冷静に考えると、約4万円近い価格の割に、今ひとつ決め手に欠けるスペックが特徴のマザーボードです。
あまり他人に勧められる要素が見当たらない微妙なマザボですが、ベンチマーク機材として1枚買ってあるので、詳しくレビューしてみます。

(公開:2025/10/13 | 更新:2025/10/13)
ASUS TUF GAMING B850-PLUS WIFI:仕様とスペック
スペック | ASUS TUF GAMING B850-PLUS WIFI |
---|---|
ソケット | Socket AM5 Ryzen 9000 / 8000 / 7000に対応 |
チップセット | AMD B850 |
フォームファクタ | ATX(305 x 244 mm) |
CPU用コネクタ | 8 + 8 pin |
VRMフェーズ | 17フェーズ(DrMOS) |
拡張性 | |
メモリスロット |
|
PCIeスロット |
|
M.2スロット |
|
SATAポート |
|
USBポート (背面ポート) |
|
USBヘッダー (フロントパネル) |
|
ブロック図 | |
機能性 | |
LANチップ | Realtek RTL8125D 最大2.5 Gbps |
無線LAN | Realtek RTL8922AE 最大2.9 Gbps / BT 5.4対応 |
サウンドチップ | Realtek ALC1220P 7.1チャンネルHDオーディオ |
映像出力 |
|
音声出力 | 3.5 mmプラグ:5個 S/PDIF:なし |
レガシー端子 | なし |
その他 | BIOSフラッシュバックボタン |
価格と保証 | |
保証 | 1年(ピン折れ保証6ヶ月) |
製品ページ | 公式サイト(asus.com) |
参考価格 (2025年10月時点) | ![]() |

相変わらず「1年保証」が渋い

それでも売れ筋No.1(20年連続)

ASUS TUF GAMING B850-PLUS WIFIをレビュー
パッケージと付属品

特に高級感もない、サラサラした塗装の簡素なパッケージで到着。
パッケージにBCNアワードや日本語対応アピールのシールが、側面に国内代理店(テックウインド or アユート株式会社)の1年保証シールが貼ってあります。

下からめくり上げて開封する見開き式の梱包です。フタを開けてすぐに付属品やマザーボード本体が出てきます。

- 説明書(日本語)
- レビューキャンペーンお知らせ
- ASUS TUFステッカーシール
- WiFiアンテナ
- SATAケーブル(2本)
- M.2スロット用ゴム(3個)
必要最低限のケーブル類と、ノベルティグッズが付属します。

日本語化された説明書です。
公式サイトからダウンロードすれば済む話に思えますが、これから初めて自作PCを組む初心者にとって、紙の説明書があると便利らしいです。

「TUF GAMINGステッカーシール」です。

「M.2ゴム(3個)」です。
M.2スロットに片面実装(NANDチップが基板の片面だけに付いているタイプ)のSSDを取り付けるとき、M.2ゴムを取り付けて高さを調整します。
高さを調整すると、基板にヒートシンクの圧力がかかり過ぎて故障するリスクを大きく軽減する効果に期待できます。
マザーボードギャラリー(じっくり観察)
基板の裏面がほんの少しだけ光る以外、ほぼ真っ黒なデザインです。
「TUF(タフ)」の名前どおり、質実剛健な業務向けマザーボードのような落ち着いた佇まいに、イエロカラーのアクセントを随所に添えて一般風な雰囲気を足しています。

マザーボードの拡張性とリアパネル

横幅305 mm、高さ244 mmのATXフォームファクタです。
信号強度を安定させ、メモリのオーバークロック耐性を高める効果があるらしい「8層基板」を採用しています。
メモリスロット |
---|
![]() |
|
メモリスロットは4本(最大256 GBまでサポート)、メモリが勝手に外れにくい片ラッチ仕様です。
メモリオーバークロックは今どき珍しくもない、平均的なDDR5-8000+対応をアピール。
M.2スロット |
---|
![]() |
|
M.2スロットは3スロットです。
3本あるM.2スロットの内、2本がCPU直結スロット(M2_1 / M2_2)です。しかも、両スロットともにPCIe 5.0 x4(CPU直結)対応。
残る1本だけがB850チップセット経由で、PCIe 4.0 x4に対応します。ただし、3段目のPCIeスロットと帯域を互いに共有します。
片方どちらかを使うと、もう片方が無効化されてしまう厄介な排他仕様です。
リドバイバICを使って50%ずつ帯域を分割したり、メーカーによりコストの掛け方が違いますが、ASUSは排他仕様に目をつむる様子です。

