大人気のミドルクラスGPU「RX 9060 XT」は2種類あります。
VRAM容量が8 GBと16 GBです。どちらもほとんど同じ基本スペックを備え、単純にVRAM容量だけが違います。
価格差が約1万円もあるから、コスパ重視で容量8 GB版が気になっている人も少なくないはず。なので「RX 9060 XT」を「RTX 5060 Ti」や「RX 7600」と詳しく比較ベンチマークします。
ベンチマーク用にASRock Japan(@AsrockJ)さんより、Radeon RX 9060 XT 8GBを無償で1台提供してもらいました。比較に出すグラフィックボードや、ベンチマークソフトの指定は一切なかったです。シンプルに性能比較ができます。

(公開:2025/7/8 | 更新:2025/7/8)
「Radeon RX 9060 XT」の仕様とスペック

GPU | RX 9060 XT 8GB | RTX 5060 Ti 8GB | RX 7600 |
---|---|---|---|
プロセス | 5 nm製造 : TSMC N4P | 5 nm製造 : TSMC 4N | 5 nm製造 : TSMC N5 |
シェーダー数CPUのコア数に相当 | 2048 (4096) | 4608 | 2048 (4096) |
RTコア数レイトレ特化コア | 32 | 36 | 32 |
Tensorコア数AI特化コア | 64 | 144 | 64 |
ブーストクロック | 3130 MHz | 2572 MHz | 2655 MHz |
VRAM | GDDR6 8 GB | GDDR7 16 GB | GDDR6 8 GB |
理論性能(FP32) | 25.64 TFLOPS | 23.70 TFLOPS | 21.75 TFLOPS |
TDP | 150 W | 180 W | 165 W |
補助電源 | 8 pin | 8 pin | 8 pin |
MSRP | $ 299 | $ 379 | $ 269 |
参考価格 | 49800 円 | 59800 円 | 36800 円 |
発売価格 | 52980 円 | 69800 円 | 44800 円 |
発売 | 2025/6/6 | 2025/4/16 | 2023/5/26 |
GPU | RX 9060 XT 8GB | RTX 5060 Ti 8GB | RX 7600 |
---|---|---|---|
世代 | RDNA 4.0 | Blackwell | RDNA 3.0 |
プロセス | 5 nm製造 : TSMC N4P | 5 nm製造 : TSMC 4N | 5 nm製造 : TSMC N5 |
トランジスタ数 | 297.0 億 | 219.0 億 | 133.0 億 |
ダイサイズ | 199 mm2 | 181 mm2 | 204 mm2 |
シェーダー数CPUのコア数に相当 | 2048 (4096) | 4608 | 2048 (4096) |
TMU数Texture Mapping Unit | 128 | 144 | 128 |
ROP数Render Output Unit | 64 | 48 | 64 |
演算ユニット数 | 32 | 36 | 32 |
Tensorコア数機械学習向けの特化コア | 64 | 144 | 64 |
RTコア数レイトレ用の特化コア | 32 | 36 | 32 |
L1キャッシュ演算ユニットあたり | – | 128 KB | 128 KB |
L2キャッシュコア全体で共有 | 4.0 MB | 32.0 MB | 2.0 MB |
L3キャッシュコア全体で共有 | 32.0 MB | – | 32.0 MB |
クロック周波数 | 2530 MHz | 2407 MHz | 2250 MHz |
ブーストクロック | 3130 MHz | 2572 MHz | 2655 MHz |
VRAM | GDDR6 8 GB | GDDR7 16 GB | GDDR6 8 GB |
VRAMバス | 128 bit | 128 bit | 129 bit |
VRAM帯域幅 | 322.3 GB/s | 448.0 GB/s | 288.0 GB/s |
理論性能(FP32) | 25.64 TFLOPS | 23.70 TFLOPS | 21.75 TFLOPS |
SLI対応 | – | – | – |
PCIe | PCIe 5.0 x16 | PCIe 5.0 x8 | PCIe 4.0 x8 |
TDP | 150 W | 180 W | 165 W |
補助電源 | 8 pin | 8 pin | 8 pin |
MSRP | $ 299 | $ 379 | $ 269 |
参考価格 | 49800 円 | 59800 円 | 36800 円 |
発売価格 | 52980 円 | 69800 円 | 44800 円 |
発売 | 2025/6/6 | 2025/4/16 | 2023/5/26 |
「RX 9060 XT」は、高騰気味な昨今のグラフィックボード事情で珍しく約5万円(ときに5万円切り)で買えてしまう、比較的・・・お手頃価格なミドルクラス向けグラボです。
ナンバリング的なライバルが「RTX 5060 Ti(8GB版)」ですが、RX 9060 XTより約1万円も高いくせに、VRAM容量が8 GBしか入ってないから絶不調。
RX 9060 XTも同じくVRAM容量が8 GBしか入っていませんが、価格が相応に安いから一定の支持を得られそうですし、約1万円追加して容量16 GBを選ぶ手もあります。
モンスターハンターワイルズをはじめ、とにかくVRAM容量が槍玉に上がりやすいPCゲーム世論の中、あえて「価格が安ければ許される」を攻めているのが容量8 GB版のRX 9060 XTです。

世代がRDNA 3から最新のRDNA 4に更新されました。
コスパの高いゲーム性能に加えて、従来世代(RDNA 3)の課題を解消する設計上の改良が加えられています。
- レイトレーシング性能アップ(理論値:2倍)
- AI処理性能アップ(理論値:2~4倍)
- AIコアを活用した超解像「FSR 4」
- 動画エンコードの品質アップ(理論値:1.25倍)
特に目立った弱点だったレイトレ性能が理論値で2倍に跳ね上がり、レイトレ有効時ならRX 7800 XTに匹敵するゲーム性能に期待できそうです。
AI処理性能も大きく向上し、ついにAIベースの超解像「FSR 4」に対応します。ジャギーや動きの破綻が目立つと評された「FSR 3」世代から大幅な画質向上が可能です。
動画のエンコードと再生を処理するメディアエンジンにも手が加えられ、従来世代と比較して最大1.25倍のエンコード品質です。
ゲーム性能以外のオプション部分にしっかり改良が入り、従来世代のミドルクラス(RX 7600など)より格段に「万人受け」するグラフィックボードに仕上がっています。
ただし、ここまでの解説はAMDが公開したデータシートにもとづく理論上のお話です。
実機レビューでRX 9060 XTが実際にどれほど改善され、ライバルのRTX 50シリーズと競合できるのかどうか。詳しく検証してみます。

RX 9060 XTの性能をベンチマーク比較

テスト環境 「ちもろぐ専用ベンチ機(2025)」 | ||
---|---|---|
![]() | Ryzen 7 9800X3D8コア16スレッド (3D V-Cache:64 MB) | |
![]() | NZXT Kraken X63280 mm簡易水冷クーラー | |
![]() | ASUS TUF GAMINGX670E-PLUS | |
![]() | DDR5-5600 16GB x2使用メモリ「Crucial Native DDR5」 | |
![]() | ASRock RX 9060 XT Challenger 8GB OC(機材提供:ASRock Japan) | |
![]() | NVMe 8TB使用SSD「WD Black SN850X」 | |
![]() | 1000 W(80+ GOLD)使用モデル「Corsair RM1000x」 | |
![]() | Windows 11 Pro 24H2(最新版:26100.3775) | |
ドライバ | NVIDIA 576.80 Radeon 25.6.2 | |
ディスプレイ | 3840 x 2160(240 Hz)使用モデル「LG 32GS95UE-B」 |
「RX 9060 XT」のベンチマーク検証では、ちもろぐ専用ベンチ機を使います。基本スペックは以上の通り。
CPUは最強のゲーミング性能を誇る「Ryzen 7 9800X3D(8コア)」を使い、メモリはBTOパソコンで標準的な「DDR5-5600」を32 GB(16 GBを2枚)です。
ベンチマーク用の莫大な数のゲームソフトやAIモデルを置いておくストレージは、容量8 TBのNVMe SSD(WD Black SN850X)を使います。

(4K 240 Hz対応ゲーミングモニター)
最大4K 240 Hz / フルHD 480 Hzに対応する、神速のゲーミングモニター「LG UltraGear 32GS95UE-B」が検証用モニターです。
一部のゲームで垂直同期(V-Sync)をうまく回避できないリスクが少なからず存在するから、物理的にリフレッシュレートが高いゲーミングモニターを使って事前にリスクを抑えます。
- NVIDIA GeForce Graphics Drivers 576.80 WHQL
- AMD Radeon Graphics Drivers 25.6.2 WHQL
テスト時のドライバはGeForce側が「576.80」、Radeon側は「25.6.2」を使います。どちらもテスト時点で一般公開されている安定版ドライバです。

(ASRock RX 9060 XT Challenger 8GB OC)
ASRock Japanさんに提供していただいた検証用のRX 9060 XT 8GB(Challengerモデル)です。
GPU | RX 9060 XT 8GB (ASRock Challenger OC) | RX 9060 XT 8GB (AMD公式スペック) |
---|---|---|
プロセス | 5 nm製造 : TSMC N4P | 5 nm製造 : TSMC N4P |
シェーダー数CPUのコア数に相当 | 2048 (4096) | 2048 (4096) |
RTコア数レイトレ特化コア | 32 | 32 |
Tensorコア数AI特化コア | 64 | 64 |
ブーストクロック | 3290 MHz(+5.1%) | 3130 MHz |
VRAM | GDDR6 16 GB | GDDR6 16 GB |
理論性能(FP32) | 26.95 TFLOPS | 25.64 TFLOPS |
TDP | 170 W(+13.3%) | 150 W |
補助電源 | 8 pin | 8 pin |
参考価格 | 49800 円 | 52980 円 |
AMD公式スペック(リファレンス基準)と比較して、ゲーム時のブーストクロックが約5%増えているオーバークロック版です。


