SSD最強メーカーサムスンの旗艦ブランド「PRO」の最新モデル「980 PRO」をレビューします。
従来モデルの970 PROがMLC NANDに対して、今作980 PROはなんとTLC NAND・・・果たして970 PROに勝てるのかどうか、新しいテスト方法で検証です。
Samsung 980 PRO【仕様】
Samsung 980 PRO スペックをざっくりと解説 | ||||
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製品名 | 980 PRO 250 GB | 980 PRO 500 GB | 980 PRO 1 TB | 980 PRO 2 TB |
容量 | 250 GB | 500 GB | 1000 GB | 2000 GB |
インターフェイス | PCIe 4.0 x4(NVMe 1.3c) | |||
フォームファクタ | M.2 2280(片面実装) | |||
コントローラ | Samsung Elpis | |||
NAND | Samsung 128層 3D TLC NAND | |||
DRAM | Samsung LPDDR4 | |||
512 MB | 512 MB | 1024 MB | 2048 MB | |
SLCキャッシュ 可変サイズ | 4 GB | 4 GB | 6 GB | 6 GB |
49 GB | 94 GB | 114 GB | 222 GB | |
読込速度 シーケンシャル | 6400 MB/s | 6900 MB/s | 7000 MB/s | 7000 MB/s |
書込速度(SLC) シーケンシャル | 2700 MB/s | 5000 MB/s | 5000 MB/s | 5100 MB/s |
書込速度(TLC) シーケンシャル | 500 MB/s | 1000 MB/s | 2000 MB/s | 2000 MB/s |
読込速度 4KBランダムアクセス | 22000 IOPS | 22000 IOPS | 22000 IOPS | 22000 IOPS |
書込速度 4KBランダムアクセス | 60000 IOPS | 60000 IOPS | 60000 IOPS | 60000 IOPS |
消費電力(最大) | 5.0 W | 5.9 W | 6.2 W | 6.1 W |
消費電力(アイドル) | 35 mW | 35 mW | 35 mW | 35 mW |
TBW 書き込み耐性(JESD218標準) | 150 TB | 300 TB | 600 TB | 1200 TB |
保証 | 5年 | |||
MSRP | $ 90 | $ 150 | $ 230 | $ 430 |
参考価格 | 9980 円 | 15980 円 | 24980 円 | 47980 円 |
GB単価 | 39.9 円 | 32.0 円 | 25.0 円 | 24.0 円 |
Samsung 980 PROのスペックを見ると、ついつい「7000 MB/s」など強そうな数字に注目しがちですが、残念ながら従来モデルの970 PROよりも劣化した部分もあります。
どこが970 PROと比較して劣化したのか、分かりやすい比較表を以下にまとめました。
1 TBモデルで両者を比較 | ||
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SSD | 980 PRO | 970 PRO |
NAND | 128層 TLC NAND | 92層 MLC NAND |
SLCキャッシュ | 114 GB | なし(不要) |
書込速度(TLC) シーケンシャル | 2000 MB/s | 2700 MB/s |
TBW 書き込み耐性(JESD218標準) | 600 TB | 1200 TB |
MSRP | $ 230 | $ 500 |
参考価格 | 24980 円 | 59800 円 |
サムスンの「PRO」ブランドは、過酷なプロユースに耐えられるように、極めて耐久性が高くSLCキャッシュを使わなくても圧倒的な性能を維持できる「MLC NAND(2-bit)」を採用していました。
しかし、今回の980 PROでMLC NANDを使う伝統を打ち破り、TLC NAND(3-bit)を採用。そのため、SLCキャッシュ超過後の性能は970 PROより悪く、TBWも半減します。
980 PROではなく「実質980 EVO」と呼ぶべき製品です。価格も半額以下に値下がりしたものの、相応にスペックが劣化しているためサムスン愛好家として素直に喜べないのが本音です。
他社もPCie 4.0 x4対応の超高速ハイエンドNVMe SSDを市場に投入しており、相対的に見ても980 PROが「PRO」を名乗れるほどの製品かどうかは、かなり疑問があります。
「980 PRO」の技術的な進化ポイントは?