M.2スロットのツールレス仕様 |
---|
![]() |
|
すべてのM.2スロットの固定ネジが「ツールレス仕様」です。
M.2スロットを指で押し込んでカチッとM.2 SSDを着脱できるタップ式です。柔らかいゴムのような素材が作られているから、外すときもクリップ部分を指で押すだけです。
B650~X670世代で採用されていたレバー式よりも、タップ式の方がラクに感じました。
全3本あるすべてのM.2スロットに、アルミニウム製ヒートシンクが付属します。ヒートシンクへの熱伝導率を高めるサーマルパッドも貼り付け済みです。
M2_1用ヒートシンクが重さ32.4 gで、M2_2~M2_3用は重さ51.2 gでした。薄っぺらくて軽い、頼りない感じのヒートシンクです。
基板の底面から熱を吸収する両面ヒートシンクも未搭載。Gen4~Gen5クラスのSSDを延々と高負荷で使うには不足します。
それでも、TUFシリーズを購入するメイン層であるゲーム用途にとって、それなりに十分な冷却性能が確保されます。
SATAポート |
---|
![]() |
![]() |
|
SATAポートは全部で4個です。ハブコントローラを経由せず、そのままAMD B850チップセットにつながっています。
PCIeスロット |
---|
![]() |
|
PCIeスロットは4本です。
1段スロットがCPUに直結されたPCIe 5.0 x16帯域で、PCIe Gen5規格の次世代グラフィックボードやNVMe SSDに対応できます。
2段目と4段目スロットはB850チップセット経由でPCIe 4.0 x1のみ、録画用キャプチャーボードや10G LANカードなどに使えます。
3段目スロットもB850チップセット経由でPCIe 4.0 x4まで対応、しかし3番目のM.2スロット(M2_3)と帯域を100%共有するため、どちらかを使えば片方が無効化される排他仕様です。

PCIeスロット(1段目)に、「ツールレス」機構(PCIe Slot Q-Release)を搭載。
メモリスロット直下に位置する「レバー」を使って、PCIeスロットのロックを解除できます。
グラフィックボードを挿し込んでロックを固定し、レバーを押し込んでPCIeスロットのロックを解除できるシンプルな設計です。
ロック部分がPCIeスロットから横に倒れるように距離を取る仕様だから、何度も使っているうちにグラフィックボード側のPCIeスロットが欠ける心配もない※です。
※上位モデル「ROG」シリーズに導入された最新Q-Releaseデザインは、PCIeスロットが欠ける事故が実際に起ってしまいました。
USBヘッダーとTBヘッダー※クリックで画像拡大します | |
---|---|
![]() | ![]() |
|
|
![]() | |
|
|
フロントパネル用のUSBヘッダーが、マザーボードの下部と右側に配置されています。USB 5~10 Gbps用ヘッダーはすべて上向きです。
USB 2.0が4ポート分、USB 5 Gbps(Type-A)が2ポート分、USB 10 Gbps(Type-C)が1ポートで全7ポートです。
ほとんど「B850チップセット(Promontory 21)」から供給され、USB 10 GbpsポートのみASMedia製「ASM1543」ハブコントローラを経由しています。
Thunderbolt(USB4)Header(TB4ヘッダー)は、「ASUS ThunderboltEX 4」拡張カードを組み合わせて、USB 40 Gbpsポートを増設できるヘッダーです。
マザーボードのメモリスロット周辺とCPU電源コネクタの周辺に内部ヘッダーが実装されています。
アドレサブルLEDヘッダ(最大15 W)、4ピンファンコネクタ、CMOSクリアなど、基本的なヘッダーがおおむね揃ってます。
使い道が今ひとつ微妙な・・・ケース侵入ヘッダーや、COMポート用ヘッダーも配置されてます。
USBポートは全部で10個あります。
内1つがUSB 20 Gbps(Type-C)、3つがUSB 10 Gbps、4つがUSB 5 Gbps、残り2個がUSB 2.0です。
USB 20 Gbpsポートをフロントパネルに使わず、リアパネル(背面)に実装した少し珍しい配置です。

USB Type-CUSB Type-A
USBポートの5V電圧をチェックします。
Type-Aポートは許容範囲(-5%)に収まり、Type-Cポートもやや下落幅が大きいですが許容範囲(-5%)に収まります。
電源ユニット側の+5Vレールをそのまま使う通常仕様なので、負荷がかかったときに電圧が変動しやすいです。
専用のVRMを設置して、電圧が変動しづらい+12Vレールを利用するシステムがあれば、USBポートの電圧を安定させられます。
たとえば、ASUSの一部マザーボードや、ASRockマザーボードの「Ultra USB Power」ポートが該当します。
CPUソケット※クリックで画像拡大します | |
---|---|
![]() | ![]() |
|
|
CPUに電力を供給するコネクタは「8 + 8」ピンです。
3~4万円台のマザーボードは線の太いソリッドピンを使っているため、8ピンだけで1000 W近い給電性能があります。8 + 8ピン合わせて2000 Wに迫ります。
CPUソケットは久々にLotes製を見ました。ASRockやMSI製マザーボードだと、Foxconn製ソケットをよく見かけます。