92 mm径の冷却ファンを2個、厚み41 mmのヒートシンク、6 mm径ヒートパイプを3本装備するスタンダードな冷却設計です。
スタンダードな設計に抑えた分、もっとも手頃な価格帯で買える最安値クラスに位置します。
昨今のデュアルファンモデルとして比較的コンパクトな筐体でも、最大170 Wほどの熱を問題なく処理できます。

- Display Port 2.1a(UHBR13.5 = 54 Gbps)
- Display Port 2.1a(UHBR13.5 = 54 Gbps)
- HDMI 2.1b(FRL12x4 = 48 Gbps)
映像出力端子は全部で3本です。
上位モデル(RX 9070以上)のチップサイズを、そのまま半分にカットした都合により、映像出力を最大3本しか出せないと聞いています。
それぞれ転送レート(帯域幅)が約48 ~ 54 Gbpsも確保され、WQHD(480 Hz)や4K(240 Hz)など高リフレッシュレートなゲーミングモニターに対応できます。

(8ピンの左側にあるスイッチでLED消灯)
補助電源コネクタは「PCIe 8 pin」です。念のため、各コネクタの供給電力(給電能力)を実測します。
供給電力 (測定 : Cybenetics) | ピーク値 (0.001秒) |
---|---|
PCIeスロット (PCIe x16) | 64.0 W |
PCIe補助電源 (PCIe 8 pin) | 178.0 W |
PCIeスロットから最大75 W(実測値:約64 W)まで、PCIe 8 pinから最大150 W(実測値:約178 W)まで、合計225 W(実測値:約239 W)を取り出せます。
RX 9060 XTを正常に動かすために、必要十分な電源コネクタです。
RX 9060 XTのゲーム性能をベンチマーク
全部で20本のゲームを使って、RX 9060 XTの性能を実際にベンチマークします。


- ベンチマークに使ったゲームタイトル
- ベンチマーク時の画面サイズ(解像度)
- 左から順番に「グラフィック設定」「ロケ地」「採用ゲームエンジン」
- 最低フレームレート(下位1%)
- 平均フレームレート
- フレームレート(横軸)
当ブログ「ちもろぐ」のゲーム性能グラフは以上6つの項目で構成され、そのうち太字で強調した2~5番がとても重要です。
- 画面サイズ(解像度)
画面サイズはそのままゲームプレイ時の解像度です。フルHD(1920 x 1080)→ WQHD(2560 x 1440)→ 4K(3840 x 2160)の3つを検証します。
4Kになるほど情報量が増えてディテールの細かい映像が表示されますが、それだけグラフィックボードにかかる負荷も増大して、平均フレームレートが大きく下がる要因です。
- グラフィック設定
ゲーム側の設定です。基本的に最高画質になるよう調整し、あまりにも重たすぎて検証にならない場合のみゲーム設定を妥協します。
なお、参考程度に検証したゲームで使われている「ゲームエンジン」も掲載しています。エンジンによって性能の傾向がそこそこ変わるので、相関性に着目すると何か発見があるかもしれません。
- 平均フレームレート
Intel社が開発したフレームレート測定ツール「PresentMon V2」を用いて、ゲームプレイ中の描写フレーム数を記録します(※記録方式:MsBetweenDisplayChange)。
1秒あたり60枚なら60 fpsで、240枚なら240 fpsです。記録したfpsをテスト時間で割って平均フレームレートを求められます。
平均フレームレートが高いほどヌルヌルとした快適な映像を表示できている証拠として扱えますが、平均値だけを見ていると誤った解釈をするリスクが出てきます。
- 最低フレームレート(下位1%)
平均値に加えて、記録したfpsのうち下から数えて1%の範囲に入っているワースト値もセットで掲載します。
ゲームプレイ中にfpsが不安定な挙動だと下位1%が著しく低い数値になり、平均値が高くても実際にプレイするとカクカクとストレスのたまる挙動をしている可能性に気づけます。
Apex Legends

平均fps最低fps(下位1%)
定番eSportsタイトル「Apex Legends」を最高グラフィック設定でベンチマーク。
RX 9060 XTは平均215 fpsに達します。従来世代(RX 7600)から大幅な性能アップです。

平均fps最低fps(下位1%)
最近トレンドになりつつあるWQHD(フルHDの1.8倍)なら、RX 9060 XTとRTX 5060 Tiが横並びに。

平均fps最低fps(下位1%)
競技FPSゲーマーからまったく支持がない4K解像度(フルHDの4倍)で、VRAM帯域幅が多いRTX 5060 Tiにリードされてしまいます。
RX 9060 XTは、おおむねRTX 3070相当の性能です。
なお、データをよく観察された方は「VRAM 8 GBと16 GBの差がほぼない?」と気づかれたと思います。そのとおり、VRAM容量の性能差は、ゲーム側がVRAMを大量に浪費しない限り顕在化しません。
逆に言えば、ゲーム側が湯水のようにVRAMを消費するなら、VRAM容量の性能差が突如として出現するはずです。さらにデータを確認して性能差が現れるか見てみましょう。
Escape from Tarkov(タルコフ)

平均fps最低fps(下位1%)
カルト的な人気を誇るサバイバル型FPSタイトル「タルコフ」を、カスタム高設定でベンチマーク。ドライバ側で1000 fps上限に上書きして144 fps上限を解除しています。
フルHDの結果は見ての通り、CPUボトルネックに阻まれてグラフィックボードの性能差がまったく出なかったです。
タルコフをプレイするならグラフィックボードをほどほどにして、CPUにお金を掛けるべきです。

平均fps最低fps(下位1%)
WQHDに引き上げると、グラフィックボードの性能差が出現します。
タルコフはVRAM帯域幅に敏感な傾向が見られ、RX 9060 XT(約332.3 GB/s)が、RTX 5060 Ti(約448.0 GB/s)に大きく追い抜かれます。

平均fps最低fps(下位1%)
4K解像度も性能差が縮小せず、RTX 5060 Tiに大きく(約40%もの)リードを許してしまいます。
なお、これほどVRAM帯域幅に敏感なゲームでも、VRAM容量による性能差が出ません。容量オーバーが発生しない限り、基本的に問題にならないからです。
Fortnite(フォートナイト)

平均fps最低fps(下位1%)
最新のUnreal Engine 5で制作されている大人気eSportsタイトル「フォートナイト」をベンチマーク。
グラフィック設定を最高プリセットにしてから、Nanite仮想化設定を「高」に抑えました。
全体的にRadeonシリーズが有利な傾向が明らかで、RX 9060 XTがRTX 5060 Ti 16GBに匹敵します。下位1%(落ち込み)もRX 9060 XTがやや有利です。

平均fps最低fps(下位1%)
WQHDもフルHDと似た傾向です。RX 9060 XTがRTX 5060 Tiに匹敵します。

平均fps最低fps(下位1%)
4K解像度で性能がわずかに逆転するものの、依然としてRX 9060 XTがRTX 5060 Tiに迫る性能でした。
Call of Duty : Black Ops 6

平均fps最低fps(下位1%)
グラフィック品質が高い有料FPSタイトル「Call of Duty : Black Ops 6」を、ゲーム内ベンチマークで検証します。
前作MWIIもそうでしたが、Call of DutyだとRadeonシリーズが猛威を振るう傾向です。RX 9060 XTがRTX 5060 Tiを約17%上回る性能です。

平均fps最低fps(下位1%)
WQHDになると性能差がさらに開いて、RX 9060 XTがRX 7700 XTに迫ります。

平均fps最低fps(下位1%)
4K解像度でもRadeon優位に変わりなく、RX 9060 XTが一貫してRTX 5060 Ti超の性能です。
そして懸念されたVRAM容量の性能差も相変わらず確認できません。さらにデータを確認します。
VALORANT

平均fps最低fps(下位1%)
競技シーンで著名なeSportsタイトル「VALORANT」を、最高グラフィック設定でベンチマーク。
最高画質でもテストしたグラフィックボードすべてがCPUボトルネックに衝突して、目立った性能差がまったく出ないです。

平均fps最低fps(下位1%)
しかし、WQHDからグラフィックボードの性能差が出始め、RX 9060 XTはRTX 5060 Tiに約30%も抜かされます。

平均fps最低fps(下位1%)
4K解像度もグラフィックボードの性能差をハッキリ確認できます。
RX 9060 XTは今ひとつ性能を発揮せず、RTX 5060 Tiに約40%以上の大差をつけられます。
Overwatch 2(オーバーウォッチ)

平均fps最低fps(下位1%)
日本でも人気が高いヒーロー型シューターFPS「オーバーウォッチ2」を、最高グラフィック設定でベンチマーク。
RX 9060 XTは当然のようにRTX 4060 TiやRTX 3070を過去のものにしますが、残念ながらRTX 5060 Tiにあと一歩届かなかったです。