- 128層まで積み上げた3D TLC NAND
- 8 nmプロセスの「Elpis」コントローラ
980 PROに搭載されるNANDフラッシュメモリは、Samsung製の「128層 3D TLC NAND」です。従来の92層より、さらに40%もの積層化を実現し、およそ10%少ないレイテンシを実現します。
- 970 EVO Plus(1 TB):249.99 ドル(発売当時)
- 980 PRO(1 TB):229.99 ドル
性能だけでなくコスト面でも128層化の効果は大きく、サムスンは970 EVO Plusのスタート価格とほぼ同じ価格で980 PROをリリースしています。従来モデル「970 PRO」の半額以下の価格です。
次にSSDコントローラについて。従来モデルはサムスンの14 nmプロセスで製造される「Samsung Phoenix」コントローラです。今回の980 PROから、8 nmプロセス製「Samsung Elpis」コントローラに切り替わります。
コントローラ | Samsung Elpis | Samsung Phoenix |
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製造プロセス | 8 nm | 14 nm |
インターフェイス | PCIe 4.0 x4 | PCIe 3.0 x4 |
I/Oキュー数 | 最大128 | 最大32 |
PCie 4.0 x4接続に対応するほか、I/Oキューの最大数が32から128へ大幅に増加します。コンシューマ向けのCPUが32コアを超える時代ですから、I/Oキューの最大数を増やすのは間違ってはいないです。
実際にレビューする筆者含め、ほとんどの一般消費者はおそらくほとんど恩恵を得られませんが、64~128コアCPUを使うような超ハイエンドユーザーにとって意味のある改善です。
ライバル製品と価格設定の比較
PCIe 4.0 x4接続(最大7000 MB/s)のNVMe SSDとしては、マトモな価格設定です。1 TBモデルはWD Black SN850と横並び、2 TBモデルだと約1万円も安い価格で販売されています。
1 TBモデルはともかく、2 TBモデルを買うならSamsung 980 PRO一択と言ってしまって良い状況です。
Samsung 980 PROを開封レビュー
パッケージデザイン & 開封
Samsung 980 PROのパッケージデザインは「縦型」に刷新され、地面のような背景グラフィックが追加されています。
価格がとても安くなったため、従来モデルより遥かに手に届きやすいハイエンドSSDになった・・・ということを示唆するデザインですね(※テキトーな予想)。
パッケージの表と裏です。裏面に国内代理店ITGマーケティング社の保証シールが貼ってあります。
中身はいつもどおり、やや硬いプラスチック製のケースに980 PROが収納されており、下の段にマニュアルが同封されている形式です。
基板コンポーネント
マットブラック塗装の基板上に、SSDを構成する3つのコンポーネントが配置されています。
- SSDコントローラ:Samsung Elpis Controller
- DRAMキャッシュ:Samsung製 LPDDR4メモリ(1024 MB)
- NANDフラッシュメモリ:Samsung製 128層 3D TLC NAND
- NANDフラッシュメモリ:Samsung製 128層 3D TLC NAND
コンポーネントの内容は以上の通り。コントローラ、DRAM、NANDまで。すべてSamsung自社製造品で構成される「完全なメーカー純正SSD」です。
SSDコントローラは表面にニッケルメッキコーティングが施され、少しでも放熱性を稼いで温度を抑える狙いです。
基板の裏面はコンポーネントなし。スペックに記載どおり「片面実装」のM.2 SSDです。なお、裏面に貼ってあるシールは銅製のヒートスプレッダーシートで、サムスンいわく「放熱性に貢献する」とのこと。
とても効果があるとは思えませんが、後ほどストレステストにかけてSSD温度をチェックします。
Samsung 980 PROの性能をベンチマーク
テスト環境を紹介
テスト環境 「ちもろぐ専用:SSDベンチ機」 | ||
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CPU | Ryzen 9 5950X16コア32スレッド | |
CPUクーラー | Corsair H100i Pro RGB240 mm簡易水冷クーラー | |
マザーボード | ASUS ROG STRIXX570-E GAMING | |
メモリ | DDR4-3200 16GB x2使用メモリ「G.Skill Trident Z C16」 | |
グラフィックボード | RTX 3070 8GB | |
SSD | Samsung 980 PRO 1 TB | |
電源ユニット | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
