電源ユニットの認証プログラムと言えば「80 PLUS」が非常に有名ですが、海外(特に米国)では80 PLUSは甘すぎる認証らしい。そこで、キプロスのサイバネティクス研究所が新たに「ETA」と「LAMBDA」という認証を新設した。
その中の「LAMBDA」について、ちょっと紹介してみたい。
静音認証「LAMBDA」とは
キプロスに所在地があるサイバネティクス研究所(Cybenetics Lab)が、より公正で信用できる電源ユニットの認証プログラムのひとつとして開発した。
極めて高度で、厳しいテスト手順を踏んで電源ユニットの「静音性」を検証し、基準ごとにランク付けを行っている。一応、具体的にどのようにして電源ユニットの静音性をテストしているのかを解説しておく。
LAMBDAは「ラムダ」と発音し、ギリシャ文字の「Λ」を指している。なぜギリシャ文字の「Λ」を静音認証のプログラム名に使ったのかはイマイチ分からないが、計測されるノイズが「波長」を描くからかもしれない。
無響室で負荷ごとに騒音値を計測
完全な無響室ではなく、周辺騒音レベルが「6 dBA」未満に抑えられた「半無響室」でテストは実行される。そして、電源ユニットに搭載されているファンは、負荷率に応じて回転数が制御されていることが多い。
Cybenetics Labの設備「Testing Equipment」一覧より | |
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周辺騒音6 dBA未満の「半無響室」 | オシロスコープや交流電源装置など |
だからサイバネティクスの検証では、いわゆる「交流電源装置」と呼ばれる機器を使って、電源ユニットに対して段階的に負荷を与える。10%負荷率ずつ掛けて、段階ごとの騒音レベルを計測するということです。
仮に検証対象の電源ユニットが容量1600 Wなら、交流電源装置から160 Wずつ分割して負荷をかけます。検証用PCと違って、指定した負荷を自由自在に掛けられるのがスゴイ。テストの一貫性にもプラスの影響だと思います。
サイバネティクスが公開している資料をグラフ化すると、何を行っているのかが分かりやすい。EVGA SuperNOVA(SuperflowerのOEM品)の場合は、負荷率40%まではファンが回らないので「6 dBA」未満に。
そして、50%から段階的にファンが回り始め、負荷率90%以降ではファンが約2000 rpmで回転して騒音レベルは50 dBAに達してしまった。これで全負荷を通した平均値は「約34 dBA」。
34 dBAだと、30~35 dBAの範囲に入っているので、サイバネティクスがEVGA SuperNOVAに与えるLAMBDA認証は「S++」(平均より幾分マシな静音性、という評価)になります。
平均騒音レベルごとに「格付け」
ぼくは数学に全く詳しくないので、どうやって騒音レベルの「正しい平均値」を求めているのか、よく分からない。けれど、サイバネティクス社は10~100%負荷時の騒音レベルを平均化して、認証のランク付けを行っている。
7段階の「LAMBDA」認証
シール | LAMBDA格付け | 騒音レベル | どれくらいの音? |
---|---|---|---|
A++ | ~ 15 dBA | 無音 | |
A+ | 15 dBA ~ 20 dBA | ほぼ無音 | |
A | 20 dBA ~ 25 dBA | 深夜の環境音 | |
A- | 25 dBA ~ 30 dBA | ささやき声 | |
S++ | 30 dBA ~ 35 dBA | 図書館 | |
S+ | 35 dBA ~ 40 dBA | 昼間の環境音 | |
S | 40 dBA ~ 45 dBA | 静かな事務所 |
認証は7段階になっている。Aランクの方が低そうに見えるけれど、この「A」はギリシャ文字の「ラムダ」を意図しているのでAの方が高ランクとのこと。
「S」は単にスタンダード(標準的)の頭文字を取っている。「S+」「S」くらいだと、それなりに静かという感じで、「S++」以上の静音性は他のパーツがうるさくなるレベルですね。
20 dBAを割り込んで「A+」以上のランクに入ると、ほぼ無音の動作になる。ファンレス仕様の電源ユニットを使わずに「完全静音」を目指すなら、LAMBDA-A+を取得した電源を選べば間違いない。
課題:LAMBDAは自主的な認証プログラム
サイバネティクス社の行っている「LAMBDA」は極めて信頼性に足る認証プログラムだが、残念ながら「自主的」なプログラムに留まっている。
ある程度、品質に自信がある電源ユニットしか認証を取りに来ないため、電源ユニット市場の健全化に効果があるのかは悩ましい。ハイエンド電源が「ウリ文句」を得るために存在するような認証です。
そもそもサイバネティクスの認証試験を受けてしまうと、その電源ユニットのあらゆる強みや弱点がほぼ露呈してしまう。よっぽど品質が悪い場合は試験をパスできない可能性すらある。