平均fps最低fps(下位1%)
WQHDも同じ傾向です。

平均fps最低fps(下位1%)
4K解像度だとVRAM帯域幅も足を引っ張り、RTX 3070にすら逆転を許します。
Assetto Corsa EVO

平均fps最低fps(下位1%)
現実のようなリアルな挙動をウリにしている、マニア向けなレーシングシミュレーション「Assetto Corsa EVO」をベンチマーク。
パッチアップデートで全体的にパフォーマンスが改善されたものの、依然としてRadeonが振るわないゲームです。

平均fps最低fps(下位1%)
WQHDも同じ傾向で、Radeonがまったく性能を出せません。

平均fps最低fps(下位1%)
4K解像度もやはりRadeonが不利な状況がつづき、RTX 5060 TiどころかRTX 4060 Tiにすら届かないです。
首都高バトル

平均fps最低fps(下位1%)
日本国内で人気が高いレーシングシミュレーション「首都高バトル」をベンチマーク。なお、最高グラフィック設定が非常に重たかったため、1段階下げた高設定を使います。
Assetto Corsa EVOから一転してRadeonが急進撃を見せます。RX 9060 XTがRTX 5060 TiやRX 7700 XTに肩を並べる性能です。

平均fps最低fps(下位1%)
WQHDもRX 9060 XTとRTX 5060 Tiが並びます。

平均fps最低fps(下位1%)
一方、4K解像度からVRAM帯域幅の影響が見られ、毎秒448 GBの帯域幅を持つRTX 5060 Tiに逆転されます。
・・・加えて、首都高バトルの場合はGeForceよりRadeonの方が、わずかにVRAM消費量が増えています。
RTX 5060 TiならVRAM容量に関係なく一貫した性能でも、RX 9060 XTはわずかにVRAMをオーバーしてしまい、結果的にスワップが発生して性能を大きく落とす構造です。
VRAMに入り切らないデータをどうするか、ゲームによって挙動が違いますが、一般的に共有メモリ(メインメモリ)を拝借します。

- VRAM:約322 GB/s
- メインメモリ:約60 ~ 80 GB/s
- PCIeスロット:約32 GB/s
1秒あたりのデータ転送速度を比較すると、VRAMは3桁GB/sに対して、メインメモリとPCIeスロットはせいぜい2桁GB/sです。
グラフィックボードから見てPCIeスロットの速度があまりにも遅すぎて、データ転送の待ち時間が大量に発生します。
グラボが何もせず、ただボーッと待ってる時間が増え、結果的にフレームレートが大きく下がる現象が「スワップ」です。
モンハンワイルズ(MH Wilds)

平均fps最低fps(下位1%)
ゲーミングPC特需を引き起こすほど熱狂的な人気を誇っていた(過去形)、国産サバイバルアクション「モンスターハンターワイルズ」をベンチマーク。
全マップをくまなく探索して、特に負荷が高かった「緋の森(豊穣期)」をロケ地に選びました。プリセット「ウルトラ(レイトレ:高)」を適用してから、超解像とフレーム生成を無効化します。
テストの結果、重たいマップを選んだかいあってフルHDですら平均60 fps台を出せればマシなレベルです。RX 9060 XTは意外と優秀で、RTX 5060 Tiを50%も超えています。
ただし、最新パッチ(TU2)適用後のモンハンワイルズは、VRAM容量を少しでもオーバーすると画質を大幅に劣化させる仕様です。
フレームレートが出ているように見えても、画質がひどく悪化するためまったく持って無意味です。

平均fps最低fps(下位1%)
性能差がかなり開いていますが、画質がとんでもなく悪化しているから無意味です。

平均fps最低fps(下位1%)
4K解像度も同じ傾向です。
サイバーパンク2077

平均fps最低fps(下位1%)
オープンワールドアクションの傑作「サイバーパンク2077」をベンチマーク。プリセット「レイトレーシング:ウルトラ」を適用してから、超解像とフレーム生成を無効化します。
RX 9060 XTが、旧世代の上位モデル「RX 7700 XT」を上回る性能です。レイトレ性能の改良がきちんと功を奏す結果に。

平均fps最低fps(下位1%)
WQHDから、VRAM容量の足切りが始まります。

平均fps最低fps(下位1%)
4K解像度で完全に8 GBグループが競争から追い出されます。

Ghost of Tsushima

平均fps最低fps(下位1%)
PlayStation専売ソフトからPCに移植された、日本風アクションの傑作「Ghost of Tsushima」を最高画質でベンチマーク。
もともとプレステ向けに最適化されただけあって、Radeonが優位なゲームです(※PS5の中身がRadeonだから最適化されている説あり)。
フルHDの場合、RX 9060 XTがRTX 5060 Tiをあっさり打ち負かします。

平均fps最低fps(下位1%)
WQHDでも傾向が変わらず、引き続きRX 9060 XTが一貫してRTX 5060 Ti以上です。

平均fps最低fps(下位1%)
4K解像度でVRAM容量を少し超過してしまい、共有メモリを使うスワップ現象に見舞われて性能がやや下がります。
しかし、先ほど補足したように60番代のグラボ自体がそもそも4Kゲーミングに不向きです。
Path of Exile 2

平均fps最低fps(下位1%)
Path of Exile 2はアーリーアクセス版です。パッチごとにパフォーマンスの最適化が入り、過去のデータとまったく違う傾向を示す可能性があります。
加えて、他のゲームであまり見られない奇妙な負荷傾向が強いです。たとえば、WQHDと4K解像度でフレームレートが変わらない、新しいグラフィックボードに最適化がされていないなど。
GPUのスペックから実際の性能を予測するのが、ときに困難です。韓国の商業メディア「QuasarZone」でも、PoE2の奇妙な挙動が報告されており、筆者のテスト環境に特有の症状ではありません。
ハクスラ系の名作タイトル「Path of Exile 2(PoE2)」を最高画質でベンチマーク。雨や河川の描写で負荷が高いRiverbankマップをロケ地にしました。
RX 9060 XTはRTX 5060 Tiを超えていますが、なぜかRTX 4060 Tiに1割ほど届かない性能です。

平均fps最低fps(下位1%)
WQHDでもRX 9060 XTがRTX 5060 Tiを上回ります。

平均fps最低fps(下位1%)
4K解像度のベンチマーク結果です。
性能差がやや縮小しますが、RX 9060 XTがRTX 5060 Tiを超えています。
鳴潮(Wuthering Waves)

平均fps最低fps(下位1%)
ライブサービス型の大人気オープンワールドRPG「鳴潮(Wuthering Waves)」をベンチマーク。プリセット「グラフィック優先」を適用して、レイトレーシング:高(オプションすべて)を有効化します。
なお、Ver 2.3でレイトレーシング品質の向上パッチが入り、以前にも増してレイトレ時の負荷が跳ね上がっています。
鏡面反射と水面反射を多用するエリアで凄まじい負荷が発生し、ほとんどのグラフィックボードが120 fps上限すら維持できないです。
RX 9060 XTはレイトレが得意なRTX 5060 Tiを超えて、RX 7800 XTに匹敵する驚異の性能を発揮します。
なぜ容量8 GBならRTX 5060 Tiに勝てるのか、理由はシンプルにVRAM使用量です。鳴潮の最高画質なら、フルHDですらVRAM容量8 GBをきっかり使い潰します。
共有メモリとのスワップ現象が発生しますが、鳴潮の場合はどうやらRadeonにやや有利な傾向を示すようです。

平均fps最低fps(下位1%)
WQHDでは平均60 fpsすら出せないグラフィックボードが続出します。
引き続きスワップ現象が継続中ですが、RX 9060 XTが相変わらずRTX 5060 Tiと互角です。

平均fps最低fps(下位1%)
4K解像度も変わらない傾向です。
技術的な観点で、「鳴潮」とRadeonの相性は意外と良好です。
しかし、鳴潮はGeForceなら「DLSS 4 SR(超解像)」と「DLSS FG(フレーム生成)」に対応しており、信じられないほど高画質かつ高品質なフレームレート倍増が可能です。
一方でRadeonだと未だに「FSR 2.x SR(古い超解像)」しか使えず、低品質なフレームレート倍増に制限されています。
有志制作ツール「OptiScaler」と「Nukem’s DLSSG-to-FSR3」の合せ技で、「FSR 3.1 SR」と「FSR FG(フレーム生成)」を実装できますが、アカウントBANのリスクを考えると推奨しづらいです。
現時点(2025/06)で、鳴潮をするならRadeonは積極的におすすめできません。技術的な相性が良くても、機能面でGeForceに大きく引き離されています。

ゼンレスゾーンゼロ(ZZZ)

平均fps最低fps(下位1%)
ライブサービス型の大人気アクションRPG「ゼンレスゾーンゼロ」をベンチマーク。
フルHDの場合、CPUボトルネックに制限されてグラフィックボードの性能差がまったく出ないです。

平均fps最低fps(下位1%)
WQHDからCPUボトルネックが軽減し、グラフィックボードの性能差が出現します。
なぜかVRAM容量8 GBモデルが高性能になる不可思議な傾向です。

平均fps最低fps(下位1%)
4K解像度で両者の性能差がさらに開きますが、やはり8GB版がなぜか16GB版より少しだけフレームレートが高くなる傾向です。
崩壊スターレイル(Starrail)

平均fps最低fps(下位1%)
今どきめずらしいターン制RPGの超人気作「崩壊スターレイル」をベンチマーク。ランダムなスタッターが発生するゲームだから、最低フレームレート(1%)は参考程度に。
全体的にGeForceに優位、かつVRAM帯域幅も効果的な傾向です。RX 9060 XTはせいぜいRTX 4060 Ti程度の性能で、RTX 5060 Tiになんと4割も抜かされます。

