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MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをレビュー:LED皆無の完全漆黒デザインが唯一の魅力かも。

MSI製「RTX 3080 VENTUS 3X OC」をレビューします。VENTUSシリーズはMSI製品では廉価グレードに位置しますが、価格は約10.5万円でやや強気です。最安値のZOTAC Trinityより9000円高い分だけのプレミアムはあるのか・・・検証します。

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スペックと仕様を解説:2%だけOC済み

MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCのスペック

MSI / ブーストクロック : 1740 MHz / ファン : トリプル内排気 / 厚み : 3スロット(57 mm) / TDP : 320 W(8+8 pin)
製品MSI RTX 3080
VENTUS 3X OC
ZOTAC RTX 3080
Trinity
RTX 3080
Founder’s Edition
シェーダー数CPUのコア数に相当870487048704
RTコア数レイトレ用の特化コア686868
ブーストクロックデフォルト設定1740 MHz (+2%)1710 MHz (+0%)1710 MHz
VRAMGDDR6X(Micron)10 GBGDDR6X(Micron)10 GBGDDR6X(Micron)10 GB
VRAMクロック19 Gbps19 Gbps19 Gbps
PCIeGen 4.0Gen 4.0Gen 4.0
TDP320 W320 W320 W
補助電源8 + 8 pin8 + 8 pin12-pin
寸法(cm)30.5 x 12 x 5.731.78 x 12.07 x 5.828.5 x 11.2 x 3.8
占有スロット332
US価格$ 749$ 719$ 699
参考価格104500 円96334 円109800 円

「MSI RTX 3080 VENTUS 3X OC(VD7358)」は、製品名にOCと付いているとおり、オーバークロックモデルです。

基本的なスペックはおおむね定格準拠で、ブーストクロックのみ30 MHz高い1740 MHz(+2%)に設定されています。最安値のZOTAC Trinityはブーストクロックも定格準拠です。

国内価格は104500円。RTX 3080搭載オリファンモデルとして、平均より少しだけ高い価格帯に位置します。決して安価と言えるほどの値段設定ではないので、最低でも価格相応のパフォーマンスを期待したいです。

やかもち
Amazonで発売日に購入して、なんと6週間も掛かって届きました。

ブーストクロックは1740 MHz、VRAMはMicron製GDDR6Xメモリを10 GB搭載。

外観とデザインをチェック

 

VENTUSシリーズは廉価モデルだと思っていただけに、付属品が意外と入っています。保証書のはがき、黒い封筒にはラッキーくんのパンフレットや説明書など、いろいろと封入されていました。

全長30.5 cmの大型グラフィックボードを支えるための「VGAサポートステイ」が付属。中央にうっすらとMSIのロゴが刻印されていて、シックな雰囲気が良い感じです。

では、本題の「MSI RTX 3080 VENTUS 3X OC」のボードデザインをチェックします。

 

新生VENTUSのデザインは、従来モデルの黒色とシルバーの2色から、全体的に漆黒の落ち着いたデザインに変更されています。

個人的に、今回のVENTUS 3Xのデザインはかなり好みです。従来のVENTUSは見るからに安っぽい感じがして買う意欲すら出なかったのですが、VENTUS 3Xの漆黒トリプルファンデザインなら買えます。

やかもち
旧ベンタスは映画プレデターを連想してしまって、グラボのデザインとしては苦手なんですよね・・・(※映画自体は好きです)

シンプルで余計な装飾がなく、LEDライティングも完全に省かれたデザインです。ファンはボード側にきちんと収まっているため、周辺の配線などと物理的に干渉するリスクも少ないです。

ボード全体のシュラウド(装甲部分)は、手で触った感じではプラスチック製。たとえばMSIロゴの部分を指で押すと、いとも簡単に曲がって変形します。

RTX 2080 Ti GAMING X TRIOと並べてみた。どちらもTDP : 300 W台の爆熱を冷却するボードですが、新型VENTUS 3Xの方が若干コンパクトなデザインです。

ボードの占有スロットは3スロットです。厚みは57 mm(実際の測定も57 mm前後)もあり、側面から観察すると分厚いヒートシンクがぎっしり詰まっています。

バックプレートは金属製ではなく、グラフェン素材を採用。MSIいわく、プラスチック製と比較して4倍の強度、20倍の放熱性を得られるメリットがあるとのこと・・・金属製と比較した場合は不明です。