OS | Windows 10 Pro 64bit検証時のバージョンは「1909」 | |
ドライバ | NVIDIA 461.40 | |
ディスプレイ | 3840 x 2160@60 Hz使用モデル「BenQ EL2870U」 |
SSDをテストするベンチマーク機を更新しました。PCIe 4.0に対応するプラットフォーム「Ryzen 5000」と「AMD X570」をベースに、適当なパーツを組み合わせます。
CPUは16コア32スレッドの「Ryzen 9 5950X」です。16コア32スレッドの圧倒的なCPU性能があれば、SSDに対してボトルネックになる可能性はほぼ皆無です。
マザーボードはASUS製「ROG STRIX X570-E GAMING」を採用。テスト対象のNVMe SSDをCPU直結レーンのM.2スロット、またはPCIeスロットに挿し込んで各ベンチマークを行います。
- インターフェース:NVM Express
- 対応転送モード:PCIe 4.0 x4
- 対応規格:NVM Express 1.3(※1.3cはサムスン独自規格なので実質1.3と同じ)
- 対応機能:S.M.A.R.T. / TRIM / VolatileWriteCache
「Samsung 980 PRO(1 TB)」の初期ステータスをCrystal Disk Infoでチェック。特に問題なし。
Crystal Disk Mark 8
「Crystak Disk Mark 8」は、日本どころか世界で一番有名と言っても過言ではない、定番のSSDベンチマークソフトです。性能の変化をチェックするため、初期設定の「1 GiB」に加え、最大設定の「64 GiB」もテストします。
Crystal Disk Mark 8の結果※クリックで画像拡大します | |
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テストサイズ:1 GiB(MB/s) | テストサイズ:64 GiB(MB/s) |
テストサイズ:1 GiB(レイテンシ) | テストサイズ:64 GiB(レイテンシ) |
なぜか読み込み速度が6600 ~ 6700 MB/s程度で、公称値の7000 MB/sに達しません。それもそのはず、サムスンの測定方法とCrystal Disk Markの初期設定に違いがあるからです。
ブロックサイズを128 KBに下げて同時キュー数を32まで増やすと、公称値の7000 MB/sを突破できます。しかし大事なことをひとつ、普通に使っていて同時キュー数32なんてあり得ないです。
Windows 10でよく使われるキュー数は大部分が1桁台です。「7000 MB/s」・・・数字のインパクトは素晴らしいですけど、実際に体感することはありません。
もっとも体感性能に影響が大きい、4KBランダムアクセスのレイテンシ(応答時間)を、先代の970 PROと比較。
読み込みレイテンシは62.79 μs → 44.54 μsへ、約30%も短縮化に成功。書き込みレイテンシはどちらも17 μs台でほとんど変化なし。
SSDコントローラの性能か、128層まで積み上げたTLC NANDの性質か、原因はイマイチ分かりません。ただ、980 PROの読み込みレイテンシはTLC NAND SSDとして過去最速クラスです。
ATTO Disk Benchmark
ATTO Disk Benchmarkは、512 B~64 MB(合計21パターン)のテストサイズでスループットを測定し、SSDの性能が安定しているかどうかを視覚的に示してくれるベンチマークソフトです。
ベンチマーク結果からSSDの評価が非常に分かりにくいので、表計算ソフトを使ってグラフ化して他のSSDと比較します。
読み込み速度は6300 MB/s前後でピークに達します。さすがPCIe 4.0接続だけあって、PCIe 3.0どまりの970 PROと983 ZETを大幅に上回る性能です。
書き込み速度も傾向はほぼ同じ。ピーク到達後は4700 MB/s前後の書き込み性能です。
HD Tune Pro
HD Tune Proは有料のSSDベンチマークソフトです。SSDの容量全域に渡ってテストを実行して、SSDの性能変化(SLCキャッシュの有無や、キャッシュが剥がれた後の性能など)を手軽に調べられます。
HD Tune Proの結果※クリックで画像拡大します | |
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HD Tune Proで注目するのは「書き込み速度の変化」です。3枚目のファイルベンチマーク(250 GB分)で、113 GB書き込んだあたりで書き込み速度が1700 MB/s前後に落ちています。
メーカーの公称値どおり、980 PRO(1 TB)のSLCキャッシュは111 GB前後です。空き容量に余裕があるなら、普通に使っていて性能低下を体感する可能性はほぼありません。
Samsung 980 PROを実運用で試す
