ふとした疑問。最もゲーマーに選ばれているグラフィックボードってなんだろう…。価格コムの売れ筋ランキングで推測は出来るが、あのランキングは恣意的にコントロールできるらしいので信憑性は今ひとつ。
そこで、信頼できそうなデータを見つけたのでゲーマーに最も選ばれているグラボについてまとめてみます。
ゲーマーに選ばれているグラフィックボード
参照したデータは「Steam Hardware & Software Survey: October 2017」です。1日あたり1000万人近いアクティブユーザー数を誇る、ゲーム販売プラットフォーム「Steam」のプレイヤーから収集したデータなので信頼性は高いと言える。
Steamユーザーが使用しているグラフィックボードの比率
NVIDIAIntelAMD
上位GPUと、個人的に載せておきたかったGPUをまとめてみた。この比率を見ていくと、なぜミドルクラスほどコスパが良くなりやすく、ハイエンドになればなるほどコスパが悪化するのか。
その理由がなんとなく理解しやすいですね…。やっぱり、メーカー側も売れ行きに合わせてMSRPを調整しているし、国内の場合はASK税があるので需給によって上乗せされるマージンも変動しやすい。
- 売れるであろうグラボ:MSRP安めでOK、リスクも低いからマージンも薄くできる
- 売れ無さそうなグラボ:MSRPはやや盛っておく、リスクを考慮してマージンを載せておく
「需要と供給」と言われればそれまでですが、こうしてデータも見て改めてそれを体感するのも面白いね。
確かにハイエンドGPUほど、ダイサイズが大きくなって歩留まりが悪化するから単価が上がってしまう…というのは分かるんだが、国内の場合は売れるか売れないかでマージンの盛られ方も変わってくる感じです。
AMDのRyzen ThreadripperやRadeon Vegaは特にひどかったですから。MSRPに為替を掛け算したくらいの価格なら、十分にGTX 1070などと対抗できる予定が、あまりにボッタクリ価格過ぎて「空気」になったくらいです。
でも、それを考慮してもVegaはともかく、スリッパはコスパ良いと思います。
上位3個は「ミドルクラス」勢が圧倒
なんとなく予想は付きますが、まさかここまでミドルクラスが強いとは思っていなかった。個人的には、GTX 1060がマスター級の性能なので、みんなそちらを買うのかなと思っていたのですが。
- GTX 960
- GTX 750 Ti
- GTX 1050 Ti
GTX 960と1050 Tiはかなり似た性能で、GTX 750 Tiはそれなりに低性能。なぜここまで750 Tiが支持されているのか…、数秒ほど思いつきで考えてみると。
- Steamで1日50~70万人に遊ばれているのは「DOTA 2」
- その次が「CS:GO」で、1日30~50万人にプレイされる
1日1000万人のうち、最大で12%はこの2つのゲームに集中している。そして両方ともミドルクラスで十分に動く軽いゲームなので、ある程度は750 Ti人気を説明可能。
GTX 1060は全体の11%を占める
グラボに悩んだらGTX 1060を買っておけばだいたいハズレない性能ですから、人気なのも無理はない。特に2万前半で買える3GB版は、非常に人気。
逆に6GB版はその半分くらい。やっぱりコストパフォーマンスだけで見れば3GB版の方が魅力的だから、こうなるのが普通かなぁ…という感じ。やはりコスパには抗えない。
Intel HD 4000が全体の1%は驚き
Intelの第3~4世代のCore プロセッサに搭載されている内蔵グラフィックスが、全体の1%を占めるのは意外。100人に1人は、内蔵GPUでゲームをプレイしていることに。
まぁ、Steamには非常に多種多様なゲームがあるし、内蔵GPUでも十分に動くゲームも大量にある。
一方、AMD Radeonはゲーマーに全く支持されていない
一応、AMD派の身としては悲しい。ここまでAMD製GPUが支持されていないとは…。勝手な予想ではRX 470や480は3%くらいはあっても良いんじゃないかと思っていたが、まさか0.36%とは。