- 「Realtek ALC1220P」:Realtek社の標準オーディオコーデック
- ELNA製オーディオゴールドコンデンサ
音質に大きく影響するオーディオコーデックはRealtek ALC1220Pを搭載。出力を高める専用のオペアンプICは1つも見当たらないです。
かつてASUS製マザーボードで多用されていた、テキサスインスツルメンツ製オペアンプを使うパワフルな回路設計はもう使われていない様子です。
オーディオコンデンサはELNA製を3個使っています。

LANチップは2.5 Gbps用に「Realtek RTL8125D」を採用します。大量の安定実績を重ねた定番の2.5G LANチップです。
不具合報告の多いIntel製2.5G LANを使いがちなASUSですが、TUFシリーズは割とRealtek製を使ってくれるから安心です。

Pericomm製リドバイバIC「P13EQX2024」は、リアパネル用USB 20 Gbps(Type-C)につながります。
見慣れないGenesys Logic製リドバイバIC「GL9901VE」は、USB 5~10 Gbpsポートに使われています。

「B850」=「実質B650」チップセット
「AMD B850」チップセットは、旧世代モデル「B650」チップセットと同じく、TSMC 6 nmプロセス製「Promontory 21」を1個だけ実装します。
要するに、B650のリネーム版に相当します。B650単体だと合計帯域がやや少ないため、ASMediaコントローラを追加したり、リドバイバICを使って帯域を分割したり。
あの手この手で限られた帯域を効率的に使い切ろうと、マザーボード各社が努力しています。

VRMフェーズの部品と回路設計
重量358 g(126 + 232 g)の大型アルミニウム製のVRMヒートシンクを搭載。フィンカット間隔が大きいように見えて、よく見ると極小のヒダ状形成で放熱面積を稼ぐヒートシンクです。
「TUF GAMING」のロゴが入った、I/Oパネルに接続する部分もすべて金属製で、ヒートシンクとして機能します。
VRM(MOSFET)から迅速に熱を吸い上げるために、サーマルパッドも貼付け済み。ただし、熱分布を平均化する効果があるヒートパイプは1本も搭載されていません。
チップセット用のヒートシンクは重量71 gで、B850チップセットとサーマルパッドで接触します。
VRMフェーズの構成 (オモテ面)※クリックで画像拡大します |
---|
![]() |
ASUS TUF GAMING B850-PLUS WIFIのVRMフェーズは全部で17本です。
VRMフェーズの構成 (裏面)※クリックで画像拡大します |
---|
![]() |
裏面もチェック。金属製バックプレートもサーマルパッドも一切ない、剥き出し基板です。
フェーズ数を2倍化するダブラー(VRM doubler)も見当たらないです。
VRMフェーズを制御するPWMコントローラと、各フェーズを担当するMOSFETを表にまとめました。
ASRockほど親切じゃないですが、一応ざっくりと部品ごとの役割が基板上に印字されています。数分じっくり眺めているとフェーズ数を見分けられます。
PWMコントローラはDIGI+ EPU刻印「ASP2308GQW」を使っていて、OEM元が不明です。詳細を調べられないから最大フェーズ数も不明ですが、少なくとも7 + 1フェーズ対応です。
高効率なDrMOS(最大80 A)をCPU向けに14個、SoC向けに2個使っています。
ASUSがかつて「Teamed power stages」と宣伝していた、1フェーズにつきMOSFETを2個セットで束ね、負荷を分散させてVRMの発熱を抑える設計です。
CPUに対して合計1120 A(80 x 14)もの出力が確保されており、デフォルト設定で最大230 Wが想定されるRyzen 9 9950X(16コア)ですら、計算上は余裕ある出力です。

個体コンデンサはASRockやMSIと同様に、おそらくニチコンに特注した個体コンデンサ「FPCAP」シリーズを採用。
「FP5K」の印字から、定格105℃で5000時間です。しかも導電性高分子タイプの個体コンデンサだから「20℃10倍則」が適用され、基本的にコンデンサの寿命は実用上まったく問題にならないです。
仮に70℃前後の周囲温度として、24/365運用で約32年ほど、1日4時間運用なら約193年も持つ計算に。

