出し速度でした。
SDカードから編集用のパソコンへ写真データを吸い出すときの体感スピードもあまり差がなく、吸い出し中にデータが目詰まりを起こして一時停止するような症状もありません。
写真データの書き込み速度を比較
Optane P5810XからProGrade SDXCカードに、約23 GB(1253枚)の写真データをコピペして、書き込み速度を1秒ずつ記録したグラフです。
- ProGrade GOLD:約115.9 MB/s
- ProGrade COBALT:約174.8 MB/s
意外な結果になりました。
GOLD版は平均116 MB/sの書き込み速度でCOBALT版より遅いものの、メーカー公称値の100 MB/sをギリギリ維持しています。
一方、COBALT版は平均175 MB/sのスピーディーな書き込み速度ですが、メーカー公称値の250 MB/sを大きく割り込んでいます。ピーク速度ですら250 MB/sに達しません。
写真データの読み出し速度を比較
ProGrade SDXCカードからOptane P5810Xに、約23 GB(1253枚)の写真データをコピペして読み出し速度を1秒ずつ記録したグラフです。
- ProGrade GOLD:約246.8 MB/s
- ProGrade COBALT:約268.6 MB/s
GOLD版はメーカー公称値の250 MB/sをギリギリ維持できず。COBALT版も同様にメーカー公称値の300 MB/sを維持できません。
細かいファイルを何度も何度も繰り返して読み出すと、メーカー公称値のシーケンシャル速度を維持できないようです。
SDカード本体の発熱(温度)をチェック
SDXCカード本体に接触型の熱電対センサーを貼り付けて、ベンチマーク中の温度変化を1秒ずつ記録します。
比較 | ProGrade GOLD | ProGrade COBALT |
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平均速度 | 150.9 MB/s | 275.9 MB/s |
温度(最大) | 43.9℃ | 50.9℃ |
温度(平均) | 41.7℃ | 47.1℃ |
GOLD版は最大44℃程度、平均42℃前後です。COBALT版が最大50℃超え、平均47℃です。
シーケンシャル速度の持続性能が高いCOBALTの方が温度が高くなりました。
一般的に、フラッシュメモリ製品は性能が高ければ高いほど比例して発熱も大きくなる傾向があり、高性能なCOBALTの方が温度が高くても違和感ないです。
【おまけ】定番ベンチ「Crystal Disk Benchmark」
最後に、SDカードの定番ベンチマークで知られる「Crystal Disk Benchmark」の結果を貼っておきます。
ProGrade SDXC GOLDのシーケンシャル読み込み速度が約280 MB/s、シーケンシャル書き込みが約144 MB/sです。ほぼメーカー公称値どおり。
ProGrade SDXC COBALTのシーケンシャル読み込み速度が約300 MB/s、シーケンシャル書き込みが約240 MB/sです。読み込みがメーカー公称値どおり、書き込みは微妙に届いてません。
ベンチマーク結果をよく見ると、GOLD版と比較してランダム書き込み速度が半分以下です。
まとめ:書き込み性能がCOBALTの強み
SDカード比較 | ProGrade GOLD V60 | ProGrade COBALT V90 | 性能差 |
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連続書き込み | 150.9 MB/s | 275.9 MB/s | 約1.8倍 |
連続読み出し | 270.7 MB/s | 302.7 MB/s | 約1.1倍 |
写真の書き込み | 115.9 MB/s | 174.8 MB/s | 約1.5倍 |
写真の読み出し | 246.8 MB/s | 268.6 MB/s | 約1.1倍 |
負荷時の温度 | 43.9℃ | 50.9℃ | +7℃ |
SDカードから他のデバイスへデータを吸い出す「読み出し」において、GOLDとCOBALTの性能差はせいぜい10%程度です。
パソコンにデータを吸い出す速度をスピーディーにしたいだけなら「GOLD V60」で十分と言えそう。
一方で、書き込み性能は「COBALT V90」が圧倒的です。GOLDが平均150 MB/sに対し、COBALTは平均275 MB/sを維持します。
1枚あたり約20 MBの写真を連射するケースを想定すると、GOLD(平均150 MB/s)は1秒あたり7枚が限度、COBALT(平均275 MB/s)は1秒あたり13枚くらい耐えられる計算に。
数秒ほど連射したあと、カメラが再び撮影可能になるまでの待ち時間も書き込み性能に優れるCOBALTが有利です。
「GOLD」と「COBALT」どっちがいい?