平均fps最低fps(下位1%)
WQHDで性能差がさらに拡大します。RX 9060 XTとRTX 5060 Tiで約1.5倍の性能差です。

平均fps最低fps(下位1%)
4K解像度でも性能差の拡大を止められず、RX 9060 XTとRTX 5060 Tiで約1.5倍もの性能差に。崩壊スターレイルとRadeonの相性は絶望的に悪いです。
ステラーブレイド(Stellar Blade)

平均fps最低fps(下位1%)
メガニケ(勝利の女神:NIKKE)の開発元で知られるSHIFT UP社が開発した、買い切りアクションタイトル「ステラーブレイド」をベンチマーク。
プリセット「とても高い」を適用後、超解像とフレーム生成を無効化します。
PS5向けに開発されたタイトルだからRadeonが有利と思いきや、実際のパフォーマンスはGeForce有利です。
VRAM物理帯域幅の影響もかなり見られ、RTX 5060 Tiが勢いよく性能を伸ばします。RX 9060 XTはRTX 5060 Tiにまったく届かなかったです。

平均fps最低fps(下位1%)
WQHDでも、性能差が縮小しません。

平均fps最低fps(下位1%)
4K解像度でついにVRAM容量の足切りが始まります。8 GBグループは平均値と下位1%(落ち込み)どちらも16 GBグループと比較して不利です。
パルワールド(Palworld)

平均fps最低fps(下位1%)
継続的な無料アップデートの繰り返しで根強い人気を保っている、国産サバイバルゲームの傑作「パルワールド」をベンチマーク。
・・・前回のレビュー(2025/03)から相変わらずRadeonが振るわないゲームです。
RX 9060 XTとRTX 5060 Tiの性能差が、なんと約74%も開いています。
性能が上がると評判のβ版ドライバ(25.6.3)も検証したところ、むしろ0.7%の悪化でまったく改善しません。頑なにAMDはパルワールドへの最適化を拒絶します。

平均fps最低fps(下位1%)
WQHDもまったく性能が出ないです。

平均fps最低fps(下位1%)
4K解像度はさらに性能差が開いて、RTX 5060 Tiに約2倍近い差をつけられます。
シティスカ2(Cities : Skylines II)

平均fps最低fps(下位1%)
都市シミュレーションゲーム「Cities : Skylines II」をベンチマーク。そこそこスタッターが発生しやすいため、最低フレームレート(1%)は参考程度に。
フルHDはRX 9060 XTとRTX 5060 Tiがほぼ同じ性能です。

平均fps最低fps(下位1%)
WQHDもRX 9060 XTとRTX 5060 Tiが横並びの性能です。

平均fps最低fps(下位1%)
4K解像度も同様です。
マインクラフト(Bedrock Edition)

平均fps最低fps(下位1%)
誰もが知ってるサンドボックスゲーム「マインクラフト(Bedrock版)」に、レイトレーシングを実装する「Vanilla RTX」シェーダーを導入してベンチマーク。
RX 9060 XTとRTX 5060 Tiが割と近い性能です。レイトレ性能が強化されたおかげで、RX 9060 XTがRX 7800 XTに匹敵します。

平均fps最低fps(下位1%)
WQHDに引き上げると傾向が変わります。全体的にRTX 50シリーズが性能を伸ばし始め、RX 9060 XTとの性能差が開いていく傾向です。

平均fps最低fps(下位1%)
4K解像度でRTX 50シリーズが性能をさらに伸ばし、RX 9060 XTと性能差が開きます。
VRChat

平均fps最低fps(下位1%)
ベンチマークの難しさで知られる、VRゲームの代表例「VRChat」をベンチマーク。グラフィック設定をすべて最大値にして、オブジェクト数が多くGPUに負荷がかかりやすいワールドを使います。
フルHDの場合、RX 9060 XTはあまり振るわず、RX 7600 XTやRX 7600(無印)と大差ない結果に終わります。

平均fps最低fps(下位1%)
WQHDでも傾向は同じどころか悪化します。

平均fps最低fps(下位1%)
4K解像度で性能差がますます開いてしまい、VRAM物理帯域幅の少なさが足を引っ張る要因に。
- RTX 3070(448 GB/s)
- RTX 5060 Ti(448 GB/s)
- RTX 4060 Ti(288 GB/s)
- RX 9060 XT(322 GB/s)
- RX 7600(288 GB/s)
レンダリング解像度が大きくなればなるほど、VRAM物理帯域幅を食いつぶします。
今回はせいぜい4K解像度ですが、実際のVRChatユーザーは片目あたり3K~4Kの世界らしく、解像度に換算して実質6K~8Kの超高解像度です。
VRAM物理帯域幅をさらに食いつぶすのは容易く想像できます。VRChatのためにRadeonを買うなら、RX 9060 XTはやめて、価格が安くなっているRX 7800 XTにしましょう。

【おまけ】定番ベンチ「3DMark」の比較スコア

4K解像度(3840 x 2160)で動作する重量級ベンチマーク「Steel Nomad」のGPUスコアを比較しました。
RX 9060 XTとRTX 5060 Tiのスコアがほとんど互角です。
なお、Steel Nomadはグラフィックボードに理想的な負荷がかかった場合の、ある意味「理論値」を示すベンチマークです。
実際のゲームならVRAMを食いつぶしてスワップに襲われたり、帯域幅が足を引っ張ってうまく性能を伸ばせなかったり、ロクに最適化されていないせいでマトモに性能が出ないなど。
ゲームタイトル次第でいくらでも性能が大きく変動すると判明しています。あくまでも、ざっくりとしたイメージ図と捉えています。
RX 9060 XTの平均ゲーミング性能
平均フレームレートを比較(20ゲーム)

平均fps最低fps(下位1%)
ベンチマークした全20個のゲームから、RX 9060 XTの平均パフォーマンスを計算したグラフです。
RX 9060 XTのフルHD性能は、RX 7700 XT相当、RTX 5060 Ti以上です。

平均fps最低fps(下位1%)
RX 9060 XTのWQHD性能もフルHDとおおむね同じで、RX 7700 XTと同程度、RTX 5060 Ti以上に相当します。

平均fps最低fps(下位1%)
RX 9060 XTの4K性能は性能差が開き、RTX 5060 Tiに大幅な逆転を許します。
【ラスター】平均fpsを比較(16ゲーム)

平均fps最低fps(下位1%)
Radeonにとって不利になりやすい「レイトレーシング」のデータを差し引いた、ラスタライズ性能(非レイトレ性能)の平均パフォーマンスです。
ラスタライズに絞っても伸びが悪いですが、たいてい「パルワールド」が原因です。AMDがパルワールドの深刻な最適化不足を修正するだけで、平均パフォーマンスが大幅に改善されます。

平均fps最低fps(下位1%)
WQHDのラスタライズ性能も同じ傾向が続きます。

平均fps最低fps(下位1%)
4K解像度だと性能差が開いてしまい、RTX 3070にすら抜かれてしまいます。
【レイトレ】平均fpsを比較(4ゲーム)

平均fps最低fps(下位1%)
レイトレーシングだけに絞った平均パフォーマンスも見てみましょう。
「モンハンワイルズ」や「マインクラフト」など、比較的Radeonが得意なタイトルが含まれるため、ラスタライズ平均よりマトモな性能です。
RX 9060 XTは従来世代のハイエンドモデルRX 7800 XTに迫る性能を見せ、レイトレ性能の向上が明らかです。


平均fps最低fps(下位1%)
WQHDのレイトレ性能です。RX 9060 XTがRX 7700 XTとほぼ互角です。

平均fps最低fps(下位1%)
4K解像度のレイトレ性能です。引き続きRX 7700 XTと互角の性能を維持し、RTX 5060 Tiを(数値上は)上回る性能です。
RX 9060 XTのAIアップスケーリング性能
最新のAI超解像モデル「FSR 4」に対応
超解像 | AMD FSR (FidelityFX Super Resolution) | NVIDIA DLSS (Deep Learning Super Resolution) | Intel XeSS (Xe Super Sampling) |
---|---|---|---|
最新世代 | CNN + Transformerモデル | Transformerモデル | 機械学習 + フレーム生成対応 |
1世代前 | フレーム生成対応 | CNNモデル + フレーム生成対応 | 機械学習で超解像 |
2世代前 | 機械学習なし (前後参照の動き検出) | 機械学習(CNN)で超解像 | – |
3世代前 | 機械学習なし (Lanczosフィルタ) |
フレームレートを底上げする超解像(アップスケーリング)機能として、RX 9000シリーズは最新モデル「FSR 4(FidelityFX Super Resolution 4)」に対応します。
RX 9000シリーズは従来モデルと比較して、AI性能が大幅に強化されています。特にFP8ネイティブ対応が大きく、理論値だけなら従来比で約4倍相当です。