ASUS TUF GAMING B850-PLUS WIFIの性能を検証
ベンチマーク環境について
テスト環境 | |
---|---|
![]() | AMD Ryzen 9 9950X16コア32スレッド |
![]() | NZXT Kraken 280 (2023)280 mm簡易水冷ユニット |
![]() | ASUS TUF GAMING B850-PLUS WIFI 検証時のBIOSは「Version 1087」 |
![]() | DDR5-8000 24 GB x2使用メモリ「G.Skill Trident Z5 RGB」 |
![]() | RTX 5070 Ti 16GB使用モデル「PNY Triple OC」 |
![]() | NVMe SSD 1 TB |
![]() | 1000 W(80 PLUS Gold)使用モデル「Corsair RM1000x」 |
![]() | Windows 11 Pro検証時のバージョンは「24H2」 |
ドライバ | NVIDIA 581.15 WHQL |
ディスプレイ | 3840 x 2160@160 Hz使用モデル「TCL 27R83U」 |
以上のテストスペックにて、ASUS TUF GAMING B850-PLUS WIFIの性能を検証します。CPUは「Ryzen 9 9950X(16コア)」を使います。
電力設定はマザーボードのデフォルト設定を使用します。PPT:200 Wで、CPU本体が約160 W前後で動作します。
メモリの設定も特に記載がなければ、デフォルト設定(JEDEC準拠の定格DDR5-5600 / 1:1同期モード)です。

M.2スロットとUSBポートの性能
ASUS TUF GAMING B850-PLUS WIFIのM.2スロットとUSBポートの実効速度をテストします。
I/Oインターフェイスの実効速度※画像はクリックで拡大します | |
---|---|
![]() | M.2スロット(Gen5)検証SSDは「WD Black SN8100」 |
![]() | USB 20 Gbps検証SSDは「SK Platinum P41」 |
![]() | USB 10 Gbps検証SSDは「SK Platinum P41」 |
CPUに直結しているM.2_1スロット(最大PCIe 5.0 x4)を「WD Black SN8100」でテストした結果、最大で14900 MB/s前後の性能を出せています。
特筆すべきはランダムアクセス速度(RND4K Q1T1)の速さです。平均的なAM5マザーボードなら103~106 MB/s程度ですが、B850 TUFは約115 MB/sを叩き出しました。
レビュー史上、もっとも応答速度の速いGen5対応M.2スロットです(※Intel Z790を除く)。
リアパネル(背面ポート)にあるUSB 20 Gbpsポートは、「SK Hynix Platinum P41(NVMe)」で約2126 MB/s前後まで伸び、規格の上限値をやや上回る性能です。
USB 10 Gbpsポートもまったく問題なく、約1011 MB/sまで伸びます。
USBポートの給電能力(USB PD)
ASUS TUF GAMING B850-PLUS WIFIのUSBポートの給電能力(USB PD)をテストします。
USB Type-Aポートが実測値で平均7.31 Wで、USB Type-Cポートは平均12.23 Wです。
実は、ASUS製品ページに小さく「Type-Cポートのみ15 W(5 V x 3 A)対応」と記載されてます。実際に3 Aの負荷を与えると、過電流保護が発動してUSBポートの給電が停止します。
0.05 Aずつ負荷を下げていくと、2.7 Aでようやく安定動作を確認できました。15 Wを出せる瞬間が一切なく、せいぜい12 W台が実際の給電能力です。
USB PD | |
---|---|
リアパネル (10 Gbps) | リアパネル(20 Gbps) |
|
|
USB Type-Cポートはフロントパネルとリアパネルどちらも、USB PD非対応です。
USB規格で決められた最大7.5 W(5.0 V x 1.5 A)または、ASUSがTPS25810コントローラを実装して追加した最大15.0 W(5.0 V x 3.0 A)に対応します。

