MacBook Pro 2018は熱処理に欠陥、100%の性能は出ない

WWDC 2018では新製品の発表はほとんど無かったのに、その後突如として登場した新型MacBook ProはなんとCoffee Lake世代のCPUを搭載していた。先に旧世代版を買ってしまったよ…という声も少なくなかったが、現状は「買えなくて幸運だった、不幸中の幸いだな。」と言えるかもしれない。

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MacBook Pro 15 2018のスペック

MacBook Pro 15 20182.2 GHzモデル2.6 GHzモデル
デザイン
CPUCore i7 8750HCore i7 8850H
Core i9 8950HKCore i9 8950HK
GPUAMD Radeon Pro 555X
AMD Radeon Pro 560XAMD Radeon Pro 560X
メモリDDR4-2400 16GBDDR4-2400 16GB
DDR4-2400 32GBDDR4-2400 32GB
SSD256GB / 512GB / 1TB / 2TB / 4TB512GB / 1TB / 2TB / 4TB
ディスプレイ15.4 inch / AH-IPS / 2880 x 1800
ポート左側:Thunderbolt 3 x2
右側:Thunderbolt 3 x2
右側:3.5mm プラグ
カメラ720p FaceTime HDカメラ
バッテリー83 Wh リチウムポリマー
サイズ15.5 x 349.3 x 240.7
重量1.83 kg
AC0.37 kg

スペックだけを見れば非常に意欲的な製品です。CPUにCoffee Lake世代の「i7 8750H」といった、6コア搭載かつ高クロック動作が可能な「高性能CPU」を搭載したためです。

モバイル向けのCPUとはいえ、6コア搭載でTDPは45Wに達するため処理性能は1世代前の「i7 7700HQ」とは次元が違うし、デスクトップ向けのCore i5すら超える性能を持つ。

間違いなく歴代MacBook Proで最高の性能…なんですが、i7 8750Hの発熱量は「45W」もある。インテルが薄型ノートPC向けに出荷している「i7 8550U」だと発熱量はわずか15W。

その3倍に値する熱を、果たしてMacBook Proのこの薄い筐体で冷やしきれるのか。冷却が不十分ならサーマルスロットリングを引き起こし、CPU本来の性能は全く出なくなる。

データで分かる「性能が出ないMacBook Pro 2018」

では、実際にどの程度MacBook Pro 2018が45Wもの発熱量を持つCPUを適切に冷やし、そのCPUが持つ性能を引き出せるのか。CPUの高負荷を掛けるベンチマーク「Cinebench R15」で確認してみよう。

比較対象MacBook Pro 2018MacBook Pro 2017Dell XPS 15 9570
CPUi7 8850Hi7 7700HQi7 8750H
コア数646
スレッド数12812
ベースクロック2.6 GHz2.8 GHz2.2 GHz
ブーストクロック4.3 GHz @13.8 GHz @14.1 GHz @1-2
4.2 GHz @23.6 GHz @24.0 GHz @4
4.1 GHz @43.4 GHz @3-43.9 GHz @6
4.0 GHz @6
TDP45W45W45W

比較対象は、2017年版のMacBook Proと競合のDell XPS 15の2つ。他社の似たスペックのノートパソコンと比較することで、適切な熱処理がCPUの性能に与える影響を客観的に確かめることが出来ます

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7割くらいの性能しか出せない…

Cinebench R15 / マルチスレッド性能

  • MacBook Pro 2018
    832
  • MacBook Pro 2018
    773
  • MacBook Pro 2017
    731
  • MacBook Pro 2017
    729
  • Dell XPS 15 9570
    1168
  • Dell XPS 15 9570
    1123

平均値最低値

Cinebench R15を複数回実行して、そのスコアの平均値と最低値をグラフにまとめた。

見ての通り、MacBook Pro 2018はi7 8850Hから発せられる熱を適切に処理できず、サーマルスロットリングを引き起こして本来の性能を出せないでいる。一方のDell XPSは1100点をオーバーしています。

Cinebench R15 / 他メーカーの平均値と比較

  • Dell XPS 15 9570
    1168
  • Gigabyte Aero 15X
    1133
  • Alienware 15 R4
    1083
  • ZenBook Pro 15
    1074
  • MacBook Pro 2018
    832
  • MacBook Pro 2017
    731※

