NVIDIAの新世代GPU「Volta」の登場が目前です。そのせいでVoltaから見て2世代前にあたる「Maxwell」の価格が暴落を始めています。特にGTX 970はかなり良い感じに値段が下がってきた。
そこで思う。ここまで下がったらGTX 1060と比較してGTX 970を買ったほうが良いのかどうか…データに基づいて考えてみる。
GTX 970の価格が暴落中…
ドスパラ | パソコン工房 | Amazon |
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パソコン工房は特に安くなっていて、GTX 970がわずか1.3~1.5万円で入手できてしまう(完売済み)。ドスパラ中古でもGTX 970の暴落が起こっており、送料込みで最安は18900円。恐ろしく安価です。

「MSI GTX 970 GAMING 4G」の中古価格の推移
Amazonでは2.4万円が良いところで、そこまで安くなっていない。Price Trackerで調査すると今年の5~6月ごろに2万円割れするなど、既にAmazonでは暴落のピークは去ってしまっているようだ…。
とはいえ、元々は6万円近い値段がついていたGTX 970が2万円を割るまでになっているのは暴落と言える。というわけで、この暴落したGTX 970は選択肢としてアリか無しか検討してみよう。
性能を確認「GTX 970 vs GTX 1060」

1.8万円くらいでGTX 970は入手可能なわけですが、果たして2.2万円のGTX 1060 3GBや、2.7万円のGTX 1060 6GBを差し置いてGTX 970を選ぶメリットはあるのかどうか。
「これだけ安いならGTX 970も選択肢としてアリでしょ。」と言えるのかどうか。各種ベンチマークデータ(フレームレート)を確認して考えてみます。
カタログスペック(仕様)の違い
GPU | GeForce GTX 970 | GTX 1060 6GB |
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ダイ | ![]() | ![]() |
世代 | Maxwell | Pascal |
プロセス | 28nm | 16nm |
トランジスタ数 | 52.2億 | 44億 |
CUDAコア数 | 1664 | 1280 |
TMU数 | 104 | 80 |
ROP数 | 56 | 48 |
演算ユニット数 | 13 | 10 |
ベースクロック | 1051 Mhz | 1506 Mhz |
ブーストクロック | 1178 Mhz | 1708 Mhz |
メモリクロック | 7000 Mhz | 8000 Mhz |
理論性能(FP32) | 3498 GFLOPS | 3855 GFLOPS |
VRAM容量 | 3584 MB | 6144 MB |
VRAM規格 | GDDR5 | GDDR5 |
メモリバス | 224-bit | 192-bit |
メモリ帯域 | 196 GB/s | 192 GB/s |
TDP | 145W | 120W |
MSRP | $ 329 | $ 249 |
中古価格(参考) | 18900円 | 27800円 |
入っているコア数は明らかにGTX 970の方が格上だが、クロック周波数が最大で1.18Ghz程度とかなりおとなしい。一方のGTX 1060は最大で1.70Ghzまで行けるため、少ないコア数でも高い性能を発揮できる。
そのため理論性能(FP32)はGTX 970よりGTX 1060の方が350 GFLOPS(約10%)ほど高い結果になっています。
- GTX 970:コア数は多いが、クロック周波数が遅い
- GTX 1060:コア数は少ないが、クロック周波数は速い
これが実際のゲーミング性能にどれだけの影響を与えてくるかが焦点。
3DMark FireStrike

3DMark FireStrike – DirectX11
有名なグラフィックボード向けのベンチマーク。FireStrikeではDirectX11ベースの負荷を検証できる。結果はGTX 1060とGTX 1050 Tiのちょうど真ん中という絶妙な位置にGTX 970がハマった形。
3DMark TimeSpy

3DMark TimeSpy – DirectX12
TimeSpyはDirectX12ベースのベンチマークで、FireStrikeより更に重たい。まぁ…重たいというだけで基本的な傾向は大きくは変わらない。やはりGTX 970はGTX 1060より明らかに性能では負けてしまっているようだ。
さて、3DMarkで出た結果はあくまでも理論値に過ぎない。次は実際のゲームにおける性能、フレームレートを順番にひととおり見ていきます。
Ashes of the Singularity