グラフェンの製造コストを考慮すると、VENTUS 3Xのバックプレートは絶対に100%グラフェン素材ではありません。内部は普通にプラスチックを使っていて、目に見える外側だけグラフェン素材の可能性が高いです。

海外メディアのTechPowerUpによると、グラフェンバックプレートの表面を削ると、内側はごく普通のカーボン(プラスチック + グラファイト)素材だったと判明しています。

・・・グラフェン素材を使ったというアピールは単なるマーケティング的な言い分であって、実際にはコストカットの一貫です。

ただ、グラフェンの雰囲気を醸し出すために一役買っている、このマットでブラックな落ち着いたバックプレートデザインは文句なしにクールだと思います。

冷却ファンはMSI独自の「TORX FAN 3.0」を搭載。14枚の分散型ファンブレードで構成されるTORX FAN 3.0は、従来のTORX FAN 2.0より風圧を15%増加します。

ファンサイズは3つとも90 mm径(実測)です。

PCIeスロット最大75 W
補助電源(8ピン)最大150 W
補助電源(8ピン)最大150 W
合計最大375 W

補助電源コネクタはごく普通の「8 + 8ピン」仕様です。大抵の電源ユニットに8 + 8ピンの補助電源コネクタは付いていますが、RTX 3080は消費電力が軽く300 Wオーバーで、ケーブルに大電流が流れます。

Installation Guide – Seasonic」より画像を引用

電源ユニットメーカーのSeasonicによれば、補助電源コネクタが2つ以上あるグラフィックボードには、8ピンコネクタをそれぞれ別系統で接続して欲しいとのこと。

1つのケーブルに大電流が流れると・・・電源ユニット側の過電流保護(OCP)が発動してシステムが強制シャットダウンするなど、何かと不便な状況に陥る可能性が(多少は)あります。

「HDMI 2.1」は1つ、「DisplayPort 1.4a」を3つ、合計4つの映像出力端子があります(※同時出力は4画面まで)。HDMI 2.1は4K @120 Hzまたは、8K @60 Hzに対応可能です(参考:HDMI規格と対応してるリフレッシュレートを解説)。

「MSI RTX 3080 VENTUS 3X OC」の性能テスト

テスト環境(スペック)

テスト環境「ちもろぐ専用ベンチ機」
CPUCore i9 10900K
CPUクーラーCorsair H100i Pro RGB240 mm簡易水冷クーラー
マザーボードASUS ROGZ490 Maximus XII Apex
メモリDDR4-3200 16GB x2使用メモリ「G.Skill Trident Z C16」
グラフィックボードMSI RTX 3080
VENTUS 3X OC
SSDNVMe 500GB使用SSD「Samsung 970 EVO Plus
SATA 2TB使用SSD「Micron 1100」
電源ユニット1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」
OSWindows 10 Pro 64bit検証時のバージョンは「1909」
ドライバNVIDIA 457.09
ディスプレイ3840 x 2160@60 Hz使用モデル「BenQ EL2870U

「MSI RTX 3080 VENTUS 3X OC」をテストする、ちもろぐ専用ベンチ機の最新スペックです。

CPUはゲーミング最強クラスの「Core i9 10900K」です。マザーボードは、10900Kを定格で問題なくぶん回す「Z490 Maximus XII Apex」を使ってます。メモリは容量を32 GB、クロックはDDR4-3200です。

