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Corsair RM1000x ATX v3.1レビュー:RTX 5090すら運用できる定番「1000 W」電源ユニット

国内外で「定番」の地位を固めつつある電源ユニット「Corsair RM1000x(ATX 3.1)」を、Yahooショッピングで1台買ってみました。

効率認証「Cybenetics Platinum」と、静音認証「Cybenetics A」を取得する、高効率かつ静音性にも優れる優等生な電源ユニットです。

やかもち
Cybenetics Labsの測定機材を使って、性能を軽く検証します。

(公開:2025/4/29 | 更新:2025/4/29

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Corsair RM1000x ATX v3.1の仕様

CORSAIR / 容量:1000 W / 効率:80 PLUS Gold / 静音:Cybenetics A(20~25 dB) / 製造元:CWT / 保証:10年
Corsair
RM1000x(ATX 3.1)
型番:CP-9020271-JP
製造元
(OEM)
CWT
台湾:Channel Well Technology
容量1000 W
効率
  • 80 PLUS なし
  • ETA Platinum
静音
  • Lambda A
ケーブルフルプラグイン
保護
  • OVP(過電圧保護)
  • UVP(低電圧保護)
  • OPP(過電力保護)
  • OTP(過熱保護)
  • OCP(過電流保護)
  • SCP(短絡保護)
  • SIP(サージ・突入電流保護)
  • FFP(ファン故障保護)
ファン
  • 140 mm径
  • 流体軸受ベアリング
セミファンレス対応
(切り替えボタンあり)
サイズ160 x 150 x 86 mm
規格ATX 3.1
保証10年
参考価格
※2025/4時点
Amazon
 楽天市場
Yahooショッピング

「Corsair RM1000x ATX 3.1(CP-9020271-JP)」は、Corsair RMxシリーズ最新モデルの容量1000 W版です。

初心者もち
ちょっと待って、コルセア「RMx」シリーズは具体的にどれくらい高いグレードなの?
CORSAIR電源のラインナップまとめ(RMx)

(RMx = 上から数えて3番目のグレード)

Corsair公式サイトの説明をベースに、分かりやすく画像にまとめました。

ざっくり言えば「RMx」シリーズは高品質なパーツをふんだんに惜しみなく使って、RM(無印)よりも静かな冷却ファンを搭載して静音性にもこだわったハイエンド志向な電源ユニットです。

実際はCorsairの説明とやや事情が違っていて、RMxとRM(無印)の性能差は本当にごくわずかだったりします。だから、その時その時で値段が安い方を選べば問題なし。

と言っても容量1000 W版の場合、日本国内ではRMxかRMeのどちらかです。

  • RMx / RM:日本コンデンサ & CWT製
  • RMe:台湾コンデンサ & HEC製

価格差が少ない割に、パーツの品質や製造元(OEM)にきっちりグレード分の差を付けてあるため、よほどの理由がない限りRMxを選びましょう

やかもち
Corsairはなまじブランド力があるせいで、なんとなく「RMe(廉価版)」を選んでしまう人が半々です。差額が2~3割なら別にいいですが、同じ値段だったら「RMx」が幸せです。

取得している認証とレポート一覧

  • 80 PLUS – No Certification
    (None)

電源ユニットで定番の認証規格「80 PLUS」をあえて取得していません

Corsairは80 PLUS認証をライセンス費用が高い割に、テスト内容が大雑把かつ時代遅れで、消費者にとって役に立たない指標と考えています。

今後80 PLUSに取って代わる可能性が高い「Cybenetics」認証へ移行する予定です。

80 PLUSに代わる新たな認証規格「Cybenetics ETA」でPlatinum」認証に合格済み。負荷率20~70%の広い範囲で約90%を上回る高い変換効率です。

電源ユニットの静音性を評価する規格「Cybenetics LAMBDA Aを取得済みです。平均値で「20 ~ 25 dB」以内を意味する、そこそこ静かな規格に合格しています。

ATX 3.0 ~ 3.1規格で要求される厳しい応答テストに耐えられるかテストするATX 3.1 PASS」認証もきちんと取得済み

瞬間的(0.0001秒未満)なスパイク電力に対して、電源容量の最大200%まで安定動作できます。つまり、RM1000x(ATX 3.1)のピーク容量は約2000 Wです。