まとめ:LAMBDAが貼ってあるなら静音性に期待
サイバネティクスの行うテストは「ガチ」なので、もし購入する予定の電源ユニットに「LAMBDA」のシールが貼ってあったら、素直に「この電源は静かなんだな。」と期待できる。
いくら電源ユニットのメーカーサイトが「静音ファンを採用」とか「低負荷時はファンを止めて静音性を向上」などと書いてあっても、50%負荷から突然うるさくなったりする電源ユニットは少なくない。
だが、LAMBDAのシールは本物であり、認証を通っている時点で信頼性も高い。静かで高品質な電源ユニットを求めているなら、LAMBDAを取っているかどうかで判断すると確実性が高いです。
LAMBDAを取得している電源ユニット
LAMBDA | 取得数 | 比率 |
---|---|---|
A++ | 27 | 10.2% |
A+ | 41 | 15.5% |
A | 51 | 19.3% |
A- | 51 | 19.3% |
S++ | 50 | 18.9% |
S+ | 33 | 12.5% |
S | 11 | 4.2% |
現時点で、サイバネティクスに試験された電源ユニットは全部で264個(実際には400個以上だが、データベースに登録されているのは264個だけ)。
「かなり静か」と思えるAクラス以上の認証を取っているのは、全体の実に64%を占めている。この偏り具合からも、テストを受けに来る電源は大抵ハイエンド品が多いということを示していますね。
メーカー | A++ | A+ | A | A- | S++ | S+ | S | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Corsair | 5 | 21 | 23 | 9 | 4 | 4 | 0 | 66 |
Seasonic | 7 | 4 | 2 | 7 | 6 | 5 | 4 | 35 |
EVGA | 1 | 0 | 1 | 7 | 9 | 12 | 1 | 31 |
SilverStone | 3 | 1 | 4 | 1 | 5 | 1 | 3 | 18 |
FSP | 0 | 0 | 6 | 4 | 1 | 0 | 0 | 11 |
Thermaltake | 0 | 0 | 0 | 3 | 2 | 4 | 0 | 9 |
Enermax | 0 | 0 | 3 | 0 | 2 | 1 | 0 | 6 |
Asus ROG | 0 | 5 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 |
Super Flower | 0 | 0 | 1 | 3 | 0 | 1 | 0 | 5 |
Antec | 0 | 0 | 0 | 2 | 2 | 0 | 0 | 4 |
取得数の多いメーカー(日本で知名度が低いメーカーは除外)を上位10社まとめると、こんな感じ。やはりコルセアが多い。コルセアはブランディングに抜かりが無いので、取れそうな電源なら大抵はテストに出している。
次に多いのが日本でも高品質と知られているシーソニック。その次にEVGA(ここはSuper FlowerのOEM品が多い)です。取得している電源をもっと知りたい人は、サイバネティクスの公式サイトでどうぞ。
以上「LAMBDAとは何か?:電源ユニットの「静音性」を証明する認証を紹介」でした。
更に電源ユニットを知る
「ROG THOR」は1200 W電源として初めて、「LAMBDA-A+」を取得した電源ユニット。製造はSeasonicで、さすがの品質ですが。日本では随分なボッタクリ価格で販売されている。
電源ユニットの基本知識については、こちらのガイド記事を。かなり分量を詰め込んでいるので、とりあえず読了すれば「平均以上」の知識が得られます。
日本人的な感覚だとAよりSの方が良さそうに見えます
ですよね~…、サイバネティクスとしては「これはAじゃなくてラムダΛだよ。」なんですが、分かりにくいw
ランバダって読んでた
いつも参考にさせてもらってます。
素晴らしい情報なので、このページを『【自作PC】電源ユニットの選び方を自作経験者がガチ解説する』に内部リンクは可能でしょうか?グーグルで『LAMBDAとは』で検索しても『AWS Lambdaとは』のページになるので。てかすでに内部リンクあるけど…?だったらすいません。
内部リンクがあれば、もし、やかもちさんのオススメ以外で個人的に気になる電源がある場合、『【自作PC】電源ユニットの選び方を自作経験者がガチ解説する』を読めば、自分で『1、OEM先を調べることができる。』『2、80PLUSレポートが本当に提出されているのかが分かる。その内容も確認できる。』『3、LAMBDA認証取っているか調べられる。』ので最強だと思います。よろしくお願いします。
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