自作PCをかじり始めた頃、漠然と「M.2 SSDは今までのSSDと違って超高速らしい。」という認識を持っていた。しかしこれは「勘違い」だったようで、M.2は単なる規格に過ぎず、速いかどうかはバスインターフェースが「SATAなのか、NVMeか」で決まってくるんだよね。
というわけで、この記事では「M.2 SSD = 速そう」というよくある勘違いについて解説する。
M.2 SSDの主要な「端子」形状
SSDの転送速度の速さに関わっているのがバスインターフェースという、システムとデバイスを接続する規格です。いくら速いSSDでも、遅い規格を使っていれば本来の速度が出ないのは有名。
そして、M.2 SSDはM.2ソケットと接続する「端子」の形状によって、対応するバスインターフェースが変わるという仕様になっています。
M.2 SSDで使われる主要な端子の形状が、「Key M」と「Key B+M」の2種類。M.2規格の端子は75本のピンによって構成され、そこから「どのピンを省くかで対応するインターフェイスが変化する」というのが肝。
ピンごとに対応しているバスインターフェースは以下の通り。
Key ID | 対応ピン | 対応インターフェイス |
---|---|---|
A | 8 ~ 15 | PCIe x2 / USB 2.0 / I2C / DP x4 |
B | 12 ~ 19 | PCIe x2 / SATA / USB 2.0 & 3.0 / Audio / PCM / IUM / SSIC / I2C |
C | 16 ~ 23 | 将来使う予定(今は機能なし) |
D | 20 ~ 27 | |
E | 24 ~ 31 | PCIe x2 / USB 2.0 / I2C / SDIO / UART / PCM |
F | 28 ~ 35 | Future Memory Interface (FMI) |
G | 39 ~ 46 | 汎用 |
H | 43 ~ 50 | 将来使う予定(今は機能なし) |
J | 47 ~ 54 | |
K | 51 ~ 58 | |
L | 55 ~ 62 | |
M | 59 ~ 66 | PCIe x4 / SATA |
SNIA Webcast – All About M.2 SSDs(スライド17より)
Key IDは「グループ」と思えば良い。Key IDごとに対応しているインターフェイスが変わってくる仕組み。例えばKey E(24~31番)を切り抜けば、SDIOなどのインターフェイスに対応するようになる。
SDIOは「802.11 ac」や「Bluetooth」などの規格を使えるインターフェイスなので、M.2規格のWiFiモジュールは決まって端子の形状が「Key E」になっています。
超高速なM.2 SSDの形状は「Key M」
「Key M」の場合、Key Mに該当している59~66番のピンが省かれるので、「PCI Express 4本」または「SATA」という2種類のバスインターフェースに対応するようになる。
この「PCI Express 4本」が、極めて高速なバスインターフェイスです。現在主流のPCI Express Gen 3は、1本あたり約985 MB/sの転送速度を実現する。4本で3940 MB/sの速度を実現可能です。
超高速なSSDは「NVM Express」(略してNVMe)というインターフェイスを通して、このPCI Express 4本を使ってデータのやり取りを可能にするから秒速3000 MBに迫る速度を実現可能…という仕組み。
だからPCIe x4が有効になっている「Key M」の端子を備えるM.2 SSDじゃないと、超高速にはならないわけです。M.2 SSDが端子が次に解説する「Key B+M」なら、それはSATA SSDになる可能性が高い。
「Key B+M」はM.2でも普通な速度に
「Key B+M」は、Key Bも切り抜いているし、Key Mも切り抜かれた形状です。こうすることで対応するインターフェイスを増やし、互換性を高めることに成功している形状になりますね。
「Key B」が対応しているインターフェイスには「PCIe x2」や「SATA」が含まれているので、基本的にKey B+Mを採用するM.2 SSDは普通の「SATA SSD」であることが多い。
しかし、鋭い人なら「PCIe x2に対応しているから、仮にNVMe SSDなら3000 MB/sは出なくても1500 MB/sくらいは出るんじゃないの?」と。この推測は正しくて、実際にOptane Memoryが該当している。
キャッシュ用に使われるOptane Memoryは、Key B+Mを採用していながらNVMe SSDでもあるので、SSDとして使うと書き込み速度は1400 MB/sに達する。SATA SSDの3倍くらいの速さです。
仕様上「Key B+M」でも超高速は可能?