(FSR 4からついに機械学習補正に対応)
大幅に強化されたAI性能を超解像で使うように改善された、最新モデルが「FSR 4」です。従来世代のFSRはAIを使わない単純な超解像でしたが、FSR 4から競合のDLSSと同じAI超解像へ進化します。
ただし、機械学習(AI)を使った超解像はAI性能を必要とするため、AI性能が低い従来のRadeonは非対応です。最新モデル「FSR 4」を使うなら、RX 9000シリーズが必須です。
「FSR 4」と他社の超解像モデルで画質を比較
「FSR 4」「FSR 3.1」「DLSS 4」「DLSS 3」に対応している「サイバーパンク2077」で、パフォーマンス品質の超解像とフレーム生成(2X)を入れて、分かりやすい比較画像を用意しました。
ネオンの細いラインに画質の違いがハッキリと出ます。最新のFSR 4ならジャギーをかなり軽減しつつ、実際よりもネオンが太く表示される傾向が少ないです。
旧式のFSR 3.1だと実際よりもネオンが太くなり、階段状のジャギーが目立っています。英字看板「MARK X 24」のりんかく線の精細感も改善されています。

アスファルトのディティール表現が別次元の画質です。FSR 3.1はピントが手前にズレたボケボケ画質で、FSR 4ならくっきり明瞭でパキッとした画質に。
奥の方に見えるガードレールの反射光に頻出する階段状ジャギーも大幅に軽減されています。
AI超解像が再現に失敗しやすい規則正しいテクスチャの表現をチェック。
FSR 3.1の場合、左側のオレンジ画面はテキストがぼんやりと表示され、FSR 4ならピントが一致したようにクッキリしたテキストを表示できます。
一方で右側の画面は文字の羅列がぐちゃぐちゃと混ざってしまい、まったく読み取れなくなるAI超解像に特有のエラーが発生します。
文字がぐちゃぐちゃになる症状はDLSS 3でも見られますが、最新のDLSS 4モデルで見事に改善しているあたりに・・・、FSR 4はまだまだAI超解像の新参者といえそうです。
わざわざ説明しなくとも、すぐ分かるレベルの画質差です。とにかくFSR 3.1が表示する映像は、まるでピントが合ってないぼやぼや感があり、FSR 4でクッキリとピントが一致します。
「24時間営業」の背後にあるタイル張りの壁面に注目してください。
DLSS 3 / 4はタイルのつなぎ目とネオンの反射光をうまく再現でき、対するFSR 3.1 / 4だと上から油絵で塗りつぶしたように、つなぎ目が潰れて反射光のりんかくもボヤけています。
FSR 3.1からFSR 4で目立って改善されているポイントは、やはり手前に見える金属柵です。階段状のジャギーがかなり少ないです。
「モンスターハンターワイルズ」も一応チェックします。
ハンターの髪、背中に背負っている武器のりんかくやテクスチャなど、FSR 4のほうが明らかに高画質です。ピントが合っていない背景も、FSR 4ならシャープな仕上がりです。
細かい背景描写もFSR 4が圧倒的に優れています。FSR 3.1だと、太めの筆で描いたような、のっぺりとした画が表示されます。
FSR 4ならちゃんと細い筆を使ったていねいな仕上げに見え、ボヤケた輪郭線がクッキリ修正され、正確な植生が再現されています。
・・・もう説明不要でしょう。誰だって実際に見れば、FSR 3.1とFSR 4の画質差なんてあっさり分かります。

超解像 + フレーム生成時の平均fpsを比較
今回ベンチマークに使った20本のゲームから、「FSR 4」と「DLSS 4」どちらも使える2本のゲームを使って、超解像 + フレーム生成時の性能を検証します。
- モンハンワイルズ
(DLSS 4オーバーライド / FSR 4オーバーライドで対応) - サイバーパンク2077
(DLSS 4対応 / FSR OptiScalerで対応)
モンハンワイルズはドライバ側の上書き機能(オーバーライド機能)で最新モデルに切り替え可能です。
サイバーパンク2077はDLSS 4にネイティブ対応する一方、なぜかFSR 4に未対応で上書きもできない仕様です。
- cdozdil / OptiScaler
(https://github.com/cdozdil/OptiScaler)
本来ならAMDが提供するべき機能ですが・・・文句を言っても仕方ないです。有志が制作した上書きフリーソフト「OptiScaler」でFSR 4に切り替えます。

平均fps最低fps(下位1%)
フルHDで平均60 fps台を出せればマシだったネイティブ動作から、超解像 + フレーム生成を加えるとなんとか100 fps台に乗ります。
DLSS 4よりFSR 4のほうが計算負荷も軽く、レイトレ性能の向上も効いて、RX 9060 XTが見事にRTX 5060 Tiを約20%ももリードする性能です。
・・・もちろん、モンハンワイルズ特有のトリックが隠されています。
実は、FSR 4適用時でもVRAM超過後の画質劣化が頻発します。
フルHDですら容量8 GBのVRAMをすべて食いつぶし、共有メモリにデータが漏れると画質の劣化が始まり、「画質を下げてフレームレートを上げる」ひどい挙動です。
要するにカプコンは「匙を投げた」わけです。数値上のフレームレートが高いだけで、実際に得られるゲーム体験は大幅に劣化します。

平均fps最低fps(下位1%)
WQHDでもRX 9060 XTが圧巻の性能を見せていますが、画質が大幅に劣化します。

平均fps最低fps(下位1%)
4K解像度ですら凄まじい性能差ですが、何度も言うように画質が信じられないほど劣悪です。まったく意味のないデータです。

平均fps最低fps(下位1%)
RTX 4000シリーズに届かなかったサイバーパンク2077も、FSR 4によるAI超解像とフレーム生成の力を借りれば、見ての通りRTX 5060 Tiに比肩する性能に。
従来世代のハイエンドにあたるRX 7800 XT(FSR 3.1)を約7%上回る性能です。前世代(RX 7600無印)と比較すると、約1.7倍強の圧倒的な性能アップ幅です。
FSR 3.1よりFSR 4のほうが計算負荷が重たいハンデを抱えていても、大幅に改善されたレイトレ性能に支えられ、旧世代(RDNA 3)をあっさり引き離します。

平均fps最低fps(下位1%)
WQHDもフルHDと同じ傾向です。

平均fps最低fps(下位1%)
4K解像度でようやくVRAM容量による足切りが始まり、容量16 GB版と比較して約1.8倍の性能差です。スワップが発生するとどうしようもないです。

RX 9060 XTのクリエイティブ性能を比較
ここからは、Radeonシリーズであまり検証されない傾向が強い「クリエイティブ性能」を詳しくテストします。
AMDが発表したプレスリリース資料いわく、今回のRDNA 4世代はクリエイティブ性能にかなりメスが入れられ、汎用性の高い性能に期待できます。
クリエイティブ性能に影響するスペックを把握しましょう。
GPU | RX 9060 XT | RTX 5060 Ti |
---|---|---|
VRAM帯域幅 | 322 GB/s | 448 GB/s |
FP16 / 演算回数 | 51.3 TFLOPS | 47.4 TFLOPS |
FP8 / 演算回数 | 102.6 TFLOPS | 94.8 TFLOPS |
INT8 / 演算回数 | 410.2 TOPS | 379.2 TOPS |
INT4 / 演算回数 | 820.5 TOPS | – |
FP4 / 演算回数 | – | 758.4 TOPS |
RDNA 4世代から、FP16演算のサイクルあたり実行回数が従来比で2倍、INT4演算で8倍です。スペック上の計算性能が大幅に改良されて、数値だけならRTX 50シリーズに並びます。
しかし、依然としてソフトウェア対応がRadeonシリーズの課題です。ハードウェアの性能がどれだけ改善されても、その性能を活かせるソフトウェア群がなければ無用の長物です。
スペックシートから計算できる理論値だけなら、RTX 5060 Tiと少なくとも互角の演算性能に見えますが、実際に動かすとどうなるでしょうか・・・?
GPUレンダリング

定番のGPUレンダリングソフト「Blender」を使って、RX 9060 XTのレンダリング性能をベンチマーク。
スペックの割にRX 9060 XTのレンダリング性能は振るわず、RTX 5060 Tiに約3倍近い大差をつけられます。
Radeonは「AMD HIP」ライブラリでレンダリングを処理し、GeForceは「Optix(CUDA)」ライブラリで処理します。
ソフトウェア最適化の差がそのまま反映された結果です。何年も前から指摘され続けているから、そろそろAMDが重たい腰をあげて修正するべき問題に思えます。
Blenderスコアの内訳です。monster / junkshop / classroomどれをとっても一貫してRX 9060 XTが弱いです。

AIイラスト生成(Stable Diffusion)

AIイラスト生成ソフト「ComfyUI」を使って、Stable Diffusionの生成スピードを検証します。
一般的に「iterations / seconds(1秒あたりのステップ数)」が指標として扱われますが、意外と長いVAEデコード時間が含まれないため、しばしば誤解を招く要因です。
よって本記事では、生成にかかった総時間(Prompt executed)を性能指標に使います。
- GeForceシリーズ:NVIDIA CUDA
- Radeonシリーズ:AMD ROCm
- Intel Arcシリーズ:IPEX
GeForceシリーズは「CUDA」版、Radeonシリーズは「ROCm(TheRock Wheel)」版を使います。どちらもWindows環境で動作し、テスト時点のpytorchバージョンは「2.7.1+cu128」です。
特に記載なければ、VRAMオプション(–lowvramなど)やCross Attention Method(–use-quad-cross-attentionなど)を使用しません。TeaCacheやWaveSpeedなどの高速化カスタムノードも当然使わないです。