やかもち
80 PLUS認証をあえて取らない潔さがすごい・・・。

Corsair RM1000x ATX 3.1を開封

パッケージと付属品

Corsair電源シリーズは2023モデル以降から、黄色の背景に黒いフォントを多用したインパクトのあるデザインに統一を進めている様子です。

シリーズ全体でカラーを揃えて、パッと見の印象だけでブランド認知をしてもらう狙いです。

パッケージ正面下部に「Cybenetics」ロゴが2つだけ印刷されています。

左から順番に

  •  Cybenetics ETA GOLD認証
  •  Cybenetics LAMBDA A-認証

以上です。

Corsair RM1000x ATX 3.1は「ETA Platinum」と「LAMBDA A」認証を取得していますが、パッケージに表記されたロゴマークはそれぞれ1ランク低いです。

実際にサイバネティクスラボで取得した認証と、パッケージ表記の認証に1ランクの差がある理由は「個体差」です。

Corsairいわく、まったく同じ設計の電源ユニットでも、何万台もの大量生産を続けているとどうしても微妙に性能が異なるバラツキ(分散)が生じます。

バラツキのうち下位に入ってしまったハズレ個体が、認証ラボで取得した性能を満たさない可能性があるため、念のためハズレ個体に合わせて記載するロゴを1ランク下げています。

やかもち
つまり・・・ Corsair製品を買った場合、想定より高い性能の電源に当たる可能性はあるけれど、逆の可能性は事前に排除されています。ほぼ100%の確率でパッケージ記載の性能が手に入ります

マザーボードの箱と同じく、底面からめくり上げるシンプルな開封方法です。

外箱をゆっさゆっさと縦に振り回して慣性で中身を押し出すタイプじゃなく、単に指でめくるだけで開封できます。

紙製のガサガサとした薄い梱包材に、静電気防止ビニール袋で電源本体が包まれています。最近トレンドな環境に優しいSDGsな梱包です。

2万円台の電源ユニットなら不織布を使った丁寧かつゴージャスな梱包を希望する方もいるでしょうが、RM1000xはあくまでも100ドル台で売っている、メインストリーム向けグレードに過ぎません。

付属ケーブルの種類と長さ

Corsair RM1000x ATX 3.1に付属する、大量の電源ケーブル類を確認します。

「12V-2×6」ケーブルが1本付属します。

コネクタの両端が「12V-2×6」ネイティブ対応です。

ケーブル表面に蛇皮のような模様が刻まれた「エンボス加工」が施されています。太さ16 AWGのケーブルでも、しなやかで柔軟に曲げられる取り回しのいいケーブルです。

「12V-2×6」は、RTX 40 / RTX 50シリーズを中心に導入されている「12VHPWR」または「12V-2×6」コネクタで使える、グラフィックボード用の電源ケーブルです。

たった1本のケーブルで最大600 Wまで対応します。

コネクタの先端部分を拡大すると、ラッチ固定具の部分に12V-2×6対応を示す「H++」刻印が見当たりません。

実は、コネクタの先端に刻印を入れるかどうかはメーカーの裁量に委ねられていて、Corsairはわざわざ表記しないスタンスです。

アピールせずとも当たり前のように「12V-2×6」コネクタ採用です。

半挿し(挿し込み不良)を見分けやすくする、先端部のカラーリング塗装は一切なし。

ASRockは緑色、MSIは黄色など。先端に色を付けるメーカーが増えている傾向ですが、塗装しない方がコネクタの耐久性が高い・・・とCorsairのエンジニアは試算しています。

もし万が一、挿し込みが甘くても12V-2×6コネクタなら通電しない安全設計ですので安心してください。きちんと奥まで挿し込まない限り、グラフィックボードに電力が供給されません。