Ashes of the Singularity / 最高設定 / FHD(1920×1080)
Ashes of the Singularityではキレイに理論値どおりのフレームレートが計測されている。GTX 1060 3GBにすら追いつけていない。6GB版は30%も高速なフレームレートを叩き出した。GeForce 10系はやっぱり強いよね。
Battlefield 1

Battlefield 1 / 最高設定 / FHD(1920×1080)
BF1も同様の結果だが、やや踏ん張っている印象。GTX 1060 6GBはGTX 970より20%ほど高速な結果。3GB版はそのちょうど間を取った形になってます。
なお、3GB版が6GB版に対して性能が低いのは「VRAMが少ないことでフレームレート急落現象が頻発している」のと、「そもそも搭載されているコア数が5%少ない」のが理由です。このご時世に3GBは少ないですよ…。
Civilization 6

Civilization 6 / 最高設定 / FHD(1920×1080)
GTX 970だと平均60fpsに届かず、GTX 1060系であれば平均60fpsを飛び越えていける結果。
Deus Ex : Mankind Divided

Deus Ex : Mankind Divided / 最高設定 / FHD(1920×1080)
最高設定では驚くほど高負荷なMankind Dividedだと、この価格帯のグラボでは歯が立たない様子。GTX 1060 6GBはGTX 970より10%速いが、微妙な結果だ。
The Division

The Division / 最高設定 / FHD(1920×1080)
Divisionはこんな感じ。GTX 970だと平均60fpsに全く届かない。GTX 1060 6GBならギリギリ60fpsに迫っている。なかなか良いところを見せられないGTX 970なのでした…。
DOOM 2016

DOOM 2016 / 最高設定 / FHD(1920×1080)
最適化が丁寧に出来ているDOOM 2016だとGTX 970がGTX 1060 3GBに迫る勢いを見せた。その一方で6GB版が性能差以上のフレームレートを叩き出しているため、VRAMに起因する性能差は出ていそうだ。
Fallout 4

Fallout 4 / 最高設定 / FHD(1920×1080)
Fallout 4では問題なく60fpsオーバー。
Far Cry Primal

Far Cry Primal / 最高設定 / FHD(1920×1080)
Far Cry PrimalだとGTX 970は60fps超えに失敗。GTX 1060 3GBだと60fpsにピッタリと載せ、6GB版で余裕の結果に。
Grand Theft Auto V

Grand Theft Auto V / 最高設定 / FHD(1920×1080)
GTA Vではやや変わった結果が見られた。GTX 970とGTX 1060の間に見えない壁があるかのような結果の分かれ方だ。
Rise of the Tomb Raider

Rise of the Tomb Raider / 最高設定 + DX12 / FHD(1920×1080)
Rise of the Tomb RaiderはVRAMをかなり食う仕様のゲームで、4.0~7.0GBの範囲でVRAMを使ってしまう。GTX 1060 3GBでは必要とされるVRAMに対してあまりにも少なすぎるのが、この不調の原因だろうね。
6GB版だと問題なくフレームレートが出ていますし。GTX 970は500MBしかVRAM容量が違わないが、3.5GBならフレームレートに悪影響が出ない程度に足りているのかもしれません。3.0GBでは少なすぎた…ということ。


The Witcher 3

The Witcher 3 / 最高設定 / FHD(1920×1080)
もともと重たいWitcher 3では大きな差はつかず。10%程度の差しかついていない。
PlayerUnknown’s Battlegrounds

PlayerUnknown’s Battlegrounds / 中間設定 / FHD(1920×1080)
1日に300万人がプレイすることもある超人気ゲーム「PUBG」。中間設定ならGTX 970でも問題なく動いています。
PlayerUnknown’s Battlegrounds / ウルトラ設定 / FHD(1920×1080)
ウルトラ設定に引き上げると一気に苦しくなる。GTX 1060 6GBじゃないと平均60fpsは厳しい様子。
Assassin’s Creed Origins

Assassin’s Creed Origins / 中間設定 / FHD(1920×1080)
アサシンクリード最新作「オリジンズ」ではGTX 970とGTX 1060で顕著な差が。GTX 1050 Tiにあと10%というところまで追いつかれており、世代の違いによる性能差がオリジンズでは極端に出てしまっているようです。
Assassin’s Creed Origins / 最高設定 / FHD(1920×1080)
最高設定にするとだいぶマシにはなるが、それでもGTX 970はGTX 1060 6GBに35%は引き離されている…。このように新しいゲームほど最新世代に有利になる確率が高いので、古いシステムを使うリスクはそれなりにあるってこと。
Shadow of War