Novel AIが配布している初代Novel AI(nai-anime-v1-full)モデルを使って、定番のアスカベンチマーク(512 x 512)をテスト。
RX 9060 XTは動作しません。2025年6月時点のサポート表を確認すると、
ROCm(TheRock)対応状況 github.com より | ||
---|---|---|
型番 | 対応 | 具体例 |
gfx1201 | ✅ |
|
gfx1200 | ❌ |
|
gfx1151 | ✅ |
|
gfx110x | ✅ |
|
gfx1200(RX 9060シリーズ)のみ、サポート対象外(❌)です。

最近流行りなSDXLモデル「Illustrious-XL」から派生した「NoobAI-XL V-Pred-1.0」を使って、神里綾華ベンチマーク(832 x 1216)をテスト。
やはり、RX 9060 XTは動作しません。
バッチサイズを変更して、同時に複数ずつ生成させても結果に目立った変化は見られません。

処理速度が理論値で4倍に増えている「FP8」モードで同じテストをします。
一貫してRX 9060 XTは動作しません。

構図やポージングを正確に指示できるControlNetモデル「AnyTest v4」を併用して、神里綾華 to アスカベンチマーク(832 x 1216)をテスト。
相変わらずRX 9060 XTは動作しないです。

FP8版も動作しません。

等倍で生成したイラストに忠実なまま、ディティール(書き込み)を増やしてアップスケーリングする「ControlNet Tile」と「Tiles Diffusion」の合せ技をベンチマーク。
等倍部分を25ステップ、アップスケーリングを15ステップで生成させます。RX 9060 XTは動作しません。

AIテキスト生成(ollama)
ローカル環境で動くChatGPTをベンチマークします。生成ソフトに「ollama」、生成モデルは「DeepSeek-R1-Distill-Qwen(GGUF版)」です。
「モンハンワイルズにおすすめなゲーミングPCについて約6000文字で解説してください」と英語で質問して、1秒あたりの回答スピード(token/s)で比較します。
なお、RX 9000シリーズは「LM Studio」を使って生成します。レビュー時点でollamaがRDNA 4世代にまだ未対応でした。

軽量な8Bモデルの場合、RX 9060 XTはRTX 5060 Tiに約1.2倍ほど遅い回答スピードです。
VRAM容量による性能差も出ません。生成モデルがVRAMに収まっている限り、GPUの性能が同じならまったく同じ性能を発揮します。

標準的な14Bモデルで、生成モデルがVRAMに入り切らず、共有メモリを使い始めます。
メインメモリやPCIeスロットに制限され、生成スピードが大きく低下します。

重量級の32Bモデルも当然ながらVRAM容量に入り切らずメインメモリにデータが溢れてしまい、大幅な性能ダウンに見舞われます。
4K素材で動画編集

Premiere Pro CCに4K動画素材を入れて、Puget Benchスクリプトでベンチマークした結果です。
RX 9060 XTの総合スコア(Overall Score)は約10283点で、RTX 5060 Ti 16GBに約20%の差をつけられます。
LongGOP形式の処理速度はRTX 5070 Tiすら超える一方で、RAW編集とエフェクト処理(GPUエフェクト)はイマイチ性能が伸びないです。

ハードウェアの性能をゴリゴリと使ってくれる無料の動画編集ソフト「Davinci Resolve Studio」を、Puget Benchスクリプトでベンチマーク。
RX 9060 XTの総合スコア(Overall Score)は約7560点で、RTX 5060 Tiより1割ほど遅いです。
Premiere Proと同様にLongGOP形式なら高い性能ですが、エフェクトやFusionなどCG処理になると性能がいきなり鈍化する傾向です。
RAW写真のAIノイズ除去

(歪曲収差で歪んでしまった直線も復元)
「DxO PureRAW」を使って、RAW写真のノイズ除去をベンチマークします。
PureRAWに搭載されている生成モデル「DeepPRIME XD2s」は、ローカル環境で使えて、そのうえ凄まじいノイズ除去と歪み補正を高速で処理できる優れたモデルです。

Sony a7CIIで撮影した3300万画素のRAW写真(5枚)から、ノイズと歪みをAI除去するのにかかった時間です。
RX 9060 XTはRTX 5060 Tiよりも高速に処理でき、従来世代(RX 7600無印)から約1.2倍も高速化します。
動画エンコードの速度
動画エンコードの処理速度(1秒あたりの変換フレーム数 = fps)をベンチマークします。
- GeForce:NVEnc
github.com/rigaya/NVEnc/releases - Radeon:VCEEnc
github.com/rigaya/VCEnc/releases - Intel Arc:QSVEnc
github.com/rigaya/QSVEnc/releases
rigayaさんが公開している各エンコーダに対応する動画変換ソフトを使って、動きが激しいゲームプレイ中の録画動画をエンコードします。
なお、エンコード設定は「品質(VMAFスコア)」で正規化して、圧縮率(実効ビットレート)も可能な限りそれぞれ近づけています。
同じ変換品質かつ近い圧縮率でエンコードした場合の処理速度を比較します。

大手配信サービス「NETFLIX」が開発した、エンコード前後の劣化具合を数値化するスコアが「VMAF(Video Multimethod Assessment Fusion)」です。


動きが激しいシーンで頻発しやすいブロックノイズやディティール潰れを検出すると、VMAFスコアが大幅に下がります。
エンコード速度が速くてもVMAFが低ければ意味がないし、逆にVMAFが高くてもエンコード速度が遅くても困ります。だからエンコード速度を正確に比較するために、VMAFスコアを揃えた設定でテストしました。

昔ながらの「H.264」形式エンコードです。
RX 9060 XTのH.264エンコードは恐ろしく高速で、従来比でほぼ2倍に達します。

ゲームの録画で重宝されている「HEVC」形式エンコードです。
RTX 5060 Tiと比較して約2.5倍もの圧巻の処理速度を叩き出します。

H.264形式より格段に圧縮率が高い最新規格「AV1」エンコードです。
AV1エンコードはRTX 40 / 50シリーズが得意とする分野ですが、RTX 5060 Tiはシングルエンコーダー仕様なため、エンコード速度でRX 9060 XTに勝てません。
デコーダー側の負荷次第で性能差が広がったり縮んだりしますが、基本的にRX 9060 XTがRTX 5060 Tiを打ち負かします。
動画エンコードの変換品質(VMAF)
動画エンコードの変換品質(VMAFスコア)を、ビットレートごとに調べます。

(縦軸 x:VMAF / 横軸 log:実効ビットレート)
エンコード速度が80 fps前後になるよう設定を正規化してから、実効ビットレートごとのVMAFスコアを散布図(scatter plot)にプロットしました。
RX 9060 XT(RDNA 4世代)のH.264エンコードはかなり画質が向上しています。AMD公式によれば「H.264で+25%の改善」です。
今回のテストで測定された改善幅は、+1~29%で平均+14%に達し、ゲーム配信で使われるビットレート(4~12 Mbps)に絞れば平均+19%の画質アップです。
9~12 Mbps付近で約25~29%もの画質アップが確認でき、おおむねAMDが宣伝するとおりの改善が見られます。


(縦軸 x:VMAF / 横軸 log:実効ビットレート)
RX 9060 XT(RDNA 4世代)のHEVCエンコードでも、やや大きめの改善が見られます。
AMDいわく+6%の改善です。今回のテストでは+0~19%の画質アップで、ゲーム配信でよく使うビットレートに絞ると平均+10%に達します。
かなり完全したものの、RTX 50 / 40シリーズ(NVEnc)にあと一歩及ばなかったです。

(縦軸 x:VMAF / 横軸 log:実効ビットレート)
AV1エンコードはほんのわずかな改善にとどまり、+0~7%の画質アップです。
低ビットレート域で平均2%しか改善できず、RTX 50シリーズにリードを許します。RTX 50以外のグラフィックボードは、どんぐりの背比べです。
フルHDと4K解像度のテスト結果です。
H.264エンコードで一貫してRX 9060 XTがトップクラスの品質(VMAFスコア)を叩き出し、HEVCエンコードで僅差の争い、AV1エンコードでRTX 50 / 40シリーズの次点に並びます。
OBSでゲーム配信録画
定番のゲーム配信ソフト「OBS Studio(v31)」で、モンハンワイルズをYouTubeに配信しながら同時に録画もします。

OBSなし録画配信中
VRAM容量がきびしい状態で、同時に録画と配信(OBS)を実行すると、RX 9060 XTのフレームレートが大幅に下がって下位1%(落ち込み)もガタガタです。
もともとRadeonの方が配信性能が安定しやすいですが、さすがにVRAM容量がカツカツの状態だと不安定です。

配信中のドロップフレーム数です。

(OBSの統計ログでドロップフレーム数を確認)
RX 9060 XTとRTX 5060 Tiどちらも、ドロップフレーム率が約90%超でマトモに配信できません。
エンコード設定(プリセット)を下げても変化なく、まったく安定して配信できないです。
RX 9060 XTで安定した動画配信をするなら、ゲーム側と配信側の解像度をフルHDで妥協して、負荷の軽いプリセットに切り替えるなど。少し工夫が必要です。
グラフィックスAPIの呼び出し回数
RX 9060 XTは、DirectX11とDirectX12の呼び出し回数が低く、Vulkanの呼び出し回数はトップクラスです。
・・・ベンチマークを開発したUL Benchmarkいわく、API Overheadはどのグラフィックボードを選んでも十分すぎるほど数値が高く意味をなさない、として隠された項目に入っています。
しかし、一部のゲームでRadeonがまったく性能を出せない原因を推測するうえで役に立ちそうな予感もします。