CPU補助電源に挿し込む「EPS12V 4+4 pin」ケーブルは2本付属します。それぞれ長さ75 cmで、太さ18 AWGです。

ケーブル表面に蛇皮のような模様が刻まれた「エンボス加工」が施されています。しなやかで柔軟に曲げられる取り回しのいいケーブルです。

グラフィックボードの補助電源に挿し込む「PCIe 6+2 pin」は4本付属し、すべてシンプルな1本線です。どれも長さ65 cmで、太さ16 AWGです。

2つのコネクタに枝分かれする分岐タイプは付属しません。SNSで「分岐コネクタを使っていいですか?」と疑問を呈するスキを与えない親切な設計です。

太さ16 AWGなのに、すごく「しなやか」で柔軟に曲げられる不思議なケーブルです。

先端が6 + 2でバラバラになるのが気になる方は、付属品のケーブルコームでキレイにまとめられます。

マザーボードの補助電源コネクタに挿し込む「ATX 24 pin」ケーブルです。長さ61 cmでした。

しなやかで曲げやすく、ケーブル表面にエンボス加工が施されています。太さ16 AWGです。

挿し込みやすい24ピン一体成型です。マザーボード側のATX 24 pinコネクタにぴったり収まり、挿し込みやすいです。

SATAデバイス(3.5″ HDDや光学ドライブ)に電力を供給する「SATA」ケーブルは3本付属します。ケーブル1本につき、コネクタが3個付いています。

ケーブルの長さは85 cmで、コネクタ間が約11 cmずつ離れています。

特殊仕様のサーバー向けHDDや、ケースファンコントローラに電力を供給する「Molex(ペリフェラル4ピン)」は2本付属します。

ケーブル1本につき、コネクタが3個付いています。ケーブルの長さは75 cmで、コネクタ間が約10 cmずつ離れています。

電源ユニットとコンセントをつなぐ「電源ケーブル(アース線つき)」です。

IEC320 C13規格の太いコネクタに、許容電流が17Aもある1.8 mm径(断面積2.0 mm²)の極太ケーブルを採用します。

ノイズを抑制する大型フェライトコアは付いていないです。

アクセサリー類も付属します

自作パソコンの裏配線で活躍する「結束バンド」が10本付属します。

分岐コネクタのバラバラな先端をキレイにまとめる「ケーブルコーム(くし:櫛)」が8個付属します。

袋に4本入っている「小ネジ」は、電源ユニット本体をPCケースに固定するときに使います。予備が1本も付属しないから紛失しないように注意。

付属品の結束バンドとケーブルコームを使って、パラパラと散らかりやすいケーブルを使いやすく整理できます。

「EPS 4+4」や「PCIe 6+2」も、ケーブルコームでがっつり固定でき、コネクタ先端を指で強くつまむ地味に面倒な手間から開放されます。

PCIe 6+2 pinケーブルを使いやすく整理してみた。

欲を言えば、最初からケーブルがまとまった状態なら良かったです。でもインフレ時代の世の中で、100ドル台の電源にそこまで言うのは酷な話かも。

付属のマニュアルは安全規格にどれだけ準拠しているかを説明する「しおり」です。

保証書です。お買上げ日より10年保証です。

Yahooショッピング(Joshin Web)で買ったRM1000xの場合、株式会社アスクの保証書がビニール袋に貼ってありました

購入明細とシリアルナンバーがあれば問題なくメーカー保証を受けられると思いますが、念のため捨てずに持っておくと安心です。

フルモジュラー仕様と「おろし金」デザイン

マットブラック塗装の本体に、CORSAIRとRM1000xのロゴマークが目立ちます。シンプルながらも見た瞬間にCorsair電源だと分かる、よくできたデザインです。

某りんご製品の「おろし金」を彷彿とさせる、独特な形状にくり抜かれたファングリルが特徴的です。ユニークな意匠と優れた通気性(エアフロー)を両立します。

すべてのケーブルを着脱できる「フルモジュラー(フルプラグイン)」方式です。使うケーブルだけ任意で取り付けられるから、配線を最小限に抑えたスッキリした自作パソコンを組み立てられます。

140 mm口径の冷却ファンを搭載。メーカー仕様表によるとFDB(流体軸受ベアリング)方式のファンです。

一般的に、FDBファンは耐久性と静音性に優れている傾向があるとされています。

本体の底面に出力表が貼ってあります。

Corsair RM1000x ATX 3.1(出力表)
型番:CP-9020271 / モデル:RPS0198
AC入力100 ~ 240V(50 ~ 60Hz)
DC出力+3.3V+5V+12V-12V+5Vsb
出力電流20A20A83.3A3A
合計出力150W1000W15W
総合出力1000W

※ Corsair RMx / RM / RMe 2022以降のシリーズは「-12V」レールを省略しています。少なくとも直近3~4年の主流のPCパーツでは-12Vレールは不要です。

現代のPC向け電源ユニットで定番のシングルレール方式です。CPUやグラフィックボードなど、主要なPCパーツが接続される+12Vレールにて、最大1000 Wの出力に対応します。

電源ユニット側の対応コネクタをチェック。

対応コネクタ
マザーボード用
(ATX 24 pin)
1個
グラフィックボード用
(12V-2×6)
1個
CPU / グラボ兼用
(EPS12V 4+4 / PCIe 6+2 pin)
6個
SATA / Molex兼用
(SATA / Molex 4 pin)
5個

十分過ぎるほどの拡張性が確保されています。

Core Ultra 9 285KやCore i9 14900K、またはRyzen 9 9950X3DなどハイエンドCPUに、RTX 5090を1枚組み合わせても大丈夫。