今回のベンチマークで確かめた「連続書き込み性能」から対応できる用途を逆算して、おのずとどちらが適しているか分かります。
COBALT V90は平均250 MB/s程度の書き込みができ、GOLD V60は平均150 MB/s程度です。自分の想定する用途で1秒あたりに使用するデータ量を計算するだけです。
おそらく、9割くらいの人が1秒に150 MBも消費しません。せいぜいパシャッと1枚撮って60 MB程度で、パシャッと1枚で200 MBも使える超高解像度カメラを持っている人はほとんどいないです。
コストパフォーマンスが高い:GOLD
非圧縮RAW + JPEG写真撮影(単発)や4K動画撮影なら「GOLD V60」で十分です。
1回パシャッとするだけで150 MBを消費するシーンはほとんど無いと思われます。4K動画撮影もせいぜい200 Mbps(= 25 MB/s)しか使ってくれず、GOLD V60で間に合ってしまいます。
高解像度の連射撮影に強い:COBALT
3300万画素や6100万画素クラスのハイエンドカメラで、非圧縮RAW + 高画質JPEGの連射撮影を日常的に使うなら「COBALT」が適している可能性が高いです。
数十秒単位で連射を使う場合も、当然COBALTが適していますし、さらに過酷なユースケースだと・・・CF Express規格のストレージを選んだほうが良いかも。
(予想以上に性能が高いProGrade GOLD V60)
以上「ProGrade SDXCレビュー:GOLDとCOBALTでどれくらい性能が違う?【比較検証】」でした。ミラーレス一眼カメラに使うSDカード選びの参考になれば幸いです。
NVMe SSDのおすすめレビュー記事
おすすめなSSDを解説
他社のSDカードだと半端にSLCキャッシュが設定されてたりしますが、Prograde GOLDにはキャッシュがないように見えますね
逆にそれで一貫した性能が出るならいい設計してると思います
そうなんですよね。
キャッシュ時で平均100 MB/s以上、キャッシュが切れた後に50 MB/sくらいに落ちるのかな?と予想してたんですが、まさか全容量書き込みで150 MB/s前後とは・・・予想外の持続性能でした。
なんとなく手元のINTEL330(120GB)測ったら
シーケンシャルは読み書き共にGOLDにすら負けてる
ミラーレス一眼の場合、
V90であるかV60であるかよりも
カメラからの書き出し速度の影響が大きいです。
例えばα9IIは2400万画素、30コマ秒の高速機ですが書き出しが遅いため、どちらのカードでもほとんど差がありません。
一方でα1や9IIIのような高速書き出しの場合はV90を使ってもSDXCType2の規格上限でこれでも遅すぎます。CFExpressAのカードが求められます。
正直使うカメラ次第かと思います。
> 正直使うカメラ次第かと思います。
これに尽きますね。
手持ちのa7IIIとa7C2だと、体感できる性能差がまったく無かったです。
10秒くらい連射撮影したあと、待ち時間が1秒ほど変わる以外はホントに大差なかったです。
コスパの良いNextorageのUHS-II ProとCOBALTの比較が見てみたいです
pSLCは温度に対する耐久性もTLCより高いので、
炎天下での連続撮影など空調のない場所での運用において
信頼性にプラスでしょうね
1行目に「軽量1型デジカメ」とありますが、Sony α7CIIはフルサイズミラーレス一眼です。1型(インチ)センサーを搭載したデジカメはRX100シリーズになります。
同じこと思ったけど「いちがん」のtypoなのかなとも思ったり
連射って何撃ってるのでしょうか?