DELLが製造販売するオフィス向けハイエンドPC「DELL Tower Plus EBT2250」に搭載されている、奇妙な形状をしたDELL独自規格マザーボード「02D3NT」について、分解写真を見ながら詳しく解説します。
(公開:2026/2/20 | 更新:2026/2/20)
DELL独自設計のマザーボード「02D3NT」

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「DELL EBT2250」はとてもシンプルな組立工程が組み込まれています。
- グラフィックボード一式を外す
- ケースファンもすべて外す
- マザーボードを固定する9本のネジを外す
- フロントパネルを剥がしておく
- マザーボードを斜めに持ち上げて引き抜く
以上の工程でマザーボード本体をキレイに取り出せる簡単な設計です。
マニュアルを読まずとも、分解工程が目で見て分かる優れたデザインです。簡単な設計だからヒューマンエラー(うっかりミス)を抑制できるし、高度なスキルを要しないため人件費も安く済ませられます。
メーカー製パソコンは一度分解してみると、様々な知見が得られて楽しいです。国内の競合BTOメーカーに対して、EBT2250がなぜ驚異的な安さを維持できるか、理由がよく分かります。


マザーボードの拡張性と基板サイズ

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ケース本体から摘出したマザーボード「02D3NT」の基板全体です。
PCケースの形状に沿わせるように作られた、独特のフォームファクターが特徴的。サイズ的にMicroATXとATXの中間くらいに相当します。

- PCIe 5.0 x16(CPU直結)
- PCIe 3.0 x4(Z890経由)
- PCIe 3.0 x4(Z890経由)
- M.2 2280(PCIe 4.0 x4 / CPU直結)
- M.2 2280(PCIe 4.0 x4 / CPU直結)
- SATA 6 Gb(Z890経由)
- SATA 6 Gb(Z890経由)
- SATA 6 Gb(Z890経由)
一般的なMicroATXマザーボードに相当する「拡張性」が確保されています。
Intel製ハイエンドチップセット「Z890」を搭載し、グラフィックボード用PCIeスロットと各M.2スロットがCPUに直結します。
PCIeスロットは最大64 GB/s(PCIe 5.0 x16)の帯域幅を供給でき、PCIe帯域幅を大量に消費するAIタスク(動画生成など巨大モデルのオフロード処理)でメリットが大きいです。

マザーボード裏面です。
白く縁取りされた部分は、PCケースに触れた部分から電気が流れないように絶縁コーティングが施されています。

横幅が393 mm(ほぼ40 cm)、ボトム側の横幅が312 mm、高さが233 mmでした。
| タイプ | 高さ | 横幅 | 面積 (切り欠き含む) |
|---|---|---|---|
| DELL Custom | 233 mm | 393 mm | 91569 mm² |
| ATX | 305 mm | 244 mm | 74420 mm² |
| MicroATX | 244 mm | 244 mm | 59536 mm² |
奇妙なフォームファクターですが、面積で見ると標準サイズ(ATX)よりも大きいです。
CPUソケットとメモリスロット

CPUソケットはLotes製「LGA1851」です。
LGA1700と互換性のあるネジ穴が四隅に設けられていますが、スペーサーの高さが一致しなければ、別売りのCPUクーラーは固定できません。

メモリスロットは一般的なDDR5 DIMM対応(DDR5-5600)です。あえて2スロットのみ実装して、信号の安定性を向上させつつ、人為的な増設ミスを未然に防ぎます。
下手に空きスロットがあると、PMICが一致しない他社のDDR5メモリを無理に増設して安定性を悪化させるなど、ロクでもないヒューマンエラーが発生します。
DDR5メモリは1枚で容量64 GBあり、たった2枚で128 GBまで増設可能です。4スロットの合理性がDDR3/4世代より大幅に減っており、2スロットの方が理にかなっています。

VRMフェーズの構成部品

CPUソケット周辺のVRM回路です。発熱しやすいMOSFETにVRMヒートシンクを取り付け済み。

側面ヒートシンクが41.9グラム、天面ヒートシンクは42.4グラムです。

VRMヒートシンクを外して、VRMフェーズの内訳を確認します。
- CPU:6フェーズ
- iGPU:2フェーズ
- VCCSA:1フェーズ
- VNNAON:1フェーズ
CPU部分のみ、変換効率が高い(発熱が少ない)統合型MOSFETを使い、VCCSAやVNNAONは廉価なディスクリートMOSFETでコストカットしています。

裏面にもチップがあります。
MOSFETの負荷を分散させる「ダブラー」と呼ばれる部品が使われています。

フェーズダブラーはONSemi製「NCP81162」です。全部で4つあるので、内3個がCPUフェーズ用、残り1個がiGPUフェーズ用です。

PWMコントローラはONSemi製「NCP81535」で、最大6+2フェーズを制御できます。電圧変換を実際に処理するMOSFETは、ONSemi製「NCP303160A」を採用。
1個で平均60 A(最大80 A)も処理できる高性能な統合型MOSFETです。市販モデルのマーケティング用語なら「DrMOS」や「SPS」などと呼ばれています。
CPU向けに合計6個(60 x 8 = 360 A)、iGPU向けに合計2個(60 x 2 = 120 A)です。

VCCSA用のPWMコントローラはONSemi製「NCP81526A」で、MOSFETはディスクリート型です。

細かい基板コンポーネントを一挙に確認

3.5 mmオーディオ端子を制御しているチップが「Realtek ALC1220」です。ノイズフィルター用のアルミ電解コンデンサは、SUNCON製オーディオグレードを2個搭載します。