※ 2017年版は「i7 7700HQ」ですが、参考値として載せたままにしています。

他社製のi7 8750H ~ 8850Hを搭載するノートパソコンとCinebench R15の平均値(マルチスレッド性能)を比較してみると、MacBook Pro 2018が熱処理にかなり苦戦していることがよく分かる。

i7 8750Hまたはi7 8850Hなら、だいたい1100点前後は出て欲しいところ。しかし、MacBook Pro 2018は最初こそ1000点を超えるスコアを叩き出すが、高負荷状態が続けば800点台にまで落ち込んでしまう。

Dell XPS 15 9570と比較して、最大で28%も処理性能が劣っていることに。これがどういう意味かと言うと、30万で買ったノートパソコンが21万円分の仕事しかしていないという意味です。

熱が適切に処理できていないために、30%に相当する9万円分を無駄にしている(税抜き価格で計算しています)。

高負荷時のCPU温度とクロック周波数

Cinebench R15のような、高負荷なタスクを実行させている時。MacBook Pro 2018に何が起こっているのか。「Intel Power Gadget」というアプリで、消費電力・クロック周波数・温度を確認できる。

驚くことに消費電力は45Wにほとんど届かず、平均38Wだった。45Wに達する前に、熱処理が追いつかず制限を掛けている可能性が高いですね。

動作クロック周波数も酷い状況で、ベースクロックである2.60 GHzすら維持できていません。最低で1.0 GHzにまで落ち込むこともあり、MacBook Pro 2018の動作はかなり不安定です。

CPU温度は80~100℃で推移。まだ45Wを出し切っていない状態で最大100℃って…排熱機構がダメ過ぎる。

まとめ:性能を妥協できるなら選択肢になる

「高性能なMacBook Proを。」という意味では非常に意欲的で、価値あるモノだろうとは思います。しかしながら、せっかく搭載したCoffee Lake世代のCore i7 / i9の性能を全く活かせていない。

Cinebench R15 / マルチスレッド性能

    • MacBook Pro 2018
      832
    • MacBook Pro 2017
      731

平均値最低値

もちろん、2017年版よりは向上しています。平均値で比較すれば2018年版の方が約14%の性能アップです。だが競合のDell XPSなどは50~60%も性能が上

(少数派だろうけど)性能を妥協してでも※デザインやブランドを取りたいのであれば、MacBook Pro 2018は選択肢になる。逆に「どうせ同じ金額を払うならもっと高性能が良い」という人には、見向きもされないだろう。

※この後の追記にある通り、macOSのアプデで大幅に性能は改善するので横線を引いておきます。

他社製品とコストパフォーマンスの比較をしてみる

比較MacBook Pro 15 2018Dell XPS 15Gigabyte Aero 15
デザイン
CPUCore i7 8750HCore i7 8750HCore i7 8750H
GPUAMD Radeon Pro 555XGTX 1050 Ti 4GBGTX 1060 6GB
メモリDDR4-2400 16GBDDR4-2666 16GBDDR4-2666 16GB
SSD256GB512GB512GB
ディスプレイ15.4 inch / AH-IPS / 2880 x 180015.6 inch / IPS / 3840 x 216015.6 inch / IPS / 1920 x 1080 / 144Hz
バッテリー83 Wh リチウムポリマー97 Wh リチウムイオン94 Wh リチウムイオン
サイズ15.5 x 349.3 x 240.717 x 357 x 23518 x 356 x250
重量1.83 kg1.93 kg2.08 kg
AC0.37 kg0.43 kg0.57 kg
税抜き価格258800249980236000

性能とスペック、そして価格帯で競合しそうなノートパソコンをいくつか挙げてみた。あとはCPU性能に対する価格から、コストパフォーマンスを算出してみます。

コスパの比較

  • Dell XPS 15 9570
    221.6
  • Gigabyte Aero 15X
    220.6
  • MacBook Pro 15 2018
    283.6
  • Pro 15 2018(macOS Up)
    234.8

サーマルスロットリングにより性能が出ない分だけ、競合に対してコストパフォーマンスでは大きく劣る結果です。特にDell XPS 15はかなり強力なライバルに見える。

AC電源も含めた重量は、MacBook Proの方が約160gほど軽いが、それ以外の点でXPS 15は勝っている。バッテリー容量は多く、画面は高精細で、SSDが標準で512GBから。

