Appleの最新SoC「A12 Bionic」の性能はどこまで進化した?

Appleの最新SoC「A12 Bionic」の性能はどこまで進化した?

Snapdragon搭載のノートパソコンが登場したように、いずれはApple Aプロセッサ搭載のノートパソコンが登場するのではないか…と噂される程度には、近年のApple製SoCの性能は高い水準に進化してきた。

そして最新の「A12 Bionic」は、スマホどころかMacを動かすのにも十分と言われるレベルの性能に進化したようです。

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Apple A12 Bionic

Apple A12 Bionicとは

まず「Apple A」プロセッサについて少しだけ解説。Apple Aは、CPUの設計者として有名なジム・ケラー氏※が開発に関わったことがあるプロセッサで、スマートフォン向けのSoCとしては現在進行系で最前線を走っている。

主にApple製のスマートフォン(iPhone)やタブレット(iPad)に搭載されているSoCで、スマートフォン向けSocとしてライバルのフラグシップ級SoCと大抵は互角かそれ以上の戦いを続けています(もちろん、ライバルのKirinやSnapdragonも負けじと強力です)

the smartest, most powerful chip ever in a smartphone. (Phil Schiller氏

「Apple A12 Bionic」はApple Aシリーズの最新モデルで、Appleいわく「スマートフォンとしてこれまでにない最高の性能を実現。」と豪語するほどの性能を持つまでに進化した、とのこと。とりあえず、先代A11 Bionicとスペックを比較確認してみよう。

※ ジム・ケラー氏 : あのインテルに一泡吹かせた「AMD Ryzen」シリーズの設計者。半導体業界における「天才」の一人です。

Apple A12 Bionicの仕様とスペック

SoCApple A12 BionicApple A11 Bionic
チップ画像Apple A12 BionicApple A11 Bionic
プロセス7nm FinFET製造 : TSMC10nm FinFET製造 : TSMC
ダイサイズ83.27 mm287.66 mm2
トランジスタ数69 億個43 億個
クロック周波数2.49 GHz2.39 GHz
CPUARMv8.3-A six-core CPUARMv8-A six-core CPU
CPU詳細x2 Vortexx2 Monsoon
x4 Tempestx4 Mistral
GPUA12 Bionic GPUA11 Bionic GPU
NPUNext-generation Neural Engine8コア搭載NPUNeural Engineコア数不明
NPU性能1秒間あたり5兆回1秒間あたり0.6兆回
L1 Cache128 KB64 KB
L2 Cache8 MB8 MB
対応メモリLPDDR4XLPDDR4X
メモリ容量最大 4GB最大 3GB

驚くことに、Apple A12 Bionicは7nmプロセスで製造されている。インテルのデスクトップ向けCPUが14nmプロセスであることを考えると、7nmのApple A12は恐ろしく先を行っているように見えますね。

各社プロセスサイズの比較資料」より(後藤弘茂氏)

しかし、インテルと他社では若干nmの定義が違っているので、Apple A12の7nmはだいたいインテルの10nmより微妙に大きいくらいのイメージになる。それでも現行の14nmプロセスより確実に小さいわけですから、技術的には相当スゴイことに変わりない。

実際のところ、A12のトランジスタ数はA11と比較して約60%も増量されているが、チップの面積(=ダイサイズ)は約5%縮小されています。つまり、より小さい面積で更に性能アップを狙えるというわけです。

初心者もち
前よりチップは小さくなったのに、中身は60%多いのかぁ~。

A12 Bionicの「中身」を図解

A12 Bionicの内部構造

さて、次は60%も増量された69億個ものトランジスタから、何が構成されているかを見てみる。A12 Bionicの中身を分かりやすくイラスト化したモノが以上です。「Vortex」から順番に解説していく。

「Vortex」はシングルスレッド性能が極めて高い、高速プロセッサ。合計2個搭載されていて、今使っているアプリやゲームなどの重たいアプリ(フォアグラウンド)を優先的に処理する役割を担っています。

次に「Tempest」。こちらは消費電力が非常に小さく、性能も控えめなプロセッサ。合計4個搭載されており、バックグラウンドアプリを処理する役割を持つ。要するに、2種類のCPUがA12には入っていて、正確な役割分担によって性能の効率化を実現※しているというわけ。