有線LANとWi-Fiの性能
テスト結果 | 有線LAN #1 | 有線LAN #2 |
---|---|---|
テスト結果※クリックで拡大 | ![]() | ![]() |
搭載チップ | Realtek RTL8125D2.5G LAN(2.5 Gbps) | –– |
PING(遅延) | 10.85 ミリ秒 | – ミリ秒 |
ダウンロード速度 | 2374 Mbps | – Mbps |
アップロード速度 | 2372 Mbps | – Mbps |
理論値リンクアップ速度 | 2500 Mbps | – Mbps |
安定して下りで8000 Mbps、上りで5000 Mbps程度を出せる光回線「eo光10G(レビュー)」を使って、オンボードLANの通信速度をベンチマークしました。
2.5G LANポートは理論値に近い2370 Mbps前後に達します。Steamゲームを平均200 MB/s前後でダウンロードできます。
原神や崩壊スターレイル(mihoyoサーバー)ならピーク時に250 MB/sが見られ、とても快適なネットワーク環境です。
テスト結果 | Wi-Fi |
---|---|
テスト結果※クリックで拡大 | ![]() |
搭載チップ | Realtek 8922AE Wi-Fi 7 |
PING(遅延) | 12.18 ミリ秒 |
ダウンロード速度 | 1992 Mbps |
アップロード速度 | 2274 Mbps |
理論値リンクアップ速度 | 2882 Mbps6 GHz(160 MHz) |
ASUS TUF GAMING B850-PLUS WIFIのWi-Fi 7モジュールは「Realtek 8922AE」でした。
Wi-Fi 7表記ですが、最大160 MHz(6 GHz)対応だからリンクアップ速度が2.9 Gbps程度にとどまります。本物のWi-Fi 7の半分しか速度を出せないです。
それでも実測値は約2300 Mbps前後も出ていて、一般的なLANポートの約2倍もの速度です。
2万円台から買える日本メーカー製Wi-Fi-ルーター「WRC-BE94XS-B」を使っています。10G WANポート搭載で10G光回線をフルに利用でき、無線は6 GHz帯で最大5765 Mbpsのスループット(転送速度)に対応します。

次はLAN内の通信速度を実測ベンチマークします。
最大700 MB/s(5600 Mbps)ほどの速度を出せる「SSD NAS」とテスト対象のオンボードLANを、Mikrotik製の10G対応スイッチングハブでつないで通信速度を検証します。

「RTL8125D(2.5G LAN)」の性能は、ダウンロード(下り)が平均293 MB/s、アップロード(上り)が平均283 MB/sです。

「Realtek 8922AE(Wi-Fi 7)」では、ダウンロード(下り)が平均221 MB/s、アップロード(上り)が平均123 MB/sです。

※クリックで画像拡大します
有線LANポートの通信速度を他のマザーボードと比較しました。
ASUS TUF GAMING B850-PLUS WIFIは、平均的なマザーボードと同等です。5G LAN(RTL8126)ポートを導入し始めた競合モデルに対して、倍近い遅れを取ります。
オンボードオーディオの音質

音質特性を評価するソフトウェア「RMAA(version 6.4.5)」と業務用のオーディオインターフェース「RME ADI-2 Pro」を用いて、オンボードオーディオの音質特性をテストします。
- 使用ソフト:RMAA(version 6.4.5)
- 測定機材:RME ADI-2 Pro(AK4493版)
- サンプリングモード:24-bit / 192 kHz
テスト対象 | 出力 | 入力 |
---|---|---|
DAC(出力性能)デジタル → アナログ変換 | テスト対象のヘッドホン端子(3.5 mm) | RME ADI-2 Proアナログ入力(XLR in) |
ADC(入力性能)アナログ → デジタル変換 | RME ADI-2 Proヘッドホン端子(TRS out) | テスト対象のマイク端子(3.5 mm) |
RME ADI-2 Proの出力が最大 -115 ~ -113 dB程度まで、入力側で最大 -117 dBまで測定可能です。マザーボードの内蔵オーディオでRME ADI-2 Proを超えるのは極めて困難と考えているので、(理論上)これ1台でほぼすべてのマザーボードを測定できます。
なお、RMAAを使って得られたデータと実際の主観的な音質が相関するかと言われると・・・やや懐疑的です。高音質を評価するための手段ではなく、最低限の音質を確保できているかチェックするベースライン(最低基準)と捉えたほうがしっくり来ます。
ASUS TUF GAMING B850-PLUS WIFIのオンボードオーディオ「Realtek ALC1220P」の音質特性はやや期待ハズレです。
フラットな周波数特性に、それなりに高いSN比とダイナミックレンジですが、平均的なマザーボードが100 dBを超えている現状だと競争力に欠けます。
一方で、マイク入力特性は約80 dBで平均を上回ります。ADC側で80 dB台はまずまずの数値です。

※クリックで画像拡大します
他のマザーボードや、ゲーミングモニターのイヤホン端子を比較しました。
残念ながら平均以下です。TUFシリーズの内蔵オーディオは明らかにコストカット対象で、ASUSの本気をまったく見せていません。
非常に鳴らしにくい定評があるSennheiser HD650で聴いてみた。
オペアンプが省略された内蔵オーディオですが、ふつうに十分な音量を取り出せます。大きな音量でもビビリ音やノイズが聞こえません。
低音域もそこそこ鳴っているし、解像度もそれなりに高くクリアな音質。音質にこだわりがない一般人なら、そのまま使っていける音質です。

