マインクラフトのローカル鯖のバックアップ用に急遽HDDが必要になり、NAS向けHDDの代表格である「WD Red」の3TB版を購入。せっかく購入したので、「信頼性が高いと評判のWD Redはどんなモノなの?」と興味がある人向けに検証レビューを書きます。
「WD Red」のカタログスペック
ぼくは割りとデータ保存用のHDDには、Seagateの安物を使っている。ただ、今回はローカル鯖のデータを5分毎にバックアップするという用途なので、耐久性を重視する必要があった。
1日あたり約80 GB程度の書き込みなので、普通のWD BlueやSeagate Barracudaでも行けそうな気はするが、念のため年間ワークロード180 TBを謳うNAS向けHDDから選ぶことにした。
メーカー | WDWestern Digital | Seagate |
---|---|---|
ブランド | WD Red | IronWolf |
容量 | 3 TB | 3 TB |
プラッタあたり | 1 TB | 不明 |
型番 | WD30EFRX | ST3000VN007 |
インターフェイス | SATA 6GB/s | SATA 6GB/s |
対応マウントベイ | 最大8ベイ | 最大8ベイ |
回転振動センサー | なし | なし |
データ転送速度 | 最大147 MB/s | 最大180 MB/s |
年間ワークロード | 180 TB1日あたり505 GB | 180 TB1日あたり505 GB |
回転数 | 5400 rpm | 5900 rpm |
キャッシュ | 64 MB | 64 MB |
ロードアンロードサイクル | 600000 | 600000 |
ビット化け率訂正不可能エラーの発生率 | 1/1014 | 1/1014 |
MTBF平均故障間隔 | 100万時間 | 100万時間 |
消費電力読み書き時 | 4.1 W | 4.8 W |
消費電力アイドル時 | 2.7 W | 3.95 W |
動作温度 | 0 ~ 65℃ | 5 ~ 70℃ |
保存温度 | -40 ~ 70℃ | -40 ~ 70℃ |
耐衝撃性(読み書き) | 30G | 不明 |
耐衝撃性(読み込み) | 65G | 80G |
非動作時(2ms / 最大) | 250G | 300G |
重量 | 640 g | 610 g |
製品保証 | 3年 | 3年 |
参考価格 | 11250 円 | 10560 円 |
GB単価 | 3.66 円 | 3.44 円 |
購入したWD Red(3TB版)と、悩んでいた比較対象のSeagate IronWolfのスペックシートをまとめてみた。スペック的には意外とSeagateの方が優秀な印象を受ける。
にも関わらずSeagateの方が安いから、かなり悩むが、回転数や消費電力はWD Redの方が控えめです。激しく動かないHDDほど故障率は低下するため、用途的にはWD Redの方が適任だと考え購入。
ただ、あくまでも理屈ではWD Redの方がスペック的には壊れにくそう…というだけの話で、実際のところどちらの方が壊れやすいのかは全く見当もつかない。
HDDの故障率は莫大なサンプル数で検証しなければ分からないし、NAS向けHDDをサーバー用に大量導入する企業もほとんど無いためデータが出回ることもない。
とあるサーバー屋※1によれば、最近のSeagateが作るサーバー向けHDD※2は驚くほど信頼性が高いらしいが、グレードごとに製造方法や品質管理体制は違うため、一般向けのHDDに適用できる話ではないと思う。
※1 : クラウドストレージサービスを提供している「Backblaze」社のこと。
※2 : Seagate製のエンプラ向けHDD「Exos X12」(ST12000NM0017)など。レポートは「Hard Drive Stats for Q3 2018: Less is More」にて。
「WD Red」の信頼性を支える技術
スペックシート以外の部分では、WD Redは「NASWare 3.0」というファームウェア技術を用いることで、信頼性と耐久性を高めているとのこと。
正規代理店にNASWare 3.0の説明が書いてあるけれど、正直なところ何を言っているのかよく分からない。
基本的な内容はNASで使う場合を想定して最適化された機能が搭載されていることになる。消費電力を最適化して熱を抑えたり、RAIDが崩壊しにくいようにエラーリカバリ機能が強化されていたり。
あとは、停電などで電力供給がいきなりストップしても、データの損失を最小限に抑えられるようにもなっているらしい。WD BlueやBarracudaには無い機能なので、信頼性重視なら無いよりはあった方が良いです。
「WD Red」のスペックまとめ
- NAS向けに最適化されたファームウェア
- 消費電力を抑え、発熱を少なく済ませる
- 年間180 TBものワークロード
- 3年保証
- ライバルの「IronWolf」より割高
- 読み書き速度は犠牲になっている
3TBで1.1万円のHDDとしては、妥当なスペックかな。IronWolfより割高とは言え、600~700円しか変わらないので、それほど大きなデメリットでは無いですね。