ならば…Key B+MはPCIe x4をサポートする「Key M」が切り抜かれているのだから理論上、Key B+MでもSSDがしっかりとしたNVMeなら3000 MB/sを出すことは可能だと思われます。
ただ、現実にはKey B+M端子を採用する超高速NVMe SSDは極めて稀な存在なようで(筆者は存在をまだ確認できていない)、今のところは1500 MB/sを超えるSSDは例外なく「Key M」端子ですね。
まとめ:速度を求めるなら「Key M」のM.2を
ここまで「M.2 SSDだから速い、というわけではないよ。」という話を細かく解説してきた。要するにM.2だから速いのではなく「NVMeを使うSSDが速い」。これが正しい認識になります。
NVMeを謳うSSDはスペック表に「インターフェイス:PCI Express(またはPCIe 3.0 x2やx4など)」と記載されているはずなので、スペック表を見れば引っかかることはまず無いだろう。
スペック表も確認して、更にSSDの商品画像を見て端子が「Key M」であることを確認すれば、なお良い。
SSD選びで気をつけるべきポイント
「M.2 SSDなら超高速なSSD。」という勘違いをしている人は、おそらく多くはないと思う(筆者はM.2 = 速いという認識を持っていた1人です)。だからSSD選びで気をつけるべきところは、あまり無いと考えてる。
- インターフェイスが「PCIe」かどうか
- SSDの端子が「Key M」かどうか
- 商品説明で「NVMe」をアピールしているかどうか
以上3点に気をつけていれば「M.2 SSDなのに500 MB/sしか出ない…遅いじゃないか!!」なんて事態には、まずならないだろう。
残る注意点はマザーボード側が対応しているM.2ソケットの端子。ほとんどのマザーボードはストレージ用に「Key M」対応のM.2ソケットを備えるので、Key MまたはB+MのM.2 SSDが使用可能。
でも、念のため確認しておくに越したことは無いかも。「M.2ソケットがあると思って買ったマザーボード。実はKey E対応で、M.2 SSDは挿し込めない…」というのはあり得る話なので。
もしもそんなことになってしまった場合は、マザーボードを返品してKey M対応のマザボを買うか、「M.2 → PCIe変換ボード」を使って対処することになります。
ちなみに、変換ボードには「ヒートシンク付き」の製品もあるので、「使ってるM.2 SSDが70度を超えて怖い。」場合はヒートシンク付きの変換ボードを使うのはかなり有効な手。
ぼくは「予算30万円、Ryzen Threadripperで作る超コスパのワークステーション」にて、実際に使ったことがある。最大70度が39度にまで下がったので、効果は劇的ですね。
以上「M.2 SSDは超高速という勘違い【速いのはNVMe】」について解説でした。
質問ですが高速M.2のスロットにSATAM.2を挿しても動くという話はありましたが
SATAM.2のスロットに高速M.2を差し込んだ場合、動かないor帯域制限状態で動くどちらになるでしょうか
具体的に想定した環境を述べますとX470のC7Hに高速M.2を二枚挿して、レーン数がPciE3.0x4になった第二PciE3.0スロットにAINEXさん辺りが出してる高速とSATAM.2が一枚ずつ挿せるインターフェースカードを挿して、更に二枚M.2を挿せるようにしようという狙いがあるのですが、手元に四枚高速M.2がありましてどれか一枚をSATAM.2のスロットに挿さないといけない状態なわけです
SATAM.2に挿す高速M.2の転送速度については諦めてますので別にいいのですが、そもそも使えないとなると困ってしまうのです…
えーと、整理すると。
ということですね。
使おうとしている拡張カードは「AIF-06A」でしょうか。製品画像を確認したところ、SATA用のソケットが「KeyB+M」ではなく「KeyB」なので、「KeyM」のNVMe SSDは物理的に挿し込み不可能。よって、結論は「動かない」となります。
あと、NVMe SSDを4枚同時に使うなら、X299やX399チップセットを乗せたマザーボードと、ASRockの「ULTRA QUAD M.2 CARD」を使ったほうが確実かと思われます。
お返事ありがとうございます。
X399マザーなどにするべきってのはごもっともなのですが、そうすると初期費用がCPUマザーだけで10万近くなってしまうので…
あれから考えたのですがPciE3.0の第二スロットには普通に高速M.2のみのインターフェースカードを挿して、同様に一番下のPciE2.0x4に高速M.2のインターフェースカードを挿せば帯域不足で速度は落ちるものの使えるようになるのでは、と思いました
いや本当はスリッパが使えればそれでいいんですが、どうせやるなら水冷の勉強してからにしたいというこだわりがありましてね…
SATAより早いのはPCIeでAHCIより早いのはNVMe
SATAとNVMeを並べるの本来ナンセンス
ROMとRAMのように定着しつつありますが
https://chimolog.co/wp-content/uploads/2018/06/m2-keying.jpg
ここの画像の「Key M」と「Key B+M」が逆な気がするのですが・・・・
(なんか揚げ足みたいなコメントで申し訳ないです。)
[…] 今回利用するパーツは、M.2形式のNVMeのSSDとそれをMacbook Airのコネクタに変換するコネクタ。ウェブ上ではSamsungのEVOがよくレビューされていましたが、過去にSSDで嫌な思い出があるので、 […]
下のURLでkey B+M端子を採用して1579.8MB/s(実測値,PCIe x2)を出しているレビューがあったので、1500MB/s以上はkey M端子のみというのは間違いになるのではないでしょうか?
まぁ、PCIe x2なので3000MB/sのような超高速SSDではないんですがね
https://www.amazon.co.jp/dp/B0794ZTMMW
「M.2 SSDなら超高速なSSD。」という勘違いをしている人は、おそらく多くはないと思う
これさあ「おそらく少なくはない」だよね?