※ 考え方としては、PlayStation 3に入っていた「Cell B.E.」プロセッサと非常に似ています。

次は「A12 Bionic GPU」。詳細なスペックはほとんど開示されていないが、Appleによれば4コアのGPUで、性能はA11 Bionic GPUより約50%の向上に成功したらしい。最後に8コア化した「Next Gen Neural Engine」を解説。

これはNPUと呼ばれているモノで、機械学習の処理に特化しています。Face IDの顔認証や、AnimojiといったiOS独自の機能を効率化する他、カメラを後からポートレート補正できる加工機能に高速化にも絶大な効果を発揮する「特化型コア」と説明できる。

  • Vortex:フォアグラウンドを処理する「超高速プロセッサ」
  • Tempest:バックグラウンドを処理する「省電力プロセッサ」
  • A12 GPU:ゲームのグラフィックなどを処理する映像担当コア
  • Neural Engine機械学習に特化したコア

ここまでの解説で、A12 Bionicは「性質の違う4つのコアによって構成されている」ということが分かったと思う。ちなみにIntelなどのライバルから脅威と見られているのが、言うまでもなく「Vortex」です。

総合スコアでは、SnapdragonやHiSilicon KirinもApple Aと良い勝負するが、1コアあたりの性能を示す「シングルスレッド性能」に関しては歯が立たない状況。だから、Vortexを2コアではなく4コアにしたら…と恐れられている。

初心者もち
AppleのスマホCPUは、1個あたりの性能がスゴイって理解でOK?
自作歴23台のやかもち
そういうこと。それに加えて、役割分担の技術も極めて優秀。

Apple A12 Bionicの性能を解説

7nmプロセスで製造され、より進化したNPUにGPUを搭載する最先端のSoC「A12 Bionic」の性能はどれくらい進化したのか。先代A11と比較しながら解説していく。

3DMark – Ice Storm Unlimited

Ice Storm Unlimited / Physics(1280×720)

  • Apple A12 Bionic
    27558
  • Apple A11 Bionic
    25641
  • Snapdragon 845
    34732
  • Snapdragon 835
    19411
  • Kirin 970
    22026
  • Exynos 9810
    26226

3DMarkのスマホ向けベンチマーク「Ice Storm」を使って、CPUのレンダリング性能をスコア化する。

A12 Bionicは27000点を超え、トップクラスの性能につけているが、8コア搭載のSnapdragon 845には派手に抜かされています。レンダリングはコア数が多いほうが有利なので、仕方がない部分ですね。

Mozilla Kraken 1.1

Mozilla Kraken 1.1 / 処理速度(ミリ秒)

  • Apple A12 Bionic
    606.1
  • Apple A11 Bionic
    725.3
  • Snapdragon 845
    2443.0
  • Snapdragon 835
    2713.9
  • Kirin 970
    3875.6
  • Exynos 9810
    2077.8

ウェブ上でJavascriptの処理速度を競うベンチマーク。シングルスレッド性能の高いApple Aが得意とする処理で、A12 Bionicは600ミリ秒という驚異的な速度を見せつけた。

今のところスマホ向けのプロセッサで1000ミリ秒を下回るのはApple A10 ~ A12くらいで、SnapdragonやKirinシリーズはシングル性能の速さにおいて、まだまだAppleに追いつけずにいる状況です。

Octane V2

Octane V2 / 総合スコア

  • Apple A12 Bionic
    43197
  • Apple A11 Bionic
    34686
  • Snapdragon 845
    15956
  • Snapdragon 835
    11845
  • Kirin 970
    11085
  • Exynos 9810
    14760

Octane V2もMozilla Krakenと同じく、ウェブ上でJavascriptの処理速度を競うベンチマーク。速度が速いほどスコアが大きくなります。結果は言わずとも分かりますが…Apple A12が最速でした。

他社のSoCでは20000点すら超えたことが無いのに、Appleは3万点すら飛び越えて4万点の領域に。もちろん、Apple A12の性能だけでなく、iOS自体の最適化が優れているのも要因ですが。

