グラフィックボードに付いている標準小型ファンは動作音がうるさいです。
特に、消費電力が高いハイエンドモデルになるほど、高負荷時の動作音が目立ちます。その中でも「セミファンレス」仕様のグラボはファンレスの切り替わりがシームレスでなく、急に音が鳴り始めるタイプが多いです。
今回の記事でファンを交換する「Gainward RTX 5090」もセミファンレス挙動が下手なタイプでした。ファンの回り始めが「ガラガラ・・・(うがい声)」と絶妙に癇に障ってくるので、Noctua製ケースファンに換装して静音化を図ります。
(公開:2026/3/4 | 更新:2026/3/4)
グラボの標準ファン交換「デシュラウドMOD」
グラフィックボードの標準ファンを交換するには、ごく一部の例外(SapphireやXFX等)を除き、基本的にグラボ本体の分解を伴います。
グラボを分解する ➡ グラボの外装(シュラウド)を剥がす改造行為 ➡ デシュラウドMOD(Deshroud MOD)と呼ばれています。
当然ながら、グラボに付与されたメーカー保証も無効です。メーカー保証満了済みのグラボで挑戦しましょう。

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グラボのバックプレートを取り外す

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精密プラスドライバー(PH0規格)を使って、バックプレートを固定しているネジ(11本)を慎重に取り外します。
ネジ山が小さくて簡単に潰れるので、ネジを押し込む力90%:ネジを回す力10%のイメージでドライバーを回すのがコツ。回す方ばかりに力を入れるとあっさりネジを舐めます。

パカッと剥がれました。
モデルによってバックプレートと基板の隙間にサーマルパッドが挟まれている場合があるので、ゆっくり慎重に剥がします。今回のグラボはサーマルパッドが無かったです。

次にI/Oパネル(映像端子がある部分)を同じ要領で外します。
プリント基板とファンフレームを取り外す

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基板を固定している4本のネジを外した後、ゆっくり・・・丁寧に基板をヒートシンクから剥がします。
基板がうまく外れたら、基板に接続されているファンコネクタも引き抜きます。

基板まで剥がしてようやくファンフレームを固定しているネジにアクセス可能に。
やや大きめプラスドライバー(PH1規格)を使って、フレームを固定する四隅のネジ(4本)を外すだけで取れます。
グラボの標準ファンをすべて取り外す

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ヒートシンクに固定されてる3個の標準ファンを、精密プラスドライバー(PH0規格)で外します。全12本ものネジです。

標準ファンから伸びているファンコネクタは全部で3個あり、どれも「PH 2.0」コネクタです。
中華通販サイトならPWM 4ピンからPH 2.0に変換するコネクタが売っていますが、今回はマザーボードの「CHA_FAN」コネクタに挿し込み、フリーソフト「FanControl」経由で制御する方法を採用します。


「Gainward RTX 5090」のヒートシンク全景です。
88 mm径ファンを3個取り付けられます。一見すると、市販のケースファンを付けられそうも無い見た目ですが・・・

全長296.5 mm、横幅122.7 mm、厚み44.2 mm(最大)です。
ヒートシンクの横幅は120 mm超で、フレーム部分とヒートシンク本体の間にわずかな隙間も設けられています。つまり、市販の120 mm径ケースファンを結束バンドで固定可能です。

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受熱ベースプレートから熱を運ぶヒートパイプは直径8.0 mmと極太仕様でした。ミドルクラスのグラボなら6.0 mmが平均的なので、8.0 mmはかなり太いです。

全部で8本のヒートパイプが通っています。当時わずか32万円で買った、最廉価モデル(Gainward RTX 5090)にも関わらず、TGP:575 Wを十分に冷やせる設計がきちんと盛り込まれています。

受熱ベースプレートは「ベイパーチャンバー」機構を採用します。曲線的なフォルムと、つなぎ目がまったく見当たらない独特の造形が特徴的。
GPUダイ本体だけでなく、VRAMやVRM(MOSFET)に接触するサーマルパッドも大量に貼ってあり、発熱する部品から効率よく熱を回収する設計です。

Gainward RTX 5090は当時32万円の最安価モデルですが、採用されているVRM設計は40~50万円クラスの「Palit GameRock Edition」とほとんど同じです。
- PWMコントローラ:MPS MP29816(最大16フェーズ)
- MOSFET(GPU):MPS MP87993(定格50 A)
- MOSFET(VRAM):MPS MP87993(定格50 A)
- VRAM:Samsung K4VAF325ZC-SC28(28 Gbps)
最大16フェーズを制御できる「MPS MP29816」を2個実装して、GPU向け16フェーズ(合計800 A)と、VRAM向け6フェーズ(合計300 A)をコントロールします。
そのほか、ARGBライティング制御に「Holtek HT32F52241(32 bit ARM Cortex M0+ MCU)」、電圧モニタリングICに「uPI SEMI uS5650Q」が使われています。
個体コンデンサはすべて台湾APAQ製(定格105℃ @5000時間)モデルが使われ、意外にも超高級モデル「ASUS ROG ASTRAL」と同じコンデンサです。