コンセント側のインターフェイスです。

  • 1個:電源コネクタ(IEC320 C14)
  • 1個:電源のオンオフボタン
  • 1個:冷却ファン制御ノブ

注目するべきインターフェイスが「冷却ファン制御ノブ」です。

ノブを左方向(反時計回り)まで回し切ると「カチッ」と鳴り、セミファンレスモードに移行します。

ノブを右方向(時計回り)に回すと、セミファンレスを解除して冷却ファンを任意に回転させられます。右まで回し切るとファンが轟音を立ててフル回転です。

ほんの少しだけノブを右に回しておいて、無負荷でもゆるっとファンを回しておくと、ホコリの混入を防ぎやすいです。

やかもち
RM1000xのセミファンレスは負荷と温度の両方でコントロールされているから、微妙な負荷を続けて高温になりすぎる心配はありません。

左右のサイドパネルは密閉され、CORSAIRロゴが貼ってあります。

内部コンポーネント(腑分け写真)

フタを開けて内部コンポーネントを確認してみます。

六角(HEX 2.0 mm)ドライバーで四隅のネジを外して、シールの裏側に隠された4本のプラスネジ(PH1)を外すと、かんたんにフタを開けられます。

開封(分解)すると10年間のメーカー保証が無効になります。真似しないでください。

では、記事の序盤にリンクを掲載したCybenetics Labsレポートと照らし合わせながら、今回の市販モデルでも同じ部品が確認できるかチェックです。

某りんご製品の「おろし金」のようなファングリルです。ユニークな意匠と優れた通気性(エアフロー)を両立する狙いです。

冷却ファンは「NR140HP」です。Corsair(※自社設計で中国製造)製の140 mm径、FDB(流体軸受ベアリング)方式の静かな冷却ファンが搭載されています。

ちなみに、2021モデル以前に採用されていた磁気浮上ベアリング方式ファンはもう使われていません。単純にNR140HP(FDB方式)の方が静かだったから乗り換えたそうです。

やかもち
ファンが回り始めた時によくある「軸音」が凄く静かで、低回転時の風切音も至近距離でないと聴こえません。

電源ユニットと冷却ファンがミニ4ピンコネクタで接続されています。

見慣れたコネクタに見えて、ケースファンの4ピンと完全に別物です。市販のケースファンにそのまま交換するのは難しいです。

Corsair RM1000x ATX 3.1の製造元はCybenetics Labsのレポートに記載があるとおり、CWT(台湾:Channel Well Technology)」社です。

ヒートシンクの配置が合理的です。冷却ファンのエアフローをなるべく妨げないように配置され、背面ファングリルから熱気を逃がします。

日本ケミコンのアルミニウム電解コンデンサ(定格電圧400 V / 容量470 uF / 定格105℃ / 2000時間モデル)が入っています。

すぐとなりに日本ケミコンのアルミニウム電解コンデンサ(定格電圧400 V / 容量560 uF / 定格105℃ / 2000時間モデル)も配置して、合計1030 uFの静電容量を確保します。

容量1000 Wに必要なホールドアップ時間(停電時したあとも電力を供給しつづけるタイムリミット)を得られる設計です。

小豆色の細長いコンデンサ群が、日本ケミコンのアルミニウム電解コンデンサ(定格電圧16 V / 容量4700 uF / 定格105℃ / 10000時間モデル)です。