AnTuTu Benchmark 7

AnTuTu Benchmark 7 / 総合スコア

  • Apple A12 Bionic
    302955
  • Apple A11 Bionic
    256297
  • Snapdragon 845
    246366
  • Snapdragon 835
    204654
  • Kirin 970
    212278
  • Exynos 9810
    236552

スマートフォン向けのベンチマークで最も国際的な知名度が高い、AnTuTu Benchmarkの最新版(v7)における総合スコアです。

Apple A12はついに30万点の大台に乗ることに成功。スマホのプロセッサは世代を更新するごとに、着々とスコアを伸ばし続けているのがパソコン向けのCPUとは対照的ですね。

まぁ…パソコン向けCPUも最近はスコアを伸ばしているけれど、消費電力が半端ないのでゴリ押しなだけ。プロセスは全く微細化しないし、技術的な進歩は停滞気味なんですよ。

Geekbench 4.1

Geekbench 4.1 / シングルスレッド性能

  • Apple A12 Bionic
    4799
  • Apple A11 Bionic
    4212
  • Snapdragon 845
    2451
  • Snapdragon 835
    1906
  • Kirin 970
    1901
  • Exynos 9810
    3688
  • Core i5 7Y54
    3745
  • Core i5 8250U
    4119
  • Core i7 8750H
    5078

Apple競合SOCIntel

Geekbenchはマルチプラットフォーム対応のベンチマークなので、インテルのモバイル向けプロセッサも比較に入れてみました。こうして見ると、A12 Bionicのシングル性能の高さは確かに驚くべき水準です。

他のSoCが1900~2500点に対して、Apple A12 Bionicはその2倍近い約4800点に達しています。これはノートパソコン向けCPUで定番のi5 8250Uより高いスコアになっている。

ゲーミングノートPC向けのi7 8750H(6コア)には、さすがに追いつきませんが、消費電力を考慮するとApple A12 Bionicの性能はかなり異質。

ただ、比較しているプラットフォームがiOSとWindowsなので、参考程度に見ておこう。とりあえず言えることは、A12の単体性能は「最速」の領域に入っているということだけですね。

Geekbench 4.1 / マルチスレッド性能

  • Apple A12 Bionic
    11421
  • Apple A11 Bionic
    10469
  • Snapdragon 845
    8680
  • Snapdragon 835
    6479
  • Kirin 970
    6715
  • Exynos 9810
    8874
  • Core i5 7Y54
    6921
  • Core i5 8250U
    12659
  • Core i7 8750H
    21721

すべてのコアを処理に使うマルチスレッド性能では、11400点に留まった。速いコアは2個しか入っていないので、他社の8コアSoCと比較するとマルチ性能は伸びにくい傾向にある。

逆に言えば、Appleはコア数を増やせば他社のSoCをカンタンに圧倒できるという意味にもなる。Intelのように4コア ~ 6コアと増やすような手法を取れば、IntelのCPUすら圏内に入ってしまう。

今のところは消費電力の都合で2コアに抑えていると考えられるが、今後登場すると言われているARM版Macbookでは、4コア搭載のApple Aが登場しても違和感は無い。

2コアの時点で消費電力は7W程度なので、4コアになってもせいぜい14 ~ 15Wです。ノートパソコン用のプロセッサとして、全く遜色ない性能と消費電力を両立できる計算になります。

まとめ:A12 Bionicは今のところ「最速」のSoC

AnTuTu Benchmark 7 / 総合スコア

  • Apple A12 Bionic
    302955
  • Apple A11 Bionic
    256297
  • Snapdragon 845
    246366
  • Snapdragon 835
    204654
  • Kirin 970
    212278
  • Exynos 9810
    236552

というわけで、安定のAppleという感じでした。7nmプロセスへ移行したことで、消費電力をほぼ維持したまま性能を2割ほど向上させているので、Appleの技術力の高さは相当スゴイ。

もちろん、設計通りにちゃんと7nmプロセスでApple A12 Bionicを安定的に製造できる台湾のファブ「TSMC」も驚異的。

しかし、今後はHiSilicon / Samsung / Qualcommも7nmプロセスのSoC※を投入してくるので世界最速の座はそう長くは続かない可能性が高い。

※ 今後の各社7nm SoCは「Kirin 980」「次期Exynos」「Snapdragon 855」です。30万点くらいはザラにつけてきそうな布陣です。

いずれノートパソコンに搭載される「Apple A」

A12の後継モデルにあたる「A13」や「A14」が、AppleのMac製品に搭載されるという噂がある。

The shift won’t be immediate, and will likely start on Apple’s low-end, like the MacBook and possibly a Mac mini migration.