CPU性能に問題ないかベンチマーク
CPUベンチマーク | スコア |
---|---|
Cinebench R23 マルチスレッド | 42131 cb |
Cinebench R23 シングルスレッド | 2275 cb |
Cinebench R15 マルチスレッド | 6572 cb |
Cinebench R15 シングルスレッド | 353 cb |
3DMark Fire Strike Physics Score | 48520 |
ffmpeg H.264エンコード(Fast 1080p60) | 242.7 fps |
ffmpeg HEVCエンコード(Fast 1080p60) | 136.3 fps |
y-cruncher 0.8.5 円周率の計算(25億桁) | 50.02 秒 |
mozilla kraken 1.1 Javascriptの処理時間 | 251.3 ms |
マザーボードの初期設定のまま、デフォルト設定で「Ryzen 9 9950X(PPT:200 W)」の動作状況をチェック。
シングルスレッド性能とマルチスレッド性能、どちらも問題なく定格どおりの性能を引き出せています。
マルチスレッド性能の伸びも優秀で、同じ消費電力のまま、平均値より約1.5~2%くらいスコアが高いです。
グラフィックボードの性能も問題なし
GPUベンチマーク | スコア※クリックで拡大 |
---|---|
Fire Strike GPU Score | ![]() |
Speed Way GPU Score | ![]() |
Steel Nomad GPU Score | ![]() |
FF14 : 黄金のレガシー Overall Score | ![]() |
PCIe Bandwidth 実効帯域幅(GB/s) | ![]() |
マザーボードの初期設定のまま、デフォルト設定で「RTX 5070 Ti」の動作状況をチェック。
3DMark Fire StrikeからSteel Nomadまで、すべてのGPU負荷ベンチマークで問題なく平均的なスコアです。
PCIe x16スロットの実効帯域幅は51.73 GB/sを・・・、なぜか理論値(最大64 GB/s)にほど遠い帯域にとどまる不可解な傾向を示します。
同じCPUとグラフィックボードの組み合わせでも、マザーボード次第で48~64 GBまで幅広く変動します。3DMark側の設計が問題か、あるいはマザーボード側の省電力システムと干渉しているのか、原因はまだ不明です。
オーバークロックメモリの動作検証

DDR5-8000(CL40)対応のオーバークロックメモリを使って、マザーボードのメモリ互換性を検証します。
AIDA64 Memory Benchmark DDR-5600(JEDEC準拠) | |
---|---|
画像 ※クリックで拡大 | テスト結果 |
![]() |
|
Karhu RAM Test 1.1 DDR-5600(JEDEC準拠) | |
![]() |
|
JEDEC準拠のDDR5-5600(定格クロック)は、メモリクロック(MCLK)とアンコアクロック(UCLK)の1:2同期モードで安定性テストをパスします。
Karhu RAM Testでカバー率1000%超の安定性です。メモリの実効スループットは約61~64 GB/sを記録します。
AIDA64 Memory Benchmark DDR-8000(自動OC) | |
---|---|
画像 ※クリックで拡大 | テスト結果 |
![]() |
|
Karhu RAM Test 1.1 DDR-8000(自動OC) | |
![]() |
|
ASUS TUF GAMING B850-PLUS WIFIが製品ページでアピールする「メモリクロック:8000+(OC)」を、DDR5-8000(ASUS DOCP I設定)でテストします。
DDR5メモリトレーニングはたった40秒で終わってしまい、あまりの速さに拍子抜け。先日レビューした「MSI MAG B850 TOMAHAWK MAX」が記録した45秒を超える速さ。
メモリの実効スループットは約81.2~86.4 GB/sに達します。DDR5-5600(定格クロック)と比較して、スループットが約36%も増え、レイテンシが約23%も短縮されます。
起動後の安定性もそこそこ良好で、3DMarkやFF14ベンチマークを難なくパスします。ただし、Karhu RAM Testだと1分程度でエラーが発生。
長期的な安定性に問題ありです。

VRMフェーズの温度テスト

- #1:VRMフェーズ回路(上部)
- #2:VRMフェーズ回路(右側)
- #3:VRMフェーズ回路(右側)
- #4:気温
4チャンネル温度ロガーと、オメガエンジニアリング製のK熱電対センサー(接着タイプ)を組み合わせて、マザーボードのVRMフェーズ温度を実測します。
VRM温度テストに使うベンチマークソフトは「Cinebench R23(30分モード)」です。30分にわたって安定してCPU使用率が100%に張り付き、ストレステストに使いやすいので温度テストに採用してます。