その他のパーツは適当に組み合わせています。テスト時のグラフィックドライバは、NVIDIA GeForce Driverが457.09にて検証します。

MSI / ブーストクロック : 1740 MHz / ファン : トリプル内排気 / 厚み : 3スロット(57 mm) / TDP : 320 W(8+8 pin)
Intel / コア : 10 / スレッド : 20 / ソケット : LGA 1200 / チップセット : Intel 400 Series / 付属クーラー : なし / 内蔵GPU : Intel UHD 630
G.Skill / 種類 : デスクトップ用 / 規格 : DDR4-3200 / CL : 16-18-18-38 / ランク : 2-Rank / 容量 : 16 GB / 枚数 : 2枚 / チップ : 不明 / 備考 : for AMDメモリ
ASUS / チップセット : Intel Z490 / フォーム : ATX / ソケット : LGA1200 / フェーズ数 : 16(70A DrMOS) / マルチGPU : SLI or CF / M.2 : 2スロット / LAN : 2.5 GbE / 無線 : Wi-Fi 6
Corsair / ソケット : LGA 115X・2011・Socket AM4 / ラジエーター : 240 mm / ファン : 120mm x2 / 備考:5年保証
MSI / ブーストクロック : 1755 MHz / ファン : トリプル内排気 / 厚み : 2スロット(55.6 mm) / TDP : 300 W / 備考 : 8 + 8 + 6 pinが必要
Samsung / NAND : Samsung製96層TLC / 容量 : 500 GB / 耐久性 : 300 TBW / 保証 : 5年

ゲーム向け定番ベンチマーク

MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー
MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー
MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー

3DMarkベンチマークの「FireStrike(DX11)」「TimeSpy(DX12)」「PortRoyale(レイトレ性能評価)」をテスト。

過去のハイエンドグラボは余裕で上回る性能です。同じRTX 3080同士の比較では、定格準拠のZOTAC Trinityを若干を超え、オーバークロックモデルのASUS TUF Gaming OCに一歩届かない性能です。

VENTUS 3Xも一応はオーバークロックモデルですが、価格的にチップの選別はそれほどされていないようで、定格モデルとの性能差は小さいです。

VRゲーム性能:VRMark

MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー
MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー
MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー

VRゲーム向けの性能を評価する「VRMark」のテスト結果です。一番軽いOrange Roomは頭打ち、負荷が重たいCyan RoomとBlue Roomで性能差が開きます。やはりVENTUSはTrinityとTUF OCの中間です。

平均フレームレートを計測【13個】

フルHD(1920 x 1080)、WQHD(2560 x 1440)、4K(3840 x 2160)の3パターンで実際のゲーム性能を検証します。合計13個のテスト結果は↓に見やすくまとめました。

MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー
MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー
MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー
MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー
MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー
MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー
MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー
MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー
MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー
MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー
MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー
MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー
MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー

フルHDは性能の伸び幅が大人しい傾向で、WQHDと4KはRTX 2080 Super比較で1.4~1.5倍の性能アップです。RTX 3080同士の比較だと、性能差はかなり分かりづらいので、平均にまとめます。

平均パフォーマンス

MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー
MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー

「MSI RTX 3080 VENTUS 3X OC」で計測した13個のテスト結果を、平均パフォーマンスとしてまとめたグラフです。相対グラフはRTX 3080 Trinityを基準に計算しています。

RTX 3080 VENTUS 3X OCの性能は、さすがオーバークロックモデルです。OC版らしく、きちんと定格準拠のRTX 3080 Trinityを上回る性能を見せています。

一方で、WQHD ~ 4Kゲーミング時の性能はRTX 3080 TUF Gaming OCに抜かされており、高負荷時のブーストクロックは効きがイマイチな様子です。

MSI / ブーストクロック : 1740 MHz / ファン : トリプル内排気 / 厚み : 3スロット(57 mm) / TDP : 320 W(8+8 pin)
やかもち
「性能」はおおむね優秀です。次は「温度」や「OC耐性」を見ていきましょう。
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熱と消費電力を実測テスト

ゲーミング時の実効GPUクロック

MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー
検証タイトルFF15Shadow of the Tomb RaiderMonster Hunter World
最大値1950 MHz1875 MHz1905 MHz
平均値1853 MHz1846 MHz1860 MHz
中央値1845 MHz1845 MHz1860 MHz
ブーストクロック1740 MHz

ゲーム中のGPUクロックは、中央値で1845 ~ 1860 MHzです。スペック上のブーストクロックは1740 MHzですが、自動オーバークロック機能「GPU Boost」の効果で+105 ~ 120 MHz高いクロックで動作します。

グラボ温度とファンの動作音(騒音)

MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー

グラフィックボードの温度(GPUコア温度)は、FF15ベンチマーク(4K)実行中で最大74℃です。MSIが作ったトリプルファンモデルにしては、イマイチ冷えが悪いような気がします。