客観的な比較を行えば、MacBook Pro 2018はやはり魅力的な選択肢では無いですね。

追記

macOSのアップデート(Windows版はIntel XTUによるTDP調整)によって、性能がかなり改善したため他社競合と十分に渡り合えるようになっています。

重要な追記:性能の安定化が可能

ここまでMacBook Pro 2018の熱処理がダメで、本来の性能の70%しか出せないから「性能を重視するなら選ぶべきではない」と、解説してきました。しかし、性能を大幅に改善する方法があるので紹介します。

あくまでも性能が安定するだけで、高負荷時の90~100℃に達するCPU温度が下がるわけではありません。

方法その1:TDP制限の調整

MacBook Pro 2018は高負荷になっても消費電力が37~38Wに抑えられていた。これはサーマルスロットリングのようにも思えるが、実はメーカー側が施した安全策の一つだったりします(Appleが静音性を重視したのも大きな理由)。

Windows版の場合はIntel XTUという無料ソフトで、macOSの場合はVoltaというシェアウェアを使って、TDPの制限を「本来の45W」に指定すればCPUがもっともっとマトモに動くようになる。

Cinebench R15 / マルチスレッド性能

  • 出荷設定(38W)
    832
  • 出荷設定(38W)
    773
  • 設定変更(45W)
    1002
  • 設定変更(45W)
    994

平均値最低値

性能は20%ほど上昇。まだXPS 15に14%ほど劣っているが大幅に改善されたのは事実です。「2018年版MacBook Proが欲しいけど、性能が…」と諦めている人は、この方法を用いることで問題がある程度解決するので検討の余地アリかと。

各種ソフトウェアの公式ページは以下よりどうぞ。

なお、出荷時の設定を変更する行為なので「自己責任」でお願いします。

方法その2:macOSの更新

macOS限定の修正パッチが配布されている(Apple公式)

Appleはその後、macOSの更新で性能アップを可能にした。MacBook Pro 2018で高負荷状態が持続すると性能が低下してしまう現象は、Appleによればファームウェア内部に熱処理に関するシステムのデジタルキー※を入れ忘れていたのが原因とのこと。

※ このデジタルキーの詳細は不明。

このアップデートを実行することで、高負荷時にちゃんと45W使うようになり、クロック周波数は3.0 GHz前後で推移するようになる。CPU温度は95℃前後です。消費電力が上昇するため、その分性能アップに期待できます。

Cinebench R15 / マルチスレッド性能

  • 出荷設定(38W)
    832
  • 出荷設定(38W)
    773
  • 設定変更(45W)
    1002
  • 設定変更(45W)
    994
  • macOS更新
    1005
  • macOS更新
    962

Cinebench R15を30回ほど連続で実行する負荷テストの結果がこれ。平均値では1005 cbに達しており、消費電力が38W → 45Wに増加したことで性能も832 cb → 1005cbへ21%も向上

macOS版を使っているならシェアウェアの「Volta」を使ってTDPの設定変更をせずに、macOSの更新で対処するのがベストです。

性能改善の方法まとめ

というわけで、MacBook Pro 2018が新型i7 / i9で本来の性能を発揮できない原因は、サーマルスロットリングというよりはTDP(消費電力)の設定ミスが大きい。対症療法にはなるが、TDP設定を変更することで改善可能ということ。

  • Windows版:Intel XTUで45Wに設定
  • macOS版:macOSを最新版(10.13.6)に更新

これでザックリ20%も性能アップが可能。CPU温度はこの設定をしてもしなくても大差ないので、必ずやった方が良い。

以上「MacBook Pro 2018は熱処理に欠陥、100%性能はまず出ない」について解説でした。


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22 件のコメント

  • TDPの設定変更ソフトを導入せずとも、公式の修正パッチ適用でCinebenchのスコアが945まで上がるみたいです。
    あとmacOS特有ですが、新品はバックグラウンドで写真の同期や設定タスクの実行に数日掛かり、その間はスコアが下がります
    ベンチマークってだいたい発売直後に実行されるのでこの結果は仕方ないですね。数日後にやり直しする記事なんて見たことないし

  • 同じi9を搭載するALIENWARE 17もベースクロック維持は不可能でした
    しかもMACと違って完全なるハードの欠陥なので今後改善されることもないです…

    CPUが100度に達するのはi9-7900Xから変わってないですね。そこがサーマルスロットのしきい値なので、ターボブーストがあるこのCPUは絶対に100度まで発熱(クロックアップ)します
    かなり頭悪いですけど設計思想が狂ってるんで仕方ない