※クリックで画像拡大します
Ryzen 9 9950Xをデフォルト設定(PPT:200 W)で動かして、VRMフェーズ回路にがっつり負荷をかけた温度グラフです。
温度 | 平均値 (上位25%) | ピーク値 (上位1%) |
---|---|---|
上部VRM温度(#1) | 63.0℃ | 65.2℃ |
側面VRM温度(#2) | 62.1℃ | 63.9℃ |
側面VRM温度(#3) | 67.0℃ | 68.8℃ |
周辺気温(#4) | 27.9℃ | 28.3℃ |
テスト時の消費電力が平均230 Wです。合計1120 A(80 x 14)の出力を持つASUS TUF GAMING B850-PLUS WIFIにとって、230 W程度の負荷は問題ないはずです。
30分経過しても70℃台にすら乗らない、かなりの冷えっぷり。

しかし、30分間の連続負荷時の性能変化を見ると、少し残念な結果が明らかに。
VRM温度グラフが何箇所か急落するポイントがありますが、ちょうどCinebench R23スコアががっつり下がるポイントと重なります。
VRMサーマルスロットリングの可能性が高いです。動画エンコードやレンダリング処理を長時間続ける用途であれば、ケースファンを使ってエアフローをゆるく当てる必要があります。

VRM周辺の表面温度をサーモグラフィーカメラでチェック。
個体コンデンサ周辺の温度が67~68℃前後に抑えられ、24/365運用で約40~45年、1日4時間なら約242~272年もの途方もない期待寿命と計算できます(※日本ケミコンいわく:推定寿命の上限値は15万時間に注意)。
個体コンデンサが原因でマザーボードが故障する確率はかなり低いでしょう。エアフローが劣悪な環境になりやすい、簡易水冷CPUクーラーを安心して使えます。

M.2ヒートシンクの冷却性能

※クリックで画像拡大します
平均8.5 Wくらいで安定して発熱する「Samsung 970 PRO」に対して、5分間の連続書き込みテストを行い、マザーボード付属M.2ヒートシンクの冷却性能を検証します。
- ヒートシンクなし:105℃(ピーク温度)
- ヒートシンクあり:81℃(ピーク温度)
結果、ヒートシンクの有無で最大24℃の温度差でした。
グラフをよく見ると、ヒートシンクを付けた状態でも4分経過したあたりで書き込み性能が若干下がっています。
見るからに頼りない、薄っぺらい金属の板から想像されるとおりの冷却性能です。Gen5クラスのSSDをがっつり使うなら、ケースファンでゆるく風を当てたいです。

ヒートシンクの表面温度は、サーモグラフィーカメラで61℃前後(Δ33℃)でした。ヒートシンク全体に熱がキレイに充満します。

PCH用ヒートシンクは正常動作に支障がない程度に冷えています。
グラフィックボード未装着で約53~54℃、グラフィックボード(RTX 5070 Ti)を付けると約70℃前後です。

マザーボードの消費電力

※クリックで画像拡大します
ASUS TUF GAMING B850-PLUS WIFIの消費電力を測定しました。
アイドル時(何もしていない)で平均13.9 Wほど、CPUに約230 Wの負荷をかけると約1.8 W増えて平均15.7 Wです。

参考程度に、他のマザーボードと比較したグラフです。
UEFI(BIOS画面)のスクリーンショット
- Main
- Ai Tweaker
- Advanced
- Monitor
- Boot
- Tool
- Exit
ASRockと同じくらい、少し細かめに全7個のカテゴリに分けられています。いつもどおり※、直感的で分かりやすいフォルダ階層型のUIレイアウトです。
※筆者が使っているベンチマーク機材はすべて「TUF GAMING」シリーズ。ふだん見慣れているから、少しバイアスが掛かっています。
「Ai Tweaker」タブに、オーバークロックやVRM電力制御に関する設定が集まっています。
OCメモリのXMPプロファイルを読み込む「DOCP II(EXPO II)」や、ASUS独自のチューニングを加える「DOCP I(EXPO I)」モード、特定のワークロードに最適化させる「Performance Bias」モードなど。
OC設定がなかなか豊富です。
「Advanced」タブに内蔵GPUの設定、PCIeスロットとM.2スロットの排他設定、CPUの省エネ設定「Eco Mode」など。各ハードウェアの基本的な設定が詰まっています。
「Monitor」タブは各ハードウェアの温度や、ケースファンの回転数を確認したり、ファンコントロール設定ができます。
「Boot」タブはブートに関する設定です。ブートドライブの指定、起動時のロゴ表示、Fast Boot(高速起動)の設定ができます。
「Tool」タブは便利機能セットです。USBメモリからBIOSアップデートする「ASUS EZ Flash 3」、SSDを初期化する「ASUS Secure Erase」、ドライバ自動インストール「Auto Install ASUS Utilities」など。
便利な機能が多めです。個人的に、SSDを任意のLBA Format Sizeで電気的に初期化するSecure Eraseをよく使っているし、ベンチマーク機にASUSを選ぶ理由のひとつだったりします。
「Security」タブはセキュリティに関する設定です。Secure Bootの有効化や無効化を切り替えられます。
「F6」キーで「ASUS Qfan」画面が開きます。MSIに匹敵する非常に洗練されたデザインです。
ひとつの画面から、数値をダイレクトに入力する旧来的な方式と、マウスでファンカーブを視覚的に調整できる現代的な方式どちらも対応します。
上から入力すればファンカーブが動き、ファンカーブを動かせば上の数値も書き換わります。
コネクタごとにPWMモードと電圧制御(DC)モードを選べて、温度ソースにVRM温度も指定可能です。複数の温度ソースをトリガーに使う「Multiple Source」モードまで用意されています。
ファンのヒステリシス制御(= 回転数の変化スピード)は5段階です。最低回転数を200~600 rpmの範囲から100 rpmずつ選んだり、「Fan Stop」にチェックを入れてセミファンレス制御も実装可能です。
ファンコネクタのグループ化は、ケースファン(CHA_FANコネクタ)のみ対応。前面ケースファン(3個)を一括で制御したり、地味に便利な機能です。
ASUS側が用意したファンプロファイル(自動設定)も、Qfan画面で一括適用できます。「スタンダード」「サイレント」「ターボ」「フルスピード」の4つ用意されています。
ほとんど完璧なファンコントロール機能とUIレイアウトです。詳細画面を開いて、ポイントごとに数値を入力する時代はもう終わりです。