Noctua製ケースファンに換装します

性能だけなら「Arctic P12 Pro」がコスパ最強ですが、今回はヒトの耳で聴いても静音だと感じやすい「Noctua NF-A12x25 G2 PWM」を採用します。

美しい外観、Noctua独自の造形美も、他社のコスパ特化型ケースファンにない魅力です。
それでも1個5000円超の価格設定はあまりにも盛りすぎだと(個人的に)感じていますが、RTX 5090の価格と比較すれば誤差(+1~2%)です。
RTX 5090を搭載したシステム全体の総予算から見れば、もっと誤差にしか思えず、コストを削減するモチベーションに繋がりません。

Palit純正ファン(88 mm径)と、Noctua NF-A12x25 G2 PWM(120 mm径)を並べました。
ファンの面積が約6080 mm² ➡ 約11310 mm²へ、一気に1.86倍も増加します。回転数(静音性)あたりの送風量(CFM)、静圧(mmAq)、ともに120 mm径ファンがはるかに有利です。
同じ冷却性能を稼ぐのに、もっと静かにしたり。同じ騒音でもっとキンキンに冷やしてGPUクロックを安定化させたり、グラボ本体の寿命を長持ちさせたり。
冷却ファンが巨大化すると自分の好みに合わせた運用が柔軟にできます。

付属品ボックスです。
- 防振ゴム製ガスケット
- ゴム製ネジ(4本)
- 延長アダプター(30 cm)
- Y字型分岐コネクター
- LNAアダプター(抵抗)
1個5000円台もするだけあり、付属品が豪華です。

標準ゴムパッドを取り外して、防振ゴム製ガスケットに交換します。

Noctua NF-A12x25 G2 PWMをヒートシンクに配置します。ヒートシンクにもっとも効率よく風が当たるポジションを選んで、ヒートシンクのフレーム部分に結束バンドで固定します。

残りのNoctua NF-A12x25 G2 PWMも、同じ手順でヒートシンクに固定して交換完了です。
グリスを換装して基板を元に戻します

プリント基板を元の位置に戻します。
せっかくなので、GPUグリスを塗り直しました。「Gainward RTX 5090」の標準グリスは残念ながらPTM7950ですらない、何の変哲もない普通のグリスが使われています。
今回は「SMZ-01R(親和産業)」に交換します。優れた冷却性能(熱伝導性)と長期的なポンプアウト耐性を兼ね備え、価格もそれほど高くない、自作PCで定番のグリスです。


プリント基板をネジ穴に合わせてセットして、バックプレートを固定します。
対角線上のネジを順番に、交互に締めて、まんべんなく圧力がかかるように戻します。圧力が不均一になると、冷却効率が下がって逆に温度が上がるなど。逆効果の原因になるかもしれません。
オープンエアー環境で動作検証(試運転)

最廉価モデルGainwardが、「Noctua RTX 5090 Deshroud MOD」に生まれ変わりました。

分解後に余った部品は、パッケージに入れて収納します。

本番環境に戻す前に、いったんオープンエアー環境で動作チェック(試運転)を行います。
期待した効果が得られているかどうか、異常な発熱ポイントが発生していないか、問題点を洗い出す作業です。

- Rem0o / FanControl.Releases (github)
フリーソフト「FanControl」を導入後、ケースファンを差し込んだコネクタに任意のファンカーブを設定します。
- GPU温度が40℃でPWM 10%
- GPU温度が85℃でPWM 90%
- 回転数の遷移は4秒ずつ
上記の設定でRTX 5090(TGP:575 W)を冷やせるかチェックします。

周辺気温が約25℃前後で、GPUコア温度は平均79℃、VRAM温度が平均82℃でした。TjMax(< 90℃)まで十分な距離を取れています。

ファン回転数は平均1370 rpmです。
フル負荷時の動作音が体感できるほど静かに変化し、ファン直径の大型化による影響なのか、耳障りな高周波ノイズがすごく小さいです。
約30分の連続負荷でしっかり暖めたあと、サーモグラフィーカメラで表面温度を確認します。
ファンが一部被っていない部分があるから心配でしたが、実際の温度を見る限り杞憂だった様子。ファンの大口径化で12V-2×6コネクタに風が当たりやすくなり、約600 Wの負荷でも60℃台の表面温度です。
放射温度計で調べると55℃前後の発熱に抑えられ、コネクタ側の定格温度(105℃)にほど遠いです。
なお、ボード内部の個体コンデンサから80℃超の温度が検出されていますが、K熱電対センサーや放射温度計だと45℃前後でした。サーモグラフィーは表面の色に影響を受けすぎて、ときに的はずれな数値を示します。