あと5~6000円出せば、サーバーグレードの「WD Gold」や「WD Red Pro」にも手を出せるけれど、さすがにハイスペック過ぎると思うので見送りました。
では、WD Redのレビューを行う。
WD Red(3TB)を開封レビュー
では「開封の儀」から始めるよ。
Amazonで購入したところ、HDDの大きさにそぐわない大きなダンボール箱で届きました。開ける前から「安定の過剰梱包」だと分かります。
中身はこの様子。HDD本体と軽い梱包材が入っているだけ。AmazonでHDDを購入した人の多くが、この梱包に不安をいだいているらしいけれど、動いていない時のHDDは意外と耐衝撃性が高い。
だから、多少揺れたところで壊れるほど、HDDは柔ではなかったりするから過剰な心配は不要。それに、何か不具合があれば返金してもらえばOK。購入から30日以内なら、特に理由なく返金してくれる。
パッケージは赤色…ではなく、青色でした。3年保証、NASWare、RAID対応など、アピールポイントが書いてある。
24時間365日の安心稼働、NASWareテクノロジー搭載、主要メーカーのNASボックスとの互換性。などなど、信頼性の高そうなパッケージデザインです…w
開封すると、HDD本体はちょっと硬めのプチプチでしっかりと梱包されていた。これなら、Amazonの梱包が多少テキトーでも、ほとんど問題ないかと。
静電気除去袋に包まれています。
やはり、このシールを使ったデザインは完成度高い。ちなみに、シールには製造国が書いてあって、今回のWD Redはマレーシア産(Product in Malaysia)のようでした。
厚みは約25mmです。WD BlueやBarracudaと比較すると、一段階分厚い。
裏面にはPCB(プリント基板)が取り付けられている。ネジが特殊で取り外せなかったが、この基板の内側に「コントローラー」や「DRAMキャッシュ」が搭載されています。
対応しているコネクタはL字型コネクタで有名な「SATA」。なお、WD RedにSATAケーブルは付属しないので、予備が余っていない場合は同時に購入しておくのを忘れずに。
重量は約632gで、スペックシートの公称値640gより少し軽かった。
では、SATAケーブルを挿し込んで、クイックフォーマットを掛けてから、WD Redの性能や動作状況を検証していく。
WD Red(3TB)の性能を検証(ベンチマーク)
Crystal Disk Mark 6
国内で定番のストレージベンチマーク「Crystal Disk Mark 6」で、WD Red(3TB)のシーケンシャル読み書き速度や、ランダムアクセス速度を計測する。WD RedはNASに最適化されているため、やや遅めの結果になるはず。
50MB
CDM 6でチェック可能なもっとも小さいファイルサイズ「50MB」では、読み込み速度が300 MB/sを超えています。書き込みは普通のHDDらしく、約140 MB/s程度です。
読み込みが非常に速いのは、WD Redに搭載されているキャッシュ容量が64MBで、テストサイズの50MBはキャッシュ内に収まっているため。小さいファイルのやり取りなら、そこそこ高速化されているということ。
1GB
標準的な「1GB」でテストすると、読み込みが約159 MB/s、書き込みは約151 MB/sに。さすがNASで使う前提だけのことはある。
普通の安価なNASだと、転送速度がせいぜい200 MB/s程度しか出てくれない※3ので、いくらHDD自体が速くても意味がなくなる。それを考慮して、WD Redは速度を重視していないのです。
※3 : 複数のLANを束ねるSMBマルチチャンネルや、10 GBps NICを使わない限り、ぶっ飛んだ速度は出ません。
4GB
やや大きめの「4GB」ファイルでテスト。シーケンシャル速度はほとんど同じですが、ランダムアクセス速度は全体的に少し遅くなりました。
16GB
映画など、メディア系ファイルならありえる「16GB」サイズでも、やはりシーケンシャル速度はほとんど同じ水準を維持しているが、ランダムアクセス速度は全体的に遅くなってしまいます。
32GB
CDM 6でテスト可能な最大サイズ「32GB」はこの様子。シーケンシャルは変わらず、ランダムアクセス速度だけが低下する。
ファイルサイズが大きいほど、HDDのディスク上をヘッダ(針)が忙しく動き回る必要があるため、その分時間がかかってランダムアクセス速度は遅くなるという感じですね。HDDだから仕方ない。
ATTO Disk Benchmark
様々なテストサイズで一括テストができるATTO Disk Benchmark。
8KBサイズで早くもトップスピードに到達。その後は安定して書き込みが150 ~ 154 MB/sで安定、読み込みは150 ~ 172 MB/sの範囲で安定しています。
全体的に一貫したパフォーマンスを出せていることが分かった。
HD Tune Pro
HD Tune Proは、ディスク全体に渡ってテストを行うことが出来る。約3500円のシェアウェアですが、最初の2週間だけは「試用版」としてフル機能を使えるので、今回は使ってみることに。
読み込みテスト
読み込みテストはこの通り。ディスクの外周から内周へ向かってテストしているため、内周に向かうにつれて読み込み速度は遅くなり、アクセスタイム(レイテンシ)は伸びていく傾向。