すぐにすべてのMac製品に移行するわけではなく、ローエンドなMac MiniあたりからApple A搭載モデルが登場するとのこと。

ARM processor for Macs coming in 2020 or 2021, Apple car in 2023 says Ming-Chi Kuo

プラットフォームが違うとはいえ、既にインテルのモバイル向けプロセッサに匹敵するほどの性能を得ているため、更に性能が進化しているであろうA13やA14がMac製品に搭載されていも違和感はない。

最適化に関しても、iOS自体がmacOSの系統を汲んでいるため、macOSにApple Aプロセッサを最適化させるのはWindowsほど難しくないと思われる。

個人的に、Apple Aプロセッサを搭載するノートパソコンが投入されるのは素直に面白そうだと感じてる。ノートパソコンの選択肢が幅広くなるし、インテル独占を止める抑止力にもなりますから。

初心者もち
PC版Apple Aは表記がややこしそうだね。「2 + 4 / 6」って感じかな?
自作歴23台のやかもち
いや、多分2種類のコアの存在を伏せて、普通に「6 / 6」という表記になると思います…。

以上「Appleの最新SoC、A12 Bionicの性能はどこまで進化した?」でした。

モバイル向けCPUな記事たち

ノートパソコン市場では未だにインテルCPUが強いが、最近はAMDも頑張ってる。特に内蔵グラフィックスの性能は圧倒的な強みですね。あまりにも内蔵GPUが強いので、インテルとコラボCPUを出しているぐらい。

Apple A12 Bionicが登場するまで「最強の座」についていたのが、10nmプロセスの「Snapdragon 845」です。Google Pixel 3やXperia XZ3など、現役のAndroidハイエンドスマホで活躍中。

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8 件のコメント

  • 記憶違いだったら申し訳ないんですが、A11のニューラルネットワークは2コアじゃありませんでしたっけ?9月のiPhone XS発表イベント中スクリーンに表記されていたような…。

  • 自分のXSはAntutuスコア36万点でした
    ちもろぐさんが参照したデータと大きな差があるのは、単純にAntutu v7以降に度々起こるGPU測定エラーのせいでしょう

  • ipad 第5世代(A9)所持してますが正直これでも十分な性能だと感じてるので、すごいとしか言いようがない
    最適化や無駄が少ないという面で他のOSに比べて優位な分、効率的で省電力性能高いのも魅力
    用途に応じて優劣は変わりますが電池持ちが良いというだけでモバイル端末との相性抜群で、サブの用途(ネットサーフィン等)にはちょうどいい
    信頼性(主に耐久性)も高いのでながく使う分にはコスパがいいですし、廉価版出た時には驚きました
    ただ唯一不満な点があるとすればキーボード周りとストレージ関連くらいですね

    androidやwindowsのタブレットが駄目という訳ではないのですが、どうしても機器ごとに特定の不具合がある事が多いので消去法でipadに…(廉価版がなかったら買ってないですが)
    そもそもandroidは3ボタンの問題、windowsは用途の都合上コスパが悪くなりがちで最低価格も高いので、廉価版にはほんと助けられた…

    というよりcore mが相変わらず…、頑張ってintel

    そういえば最近ipad miniの噂をチラホラみかけますね

  • スマホに関してはapple が最強なんですかね……android使ったことがないのでわかんないですけど。
    snapdragonには頑張ってもらいたいですね

  • A12 Bionic機は全てが4GB RAMではないです。一部モデルは3GB。
    なのでiPhone Xsファミリーは完全な同一スペックではなかったり。
    teardownしている海外サイトが明らかにしています。

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