水色の小さなコンデンサ群が、日本ケミコンの導電性高分子アルミ個体コンデンサ(ポリマーコンデンサ)です。

ドーダーボード上に実装されたDC/DCコンバータの付近にも、日本ケミコンの導電性高分子アルミ個体コンデンサ(ポリマーコンデンサ)が配置されています。

ポリマーコンデンサは生産時の供給状況に合わせて、ニチコンのFPCAPシリーズに置き換わる場合もあります。

黒いコンデンサが、ルビコンのアルミニウム電解コンデンサ(定格105℃ / 10000時間モデル)です。

ドーダーボード上に、ルビコンのアルミニウム電解コンデンサ(定格105℃ / 10000時間モデル)を多用します。

モジュラーコネクタの隙間にも、びっしりと導電性高分子アルミ個体コンデンサ(ポリマーコンデンサ)が敷き詰められています。

コネクタの隙間からちらっと覗く赤色のコンデンサが、ニチコンのFPCAPシリーズです。

「12V-2×6」コネクタの周辺にも、ニチコンのFPCAPシリーズが使われています。

やかもち
Corsair公式サイトに記載どおり「100%日本コンデンサ搭載」でした。ニチコンやケミコンなど、すべて日本メーカーブランド品で揃っています。

Corsair RM1000x ATX 3.1を実際に使ってみる

テストPCスペックを紹介

テスト環境
「ちもろぐ専用 Intelベンチ機(2025 / 新)
スペック使用パーツ
CPUCore i9 13900KPL1 = PL2:253 W
CPUクーラー280 mm水冷式クーラーNZXT Kraken 280(2023)
メモリDDR5-8000 48GB(24GB x2)G.Skill Trident Z5 RGB
マザーボードIntel Z790チップセットTUF GAMING Z790-PLUS WIFI
グラボ #1RTX 5090 32GBZOTAC GAMING OC
(Power Limit:104%に変更)
グラボ #2
(Power Limit:-)
SSD1 TB(NVMe SSD)Samsung 970 EVO Plus
電源ユニットCorsair RM1000x ATX 3.1
(レビュー対象)
OSWindows 11 Pro 24H2
(KB5041587適用済み)
Windows 11 Pro(パッケージ版)

今回は容量1000 Wの電源ユニットを検証するべく、ピーク負荷が1100 W近くに達するハイエンドGPU環境を用意しました。

実測で300 W台も消費するCore i9 13900Kに、実測で600 Wを超えられる弩級のハイエンドグラボRTX 5090を組み合わせています。

現時点で、ほぼ最上位のゲーミングPCを想定したスペックです。

グラフィックボードの消費電力を測定(Cybenetics)

各電圧レールの測定には、Cybenetics Labs謹製のPMD(Power Measurement Device)を使い、0.001 V(1 mV)単位かつ毎秒最大1000サンプル(1ミリ秒)の刻み値で記録します。

安物の8ビットマルチメーターやオシロスコープの安物プローブを、マザーボードやコネクタの隙間にぶっ刺すよりも、いくぶん精度が高いです。

容量100%の超高負荷でも安定動作

負荷システム(DC側)
平均値886 W
中央値988 W
上位1%1042 W
上位0.01%1083 W
  • CPU負荷:Prime95 Small FFTs(TDP:253 W)
  • GPU負荷:FurMark 2 3840 x 2160(TGP:600 W)

以上のベンチマークで、コンセント側(AC側)で約1120 W前後、システム側(DC側)で約1000 Wの負荷を連続して掛けられます。

約45分間そのまま放置して、何事もなく安定してベンチマークが正常に稼働しつづけます

Corsair RM1000x ATX 3.1(容量1000 W)は、最大容量と同じ消費電力(1000 W)、ピーク時に1100 Wを超えるハイエンド構成に余裕で耐えられます

各電圧レール測定グラフ
※クリックで拡大
PCIe 12V
EPS 12V
ATX +12V
ATX +5V
ATX +3.3V

負荷が上昇すると、各電圧レールが分かりやすく低下します。

Corsair RM1000x ATX 3.1は「ATX 3.1」と「PCIe 5.1」規格に準拠した電源ユニットなので、各電圧レールの許容範囲は±5%で、+12Vレールは+5% / -7%、12V-2×6レールは+5% / -8%が許容範囲です。

PCIe 12V [RTX 5090]変動幅基準値
最大値11.94 V-0.54%< 5.00%
最低値11.71 V-2.40%> -8.00%
EPS 12V [Core i9 13900K]
最大値11.82 V-1.47%< 5.00%
最低値11.71 V-2.39%> -7.00%
ATX +12V
最大値11.96 V-0.33%< 5.00%
最低値11.85 V-1.23%> -7.00%
ATX +5V
最大値5.02 V0.38%< 5.00%
最低値5.00 V0.06%> -5.00%
ATX +3.3V
最大値3.30 V-0.15%< 5.00%
最低値3.28 V-0.55%> -5.00%

すべての電圧レールが問題なくATX 3.1規格で定められた許容範囲に収まっています。

連続的で急激な負荷変動でも安定動作

負荷システム(DC側)
平均値872 W
中央値1024 W
上位1%1099 W
上位0.01%1115 W
  • CPU負荷:Prime95 Small FFTs(TDP:253 W)
  • GPU負荷:FurMark 2 3840 x 2160(TGP:600 W)

連続負荷ベンチマークを実行した状態で、FurMark 2でスペースバーを押しっぱなしにします。すると、グラフィック描画が500ミリ秒ごとにオンオフを繰り返し、連続的な負荷変動を再現可能です。

