「Meltdown」と「Spectre」のパッチがCPU性能に与える悪影響




2018年1月に発覚したCPUのハードウェア由来の脆弱性「Meltdown」(メルトダウン)と「Spectre」(スペクター)。Intel製CPUの場合、少なくとも1995年以降に出荷された製品はこの脆弱性の影響を受ける。

つまり、ほとんどのCPUは対策パッチをあてざるを得ない状況だ。そのパッチが処理性能にどの程度の悪影響を与えるのか…をまとめてみた。

Sponsored Link

メルトダウンとスペクターについて

例えば、パスワード管理アプリを使っているとする。このアプリの中でやり取りされる情報はメモリに格納されていて、他のアプリケーションがその格納されている情報を「見る」ことは出来ないようになっています。

本来、メモリ内部のデータは見れないが、メルトダウンとスペクターを利用した悪質なアプリケーションは、その「壁」を突破してしまう。

しかし、このCPU由来の脆弱性「メルトダウン」と「スペクター」を悪用すれば、他のアプリケーションからでもメモリに格納されている情報を見たり抜き取ったり出来るようになってしまう。

パスワード管理アプリなら、中に入っているパスワードやメールアドレスなどの個人情報が外部に漏れ出すかもしれないし、プログラムを書いているなら書いたコードがまるまる盗み出されるかもしれない。

この重大な脆弱性をここまで公にしなかったIntelも悪いが、この脆弱性を悪用して良からぬことを企むクラッカー(=悪いハッカー)はもっと悪い。

神経質になる必要はほとんど無い

「CPUの構造上に存在する脆弱性」ということで、ヤバそうな脆弱性に聞こえてしまうが。基本的に怪しいアプリをインストールしないように気をつけ、怪しいウェブサイトに行かないようにすれば大きな問題にはならない。

つまりメルトダウンとスペクターを悪用する「悪いアプリケーション」に要注意ということです。とは言っても、大半の人はやはり心配だと思うのでOS側の対策パッチを自分のシステムにあてると思う。

この対策パッチがどれくらい処理性能に悪影響を及ぼすのか。地味に気になるところだ。

初心者もち
「セキュリティ完璧※。」な自信があれば、パッチあてなくても良いんですか?
自作歴19台のやかもち
そうなるねぇ~…何かあっても完全に自己責任になるけど。でも、無意味にアプリを入れなければいいよ。

※ 脆弱性のあるCPUを使っている時点でセキュリティ完璧とはいえないことに注意。そもそも完璧なセキュリティなんて無い。怪しいソフトに触らず、システムを最新に保つことが最も手軽で確実なセキュリティ対策です。

メルトダウンとスペクターの違い

メルトダウンは、他のアプリケーションに格納されているデータを覗き見できないように設置されている壁を破壊できる脆弱性(壁を溶かすのでメルトダウンと表現される)。

スペクターは幽霊の意味を持ち、他のアプリケーションがメモリに預けているデータを、自分でも見られる任意の位置にデータを呼び寄せることができる脆弱性(壁を通り抜け、データを持っていくので幽霊と表現される)。

深刻度はスペクターの方がマズイです。Intel・AMD・ARM製のほぼ全てのCPUに、スペクターが確認されている。解決にはCPUの設計を根本的に変更するしか無いので、一朝一夕でポンポンと対処出来る問題ではない。

対策パッチがCPU性能の低下をもたらす理由

今回の脆弱性は、IntelがCPUの処理性能を高めるために用意した「仕組み」に存在するモノ。大雑把に言えば、メモリとのやり取りを高速化(予測、推測、投機的実行などなど…)する仕組みのことで、ここに脆弱性が存在していた。

パッチを当てることでメモリとやり取りをする時にセキュリティチェックを噛ませられるようになるが、その分余計な時間が生じるため処理性能が落ちてしまう可能性がある

  • メモリ(キャッシュ)とのやり取りが少ないアプリほど影響は少ない
  • キャッシュレイテンシが遅いCPUほど影響を受けやすい

仕組みから推測される可能性は以上の通り。要するにショボいCPUほど悪影響を受けやすいということになるが、ひとまずデータを見ていってみよう。

最新世代なら性能低下を体感するのは「不可能」

米TechSpotが「Patched Desktop PC: Meltdown & Spectre Benchmarked」にて、Core i3 8100でWindows UpdateとBIOS Updateを掛けた場合のパフォーマンス差を検証しているので、そちらを参考に見ていく。