本番環境(PCケース)に入れて動作検証

無事に完成した「Noctua RTX 5090 Deshroud MOD」を、本番環境(PCケース)に組み込みます。

重量の重たい分岐コネクタが経年で少しずつ抜けるリスクがあります。細長いタコ糸で分岐コネクタを釣り上げ、コネクタが勝手に緩まないように対処しています。


分岐コネクタは全4本あり、そのうち3本だけ接続して「TGP:450 W」で動かします。
ゲーム用途の場合、RTX 5090よりも先にCPUが追いつかないです。一応、Ryzen 9 9950X3Dを使っていますが、それでもフルパワー時のRTX 5090に追いつけないゲームが多数派です。
生成AI目的でも、450 W制限で十分に速く不満はありません。NVFP4モデル、nunchaku(FP4)モデル、SageAttention V3など。RTX50(Blackwell)シリーズ限定の飛び道具もあるおかげで、RTX 4090を凌駕します。

換装したNoctuaファンを、マザーボード上の「CHA_FAN」に挿し込みます。
ついでにBIOS設定からファンの制御方法を「Auto Detect」から「PWM Mode」に切り替えておきます。FanControl経由で動かしたとき、より静かに制御できます。

Noctua化したRTX 5090の厚みは約77~78 mmで、およそ3.5~3.8スロット占有です。
一般的なRTX 5090と比較して7~8 mm(0.35~0.40スロット分)ほど厚みが増えました。どちらにせよ、4スロット目が機能しないため、実用上のデメリットはほとんど同じです。


周辺気温が約25℃前後で、GPUコア温度は平均74℃、VRAM温度が平均78℃でした。TjMax(< 90℃)まで十分すぎる安全距離を取れています。

ファン回転数は平均1140 rpmです。
フル負荷(450 W)で動いているのに、あまりに静かすぎて衝撃的です。標準ファンは450 W制限でもゲーミングノートを彷彿とさせる、勢いの良い送風音を撒き散らしていました。
ヘッドホンを付けても送風音が貫通してくるほどうるさい音でした。Noctuaに換装したら「ファンが動いているのが分かる」程度の動作音に抑えられ、ヘッドホンを付けてゲームするとまったく気にならないレベルです。

PWM 10%刻みの動作音を比較したグラフです。
標準ファン(88 mm径)は静かな領域(< 32.5 dBA)をすぐ逸脱するのに対し、Noctua(120 mm径)はPWM 45%まで静かな領域にとどまります。
450 W負荷時(PWM 60~65%)でも、やや静かな領域(< 35.0 dBA)を踏み越えず耐えています。
ちなみにCybenetics Labsのデータによると、Noctua NF-A12x25 G2 PWMはPWM 70%まで20 dBA未満と記されています。「Cybenetics LAMBDA A+
」認証に相当する静音性です。

まとめ:グラフィックボードの標準ファンは性能が悪い

「デシュラウドMOD」の微妙なとこ
- メーカー保証外の改造行為
- 市販のファンを固定できるか不明
- 予期せぬ不具合の原因になるリスク
- 占有スロット数の増加(ファンの厚み次第)
- 厳密な熱設計には3Dプリンターが欲しい
「デシュラウドMOD」の良いところ
- 自分の好きなファンを搭載できます
- 標準ファンより静かによく冷える
- 12V-2×6コネクタも同時に冷やせます
- vBIOSに依存しないファンカーブ制御
- コストパフォーマンスが高い
デシュラウドMODはうまく行けば、ファンの動作音(騒音)を抑えつつ、GPU本体の冷却性能を向上できます。
一方でリスクだらけの危険行為です。ZOTAC製グラボを除き、ほとんどの場合はメーカー保証が消滅しますし、分解作業で誤ってグラボを損壊する危険性が付いてきます。
プリント基板をもとに戻すときもリスクが多いです。圧着がうまく行かずGPUダイが冷えなかったり、VRAMやMOSFETとサーマルパッドの接触が変わって異常発熱の原因になったり。
とにかくリスクだらけです。メーカー保証満了後の「お遊び」だと思って、興味のある人だけが試してみてください。

結局のところ、冷却性能はヒートシンクの容量とヒートパイプの性能に大きく依存します。
だから冷却ファンを換装して得られる最大のメリットは「静音化」です。冷却性能の最大値はほとんど伸びない場合が多いですが、静音性の向上は可能です。
【参考】デシュラウドMODで使った道具
【参考】3Dプリンターで熱設計を最適化

(https://www.youtube.com/watch?v=w-gZycNtFgM より)
海外ユーザーは3Dプリンターで専用設計のフレームを作成して、熱設計をさらに最適化しています。ケースファンの側面を塞いで空気漏れを防ぎ、静圧の向上を狙います。
静圧が向上するとPCケース内部に強いエアフローが発生し、PCパーツ全体の冷却性能が改善される可能性も期待できます。
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Cooler MasterのRTX 5080感あるな、あれは公式で12cm x3しかも自分交換想定の設計
5090出ない理由はベースはastralだから高すぎるかな(BTO向けとして)
性能は確かに上がるのかもしれないが見た目が少々雑かな。
昔はサイズとかから交換用のグラボ用ファン付きヒートシンクとか出てたなぁ