グラボ最大温度ファン回転数 #1ファン回転数 #2
MSI RTX 3080
VENTUS 3X OC
74.0℃1913 rpm1742 rpm
RTX 3080 TUF Gaming OC
@Silent Mode
65.0℃1943 rpm1945 rpm
RTX 3080 TUF Gaming OC
@Performance Mode
71.0℃1513 rpm1513 rpm
ZOTAC RTX 3080 Trinity69.0℃1693 rpm1695 rpm

気のせいかもしれないので、過去テストしたRTX 3080のデータを表にまとめてみた。やはり勘違いではないですね。今は11月で、気温が有利にも関わらずVENTUS 3Xは思ったほど冷えていません。

NVIDIAの公式スペックだとRTX 3080の最大温度は93℃です。VENTUS 3Xの最大74℃はマージン的にはまったく問題ないとはいえ、最安値モデルのZOTAC Trinityに劣る冷却性能は・・・正直なところ納得行かないです。

MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー

グラフィックボードから50 cmの距離で、デジタル騒音ロガーを使って動作音(騒音値)を1秒ずつ測定です。ファン回転数は1800 rpmに達し、騒音値は43 db前後でした。

オープンケース環境だと43 dBは・・・あまり静かとは言えない動作音です。PCケースに収納すると若干ファンの音は緩和されますが、それでも「静音」と言えるかは個人差がかなり大きいでしょう。

過去のデータと比較。他のグラボは9~10月初旬に測定しており、11月に測定されたVENTUS 3Xの方が有利なはず。それでも、動作音(中央値)はZOTAC Trinityとほぼ同等で、VENTUS 3Xは価格に見合った性能を提供しません。

やかもち
104500円払って6週間も待たせた割※には、なんともイマイチな性能特性。

※待った時間と性能はまったく関係ありません。

消費電力を実測してテスト

MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー

FF15ベンチマーク(高品質)を実行中に、電源ユニットの消費電力ロガー機能(1秒ずつ)を使って、グラフィックボード単体の消費電力を測定した結果です。

  • フルHD:312.0 W
  • WQHD:314.12 W
  • 4K:312.0 W

オーバークロックモデルの割に、消費電力はかなり大人しいです。フルHD ~ 4Kすべての解像度でTDP : 320 W以内に収まる消費電力です。

MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCの給電コネクタは、8 pinの補助電源コネクタが2本で300 W、PCIeスロットから75 Wで合計375 Wまで対応できます。残り50 ~ 60 Wほど余ってます。

常時2.0 GHzなどハードなオーバークロックには不足する可能性が高いですが、ブーストクロックを50 ~ 100 MHz程度プラスする程度のライトなオーバークロックなら、十分に行ける可能性は高いです。

1時間のストレステストを試す

3DMark TimeSpy StressTest(GPU使用率は常時100%近い状態)を使って、「MSI RTX 3080 VENTUS 3X OC」に1時間ほどストレスを掛け続けてみます。

MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー

動作の安定性は大丈夫です。1時間ずっとGPU使用率が100%のまま負荷をかけ続けても、温度は最大75℃に抑えられ、一時期話題になったクラッシュ問題も一切確認されませんでした。

なお、TimeSpy Stress Testの安定性評価は99.4%で問題なし(※3DMarkによると97%以上で合格)。

MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー

GPUクロックも安定した動作です。1時間のグラフだとデータが多すぎて見づらいので、20分間に拡大したグラフをチェック。

MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー

20分間のGPUクロックは最大1965 MHz、最低1740 MHz、中央値は1845 MHzです。

まとめると、「MSI RTX 3080 VENTUS 3X OC」の冷却性能は、104500円の価格を考えると「良い。」とは言いづらいです。自腹レビューなので気持ち甘めに評価したいのですが、出てきたデータを見る限りイマイチと言わざるを得ません。

VENTUS 3Xで静音性を求めたい人は、ファンプロファイルから回転数を抑えると同時に、GPUクロックと電力制限も使って発熱を抑える必要があります。

サーモグラフィカメラで表面温度を撮影

ストレステストを開始して50分あたりで、サーモグラフィカメラを使って「MSI RTX 3080 VENTUS 3X OC」の表面温度を撮影しておきました。

グラフェン素材採用で放熱性が良いとアピールするバックプレートですが、GPUチップ周辺の表面温度は75~78℃に達します。

金属バックプレート採用のZOTAC Trinityはチップ周辺ですら70℃前後に抑えていたので、放熱性そのものは金属製の方が有利です。グラフェン素材(というか実質カーボン)のバックプレートは、プラスチックよりはマシ程度なのかも。