Cinebench R15

Cinebench R15 – シングルスレッド性能

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    154
  • Core i3 8100 Win
    156
  • Core i3 8100
    156

Windows Update + BIOS UpdateWindows Updateパッチ無し

レンダリング性能を計測するベンチマーク。シングルスレッド性能はほとんど変化がなく、パッチの影響はわずかだと言える。

Cinebench R15 – マルチスレッド性能

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    602
  • Core i3 8100 Win
    601
  • Core i3 8100
    613

全てのコアを使うマルチスレッド性能はこの通り。こちらも同様にほとんど影響を受けておらず、ほぼ誤差の範囲と言っていい。CPUとしての性能は、思った以上に損なわれていない。

Corona 1.3

Corona 1.3 Benchmark (秒)

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    394
  • Core i3 8100 Win
    385
  • Core i3 8100
    384

Cinebenchと似た内容のベンチマーク。スコアではなく処理時間で性能を示してくれる。パッチを当てると10秒ほど処理が遅くなっているが、わずか2.5%の差にすぎない。

7-Zip Benchmark

7-Zip Benchmark – 解凍 (MIPS)

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    16219
  • Core i3 8100 Win
    16350
  • Core i3 8100
    16456

無料の解凍ソフト「7-Zip」では、CPUの圧縮と解凍のスピードをベンチマーク可能(単位はMIPS)。パッチを当てることで若干スコアが悪化しているが、たったの1.4%しか変わらない。体感は不可能です。

7-Zip Benchmark – 圧縮 (MIPS)

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    17258
  • Core i3 8100 Win
    17512
  • Core i3 8100
    17534

圧縮も同様の結果で、1.6%の差に留まった。

Geekbench 4

Geekbench 4 – マルチコアスコア

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    14270
  • Core i3 8100 Win
    14624
  • Core i3 8100
    14744

Geekbench 4によるマルチスレッド性能の計測。スコアの悪化は確かに見られるが、3.2%程度でしかない。パッチの悪影響は間違いなく存在すると言えそうですが、体感することは出来ない。

次はゲーミング性能への影響を見ていくが、Cinebench R15のシングルスレッド性能がほとんど変化していないので、ゲーミング性能も心配無用の結果になるだろうとは思う。

Battlefield 1

Battlefield 1 / 最高品質 / GTX 1080 Ti

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    133
  • Core i3 8100 Win
    137
  • Core i3 8100
    138

検証に使われたグラフィックボードは「GTX 1080 Ti」です。さて…結果はこんな感じで、平均フレームレートがやや低下している。とはいえ約4%の差しか出ていないので、ほとんど気にならないレベル。

Ashes of the Singularity : Escalation

Ashes of the Singularity : Escalation / 最高品質 / GTX 1080 Ti

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    81
  • Core i3 8100 Win
    85
  • Core i3 8100
    84

CPU性能がフレームレートに出やすいAshes of the Singlarityでも、思った以上に変化せず。

Assassin’s Creed : Origins

Assassin’s Creed : Origins / 最高品質 / GTX 1080 Ti

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    69
  • Core i3 8100 Win
    69
  • Core i3 8100
    69

アサシンクリード最新作「Origins」では、完全に影響ゼロ。

Rainbow Six Siege

Rainbow Six Siege / 最高品質 / GTX 1080 Ti

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    188
  • Core i3 8100 Win
    187
  • Core i3 8100
    188

R6Sはやや古いゲーム。それにも関わらず、CPU性能の低下は全く気にしていない様子だ。対策パッチがゲーミング性能に与える悪影響は、ほとんど気にならない範囲に収まると言えますね。

最後にストレージ性能への影響を確認しておきます。

Crystal Disk Mark 6 / Samsung 950 PRO 512GB

Crystal Disk Mark 6 – シーケンシャルリード(MB/s)

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    1927
  • Core i3 8100 Win
    1965
  • Core i3 8100
    1977

テストサイズは標準的な50MBで実行している。シーケンシャルリードは2.5%低下して、1927 MB/sになった。やや影響が出ている。

Crystal Disk Mark 6 – シーケンシャルライト(MB/s)

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    1495
  • Core i3 8100 Win
    1513
  • Core i3 8100
    1523

シーケンシャルライトも同様で、1.8%ほど低下して1495 MB/sになった。やはりストレージ性能への悪影響がやや見られる。テストサイズを落として行くとその傾向は更に顕著になっていきます。