外周側で約150 MB/sだった速度は、内周に到達すると約71 MB/sにまで落ち込んだ。アクセスタイムは平均16.5 ms(ミリ秒)です。SSDが約0.030 ms前後で動作することを思うと、いかにHDDが遅いかが分かる。
書き込みテスト
書き込みテストも傾向はだいたい同じで、外周から内周に近づくにつれて、シーケンシャル速度が低下する。ただ、読み込みの時と違って、アクセスタイムは場所を問わずだいたい同じですね。
WD Red(3TB)の動作状況をチェック
部屋の気温は26℃の状態で、ベンチマークを使って負荷を掛け続けている時のWD Redをチェックしていく。
動作温度と表面温度
HDDの内部センサーを通して、約45分ものベンチマーク実行中の温度を計測したグラフがこれ。27℃から36℃まで、約9℃しか上昇していない。WD Redが発熱しにくいのは本当でした。
念のため、サーモグラフィカメラを使って、WD Redの表面温度も計測してみた。中央部分は30.8℃から35.7℃へ上昇。全く熱くない。
アクチュエータがある部分は最初から39.1℃とやや暖まっているが、ベンチマーク後も約41.9℃でほとんど変化していない。
コネクタ部分は29.7℃から30.3℃で、ほぼ変化なし。
コントローラ部分は37.5℃から48.7℃へ、約11℃の上昇でしたが、ごく普通です。ちなみにコントローラの温度は、SSDだと55~60℃、NVMe SSDでは80℃を超えることもあります。
結論として、WD RedはNASWare 3.0による制御のおかげか、発熱しにくい状態が維持されていることが分かった。
読み書き時の動作音
読み込みを実行中に計測してみたが、どこを計測しても43~44 dBAと表示され、周辺の騒音レベルとほとんど差が出なかった。耳をあてて聞くと、ジリジリ…と音は鳴っている。
録音はこちら。デジカメで録音したので聞こえにくいかもしれないけど、一応ジリジリ…と何か音は鳴っています。1メートル離れるとほぼ聞こえなくなるので、極めて静かです。
まとめ「WD Redは信頼性に期待できそう」
久しぶりのWD製HDDでしたが、悪くないですね。
弱点は読み書き速度の遅さだが…
弱点としては、やっぱりコストを重視しながらNAS運用に最適化されたことにより、読書速度がWD BlueやBarracudaよりも2~3割は劣ることですね。
今回の用途は5分毎のバックアップで、幸いバックアップするファイルはそれほど大きくないため、150 MB/s前後の書き込み速度でも全く問題なく機能しています。
耐久性や信頼性を維持しつつ、更にスピードまで求めるならサーバーグレードHDD(WD Red ProやWD Goldなど)が必要になる。
24時間使い続けるならオススメです
- NAS向けに最適化されたファームウェア
- 極めて静かな動作音
- 動作温度、表面温度ともに低温で安定
- 年間180 TBものワークロード
- コストパフォーマンスは良好
- 3年保証
- ライバルの「IronWolf」よりちょっと割高
- 読み書き速度はやや遅い
というわけで、そこそこ求めやすい価格で信頼性を求めるなら、WD Redは非常にコスパの良いHDDだと思います。
NASWare 3.0とは一体…と最初はメーカー側のテキトーなマーケティング用語と思っていたが、実際にベンチマークで負荷を掛けながら温度や動作音を検証したところ。
確かに、温度は上昇しにくく、動作音も極めて静かだったため、NASWare 3.0というファームウェア制御の効果が見て取れた。読書速度も、最近のデータ用HDDと比較すると遅いのも証拠の一つ。
たまにデータを書き込んで普段はあまり使わない用途なら、データ用のWD BlueやBarracudaで問題ないが、今回のように定期的に書き込み続ける使い方ならWD Redのような耐久性重視HDDがおすすめ。
対応している年間ワークロードが180 TBもあるので、1日80 GB程度の書き込みなら余裕で持ってくれると信じておく。静かで低発熱なので、信頼性はそこそこ高そう(という期待感)。
以上「NAS向けHDDの代表格「WD Red」をレビュー&検証」でした。
他にもあるよ「ストレージレビュー」
動画編集用に、WD Redより遥かに格上の「WD Ultrastar」を購入。入手性はちょっと悪いですが、速度と信頼性においてUltrastarに勝るHDDは…ほとんど存在しないレベルです。
筆者一押しのSATA SSDです。SATA規格のSSDとしてトップクラスの読書速度と、同価格帯のSSDでは最強クラスの耐久性能を両立した逸品。迷ったらとりあえずこれで良いレベル。
シーゲイト冬のIronWolf キャンペーン
IronWolf ならびにIronWolf Proを購入して1,000円のギフト券をもらおう
https://www.seagate.com/jp/ja/japanpromotions/ironwolf/
11月25日以降に4TB以上を購入すると対象になるので購入とレビューはもう少し待った方が良いですね。
次は高くて手が出しにくいwd goldお願いします!
何が違うのかよくわからないので…
レビューお疲れ様!
参考にさせてもらいます。
面白いレビューでした(^o^)