ファン側から撮影したヒートシンクは33 ~ 45℃前後です。

側面から基板本体の温度を見てみると、70℃前後で推移、もっとも熱い部分で76℃を超えています。

オーバークロックを検証

手動オーバークロックでOCモデルに下剋上

MSI Afterburner(4.6.3 Beta 2)で、「MSI RTX 3080 VENTUS 3X OC」のオーバークロックを検証します。

前回のZOTAC Trinityレビューと同様、約4%ブーストクロックが追加されているOCモデル「RTX 3080 TUF Gaming OC」に対して、性能で下剋上を挑みたいと思います。

MSI Afterburnerからオーバークロックを設定します。

手動オーバークロックCore Voltage:+10%
Power Limit:100%
Temp Limit:88℃
Core Clock:+75 MHz(1815 MHz)
Memory Clock:+750 MHz(20.5 Gbps)
Fan Speed:71%固定(1980 rpm)

内容はシンプルです。コア電圧を10%追加して、電力制限を引き上げ・・・られないグラボです。ZOTAC Trinityですら電力制限を108%まで引き上げられたのに、MSI VENTUS 3X OCは100%が上限のようです。

残りの設定は、GPUコアクロックを+75 MHz(1815 MHz)、メモリクロックを+750 MHz(= 20.5 Gbps)に設定しました。

あとは設定された範囲内で、GPU Boostが自動的にオーバークロックをかけてくれます(※1815 MHzに設定したからと言って、実際に1815 MHzで動作するわけではない)

オーバークロックと性能

MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー
MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー

定番ベンチマークの3DMarkとVRMarkでは、オーバークロックで3.3~5.7%もの性能アップが可能です。ベンチマークによっては、ASUS TUF Gaming OC以上の性能です。

MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー
MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー

Shadow of the Tomb Raider、FF15、Assassin’s Creed Odysseyの3タイトルを4K解像度でベンチマーク。

オーバークロックの伸び幅は3.9~4.8%です。1740 MHz → 1815 MHzは約4.3%のクロックアップで、おおむね設定したクロックに応じた性能を得られます。

やかもち
なお、オーバークロックは国内代理店の保証が切れるため、自己責任でお願いします。

GPUクロック、温度、消費電力

FF15ベンチマーク(高品質)を4K解像度でテスト中に、HWiNFOを使って「GPUクロック」「GPU温度」「消費電力」の変化を記録。GPUコアクロックから見ていきます。

MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー

GPUクロック(中央値)はオーバークロック時で1905 MHz、出荷設定だと1845 MHzでした。

電力制限100%のハンデがある割には、きちんとクロックが伸びています。やはり、OC設定時にファンプロファイルを71%固定(1980 rpm)にしたのが効果的です。

NVIDIAの自動オーバークロック機能「GPU Boost」は基本的に冷やせば冷やすほど、クロックがどんどん上がっていくシステムです。

MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー

同じグラフィックボードの比較ですので、実測ではなくソフト読みで比較します。

実際の消費電力は、出荷設定と手動オーバークロック、どちらでもほとんど変わりません。電力制限100%の壁がある限り、定格クロック以上の消費電力は出せないです。

MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをベンチマーク & レビュー

ファンプロファイルを71%固定にした分だけ、GPU温度は71℃ → 66℃に下がっています。

まとめ:漆黒のデザインに惚れたならアリ

「RTX 3080 VENTUS 3X OC」のデメリットと弱点

  • 全長30.5 cm(PCケースに注意)
  • ファン回転数の割には冷えがイマイチ
  • GPUチップの選別なし
  • 標準のファン設定は「静音」ではない
  • グラフェンバックプレートは誇大広告
  • LEDライティング皆無
  • 104500円は高い
  • 国内保証は1年

「RTX 3080 VENTUS 3X OC」のメリットと強み

  • 標準で+2%のオーバークロック
  • オーバークロックの余地あり
  • VGAサポートステイが付属
  • 完全に漆黒なデザイン
  • カーボン製のバックプレート
  • 珍しくLEDライティングが無い