980 PROのテスト中に切ったはずの常駐ソフトがリソースを無駄に消耗していたので、一部再テストを行い、更新したデータを掲載しました。
ゲームのロード時間を比較
FF14:漆黒のヴィランズ(ベンチマークモード)で、ゲームロード時間を測定します。ベンチマーク終了後に、ログファイルからロード時間を読み取ります。
Samsung 980 PROのロード時間は「6.96 秒」、970 PROより速いです。読み込みレイテンシの短縮化が、ゲームロード時間の縮小にきちんと反映されています。
ファイルコピーの完了時間
ファイルコピーの性能テストは、検証を進めているうちにやや行き詰まってしまったので、今回の記事では掲載を見送ります。
ちなみに行き詰まった理由は「ダイヤモンドの硬さを調べるには、ダイヤより硬い物質が必要」的な問題です。983 ZETのシーケンシャル性能では、980 PROの性能を評価できません。
Premiere Pro:4K素材プレビュー
動画編集ソフト「Adobe Premiere Pro」で、1秒あたり448 MBの4K動画素材をプレビューします。Premiere Proのプレビューは、素材を配置しているストレージの性能に影響を受けやすく、SSDの性能が不足すると「コマ落ち」が発生しやすいです。
コマ落ちしたフレーム数はPremiere Proの標準機能「コマ落ちインジケータ」で3回測定して平均値を出し、動画素材の総フレーム数で割り算してドロップフレーム率を計算します。
プレビュー性能はTLC NAND採用のSSD としては、非常に安定しています。970 PROを上回る安定性で、読み込みレイテンシの改善がよく効いているようです。しかし、さすがに983 ZET(SLC NAND)が相手だと勝てないです。
なお、SLCキャッシュの使用状況によっては、970 PROに追い抜かれる可能性があります。上記のテスト結果はかなりベストの状態で出せる数値だと考えてください。
PCMark 10:SSDの実用性能
PCMark 10 Professional Editionの「Storage Test」を使って、SSDの実際の使用シーンにおける性能を測定します。
- PCMark 10(UL Benchmarks)
Storage Testには23種類のテストパターン(Trace)が収録されており、パターンごとの転送速度や応答時間を測定し、SSDの実用性能をスコア化します。
なお、SSDは空き容量によって性能が大きく変化する可能性があるため、空き容量100%だけでなく容量を80%埋めた場合のテストも行いました(※2回:約2時間)。
980 PROの実用性能はSLCキャッシュによる低レイテンシと高速性能によって、見事に先代970 PROを上回るスコア。しかし、容量を80%埋めた状態だと2割ほど性能が落ち込みます。
2割落ち込んでもストレージスコア、応答時間、実効帯域幅。すべてにおいて先代970 PRO以上の性能なので、コストパフォーマンスは大幅に改善されています。
悲観的に捉えると「PROの割には一貫性が無い・・・」といった評価ですが、ポジティブに考えれば「値段は半額、空き容量20%でも970 PRO以上の性能」コスパ良しです。
Adobe系ソフト、ゲームロード時間の評価スコア、ファイルコピー性能のスコア、Microsoft Office系ソフトの評価スコア。それぞれの実用性能スコアは以上の通りです。
4パターン別のスコアで、980 PROが970 PROに対して勝てている分野はファイルコピー性能とOffice系です。空き容量による性能劣化は4パターンすべてで共通します。
なお、空き容量100%の性能なら4パターンすべての分野で980 PROが970 PROを打ち負かします。
実用スコアの内訳 Full System Drive Benchmark | |
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Adobe Score | Adobe Acorbatの起動 Adobe After Effectsの起動 Adobe Illustratorの起動 Adobe Premiere Proの起動 Adobe Lightroomの起動 Adobe Photoshopの起動 Adobe After Effets Adobe Illustrator Adobe InDesign Adobe Photoshop(重たい設定) Adobe Photoshop(軽量設定) |
Game Score | Battlefield Vの起動(メインメニューまで) Call of Duty Black Ops 4の起動(メインメニューまで) Overwatchの起動(メインメニューまで) |
Copy Score | 合計20 GBのISOファイルをコピー(書き込み) ISOファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) ISOファイルをコピー(読み込み) 合計2.37 GBのJPEGファイルをコピー(書き込み) JPEGファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) JPEGファイルをコピー(読み込み) |
