Appleがフラグシップモデルの「iPhone 8」や「iPhone X」に搭載したスマホ用のCPU(= SoC)は「A11 Bionic」というモノなんだが。その性能がスマホとは思えない、凄まじい水準に達していることが分かった。
ユーザーにとっては驚異的で、ライバルのIntelやQualcommにとっては「脅威的」と言えそうです。
この記事の目次
Apple A11 Bionic

Apple Aプロセッサは、2017年にCPU市場を沸かせた「AMD Ryzen」の設計者として有名なジムケラー氏も設計に関わったことがあるプロセッサです。
Appleのスマートフォンやタブレット機器に搭載され、モバイル向けプロセッサ(SoC)としてはライバルのフラグシップSoCと互角に戦える性能を常に発揮してきた。
さて、「A11 Bionic」はAプロセッサの最新モデルで、主に「iPhone 8」「iPhone X」に搭載されています。スペック(仕様)は秘密主義のAppleによってあまり明らかになっていませんが…。
Apple A11 Bionicのスペック | |
---|---|
クロック周波数 | 不明 |
CPU | ARMv8-A six-core CPU |
CPU内訳 | x2 Monsoon |
x4 Mistral | |
プロセスルール | 10nm |
L1 Cache | 32KB |
L2 Cache | 8MB |
GPU | Apple 3-Core GPU |
対応API | 不明 |
メモリ帯域幅 | |
メモリタイプ | |
メモリチャネル |
とりあえずこれだけ判明している。
TSMCによって10nm FinFETプロセスで製造され、43億個のトランジスタを搭載。ダイサイズは87.66mm2で、これは先代の「A10」より約40%ほど小さくなっている。

そしてA11 Bionicには「合計6個」のCPUが搭載されていて、その内容は「高性能プロセッサのMonsoonが2個」と「省電力性に優れたMistralが4個」の合計6個で構成されています。
A11の圧倒的なパフォーマンスは主に「Monsoon」から生み出されるため、実質2コアのCPUとみなされており、インテルや他のメーカーはAppleが更なるマルチコア化に走ったら…と警戒気味。
他に特徴的なのは、iPhoneで写真の編集や加工を施す時の処理を高速化する「M11 モーションプロセッサ」が組みまれていたり、Face IDやAnimojiなどiOS 11独自の機能を効率化する「Apple Neural Engine」などが搭載済み。
気になるA11 Bionicの性能を解説
さて…機械学習に特化したハードウェアが組み込まれるなど、最新技術が多数使われている「A11 Bionic」だが。実際のところ「性能」はどれほどのものなのだろうか。
各種ベンチマークで確認してみます。
https://www.notebookcheck.net/Apple-A11-Bionic-SoC
3DMark – Ice Storm Unlimited

3DMarkのAndroid / iOS対応版が「Ice Storm Unlimited」。これを1280×720(Offscreen)で実行し、そのPhysics Score(GPU本体のスコア)で内蔵グラフィックスの評価を行う。
3DMark – Ice Storm Unlimited Physics 1280×720 offscreen
Apple A11 Bionicに搭載されている「Apple 3-Core GPU」は最高のスコアを記録。各社のハイエンドSoCを軽々と押しのけてしまった…。Snapdragon 835やExynos 8895と比較して25%高い。
Mozilla Kraken 1.1

ブラウザ上で実行するベンチマーク。Javascriptの実行処理速度を計測して、CPUの性能をスコア化できます(単位はミリ秒で短いほど優秀)。
Mozilla Kraken 1.1
A11 Bionicは脅威的な速度を見せつけた。このベンチマークは1000ms(1秒)を割れれば体感上のレスポンスは問題ない水準になるため、725.3ms(0.7秒)という速度は必要十分と言えます。
ただ、これはCPU本体の処理性能だけでなくiOSとの最適化が非常に上手く行っていることが要因でもある。デスクトップ用CPUの「Core i7 7700K」ですら、900ms前後が限界ですから。
Octane V2

Krakenと同じく、これもブラウザ上で実行する。内容もほぼ同じでJavascriptベースのアプリケーションを実行して、その処理速度をスコア化するというもの。スコアは高いほど優秀です。
Octane V2
やはりAppleのSoCはJavascriptの処理をものすごく得意とするようだ。ちなみに画像の29738点は、今ブログを書いている「Ryzen 5 1400」搭載のデスクトップPCで計測したものです。
いかにA11 Bionicがスマホ向けのCPUであることを考えると「異様」なのか。少しは分かると思います。
AnTuTu Benchmark v6

スマートフォン向けのベンチマークで定番中の定番ソフト。日本でもとても有名だと思います。さて、Antutu Benchmarkはデバイス全体のスコアを表示するため、完全にSoC自体の評価にはならないが「傾向」を掴むのには使えます。
AnTuTu Benchmark v6
異常な強さです。Snapdragon 835が約18万点を叩き出した時、Qualcommは最強SoCの座に座っていた。しかしこの結果を見る限り、再びAppleにその座を返上することになりそうですね。
もう一つ驚きなのは、A10X Fusionにも迫るスコアだということ。A10XはiPhoneよりも大きい「iPad」向けSoCにも関わらず、ここまで迫るとは。この調子だと「A11X Bionic」も相当にヤバそう…。
Geekbench 4.1