ASUS TUF GAMING B850-PLUS WIFI:レビューまとめ

「ASUS TUF GAMING B850-PLUS WIFI」の微妙なとこ
- 極端な連続負荷だと
VRMサーマルスロットリングが発生 - SATAポートは4個のみ
- USB Type-Cの実効出力は「12 W」
(メーカー公称値15 Wに届かない) - 内蔵オーディオの特性が平凡
- Wi-Fi 7が実質Wi-Fi 6(160 MHz)
- USB 40 Gbpsなし
(TB4ヘッダーで増設可) - PCIeスロットの間隔がやや狭い
- M.2スロットとPCIeスロットの排他仕様
- 1年保証
(ピン折れ保証は6ヶ月) - 個人的な苦情:マニュアルにブロック図がない
「ASUS TUF GAMING B850-PLUS WIFI」の良いところ
- Ryzen 9(230 W)も余裕なVRM
- M.2スロットが全部で3本
- そこそこ冷えるM.2ヒートシンク
- 強力なメモリOC耐性
(DDR5-8000まで確認) - 2.5G LAN(Realtek製)
- Wi-Fi 7(BT 5.4)対応
- 十分な量のUSBポート(全17個)
- 便利なツールレスギミック搭載
- BIOSフラッシュバック対応
- 扱いやすいUEFI画面
- 洗練されたファンコントロール画面
- ドライバの自動インストールが便利
ASUS TUF GAMING B850-PLUS WIFIは・・・ 「価格と品質が釣り合ってない」Socket AM5マザーボードです。
PCIeスロットの配置は詰めが甘いように見えるし、Gen5リドバイバを省略したせいで排他仕様が存在するし、メーカー公称値に満たない部分(Type-C給電能力)も見つかりました。
先日触ってばかりのB850 TOMAHAWKが予想以上に優れたクオリティだっただけに、B850 TUFの期待ハズレなパフォーマンスから落差が大きいです。
それでもブランド力は相変わらず最高峰でしょう。BCN調査によれば国内シェア20年連続1位ですし、他社が2~3年保証に移行する中、ASUSだけ頑なに1年保証を貫きます。
全体的にネガティブな評価になってしまいましたが、ゲーミングPC用に普通に使う分には問題ないです。きちんとCPUとグラボの性能が出ますし、USBポートはすべて正常に動作します。
Ryzen 9 9950X(200 W)を余裕で動かせるVRMフェーズを備え、適切なエアフローがあれば長時間の連続負荷にも難なく耐えられます。
ただ、約3.6~3.7万円に見合う価値が基板に乗っているか、冷静に考えたとき「微妙だな」と言わざるを得ないマザーボードです。
約3.6~3.7万円で安定しています。ポイント還元の大きいショップなら、実質3.3万円から狙えます。
以上「ASUS TUF GAMING B850-PLUS WIFIレビュー:価格と性能が見合わない残念なマザボ」でした。

自作PCのおすすめプラン解説【予算別】
AMD Ryzenで自作PC【組み立てガイド】
マザーボードのレビュー記事まとめ
3万円超えはXとかZの領域なイメージ