RX 9060 XTの消費電力を比較

(約20万円もする高価なワットモニター)
「Cybenetics PMD(Power Measurement Device)」を使って、グラフィックボードの消費電力をダイレクトに測定します。
グラフィックボードの付属ソフトや、フリーソフト「HWiNFO」を使えば、誰でもかんたんにグラフィックボードの消費電力をチェックできる時代です。
しかし、2024年頃から「PCIe 5.1」規格に対応するマザーボードが増えていて、マザーボード経由で最大165 W(12 V x 13.75 A)もの電力を供給できます。
仮にグラフィックボード本体が約300 Wを使っていたとして、マザーボード経由で165 Wも引っ張り出されると、ソフト読みに表示される消費電力は135 Wです。
PCIe 5.1規格の登場で、フリーソフトを使ったいわゆる「ソフト読み」の信頼性がPCIe 5.1以前よりも下がりました。

(PCIe x16スロットも見逃さない)
当ブログ「ちもろぐ」で使っているCybenetics Labs謹製PMDなら、PCIe 8 pin(12VHPWR / 12V-2×6)とPCIe x16スロットの消費電力を直接モニターできます。

(12VHPWR or 12V-2×6コネクタも対応)
電源ユニットの認証機関であるCybenetics Labsが制作しただけあって、肝心の性能と精度が抜群に優秀です。
- 測定周期:1秒あたり1000回(1ミリ秒)
- 電圧精度:1 mV(0.001 V)
- 電流精度:1 mA(0.001 A)
- 電力精度:1 mW(0.001 W)
1秒あたり1000回の測定回数で、瞬間的な消費電力の跳ね上がり(スパイク電力)を正確に捉えられます。
わずか0.001 Wの高い分解能により微弱な消費電力もきちんと測定して、PCIeスロット経由の消費電力やアイドル時の消費電力も追跡できます。
ゲーム時の消費電力とワットパフォーマンス

テストした20本のゲームプレイ中の消費電力(平均値)を比較したグラフです。
負荷が軽いフルHDの場合、RX 9060 XTは平均177 W消費します。RTX 5060 Tiより約30 Wも多いです。

WQHDゲーミング時の消費電力もほぼ同じ、平均178 Wです。

4Kゲーミング時の消費電力は、VRAM超過によるスワップが原因で少し減って平均173 Wです。
平均消費電力を平均パフォーマンスで割って、消費電力10ワットあたりのフレームレートを求めると、いわゆる「ワットパフォーマンス(電力効率)」を計算できます。
従来世代より軽く1.5倍以上の大幅なワットパフォーマンスの向上です。これだけ改善しても、RTX 50どころかRTX 40にすら届かないです。
フレームレート制限時のワットパフォーマンス

自由自在にfps制限ができる「RTSS」
Riva Tuner Statics Server(RTSS)を使って、ゲーム側の上限フレームレートをスライドしながら、グラフィックボードの消費電力をCybenetics PMDで記録します。

縦軸(x)が消費電力の実測値で、横軸(log)が実効フレームレートです。
45 fpsあたりからピーク性能に達するまで、一貫してRX 9060 XTがトップクラスの省電力性です。

フレームレートを消費電力で割って、1ワットあたりのフレームレート(ワットパフォーマンス)をプロットしたグラフです。
低フレームレート時にRTX 4060 Tiが首位を走り、60 fpsあたりからRX 9060 XTがトップを独走します。
アイドル時とエンコーダーの消費電力
AMDいわく、RX 9000シリーズは従来比でアイドル状態(何もしていない状態)の消費電力や、メディアエンジン(= ハードウェア支援)の効率に手を加えたらしいです。
本当に改善されているかどうか、微弱な消費電力を検出できるCybenetics PMDを使って少し深堀りしてみます。

ゲーミングモニター(4K 120 Hz)を1台つないで、バックグランドアプリをタスクキルして、LANケーブルを引き抜いてシステムをインターネットから隔離します。
デスクトップ画面の何もないところをダブルクリックしてシステムをアイドル状態に落とし込んだら、別のパソコンからCybenetics PMDを使って消費電力を測定します。
RX 9060 XTは平均わずか8.9 Wに抑えられ、RX 7600(無印)のほぼ半分まで減っています。RTX 5060 Tiと同等のアイドル消費電力です。

マルチディスプレイ時のアイドル電力も優秀です。
ゲーミングモニターを2台(4K 120 Hz + QHD 120 Hz)つないで、平均たった9.8 Wです。RTX 5060 Tiは2倍以上の平均22.7 Wを記録します。
AMD FreeSync Premium(G-Sync互換)の有無や、リフレッシュレートや解像度の組み合わせ次第で、いくらでも消費電力が変動する可能性が高いです。
掲載したデータはあくまでも筆者の環境だけで得られたデータに過ぎず、他人の環境で再現する保証は一切ありません。
なお、自分で測定するときは必ずシステムの外部から測定しましょう。システムの内部だと、測定ソフト自体がアイドル状態への移行を妨げてしまい、一向にアイドル時の消費電力を測定できないです。
VLC Media Playerで、高画質なゲームプレイ録画を再生します。動画を再生中の消費電力を、別のパソコンからCybenetics PMDで測定しました。
RX 9060 XTはH.264 / HEVC / AV1形式のどれを再生しても平均30 W程度です。メディアエンジンが従来世代よりも効率化されています。
少し変わったパターンの動画もテストします。上から順番に8K 60 fps / 8K 90 fps / フルHD 480 fpsの動画です。
おおむね平均35 Wで推移していて、デコーダーの効率改善が明らかです。加えて、RX 7900 XTXで滑らかに再生できなかった8K 90 fps動画が、RX 9060 XTならスムーズに再生できます。

動画エンコード時の消費電力もテストします。デコード時と同じく、RX 9060 XTは平均35 Wくらいで推移します。
ミドルクラスでも、RDNA 4世代のエンコーダーは電力効率がそこそこ向上しています。
スパイク電力をテスト(おすすめ電源ユニット)

(縦軸:消費電力 / 横軸:0.001秒ずつ測定)
グラフィックボードに変則的な負荷がかかると、瞬発的に消費電力が跳ね上がる「スパイク電力」が発生します。
近年の電源ユニットはスパイク電力を考慮して設計されているから、ほとんどの人はスパイクを気にする必要はありません。
しかし、スパイク電力が気になって仕方がないマニアなユーザーも少なからず存在するため、Cybenetics PMDで測定したミリ秒単位のスパイク電力を掲載します。

RX 9060 XTのスパイク電力はピーク時239 Wです。RTX 5060 Tiより少しだけ減っていて、逆にRX 9060 XT(16 GB版)より増えています。
電源ユニットのピーク容量 | ||
---|---|---|
容量 / 世代 | ATX 2.x | ATX 3.x |
650 W | 880 W | 1300 W |
750 W | 1015 W | 1500 W |
850 W | 1150 W | 1700 W |
1000 W | 1350 W | 2000 W |
CPUにCore i9 14900K(253 W)やRyzen 9 9950X(230 W)を使う前提でも、容量650 ~ 750 Wの電源ユニットで問題なく運用可能です。
高負荷時のGPU温度とVRAM温度
グラフィックボードの温度やクロック測定は、基本的に使ったグラボの設計とチップの選別具合に左右されます。
まったく同じボード設計でも、GPU自体の個体差でクロックの伸びやすさや発熱度合いに差がどうしても出てくる可能性があります。
今回のRX 9060 XTレビューで使ったグラフィックボードは「ASRock Challenger OC」モデルです。
オーバークロック版ですが、特にGPUチップの選別をアピールしていないから、GPU自体の個体差があってもおかしくないです。
掲載するデータは筆者の環境とグラフィックボードで得られたもので、あくまでも参考程度に見てください。

崩壊スターレイルを4K解像度(最高グラフィック設定)で起動したあと、約60分そのまま放置しながらGPUコア温度を測定したグラフです。
GPU温度 | 平均値 | ピーク値(1%) |
---|---|---|
コア温度 | 66.0℃ | 67.0℃ |
VRAM温度 | 90.3℃ | 92.0℃ |
ホットスポット | 82.9℃ | 84.0℃ |
GPUコア温度はよく冷えている割に、VRAM温度が90℃台に達します。
今回の検証用に使った「ASRock Challnger」モデルが意外と静音性を重視するファン設定です。ファンの回転がゆるい分だけ、VRAMが熱を持ちやすい傾向です。
動作に問題ないし、ASRockは3年保証も提供します。変に気にする必要はないものの、どうしても気になる方はファンの回転数を高めに設定するといいでしょう。

約60分間のGPUコアクロック周波数を追跡したグラフです。
ゲーム起動時に平均2950 MHz前後で始まり、その後テストが終わるまでずっと平均2933 MHz前後を推移します。目立ったサーマルスロットリングのない、安定したクロック動作です。

テスト中のフレームレート(fps)とフレームタイム(ms)です。
GPUコアクロックが安定しているから、実際のフレームレートも当然ながら安定した推移を維持します。

ブーストクロックの動作チェック | |
---|---|
最大値 | 3314 MHz |
ピーク値(1%) | 3305 MHz |
平均値 | 2962 MHz |
公称値(AMD) | 3130 MHz |
公称値(ASRock) | 3290 MHz |
GPUに極端な負荷をドカンとぶつけて、メーカーがスペック表に掲載している「ブーストクロック(Boost Clock)」を満たせるかチェックします。
結果は最大値で3314 MHz(ピーク値1%で3305 MHz)を叩き出し、リファレンス公称値(AMD)とオリジナル公称値(ASRock)どちらもあっさり超えています。
まとめ:VRAM容量が足りるなら「コスパ強い」