Office Score | Windows 10の起動 Microsoft Excel Microsoft PowerPoint |
15分間の連続書き込みテスト
約1 MBのテストファイルを15分間に渡って、ただひたすら書き込み続ける過酷な検証方法です。
一般向けに販売されているほとんどのSSDは、数分ほど連続して書き込むだけで「素の性能」を明らかにできます。SLCキャッシュの有無やサイズ、キャッシュが切れた後の性能低下などなど。
15分の連続書き込みテストによって、SSDのいろいろな挙動が判明します。
980 PROと970 PROの比較グラフです。性質の違いは明らかで、キャッシュ超過後の書き込み性能は先代970 PROに劣っています。970 PROを超えているのはキャッシュが効いている間だけ。
約120 GB書き込んだあたりで性能は1600 MB/sにまで落ち込み、その後ゆっくりと公称値の2000 MB/s以上へ性能が回復する様子が見てとれます。
時間あたりの書き込み量を比較したグラフです。最初の5分ですら先代970 PROが約200 GBも多く、15分後に980 PROは970 PROに約530 GBも引き離されます。
なお、980 PROの連続書き込み性能は確かに970 PROより悪いとはいえ、ちもろぐで過去テストしてきたTLC NAND型SSDとしては群を抜いて優秀です。
過去のデータはインテル環境でテストしているので今回の記事に掲載はしませんが、980 PROの15分で1730 GBという記録は過去No.1です(※2位は900 GB前後)。
SSDの動作温度をテスト
高負荷時のセンサー温度
モニターソフト「HWiNFO」で表示できる温度センサーは2つです。
- Drive Temperature:NANDの温度
- Drive Temperature 2:SSDコントローラの温度
基本的にSSDの温度センサーは「NAND」だけですが、サムスンのNVMe SSDは例外的に「SSDコントローラ」にも温度センサーを搭載しています。
コントローラはNANDより高い温度を示すため、口コミサイト等で「他社より極端に温度が高い。」などと勘違いを書き込まれないよう、普通ならNANDのみにセンサーを搭載します。
ヒートシンクとエアフローの無い環境で、SSDが発熱しやすい「連続書き込みテスト」を5分間実行しました。開始2分でSSDコントローラは88℃に達し、サーマルスロットリングが発生します。
980 PROはヒートシンク無しで5年保証※を提供しているため、温度の高さは大した問題ではないです。実用上の問題はサーマルスロットリングによる書き込み性能の低下です。
なるべく高い性能を保ったまま980 PROを運用するつもりなら、ケースファンで適切なエアフローを与えるか、別売りのM.2ヒートシンクの装着をおすすめします。
なお、ヒートシンクを取り付ける際はSSDのシールはそのままで大丈夫。剥がすと1~3℃くらい温度差がありますが、5年保証を失うリスクの方が遥かに痛手です。
※ヒートシンクをつけずに使っても保証に影響しませんし、別売りのヒートシンクを使っても大丈夫。シールさえ剥がさければ問題なし。
サーモグラフィーで表面温度を確認
テスト開始から4分あたりをサーモグラフィーカメラを使って撮影。
- SSDコントローラ:85~86℃
- NANDメモリ(右側):87~89℃
- NANDメモリ(左側):86~88℃
表面温度は以上のとおり。おおむね温度センサーと同じ数値で、センサーの精度に問題ありません。
まとめ:970 PRO級の性能と7000 MB/sロマン砲
「Samsung 980 PRO」のデメリットと弱点
- 高負荷時のSSD温度は高い
- サーマルスロットリングあり
- 空き容量が少ないと性能が下がる
- 7000 MB/sのメリットは限定的
- 「PRO」なのにTLC NAND型
今回のSSDレビューは、以前のテスト方法よりもずっと厳しくハードです。特に空き容量を減らした状態でのテストを導入したことで、MLC vs TLCの性能差は顕著に浮かび上がります。
980 PROは価格設定を考慮すると、たしかに高性能ですし、PCIe 4.0 x4対応のNVMe SSDとしてはトップクラスに君臨するSSDです。しかし、先代の970 PROと比較してしまうと、やはり劣化した部分も見られます。
個人的にどうしても気に障る仕様変更が「PROブランド」にTLC NANDを導入してしまった点です。PROブランド最大の魅力は、使用状況を問わず常に一貫した性能を提供できる点にあります。
しかし980 PROは使用状況(空き容量やSLCキャッシュの空き状況)によって、性能が簡単に変化します。
「Samsung 980 PRO」のメリットと強み
- PCIe 4.0 x4の上限「7000 MB/s」を拝めます