Crystal Disk Mark 6 – 4kB Q=32 読み込み(MB/s)

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    715
  • Core i3 8100 Win
    768
  • Core i3 8100
    798

キューの深さは32、サイズは4KB。パッチを当てる前は798 MB/sも出ていたのに、パッチを当てた後は715 MB/sまで低下。割合にしてなんと10%もの性能低下になってしまった。

Crystal Disk Mark 6 – 4kB Q=32 書き込み(MB/s)

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    386
  • Core i3 8100 Win
    430
  • Core i3 8100
    432

書き込み速度にも、ほぼ同じ10%の性能低下が確認された。

Crystal Disk Mark 6 – 4kB Q=1 読み込み(MB/s)

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    37
  • Core i3 8100 Win
    40
  • Core i3 8100
    52

キューの深さを1まで落とすと、性能低下は最大限に。52 MB/sも出ていた読み込み速度は、37MB/sまで低下。約30%という大幅な性能低下です。

Crystal Disk Mark 6 – 4kB Q=1 書き込み(MB/s)

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    151
  • Core i3 8100 Win
    176
  • Core i3 8100
    186

書き込み速度は約20%の性能低下で読み込みほど酷くはないが…、それでも20%の性能低下は大きいですよね。一般的な使い方で4KBランダムアクセス速度の低下を体感するのは、ほぼ不可能とは言え20~30%の低下は目立つ。

ただし、SSDをNVMeからSATA規格の850 EVOに切り替えたテストでは悪影響が目立ちづらい。

Crystal Disk Mark 6 / Samsung 850 EVO 2TB

Crystal Disk Mark 6 – シーケンシャルリード(MB/s)

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    523
  • Core i3 8100 Win
    510
  • Core i3 8100
    514

パッチの有無に関わらず、一貫したシーケンシャルリードを叩き出している。

Crystal Disk Mark 6 – シーケンシャルライト(MB/s)

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    503
  • Core i3 8100 Win
    501
  • Core i3 8100
    502

シーケンシャルライトも同様で、パッチの有無に全く影響を受けていません。

Crystal Disk Mark 6 – 4kB Q=32 読み込み(MB/s)

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    380
  • Core i3 8100 Win
    383
  • Core i3 8100
    391

サイズを下げていくと、微妙に性能が低下しますが…たったの約3%ほど。

Crystal Disk Mark 6 – 4kB Q=32 書き込み(MB/s)

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    352
  • Core i3 8100 Win
    359
  • Core i3 8100
    362

書き込みも同じく約3%程度の性能低下に収まった。

Crystal Disk Mark 6 – 4kB Q=1 読み込み(MB/s)

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    39
  • Core i3 8100 Win
    38
  • Core i3 8100
    48

しかしキューの深さが1になると、やっぱりパッチの影響が顕在化する。読み込み速度は20%の低下。

Crystal Disk Mark 6 – 4kB Q=1 書き込み(MB/s)

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    99
  • Core i3 8100 Win
    118
  • Core i3 8100
    136

書き込みは28%の低下に達した。SATA SSDの方が悪影響は受けづらいが、4KBランダムアクセス速度への悪影響は避けられないことがよく分かった。

平均パフォーマンスで確認する、性能低下

CPU性能の平均パフォーマンス

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    98.88
  • Core i3 8100 Win
    99.47
  • Core i3 8100
    100.00

Windows Update + BIOS UpdateWindows Updateパッチ無し

Core i3 8100は第8世代「Coffee Lake」の一つ。最新世代のCPUなので、今回の対策パッチによるCPU性能への悪影響はごくわずかということが分かった。平均で見ると約1.1%なので体感するのは…まず無理。

ゲーミング性能の平均パフォーマンス

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    117.75
  • Core i3 8100 Win
    119.50
  • Core i3 8100
    119.75

GTX 1080 Tiと組み合わせた場合のゲーミング性能が、ここまで無風だとは。よってGTX 1060などミドルクラスGPUと組み合わせる場合も、パッチの影響はほとんど受けないと思われる。

ストレージ性能の平均パフォーマンス(950 PRO 512GB)

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    271.87
  • Core i3 8100 Win
    293.63
  • Core i3 8100
    303.00

CPU性能とゲーミング性能は、パッチとは無縁だったがストレージ性能は大きく影響を受けた。特にファイルサイズが小さくなると影響が顕著に見られた。

ストレージ性能の平均パフォーマンス(850 EVO 2TB)