500ミリ秒ごとに負荷が止まって500 W前後まで下がり、また500ミリ秒たつと負荷が再開して1100 W前後まで上昇・・・を延々と繰り返す過渡応答に似た状況です。

激しい連続負荷でもCorsair RM1000x ATX 3.1は非常に安定した動作でした。

ピーク時に約1100 Wに達し、電源の最大容量を超えた電力を引き出しても、システムは安定して動き続けます。スパイク由来の強制シャットダウンも発生しなかったです。

ATX 3.1規格に準拠した設計だから、0.1ミリ秒以内のスパイクなら容量の2倍にあたる2000 Wまで耐える仕様です。

スパイクに該当しない持続的な容量オーバーの場合は、過負荷保護によって容量の125%前後(= 1200 ~ 1250 W)で電源を停止します。
やかもち
容量1000 Wもあれば十分説ありそう。
各電圧レール測定グラフ
※クリックで拡大
PCIe 12V
EPS 12V
ATX +12V
ATX +5V
ATX +3.3V

負荷の変動に合わせて、各電圧レールが分かりやすく乱高下します。

PCIe 12V [RTX 5090]変動幅基準値
最大値11.99 V-0.08%< 5.00%
最低値11.72 V-2.30%> -8.00%
EPS 12V [Core i9 13900K]
最大値11.99 V-0.10%< 5.00%
最低値11.74 V-2.21%> -7.00%
ATX +12V
最大値12.01 V0.04%< 5.00%
最低値11.87 V-1.06%> -7.00%
ATX +5V
最大値5.03 V0.50%< 5.00%
最低値5.00 V0.08%> -5.00%
ATX +3.3V
最大値3.30 V0.06%< 5.00%
最低値3.28 V-0.64%> -5.00%

すべての電圧レールが問題なくATX 3.1規格で定められた許容範囲に収まっています。急激な負荷変動に対しても問題なく正常動作です。

各ケーブルや電源本体の表面温度

約1000 Wの連続負荷テストを2時間ほどつづけたあと、サーモグラフィカメラで電源ユニット本体の表面温度を撮影します(撮影時の周辺気温:27.8℃)

ファングリル正面の表面温度です。冷却ファンが勢いよく回っているから、正常な温度を取得できません。

コンセント側から撮影すると、電源ユニット内部の温度を確認できます。

  1. コモンモードチョーク:82℃(Δ54℃)
  2. インダクタ:78℃(Δ50℃)
  3. ブリッジ整流器:106℃(Δ78℃)

もっとも熱いエリアで106℃近く(Δ78℃)まで上昇します。

電源ユニット底面の表面温度をチェック。一番熱いエリアで約50℃近い(Δ22℃)です。

プラグインコネクタ周辺の表面温度です。12V-2×6コネクタ付近が46℃前後(Δ18℃前後)、EPS 12VやATX 12V付近は39~43℃(Δ11~15℃)程度に収まります。

システム側の各コネクタケーブルの表面温度です。

約600 Wが流れている12V-2×6で48℃前後(Δ20℃前後)ほど、約330 Wが流れるEPS 12Vで43℃前後(Δ15℃前後)、ATX 24 pinがわずか34℃(Δ6℃)でした。

PCI-SIGが策定した規格最低温度(= 70℃)まで十分すぎるほどのマージンが確保されています。

12V-2×6ケーブルの表面温度を細かく確認します。

撮影時で600 Wもの電力が流れていますが、表面温度は50~60℃台(Δ22~32℃)です。

まだまだ余裕があるように見えますが、グラフィックボード本体に近づくと表面温度はどうなるでしょうか。

グラフィックボード側の12V-2×6コネクタの表面温度を、正面から見たサーモグラフィー画像です。

離れた位置なら50~60℃で済んでいた温度ですが、グラフィックボードに近い位置だとグラボ本体の激しい発熱に炙られて、コネクタ先端で約80℃(Δ52℃)まで上昇します。

反対側から見ると、もっとも熱いエリアで約87℃(Δ59℃)まで上昇します。

幸い、Corsair電源に付属する12V-2×6ケーブルの許容温度は105℃なので、90℃前後ならそれほど心配ないはずです。

12V-2x6ケーブルの耐熱温度

Corsair RM1000x ATX 3.1は競合する他社の電源ユニットと同様に、「105℃耐熱」仕様の12V-2×6ケーブルを採用。RTX 5090(TGP:600 W)を運用しても「コネクタの溶融」に到達する可能性が非常に低いです。