- 十分なSLCキャッシュ(約120 GB)
- 高速なランダムアクセス速度
- ゲームロード時間はトップクラス
- 実用性能は970 PROを超える
- 必要十分な耐久性(150 ~ 1200 TBW)
- 970 PROより半額以上も安い
- コストパフォーマンスOK
- 5年保証
厳しめに言ってしまったけれど、なんだかんだ言って980 PROはPCIe 4.0対応SSDとしてトップクラスです(2021年2月時点)。
実用性能は空き容量が少ない状態ですら970 PROを超えています。でも価格設定は半額以下で、ロマンある「7000 MB/s」の数字も拝めます。
コストパフォーマンスは間違いなく改善されており、耐久評価(TBW)も半減したとはいえ製品保証は変わらず「5年」です。
970 PROと比較さえしなければ、マトモな競合製品がいません。おそらく980 PROと互角の性能を出せるPCIe 4.0対応SSDは「WD Black SN850」ぐらいでしょう。
980 PROの評価をまとめると、PCIe 4.0対応NVMe SSDの中で珍しく・・・万人におすすめできるSSDです。ちもろぐの個人的な評価は「A+ランク」で決まりです。
以上「Samsung 980 PROレビュー:PCIe 4.0対応SSDで一番マトモ」でした。
980 PROにとって最大のライバルが「WD Black SN850」です。1 TBモデルはほぼ同じ価格で、スペックも両者ともによく似ていますが、実際の性能にはけっこう違いがあります。
980 PROを入手する
Samsung 980 PROはAmazonやツクモ通販、パソコン工房などで購入できます。500 GB版が約15000円、1 TB版は約25000円、2 TB版は約47000円で容量単価が一番安いです。
比較されてるP5くんが可哀想だけど、あっちは1TBで14000円だ(った)からなぁ
連続書き込みでキャッシュが切れた後に回復していく挙動は初めて見た。
海外含めほぼ全てのサイトでSN850の方が高評価なのに一番マトモとは大きく出ましたね
SN850もレビューする予定です。
ぼくが検証してきたGen4 SSDとしては、だいぶマトモな性能してるのは事実だと思ってます。・・・従来のGen4 SSDは5000 MB/s出るけどランダム性能にあまり進歩の見られない製品が多かったですから。
ADATA XPG S50 liteもお願いします!
安価でスペック的には扱いやすそうなPCIe 4.0 SSDなので
誰が買うんだろってばか高いマザーおすすめしてたり
金持ちの考えることはわからん
一般庶民にはgen3のSN550で十分
用途によりますが、確かに一般の人にとっては「SN550」でおおむねOKな感じはします。
で、980 PROみたいなSSDはプロのクリエイター用途で需要があったり。
以前、4~8K動画制作用のパソコンを納品したことがあるのですが、970 PROですら帯域にフルに使い切ってて「RAID 0ならもっと速くなるんだよね?」とか言われて驚きました… …ニーズは確実にあるんですよねこういう製品。
実質的にPROをディスコンしてEVO一本に、ってことなんだろうか
確かに倍額払ってMLC欲しいかと言われると微妙だったもんなあ……
PROでTLCを使われると・・・次の980 EVOがTLC → QLC NANDになる可能性を感じさせるので、なんだか嫌な感じなんですよね~(それはないと信じたいけど)。
一番まともってSN850あるやん…と思ったけど
2TBの値段で見たらこっちの方がまともだった。
980proとsn850は比較見て一長一短あるイメージ。
Gen4にこだわらないなら値段の落ちた970EVOかSN750で充分かな。
もしよろしければキオクシアのssdも気になっているのでお願いします
空き容量が100GBを切った時の挙動はどうなりますか?
できれば残100GB, 50GBの2パターンくらいの挙動を知りたいです。
もし評価可能ならお願いします。
ファイルコピーの検証、RAMDiskとかでどうにかできたり…ないか…
メーカーのhpでのスペックではSamsung V-NAND 3-bit MLC
となっているのですが、実際に実装されているのはTLCなんですかね?
ツクモ等の通販ページでもフラッシュ規格 Samsung V-NAND 3bit MLC
っと掲載されているのでどうなんだろうと思いまして。
あと、メーカー保証が5年と有るので販売店の延長保証はそこまで重視しなくていいですかね?
使い方次第だとは思うのですが、システム用で最低6年以上、一般用途からゲーム配信、動画編集制作などメインで使って行こうと考えています。
3bit MLCってのはTLC(3bit)の正式な表記ですので合ってますよ
600TBWって相当のスワップやレンダリングでもしない限り5年じゃ使い切れないですし、オーバープロビジョニングとかウェアレベリングもあるので大丈夫じゃないかな、と私は思います
調べても分からなかったので、有難うございます。
自分の用途なら十二分だと分かったので安心しました。