使い方 | 評価※ |
---|---|
FPSやeSports(競技ゲーミング) 主流のeSports系タイトルで200~500 fps台を狙える、優れたフルHDゲーミング性能です。 | ![]() |
ソロプレイゲーム(RPGなど) 画質が改善されたAI超解像「FSR 4」とフレーム生成「FSR FG」の組み合わせで、100 fps超のWQHDゲーミングを楽しめます。ただし、VRAM容量の制約で、一部ゲームは設定の妥協が必要な場合あり。 | ![]() |
ゲーム実況配信の安定性 H.264エンコードが高画質かつ高速で処理でき、Twitch配信と相性が良いです。AV1エンコードは速度と画質で勝ててないですが、配信時のフレームレート下落率が非常に少ない傾向が明らかで、YouTube配信も問題ありません。なお、4K配信は性能的にやや厳しい動作でした。 | ![]() |
プロの写真編集・動画編集 写真編集は目立った問題がありません。AIノイズ除去(DxO PureRAW)も速いです。一方で、Premiere ProやDavinci Resolveで、エフェクト処理やCG処理をさせると性能が伸び切らない傾向あり。実用上まったく十分な性能かもしれないですが、ライバルに劣っているのは事実です。 | ![]() |
AIタスクの性能とサポート ハードウェア側のAI処理性能は高い(従来比で最大4倍)です。しかし、ソフトウェアの対応状況がイマイチ。AMDはTheRock版「ROCm」でWindowsネイティブ対応を推進中ですが、RX 9060 XT未満はまだサポートされません。 | ![]() |
ドライバの安定性と機能性 リリースドライバの時点で非常に安定しています。予期しないクラッシュ、ブラックアウト(ドライバアウト)に一切遭遇しなかったです。機能性もなかなか充実していて、「FSR 4オーバーライド」「AFMF 2.1」「Noise Suppression」などゲーム向け機能が多いです。一方でコンテンツ向け機能はやや貧弱。NVIDIA VSRやRTX HDRに相当する機能が未だに実装されていません。 | ![]() |
※用途別評価は「価格」を考慮しません。用途に対する性能や適性だけを評価します。
「RX 9060 XT」のコストパフォーマンス

RX 9060 XTのコストパフォーマンスを、レビュー時点で買える価格で計算します。
5万円を切る圧倒的な安さにより、RTX 5060 Tiを容易くぶち抜くコストパフォーマンスです。

同じ手順で、WQHD(2560 x 1440)ゲーミング時のコスパも計算します。フルHDにつづきRX 9060 XTがコスパ最高峰です。

4K(3840 x 2160)ゲーミング時のコストパフォーマンスです。
RX 9060 XTとRTX 5060 Tiはどちらも4Kゲーミングに向かない性能で、コストパフォーマンスの伸びも鈍化します。
「RX 9060 XT」のデメリットと弱点
- 一部のゲームでVRAM容量が不足
- FSR 4オーバーライドの条件が厳しい
(フリーソフト:OptiScalerで緩和できます) - 「FSR 4」の画質は「DLSS 4」に届かない
- 4Kゲーミングは範囲外の性能
- 依然としてワットパフォーマンスで劣る
- クリエイティブ性能がやや低い
- AI性能を活かせない未熟なソフト状況
Windows版「ROCm」の欠如
RX 9060 XT未満はまだ非対応- 競合に劣る「AV1エンコード」
「RX 9060 XT」のメリットと強み
- フルHDで快適なゲーミング性能
- WQHDゲーミングも対応
- 実用的なレイトレーシング性能
- 画質が上がった超解像「FSR 4」
- フレームレート倍増「FSR FG」
- ドライバ型フレーム生成「AFMF 2.1」
- アイドル時の消費電力が低い
- マルチディスプレイ時の消費電力
- 爆速で画質もいい
「H.264 / HEVCエンコード」 - 安定した配信性能(fpsが下がりづらい)
(※4Kゲーミング配信はやや困難) - リリース時点で安定したドライバ
- とにかくコスパが高い価格設定
「RX 9060 XT」はVRAM容量が足りてさえいれば、RTX 5060 Tiを圧倒するコスパを誇るグラフィックボードです。
VRAMをそこまで使わないeSports系タイトルや、画質にあまりこだわりがなく、多少はグラフィック設定を妥協しても良いと考えるカジュアルゲーマーにとって。
予算5万円ぴったりで買えてしまうRX 9060 XTは、とにかくコストパフォーマンスが魅力的です。

- 画質重視(設定を下げたくない):RX 9060 XT(16 GB版)
- コスパ(画質を妥協してもいい):RX 9060 XT(8 GB版)
- Radeonが苦手なゲームやAI用途:RTX 5060 Ti 以上
ざっくり選び方をまとめました。
ポイントはグラフィック設定(画質)を状況に合わせて妥協してもいいか、あるいは可能な限り最高のグラフィック品質でゲームを楽しみたいか。
柔軟に設定できるなら「8 GB版」を、なるべく最高画質を追求したいなら「16 GB版」が無難です。
ただし、4K最高画質はVRAMが足りてもGPUの性能自体が不足するから、RX 9070(RTX 5070 Ti)以上を検討してください。
RX 9060 XTは基本的に、フルHD(最高画質)からWQHD(FSR 4込で最高画質)が性能範囲です。
以上「Radeon RX 9060 XTベンチマーク:RTX 5060 Tiどっちがいいか性能比較レビュー【8GB版】」について、大量のベンチマークと解説でした。
本記事がRX 9060 XTとRTX 5060 Tiのどちらを選ぶか、結論を出すヒントになれば幸いです。

「RX 9060 XT」を入手する
今回のレビューで使用した「ASRock Challenger OC」モデルがおすすめ候補です。
RX 9060 XT搭載モデルとして最安値クラスながら、必要十分な冷却性能と静音性を両立します。しかもAmazon.co.jp限定で国内3年保証です。
他社(Saphhireや玄人志向)は実際に使っていないから、なんとも言えません。以下のショップリンクから、いろいろなRX 9060 XT搭載モデルを検索できます。
RX 9060 XTにおすすめなゲーミングモニター
WQHDで最大320 Hzに対応しながら、セール時に3万円台から買える驚異的コスパ「KTC H27E6」が有力な候補です。
RX 9060 XT 16GBをeSports系タイトルで使って、平均200~300 fpsを狙うならコスパ的にちょうどいいゲーミングモニターです。
有名ブランド製のマトモなWQHDゲーミングモニターなら「XG27ACS」がおすすめ候補です。
高画質で応答速度も速い「Fast IPS」パネル採用で性能を確保し、残像感を抑えながら同時にVRRも使える「ELMB Sync」機能が大きなウリです。
FPSゲームからビジュアル重視のソロゲームまで、幅広い用途に対応できます。
グラフィックボードのレビュー記事
やっぱりVRAM8GBは最近のゲームするには足りないな
12GB辺りが最低ラインかな
VRAM容量12GBあった方が、一部のゲームで安心感はある。
けど、その手のロクに最適化する気もないゲームは12GBですら簡単に枯渇するする可能性があるから・・・エントリー~ミドルクラスGPUに手を出さず、しっかり予算積んでRX 9070(RTX 5070 Ti)以上に行ったほうが幸せそう。
わずか1万円くらいケチっただけで失うものがあまりにも大きすぎる。8GB版の時点で買う価値ないかな?
グラボに対して予算5万円を切りたい人向けだとは思う。
価格帯を1万円ずつ区切ったとして、どの層にも一定のニーズがあります。RTX 5050を4.5~4.6万円で買うより、RX 9060 XT(8GB)を4.9万円で買ったほうがいいし、選択肢が存在していることが重要です。
たしかにその考えもわかりますが、4.9万円でも十分高価な買い物です。4.9万円も出しているのにゲームによってはVRAM不足のせいで、グラフィックの設定を下げる羽目になるのは悲しいです。
項目ごとに見ると、ほぼ負けてるのに、トータルでは”良い”評価になる面白いレビュー
これが忖度ってものなんだね
総合スコアはC/Pレシオも加算されてるから、価格が下がると有利です。
価格が安いゲーミングモニターに、良い評価スコア(A+)がつきやすい仕組みで同様です。
ほぼゲームせずRAW現像メインなのでコスパは最高ということがわかりました。今の3050より全然速くなるので買い替え検討候補。
どこのサイトや動画でも8GB版は無いみたいな評価だけど、8で足りないほどの
重量級や解像度はそもそも9060ではスペック不足なので十分事足りてる。
CUDA対応ソフトを散々使ってきたので、乗り換え後に不便なのはむしろそっちかな。
検証お疲れ様です。
こうして見るとAMDが言ってた大多数にはまだ8GBで十分ってのは間違っちゃあいないんだなって。
グラボは上位モデルから順に期間を空けて投入してくるから
上位モデルのご祝儀価格が終わる頃に下位モデルがご祝儀価格で来ることになり
下位モデルのコスパ悪いイラネーってなりがちかと
CPUも一斉投入だとほどほどの価格差で来るけど
上位モデル先行で来たりX付き先行で後日無印投入だと価格差がおかしくなりがち