  • MSIやAROUSの8950HKなら1400弱出るみたいですねぇ
    相当排熱機構に力を入れないと宝の持ち腐れですな

    • そもそもMacBookProに構造の欠陥はあまりないんです。

      MacOSのプログラム上の関係(主に熱処理関係)でこのようなハイスペックマシンの発熱に追いつかなくなった(想定していなかった)のが原因かと思います。(個人的意見)

  • 本筋とは関係ないけどMacbook Pro 15インチを「性能を妥協してでもデザインやブランドを取りたい」人が選ぶものだと筆者が考えているところに違和感がある…
    これは諸事情によりmacOSを使いたい/使わなくてはならなくて、かつある程度は高性能なマシンが必要な人が買うものであり、性能を妥協してでもデザインやブランドを取りたいだけのライトユーザーはもっと安いモデルに流れるはず。

    • < 「性能を妥協してでもデザインやブランドを取りたい」人が選ぶものだと筆者が考えているところに違和感がある…

      追記を入れる前までの内容では、「本来の7割くらいの性能しか出ないから」という理由があって、そう書いています。
      しかし、たしかに追記後の内容も考慮して修正したほうが良いですね。修正します。

  • このサイトのCinebenchの結果の妥当性ですが、まぁまぁ妥当だと思います。(時と場合によりベンチマークのスコアなんて数パーセントは変わるので)
    https://appleinsider.com/articles/18/08/11/comparing-the-2018-15-inch-2018-macbook-pro-with-the-dell-xps-15-9570
    こちらでもCinebench15のスコアでXPS15とMacbook Proを比べています。

    このテストだと、複数回cinebenchを走らせてみて、i7だとMacbook ProはXPS15より5%速く、i9だとXPS15がMacbook Pro より9%速かった、と結論づけています。

    複数回繰り返されたベンチマークテストで、XPS15はサーマルスロットリングにより繰り返すごとにスコアが落ちて行きます。それに対しMacbook Proはスコアが上がって行くのですが、これはファンの回転数制御の関係で、回転数をあげるのが少し遅いかららしいです。(XPS15は、ファンの回転数はすぐ変える代わりにファンがうるさいそうです)

    文句を言うとすれば、
    複数回やった平均値と最小値じゃなくて、貼ったURLのサイトのようにスコアが落ち着くまでの複数回のスコアそれぞれを出してくれないと、定常状態(このあと何回ベンチマーク走らせてもだいたいそのスコアに落ち着く状態)のスコアがわからないので、そのパソコン本体の実力がわからないと思います。

    ほか、関係ないけどXPS15はバッテリー駆動だとけっこう遅くなる(Macbook Proは変わらない)、
    Macbook ProはPremiereで動画のエンコするとXPS15より結構遅い(Final Cut Proではかなり速いため、おそらくmacOSの制御の関係?)という結果でした。

  • 「諸事情によりmacOSを使いたい/使わなくてはならなくて、かつある程度は高性能なマシンが必要な人」

    まさに私がそうです。仕事でiOSアプリの開発をしています。幸いGPUを酷使しないアプリであること、デバッグは実機(iPhone)でやっていることにより、サーマルスロットリングはそれほどひどくは感じません。

    MacBook Pro 15″の放熱処理はひどいものです。タッチバーの上部は常に熱いです。ここにコーヒーを載せて置いたら冷めないでしょう。特に動画を再生しながらとか、仮想マシンを動かしながらだと、かろうじて触れるくらいまで熱くなります。

    それが原因かどうかは不明ですが、USB Type-Cポートが壊れました。保証期間中だったので無料で修理してもらえましたが。ちなみに2016年後期モデルです。

    Windowsソフトの開発もしているため、他にXeonデスクトップやi7搭載ノートも使っています。OSが違うので単純には比較できませんが、MacBook Proの放熱処理は「静かさ」を強調したいためファンをなるべく回さないようにしており、そこが改善すべき点だと思います。私はファンの音がうるさくてもいいので、熱対策をしっかりやってもらいたいです。

    色々な記事を読むと結局はファンを回さないと冷えないので、今回のパッチを当てても性能を最大限には引き出せないということがわかりました。

    ちょうど買い替えを検討していますが、i9は候補から外します。SSDのサイズが512GB欲しいのでi7-8850Hモデルにしたいですが、USB 3.1 gen 2対応の外付け大容量SSDを購入したので、i7-8750Hモデルにするかもしれません。現在でも保存しているデータというのは、ソースコードが大部分を占めますからそこまで巨大にはなりませんし。定格クロックが低い方が熱対策には有効なのもあります。

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