Shadow of War / 中間設定 / FHD(1920×1080)
Shadow of Warでは3DMarkのテスト結果のように、ピッタリと中心に位置している。
Shadow of War / 最高設定 / FHD(1920×1080)
しかし最高設定にすると、オリジンズと同様にGTX 970は本来の性能を出し切れていない様子がうかがえます。GTX 1060 6GBには47%も引き離されてしまっている…。新しいゲームをプレイするつもりでGTX 970を選ぶのはややリスキーだね。
結論、GTX 970はGTX 1060に決して勝てない
GTX 970 vs GTX 1060 / 平均パフォーマンス
ここまでのテスト結果を平均化してまとめた。平均パフォーマンスで見るとGTX 970はGTX 1060 6GBに対して20%遅く、3GB版に対しては10%遅い結果になっています。しかし以下の点には十分に気をつけるべきだ。
- Origins・Shadow of Warなどの最新タイトルでは顕著な最適化不足が見られた
- VRAM使用量がとても多いゲームでは、思ったとおりのフレームレートが出ない可能性
すべてのGPUに最適化されているゲームは少数派で、使っているユーザーが多いであろうGPUに最適化するゲームの方が多い。PUBGではRadeonは置いてけぼりですし、OriginsやShadow of WarではGTX 970もどうやら置いてけぼりのようだ。
現状はGeForce 10シリーズに最適化しているゲームの方が多いので、今からGTX 970を選ぶリスクは…今後出てくるゲームで本来の性能を発揮できない可能性がそれなりに高いということ。
コストパフォーマンスの観点からは…アリではある
GTX 970 vs GTX 1060 / 1フレームレートの価格(新品価格)
1フレームレート(1fps)を得るのに掛かるコストを新品価格で計算しました。GTX 970は約500円ほど掛かり、GTX 1060なら350~410円と20~30%も割安にフレームレートを得られます。さて…
GTX 970 vs GTX 1060 / 1フレームレートの価格(中古価格)
これを中古価格で計算し直すとこうなります。コストパフォーマンスはGTX 1060 3GBの330円よりも低い314円にまで改善した。6GB版は380円なので21%割高な選択です。
性能的に見るとGTX 970は「GTX 1060 3GB 劣化版」という位置づけだが、送料込みで1.7~1.9万円くらいで買えるなら…選択肢として悪くはないと思います。2.0万円を超えるなら微妙ですけどね。


それに中古でグラボを入手する場合は保証も短い。ドスパラ中古の場合、購入から1週間しか保証されないので「元値が4~5万のグラボを1.8万円程度で入手するリスク」は決して小さくないんですよね…。

筆者が使っている「MSI GTX 1060 6GB Gaming X」
というわけで積極的にGTX 970(中古)をオススメすることは出来ない。フルHDゲーミングで「快適さ」と「安定性」を求めているなら、素直にGTX 1060 6GBをオススメします。
「リスクは承知。1.8万前後でGTX 1060 3GBに迫る性能を得られるなら、他のリスクなんて問題なく受け入れられる。」という、やや玄人志向な方は…止めはしません。GTX 970(中古)に果敢に突き進んで良いかと。
GTX 970を選んで失敗しない人- GTX 1060ほどの性能はいらない
- 設定次第で60fpsを軽く超えてくれる程度でOK
- 「中古品」が怖くない
- 最新のゲームでは置いてけぼりを食らう可能性が高いが、気にしない
- 保証が1週間…8日目で何かあったらどうしよ…。
- 安定性を重視したい(=VRAMは多い方がいい)
- 今後登場するゲームでもしっかりと動いて欲しい
というわけで中古品に慣れている人や抵抗のない人なら、GTX 970を選んでも構わない。ちなみにぼくはGTX 1060、R9 380、R9 280Xなどを中古で入手しているが、今のところ不具合なく動いていたり。
中古グラボを探す場合はドスパラが一番在庫が多いのでオススメ。
GTX 1060にしておこう、と思ったら