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    179.20
  • Core i3 8100 Win
    183.37
  • Core i3 8100
    190.03

SATA SSDにするとマシにはなるが、傾向は全く同じ。

まとめ:脆弱性対策パッチはストレージ性能を押し下げる

CPU性能の平均パフォーマンス

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    98.88
  • Core i3 8100 Win
    99.47
  • Core i3 8100
    100.00

Windows Update + BIOS UpdateWindows Updateパッチ無し

ここまで見てきたとおり、CPUの処理性能自体は対策パッチを当てたところで大きな影響はありません。無いわけではないが、体感するのは不可能です。よって心配しているほどの性能低下は無い。

Crystal Disk Mark 6 – 4kB Q=1 読み込み(MB/s)

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    37
  • Core i3 8100 Win
    40
  • Core i3 8100
    52

Crystal Disk Mark 6 – 4kB Q=1 書き込み(MB/s)

  • Core i3 8100 Win + BIOS
    151
  • Core i3 8100 Win
    176
  • Core i3 8100
    186

しかしストレージ性能への影響は大きい。最新世代のCPUですら、小さいファイルに対するアクセス速度が20~30%も低下しており、セキュリティチェックによって遅延が発生しているのは間違いないですね。

このパッチは古いシステムであればあるほど影響が大きくなりやすい。Skylake(6世代)やKabylake(7世代)なら過度な心配は必要ないと考えられるが、Broadwell(5世代)以前だと何ともいえないところ。

とはいえ性能自体への心配は、今のところほとんど心配がない。PC WorldがCore i5 5200Uに対して行ったテストでも、基本的な傾向はほぼ同じでした。悪影響のほとんどはストレージ速度に現れている。

  • CPU性能への悪影響はほとんど無い
  • ゲーミング性能への悪影響も、同様にほとんど無い
  • ストレージ速度の低下は避けられない
  • 古いシステムほどパッチによる性能低下は避けられない

結論、SSDの速度が多少落ちたところで…体感するのは厳しいのだから過度な心配は無用です。HDDレベルまで性能が落ちるなら大問題だが、今のところ4KBサイズの読み書き速度で悪影響は顕著なだけ。

普通のシーケンシャルアクセスでは大きな悪影響は出ていないので、普通にPhotoshopで写真編集をしたり、SAIでイラストを描いたり、PUBGや黒い砂漠をプレイする使い方なら「無視」できるレベルです。

逆に無視できない方々は、エンタープライズ向けの超高性能SSDを大量に運用している企業でしょうね。特に3D X-pointを使ったSSDは4KBサイズの読み書き速度が異次元の領域に突入しているため、30%の低下はあまりにも大きいと思われます。

初心者もち
「i5 8600K」使ってるから、特に心配ないや。素直にUpdate掛けちゃうか~。
自作歴19台のやかもち
2~5世代を使っている人は「買い替え」を検討し、6世代以降の人は心配ならパッチを当ててしまえば良いと思います。

以上「MeltdownとSpectreのパッチがCPU性能に与える悪影響」についてでした。

Sponsored Link

4 件のコメント

  • 今回の記事に関係ありませんが、Ryzen 5 1600XをOCしたらCorei7-8700Kと同性能になるんですかね?気になっていますが、夜は眠れています。

  • 実際はもっと影響の出るゲームがチラホラありますね
    ウォッチドッグス2の4K高設定や
    ライズオブトゥームレイダーの4K高設定などです、要はマシンパワーを相当必要とするゲームの非常に高いゲーム設定だと、結構ゲームパフォーマンスに影響が出ます

    10フレーム以上下がることも普通にありますね、うちも3台のゲームPCでドライバなど変えながら検証しましたが、ギリギリ60fps以上を出していた4K設定で不安定になる事が多くなりました、fpsか不安定なのでスタッタリングのような現象も多くなりました

    重い設定ほどゲームへの影響が目立つ見たいですね

    • GPU負荷が高い設定だと、逆にその他CPU等の遊びが増えるのでこの件とは別の原因に思えますね。
      もっともメモリに余裕がないとストレージにアクセスするスワップが起きている可能性があり、もしそうなら環境によっては影響が出そうですが。
      パッチで影響がでるほどなら無理にあてる必要はないと思います。

  • 新たな脆弱性が見つかったようですが、それによる性能低下などあるのでしたらご教示願いたいです。

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。