やかもち
ケーブルの発熱よりも、グラボ本体が放出する熱気が原因で温度がけっこう上がります。

負荷ごとの電源ユニットの騒音値

電源ユニットから約50 cmほど離れた位置に「デジタル騒音計」を設置して、負荷ごとに1秒ずつ騒音値(デシベル値)を測定します。

消費電力(DC側)騒音値
0 W31.1 dB
100 W31.1 dB
200 W31.1 dB
300 W31.1 dB
400 W31.5 dB
500 W32.1 dB
600 W32.2 dB
700 W32.9 dB
800 W34.1 dB
900 W36.6 dB
1000 W40.7 dB

デジタル騒音計による測定値は以上のとおりです。

なお、測定値(dB)だけだとかなり誤解を生む可能性が高いから、負荷ごとに聴いてみた主観的なコメントを書いておきます。

消費電力
(DC側)
冷却ファンコメント
100 W停止完全に無音
200 W
300 W至近距離でわずかな電子音(ブロロロロ)
400 W耳をすませば、かすかな電子音(ブオオオーン…)
500 Wわずかに回転
(400~500 rpm)
600 W
700 Wやや回転
(600~800 rpm)
周期的に大小が変化するファンの動作音と、かすかな電子音(ブオオオーン…)
800 Wサッーとファンの動作音が聞こえ、50 cmの距離でも電子音(ブオオオーン…)を聴き取れます
900 Wしっかり回転
(900~1000 rpm)
明らかにサッーとファンの動作音が聞こえるものの、電子音(ブオオオーン…)はファンに紛れ始めた印象
1000 Wフル回転
(1200~1300 rpm)
ウォーーーンとファンの動作音が聞こえ、電子音は風切り音に紛れてほぼ聞こえない

そこそこ良好な静音性です。

負荷100 ~ 400Wまで、ほとんど無音と言ってもいい状態です。電源本体に耳を至近距離まで寄せると、ほんのわずかに電子音が聴こえますが、50 cmの距離なら何も聴こえません

ファンがゆっくりと回り始める負荷500 ~ 600 Wもとても静かで、CPUクーラーやグラフィックボードの動作音がずっと大きいです。

負荷700 Wでも十分に静かといえるレベルですが、ファンの動作音が周期的に大小に変化します。温度が上がったらファンを回し、温度が下がったらファンの回転数を下げる制御が入っています。

負荷800 Wから電源本体の動作音が目立ち始め、電子音も聞こえるレベルです。

負荷900 ~ 1000 Wは静音からほど遠い、明らかにファンの風切音がよく聞こえる動作音に達します。ただし、負荷1000 Wの状態だと、むしろCPUやグラボがはるかにうるさいかもしれません。

個人的に、Corsair RM1000x ATX 3.1は負荷600 Wまで極めて静音な電源ユニットで、800 W以上から静音と言えるかちょっと怪しい挙動です。

やかもち
キュルキュルと目障りな高周波ノイズ(コイル鳴き)はまったくなかったです。ファンの風切音とわずかな電子稼働音で構成されています。

USBポートの5V電圧をチェック

USB 5Vの電圧変動グラフ

(7.5 W負荷で電圧変動をチェック)

USBポートに約7.5 W(5.0 V x 1.5 A)の負荷をブラ下げて、USBテスター経由でUSB 5V電圧の変動を比較したグラフです。

USB 5V最大変動ブレ幅5Vの偏差
Corsair RM1000x
ATX 3.1
273.0 mV0.16 mV3.81%
ASRock TC-1300T245.9 mV0.10 mV4.02%
KRPW-GA850W/90+312.9 mV0.46 mV5.81%
ASRock SL-850GW
(5V BOOST)
313.4 mV0.33 mV2.49%
Corsair HX850i272.3 mV0.68 mV5.04%

Corsair RM1000x ATX 3.1は、USB +5V電圧を許容範囲内(±5%)にギリギリ収まらなかったです。

電圧降下幅が大きすぎると、USB機器が必要とする電力を十分に満たせない※など、実用上のデメリットが生じる可能性を考えられます。

  • Corsair RM1000x ATX 3.1:平均7.11 W
  • ASRock TC-1300T:平均7.13 W
  • ASRock SL-850GW(5V BOOST):平均7.23 W
  • KRPW-GA850W/90+:平均6.97 W
  • Corsair HX850i 2021:平均7.05 W