Geekbenchは様々な分野のテストを大量に実行させて、終了までの時間でCPU性能を評価するベンチマーク。Linux、Windows、Android、iOSなど複数のOSで実行可能なクロスオーバーアプリなのが特徴。
Geekbench 4.1 – 64 Bit / Single Score
Windowsでも実行可能なので、比較対象にモバイル向け(ノートPC)のインテルCPUを追加しました。
さて、結果は見ての通りA11 Bionicの圧倒的な勝利。既存のSoCでは全く歯が立たず、先代のA10X Fusionも一歩届いていない。しかし「Core i7」系には負けてしまいました。
Geekbench 4.1 – 64 Bit / Multi Score
次はすべてのスレッドを使用して、マルチスレッドスコアを出す。
モバイルに搭載されているSoCとしては、圧倒的なスコアを記録。特にすごいのはMacBookに搭載されていることも多い、モバイル向け「Core」(Uシリーズ)に対しても勝っている点。
スマホがノートパソコン(しかも10万円以上もするような…※)に並ぶスコアを出しているインパクトは強烈。もちろんインテルも黙ってはいない。
※まぁ、iPhone 8 やiPhone Xもノートパソコン並に高いんですけど。
Geekbench 4.1 – 64 Bit / Single Score
インテル最新の第8世代「Coffee Lake」では、今まで2コア4スレッド縛りだったUシリーズを、ついに4コア化した。シングルスレッド性能ではA11 Bionicと互角。
Geekbench 4.1 – 64 Bit / Multi Score
そして全てのスレッドを活用できるマルチスレッドスコアではA11 Bionicを圧倒。さすがに4コア化したら強いですね…。しかし、これは相手もマルチコア化を進めることで勝てる可能性を示唆している。
実質2コア(Monsoonが2個)でも脅威的な「A11 Bionic」が、もしもMonsoonを4個搭載していたらCoffee Lakeでも厳しい戦いになりそうですから。
まとめ:A11 Bionicはスマホ向け最強のSoC

AnTuTu Benchmark v6
Snapdragon 835やExynos 8895は登場した当時、AnTuTu Benchmarkで17~18万点を出せる最高クラスのSoCでした。
その後、iPad向けのA10X Fusionが20万点の大台を突破しモバイル向けのCPUでここまで出来るのか…と驚きだったが、その次のA11 Bionicまで20万超えを維持するのはなかなか強烈ですね。
2017年6月時点の予想では…
A9からA10へクラスチェンジした時の伸び率を考えると、おそらく「iPhone 8」に搭載されるA11は、AnTuTuで18~19万点レベルのSoCに仕上がると思います。
20万点を超えるとは思っていなかったからねぇ。
Geekbench 4.1 – 64 Bit / Multi Score
さらに、MacBookにも搭載されることがあるインテルの「Uシリーズ」「Yシリーズ」に対しても10%以上高いスコアを見せる点もとても興味深い。
実際のところ、Apple A11をWindowsやAndroidで動かすことは出来ないため単純な比較にはならない。しかしAppleの作るAプロセッサは確実に他のSoCメーカーにインパクトを与えているのは間違いないだろう。
今後のSoC市場における「競争」

今後登場する予定のフラグシップSoCには、A11の「Apple Neural Engine」と同じく機械学習に特化した機能も内蔵される。
- Kirin 970(Kirin 960の後継)
- Snapdragon 845(835の後継)
このあたりがどれくらい戦えるのかが気になるところ。Exynosを持つサムスンや、Snapdragonを生産するクアルコムは既に「8nm」プロセスでの製造技術を持っている。
個人的な勝手な予想だと、当然AnTuTuで20万オーバーを果たし、よほどの技術革新がない限りはAppleとサムスンやクアルコムは「抜かし抜かされ」を繰り返しそうだと思ってます。
以上「Apple最新のSoC「A11 Bionic」の性能が強すぎる…という話」でした。
命令セットの違い故にPC向けプロセッサと完全に同じ土俵で比べられるものではないとは言え、この性能は目を瞠るものがありますね……………
このSoCレベルの性能のそれが広範に世に浸透すれば、ひょっとするとかつての名(迷)機F-07Cのようなコンセプトの携帯兼PCなガジェットが本格的に普及するかも?
Apple独自のCPUアーキテクチャで唯一構成が分かるのがA7に搭載されたCycloneなんだけど整数パイプライン本数、デコーダ数はARMのA72の2倍、NEONは1.5倍だったから結局、AndroidとiOSの差と言うよりはCPUの地力の差がかなり大きい。
Android端末に搭載されるSoCでAシリーズに対抗出来る可能性があるとするならSamsungのMongoose、nVidiaのDenverアーキテクチャだからCPUが高性能になって欲しい人はTegra、Exnos搭載端末買って応援しよう。
「Apple A11をWindowsやAndroidで」動かすことは出来ない
ではなく
「WindowsやAndroidをApple A11で」動かすことは出来ない
ではないでしょうか・・・・
記事中のNerural(2か所)ってNeuralの間違いじゃないでしょうか.
Geek benchにしてもantutuにしてもプラットフォーム間の直接比較は出来ないのが常識。
A10にしろA11にしろ特定機能のアクセラレーターでベンチの数値がインフレしてるのがミエミエなのに何を騒いでんだか
具体的にミエミエな箇所を教えてもらいたいですね。ベンチマークで行う処理はどれも一般的なアプリケーションで多用されるものばかりなんですよ。それなのに特定機能のあくせらr
UXにおいて大事なのは処理能力以前に処理するために必要な情報を収集する能力だってどっかのお偉い大学教授が言ってた希ガス(
その点Google率いるAndroidは強いんじゃないかと
[…] 画:chimologさんからの転載。 […]
[…] 良いです。これは大きなメリットです。 iPhone7はA10Fusionチップです。 A11Bionicチップの性能の解説は以下のブログが参考になります。 Apple最新のSoC「A11 Bionic」の性能が強すぎる…という話 […]
この頃はAntutuで、ハイエンドが200000点くらいだったのが、今じゃミドルハイ(スナドラ710等)が200000点だもんなぁ…ハイエンドは400000点行ってるもんなぁ…
すげえや