RTX 3080 VENTUS 3X OCは決してそれほど悪いグラフィックボードでは無いですが、価格設定のミスが原因で、同価格帯どころか最安値モデルにすら劣るパフォーマンスが問題です。

逆の言い方をすると、ライバルが強すぎます。ほぼ最安値のZOTAC Trinityは明らかにお値段以上のパフォーマンスを提供しますし、プラス5000円で買えるTUF Gaming OCはベストオブRTX 3080の第一候補です。

性能的に104500円の値付けは間違っています。少なくとも10万円を割ってくれないと、積極的におすすめできるオリファンモデルではありません。

ただし、VENTUS 3X OCは最近のトレンドに反してLEDライティングを一切装備しない、完全に漆黒デザインのグラフィックボードです。グラフェンらしさを演出する、バックプレートのマットブラック塗装も個人的には好きです。

「真っ黒なグラボが欲しい。」という人なら、VENTUS 3X OCは候補に入れる価値のあるグラボだと言えます。

以上「MSI RTX 3080 VENTUS 3X OCをレビュー:LED皆無の完全漆黒デザインが唯一の魅力かも。」でした。

MSI / ブーストクロック : 1740 MHz / ファン : トリプル内排気 / 厚み : 3スロット(57 mm) / TDP : 320 W(8+8 pin)
やかもち
マトモな最安値ZOTAC、コスパのASUS(TUF)、漆黒のMSIですね。

他のレビューも読んでみる

最安値モデルだけど驚くほど優秀な性能を持つ「ZOTAC RTX 3080 Trinity」のベンチマークレビューです。

静かでよく冷える、優等生なRTX 3080が「ASUS RTX 3080 TUF Gaming OC」です。約1万円ほど安い無印版も優秀です。

同じ価格帯の強力なライバルGPU「Radeon RX 6800 XT」のベンチマークレビューです。レイトレは不要・・・とにかくフレームレートを重視したいゲーマーと相性Goodなグラボです。

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13 件のコメント

  • 常駐制御ソフトでLED消そうとするとソフトのせいで数W消費電力増えるから
    光り物に興味が無い自分としては最初からLED無いのはありがたい
    物理的にLED用のコネクタ抜くにしてもやたら固くて鬱陶しいし
    今世代のMSIのダイレクトタッチとか実質プラバックプレートとか値段は論外だから買わないけど
    LED無しの質実剛健ボードは流行ってほしい

  • 3080でTRINITYとVENTUS両方買う羽目になったんですが自分の場合だとTRINITYの方が温度が90度近くて高くやファンのヘッドホンをしていても風切り音がが耐えられないくらいの轟音がなってましたね
    VENTUSになってからは温度も75前後
    ケースに入れてしまえばほぼ無音でした

    • そのTRINITYは明らかに初期不良ですね・・・交換できない状況ならご愁傷さまです。

  • MSIの強みはシンプルデザインとコスパ

    その片方を捨てちゃったら魅力半減なわけで・・・

  • >価格設定のミスが原因

    マジで国内代理店は邦貨換算値ピッタリくらいにしてくれ
    ただでさえ元のPCパーツが性能向上で値上がりしてるのに、今の値付けのまま続けてたら客がいなくなるぞ

  • ちもろぐさんは忖度なくバッサリと記事を書いてくださるのでとても信頼しています。
    現在ちもろぐさんの記事を参考にゲーミングモニターを選んでいるところです。(3万円前後もしくはそれ以下の価格帯でFPSに使いやすく、かつ汎用性の高いものを、と注文多杉なのでなかなか見つかりませんが……。)
    これからも応援しております。

  • 興味深い記事を書いていただき、ありがとうございます。

    測定された際、VENTUS 3Xのファン#1と#2で回転数が異なったのは、Autoのファン制御では、MSI AfterburnerのFAN SYNK(#1と#2を同期)を設定しても、その設定が効いていないからのようです。

    それが仕様なのかバグなのか分かりませんが、ユーザー定義で自動ファン制御を有効にしてFAN SYNCも設定してあげれば、ファン#1と#2の回転数が同じになり(#2の回転数が上がる)、温度はもう少し下がるかもしれません。
    とはいえ、ノイズは変わらないかと思いますが。

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