※7.5 Wも消費するUSB機材には、おそらくACアダプターが付属するはずだから、実用上あり得るシチューエーションかどうか不明。

【参考程度】電源ユニットの変換効率を測定

Corsair RM1000x ATX 3.1は、厳格なCybenetics ETA認証を取っているから、わざわざ変換効率を調べる必要はありません。

しかし、自分の環境でも本当に変換効率が高いかどうか気になったので、参考程度にちょっと調べてみます。

  • ベンチマーク機材の消費電力(DC側):Cybenetics PMDで測定
  • コンセント側の消費電力(AC側):ラトックシステムで測定

DC側とAC側それぞれの消費電力を個別に測定して割り算すると、いわゆる「変換効率」をざっくり計算できます。

注意点:DC側とAC側で使っている機材の測定精度が100倍も違います。しかもCPU + GPUベンチマークを使ったブレ幅の大きい負荷だから、あくまでも参考程度に。

(DC消費電力 / AC消費電力 = 変換効率)

負荷率10%未満の変換効率がそれほど高くなく、負荷率20 ~ 90%まで安定して90%超の変換効率です。

フル負荷で約89%だと、差分の11%が熱(ロス)として放出されます。システムに1000 Wを供給するために、110 Wもの熱が出てしまいます。

140 mm大口径ファンをしっかり回さないとフル負荷を冷やしきれないわけです。

まとめ:ほとんどのゲーミングPCに耐えられる電源

「Corsair RM1000x ATX 3.1」の微妙なとこ

  • わずかに大きい(奥行き160 mm)
  • 負荷800 W以上で動作音が目立つ
  • 「-12V」レール非対応

「Corsair RM1000x ATX 3.1」の良いところ

  • 日本メーカー「105℃」個体コンデンサ
  • 容量1000 Wを110%使えます
  • 許容範囲内に収まる安定した電圧
  • 負荷600 Wまで静かな動作音
  • セミファンレス対応(切り替え可能)
  • ファン回転数を任意に設定可能
  • 変換効率がそこそこ高い
  • まったく問題ない表面温度
  • 柔らかくて扱いやすい各種ケーブル
  • 充実したアクセサリー(付属品)
  • 12V-2×6ケーブル付属(最大600 W対応)
  • メーカー10年保証
  • コストパフォーマンスが高い

RTX 5090すら含む、ほとんどのハイエンドスペックに耐えられる優秀な電源ユニットです。

容量1000 Wフルに使い切っても安定した動作で、約1100 Wもの強烈なスパイクが発生しても強制シャットダウンが発生しません(Intel ATX規格の電源なら当たり前ですが・・・)

動作音は負荷600 Wくらいまで一貫して「静か」と評価して良さそうです。140 mm大口径ファンがゆるゆると回っているだけで、たいていの場合はCPUクーラーやグラフィックボードの動作音が上回ります。

負荷800 W以上からファンの風切音がしっかり目立ってくるので、静音運用を目的にしている人は最大600 W程度のPCスペックをおすすめします。

ちなみに最近トレンドなハイエンドPCスペックにとって、600 Wの静音領域で十分です。実測値ベースで、以下に参考例をまとめます。

ハイエンド構成の一例※
CPUグラボピーク電力
(ゲーム時)
Ryzen 7 9800X3DRTX 5080470 W
RTX 5070 Ti440 W
RTX 4090590 W
Core i7 14700KRTX 5080510 W
RTX 5070 Ti480 W
RTX 4090630 W

※ マザーボード / DDR5メモリ(2枚) / NVMe SSD(1枚)を合計50 Wで計算に加えています。

価格的に、実質的な最上位になるRTX 5080と組み合わせる場合、ゲーム時のピーク電力はせいぜい500 W前後です。

Corsair RM1000x ATX 3.1は、ほぼ最上位に近いハイエンド構成ですら静かに運用できる電源です。

やかもち
2万円台で買える電源ユニットで特におすすめ。迷ったらとりあえずRM1000x(ATX 3.1版)を検討してみてください。

以上「Corsair RM1000x ATX v3.1レビュー:RTX 5090すら運用できる定番「1000 W」電源ユニット」でした。

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CORSAIR / 容量:1000 W / 効率:80 PLUS Gold / 静音:Cybenetics A(20~25 dB) / 製造元:CWT / 保証:10年

2025年4月時点、定価が約2.5万円です。

Cybenetics認証を取得した容量1000 Wの電源ユニットとして、手頃な価格設定です。

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2 件のコメント

  • この電源、いいですよね
    lancool207とかmicroATXケースは150mm以下推奨が多いので後10mm短ければと思わずにはいられない
    RM1000eは140mmでいいんだけど、結構グレードが落ちるのがなあ

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