Texas Instruments製「TPS65994AD」は、USB急速充電(USB PD 3.0)を制御します。最大15 W(5.0 V x 3.0 A)まで対応。

Intel製「JHL9040R」が、Thunderbolt4(USB 40 Gbps)ポートを制御します。Parade製のリドライバICを組み合わせて、HDMI信号に変換したり、複数の機能を1つのポートに実装します。

実質Intel製の「Killer E3100G 2.5G LAN」チップで、最大2500 Mbpsのインターネット速度に対応します。Realtekほど盤石の評判は得られていませんが、基本的に問題なく動作するはずです。
Wi-Fi 7モジュールは「Intel BE200」を使います。最大5.8 Gbps、Bluetooth 5.4に対応します。

フロントパネル周りの基板写真です。
- SDカードスロット(最大312.5 MB/s)
- 3.5 mmオーディオ端子
- USB 5 Gbps
- USB 5 Gbps
- USB 5 Gbps
- USB 10 Gbps(Type-C)
以上6つのインターフェイスが実装されます。

定番のRealtek製「RTS5242」チップで、USB 10 Gbps(Type-C)ポートを実装します。長距離配線による信号損失を補正するため、Parade製「PS8803」リタイマーICも使います。
全部で3個あるUSB 5 Gbpsポートの動作を安定させるため、USBポート1個につき、それぞれ1個ずつParade製「PS8719E」リドライバICも投入します。


ハードウェア情報をリアルタイムに取得するモニタリングICは、NuvoTon製を採用。HWiNFO64など、主流のフリーソフトでもセンサー値を取得しやすく、もっぱら互換性に定評あるモニタリングICです。
BIOSを保存するROM(NORフラッシュ)はMXIC製をデュアル実装。
DELL EBT2250起動時に表示される「Secure BIOS」が具体的に何を指すか不明瞭でしたが、基板を見て判明しました。万が一、BIOS ROMが故障しても、もう片方のROMに切り替えて正常動作を続けられます。


強力な足回りを供給するハイエンドチップセット「Intel Z890」です。まさに「業務、オフィスに最適」なチップセット選定です。

BIOSの設定値を保存するために使われるボタン電池(CR2032)です。クリップをつまんで、簡単に取り出せます。

SATAポート周辺に、ディスクリート型MOSFETがぎっしり実装されています。
特殊仕様の電源コネクタ

CPUに電力を供給する「CPU 4 pin」コネクタが2個あります。2つ合わせて軽く300 W近い給電能力を確保します。

SATAデバイスに電力を供給する「SATA」コネクタです。
市販マザーボードならATX 24 pinから供給されるため、わざわざ分割したコネクタは実装されません。DELL独自の設計です。

フロントパネルピンヘッダー(F_PANEL)も特殊仕様です。

一般的なマザーボードは24 pin仕様ですが、DELLは「ATX 12 pin(10 pin)」特殊仕様です。
まとめ:コストを抑えて “用途に最適化” する特殊マザボ

「DELL 02D3NT」の微妙なとこ
- DELL独自のフォームファクター
- 電源コネクタも特殊規格
- PCIeスロットの位置関係が狭い
- パーツの拡張性がやや物足りない
「DELL 02D3NT」の良いところ
- 「Intel Z890」チップセット搭載
- 理にかなったDDR5デュアルスロット
- Thunderbolt4(USB 40 Gbps)対応
- デュアルBIOS仕様(ROMを2基)
- Core Ultra 7 265Kに十分なVRM回路
- True Wi-Fi 7(5.8 Gbps)対応
- SDカードスロット(最大312.5 MB/s)
DELLがオフィスワーク向けに開発したマザーボード「02D3NT」は、製造コストを切り詰めながら、必要とされる要件をできる限り満たそうと努力した興味深いマザーボードです。
Core Ultra 7 265Kをフル負荷(PL1 = 180 W)で難なく駆動できるVRMフェーズ回路と、Intel Z890らしい強力な足回り(インターフェイス)を両立します。
1ポートで3役をこなす「Thunderbolt4(JHL9040R)」により、最大15 WのUSB PD、4K 120 Hz超も映るDP Alt Mode、最大40 Gbpsの転送速度に対応します。TB4ドッキングステーションでさらにポート数を増やせます。
見れば分かる足回りの良さに加えて、マザーボードの基板上にも「安定性」「業務向け」に貢献する設計が見られます。
たとえば、フロントパネル側のUSBポートはリドライバICをそれぞれ1個ずつ独立実装して、信号損失の補正を行い安定性を確保する設計です。
DDR5メモリスロットの互換性も物理的に対処するデザインです。クアッドスロットを捨てて、あえてデュアルスロット仕様を採用し、誤ったメモリ増設ミスを防いだり信号強度を高める効果に期待できます。
BIOSを保存するROMもわざわざ2基搭載して、片方のROMが壊れてもシステムを稼働できるよう、フェイルセーフが考慮された設計です。
自作PC用の汎用市販パーツと比較して、明らかに違う価値観に基づいて設計されたマザーボードです。マーケティング面を考慮した過剰な部品実装もなく、用途に対して必要とされる部品を淡々と搭載した印象を受けました。

以上「DELLパソコンの独自規格マザーボード(02D3NT)を分解しながら解説」でした。

















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私も市販のマザーボードのメモリスロットは2本でいいと思ってます