Steamのデータを見る限りでは、7月~10月の間にAMDは10%もシェアを失っていることが分かる。要するに、買いたくても買えない状況があったと考えるのが自然ですね。
Radeon系はマイニング需要がすごかったので、その影響がSteamのデータにも出てしまったということだろう。GTX 1080 Tiよりもシェアが少ないのは、かなり驚きだけれど。
結論、コスパの良いグラボがもっとも選ばれる

「コスパが良いグラボが売れるのが当たり前」という割りとフツーな結論で終わってしまったが、Steamのユーザー(2015年時点:1.5億人)の40%がミドルクラスGPUを選んでいるので否定は出来ない。
- ミドルクラス:全体の44.39%
- ハイエンド下位:全体の15.39%
GTX 1060や1070といった、ハイエンド下位は全体の15%程度。ただ、6月~10月でGTX 1060は5.0% → 11.5%までシェアが倍増しているので、少しずつユーザーの求める性能が上がってきてる印象はある。
今はPUBGが1日あたり120~280万人ものアクティブユーザー数を誇るため、PUBGの影響はかなり無視出来ない。あのゲームはそれなりに重たいし、競技性重視なため、なるべく良いハードを求める傾向が強い。
日本でも新しいゲーミングPCを買ってでもPUBGに参加したいというユーザーが着実に増えているので、乗り換えだけでなく新規需要もすごい。
第2四半期の売上高は前年同期比56%増の22億3000万ドル(約2400億円)
NVIDIAの売上高も大幅に伸びており、需要が湧いて出てきたところを着実に捉えきった感が良いですね。まぁ、これはPUBG需要だけでなく、BtoB向けのGPUも大きく影響していますが。
今後もミドルクラス人気は続きそう

コストパフォーマンスが良いと言うだけでなく、現実的な問題としてまだまだフル以上のディスプレイや、ゲーミングモニターを使うユーザーは少数派です。
要するにNVIDIAの作るミドルクラスは多くのユーザーにとって性能が十分すぎるので、それ以上を必要とするユーザーが絶対的に少ないのも原因だとは思う。
そして、今後NVIDIAは「Ampere」(アンペア)、「Volta」(ヴォルタ)といった新世代のGPUを投入する予定なので、この傾向はあと4~5年は続く可能性が高い。
WQHDや4Kを軽々と動かせるGPUが出たとしても、モニターの価格がフルHD並に低下するのはまだまだ無理があるからね…。グラボのコストが下がった分、余ったお金をモニターに当てる人がどこまでいるのか、といったところ。
- 1.3~2.2万くらいのミドルクラスが大人気(全体の51%)
- GPUの進化は非常に速いため、今後もミドルクラス人気は続く
- 当分の間はフルHDを60fps以上で動かせれば、ユーザーは十分に満足する
- AMD GPUが不人気過ぎてちょっと悲しい(売れているのは確かだが…)
というわけで以上「最もゲーマーに愛されているグラフィックボードは何か?」について書いてみました。
Radeonも頑張っていますよ
5月14日にコメントしたIntel×AMDの製品Core-Hが先日発表されていました
これは過去に苦い思いをしたATI Imageon(現SnapdragonのGPU Adreno)の様にならず両社のブランドイメージを維持したまま進んで行こうという業界の想いなんだと思います。頑張って欲しいですね。
KoduriさんがIntelに移籍したのはビックリでしたが、Radeon搭載のIntel CPUは普通に楽しみです。それにインテルは反トラスト法に引っかかりやすいという都合もあり、AMDと上手く共存していかないと結局大損する立場。結果としてCPU業界は健全な方向に進んでいると思います。
6Gとは別物な1060の3Gとか128bitな960が上位にいるんですね
みんなお値段重視なんだなって
昔雑誌か何かでグラボに掛けるお金は2万円くらいな人々が多いとか聞いた記憶があります。
その2万円前後のグラボがちょうど750Tiであり960であり1050Tiなのではないかと。
(現行当時の価格)
Steamのデータ自体がそのような傾向を示しているので、全体的に見れば1.5~2.0万円あたりがもっともグラボに掛けやすいコストなんでしょうね。
ぼく自身も高校生くらいの頃は、やはりケチってGTX 750 TiやGTX 950などに手を出していました。3~4万になるとゲーム機も買えますし、微妙な価格として意識されやすいのかも。