コスパ重視で選ぶなら玄人志向製のGTX 1060 6GBがオススメ。実用上は問題のない冷却性能を備えるボードなので、とりあえずGTX 1060 6GBが欲しいならこれで決まりだ。
パフォーマンス重視で行くなら「Twin Frozr VI」を採用したMSI Gaming Xが非常にいい。GTX 1060を搭載した空冷ボードでは、もっともよく冷え、もっとも静かな製品です。

Palit製のコスパモデルと比較すると、こんなにもGPU温度が違う。

今使っているPCがいろいろと古いのでまとめて買い替えたいと思っている人は、BTOで完品を買ってしまうのもアリ。GTX 1060 6GB搭載マシンでおすすめは「ガレリアDT」。実機レビューもあるよ。

自作に挑戦する場合はこの記事を参考に。
以上「GTX 970の価格が暴落中…買うならGTX 1060で良いけど。」について解説しました。
というか1000番台出て大分経つのに、900番台を未だに売ってたのかというのが正直な感想なんですけど(汗
しかもGTX970って、確かVRAMは4GB積んでるのに、使用量が3.5GB超えた途端にパフォーマンスが一気に落ちると当時も話題になってたやつじゃないですか。
結局ドライバの更新で0.5GBを無い扱いにしてしまったみたいですけど。
たぶん現行当時でもそういった仕様を嫌って970自体避けてた人々が多いんじゃないかと勝手に想像してます。
それが今になって投げ売りしてきたってことは、どこかで大量に在庫抱えたままだったのかなぁ。
結局のところ、3.5GBを使っても言うほど落ちないことが明らかになったわけですが、「GTX 970は詐欺っぽい」というイメージが先行しているのは間違いないですね(苦笑)。
…個人的な考えでは、「今」GTX 970を買うよりは来年出る予定のGTX 2050やGTX 2060がどれくらい戦えるGPUなのか様子見した方がいいとは思ってます。MaxwellからPascalへの伸びがすごかったように、PascalからVoltaも結構伸びるんじゃないかと思って。
geforceとradeon実は発色に違いがあってradeonのほうが動画等で鮮やかとよく聞きますが本当なのでしょうか?今度是非検証お願いしたいです!
AMD、Nvidia両方使ってますが、確かに発色に差があります。
AMDは赤味が強くて色鮮やか。Nvidiaは青味が強くてくすんだ色調と言った感じです。
ただ、発色が良すぎて一部不自然に感じる事もあるので、AMDの発色が特別優れているとは思いません。
時間のある時に検証してみますね~。両社のグラボは持っていますので。
MSIのTwinFrozrは確かに静かでよく冷えるのですが、ファンがすぐ故障する印象があります。
それとTwinFrozrに限りませんが、こういう形状のクーラーはPCケース内の空気で冷却、そして排熱もPCケース内。
小さいケースや静音重視の窒息型ケースだと高性能であればあるほどあっというまに温度が上がるので、
当方はなるべく外排気のものを選ぶようにしています(クーラー性能が落ちるのでOCしづらくなりますが)
> もんたさん
nVidiaがRIVA128とかTNT、ATI(のちにAMDに買収されAMDブランドに)がRage128とかを出していた時代は
発色の違いが大きくて画質にこだわる人はATIやMatroxを選ぶか、nVidiaでもCanopusの独自基盤・ドライバ製品を選んでましたね。
現在ではそこまで大きな差はないと聞きますし、グラボではなくモニターの方が影響が大きいのではないでしょうか。
今、ゲーム用のpcを自作(初)しようと色々調べているのですが、記事の中でちょろっと出てきた、NVIDIAの新世代GPU「Volta」について詳しく教えてくれませんか?
まさかKeplerすら持ってかれるほどグラボが枯渇・高騰するなんて
この記事を書かれた当時は誰も思わなかっただろうねw
GTX970って、i7 3770とボトルネックでるでしょうか?
いや、ならないと思いますよ
結局グラボは旬物なので、新旧世代をコスパで比較というのは明らかに無理。それでも970は発売して御年6年、「動く」というレベルで下支えしてもらった身としてはいい買い物だったと思う。
次世代が一体何年持つか考えると買い替える時はいつも億劫になるよ。
プロセッサのインターフェース規格がガラガラ変わったりする時代なので、純粋なパフォーマンスじゃない部分も見張っとかないと、足元をすくわれると思う。