【AMDの反撃】世界初の7nm CPU「第3世代Ryzen」のスペックや性能

CES 2019にて、AMDが行った基調講演で第3世代のRyzenシリーズである「Zen 2」がようやくお披露目。肝心の気になる部分は伏せられた状態で公開されたが、おおむね期待感が湧いて出てくる内容で、ひとまず「AMDの反撃」が始まったと言っていい内容になっています。

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第3世代Ryzenのスペック上の要点

基調講演でようやく第3世代Ryzenが発表されたとはいえ、まだまだ不明な点は多いので特に注目しておきたいポイントを順番に解説していく。

1. 最大「8コア」搭載だが、レイアウト的には…

リーク情報では最大16コアになる可能性が示唆されていたが、実際に出てきた第3世代Ryzenは「8コア」搭載で、従来どおりのラインナップを展開するようです。

Credit : Anandtech

殻の中のコンポーネントは以前「Zen 2の設計と構造」にて解説した通り、CPU本体とその他の部分を分割してインフィニティーファブリックで接続するレイアウトになっている。

ここで興味深いのが、CPUダイのすぐ下に空いているスペース(空間)があること。

CPUダイ(Chipletと呼ばれる8コアCPU)をあともう1つだけ配置する余裕はありそうなので、その気になれば最大16個のRyzenを作ることは可能かもしれない。

2. 異種のチップが2つ混在する構造

第3世代Ryzenのダイ設計

現在のIntel CPUと比較して、第3世代Ryzenシリーズがユニークなのは「異種のチップを2つ使った設計」。わかりやすく大雑把にイラスト化したのが、上の画像です。

メモリコントローラやPCI Express 4.0コントローラなど。CPUと他のハードウェアやパーツを接続するために使われる「I/Oダイ」は、AMD御用達の半導体ファブ「Global Foundries」が14nmプロセスで製造しています。

一方、4コアの「CCX」を2個搭載して合計8コアを実現している新型のCPUダイ「Chiplet」は、TSMCの7nmプロセスを用いて製造している。別のメーカーが制作した異種のチップが2個混在している、非常に面白い設計ですね。

ただし、今までのRyzenと基本的な設計は大きく変わっていないので、Ryzen特有のレガシーソフトとの相性の悪さや「汎用性」には影を残したままなんですよね。実際に使ってみないと分からないが、ぼくとしては懸念している部分です。

3. PCI Express 4.0をサポート

「I/Oダイ」には、今まで主流だったPCI Express 3.0用のコントローラだけでなく、次世代のPCI Express 4.0用のコントローラも搭載されている。

PCI Express 3.0 vs 4.0(理論帯域幅)

  • PCIe 4.0 x16
    31500 MB/s
  • PCIe 4.0 x4
    7875 MB/s
  • PCIe 3.0 x16
    15760 MB/s
  • PCIe 3.0 x4
    3940

帯域幅は2倍になるので、たとえば今までNVMe SSDは最大3940 MB/s前後しか出せなかったが、PCIe 4.0の実装で理論上は最大7880 MB/s前後まで叩き出せるようになる。

Phisonは4 GB/sを実現

既にPhisonは最新のSSDコントローラを用いて、最大4244 MB/sを実現してみせたので、PCIe 4.0に接続するSSDは今まで以上に「超高速」な動作を実現可能です。

でも…肝心のランダムアクセス性能(レイテンシ)は接続インターフェイスがネックではなく、完全にNANDフラッシュの技術そのものがネックになっている。だからPCIe 4.0になったからと言って、一気にスゴイSSDが登場するわけではない。

初心者もち
Phisonのランダム読み込み「65 MB/s」だってさ。しょぼいね。オプタンなら300 MB/s超えだよ?
自作歴24台のやかもち
でも、一般消費者に対してアピールしやすくなるのは間違いないね。多くの人はCrystal Disk Markの一番上の項目しか見てませんから。

なお、PCIe 4.0がI/Oダイに実装されて利用可能になったとあるが、実際に使うためにはPCIe 4.0をサポートしているマザーボードが必要なので要注意。

4. 「Socket AM4」を続投し、BIOSアプデで利用可能

AMD Ryzen Desktop 3000 Ready

AMD Ryzen Desktop 3000シリーズにネイティブ対応するマザーボードには、このようなロゴマークを表示して分かりやすくするとのこと。

おそらく、新しいチップセット「AMD 500」シリーズが登場する伏線ですが、一応今回の第3世代Ryzenは驚くことに従来通り「Socket AM4」との互換性を失わずに継続している。

従来のAMD 300 / 400チップセットを搭載するマザーボードも、BIOSをアップデートすることで第3世代Ryzenを利用可能になります。PCIe 4.0に興味が無ければ、既に持っているマザーボードで対応してしまえば良い。

5. 「7nm化」で30%少ない消費電力でi9 9900K並の性能

第3世代Ryzenのレンダリング性能(CR15)

  • Ryzen 7 3700X
    2057 cb
  • Ryzen 7 3700X
    206 cb
  • Core i9 9900K
    2040 cb
  • Core i9 9900K
    220 cb

基調講演では、CPU用の定番ベンチマーク「Cinebench R15」を用いた性能比較も行われた。残念なことにマルチスレッド性能しかテストされなかったので、シングルスレッド性能は概算値と別データを掲載しています。

今までのRyzenは同じコア数で性能を競うと、必ずCore i7やCore i9に劣る結果になってきた。それが第3世代でようやく追いつくことになった。

肝心のクロック周波数が公開されていないので断言は出来ないが、製造プロセスが14nmから一気に7nmへシュリンクしたことで、クロック周波数を大幅に引き上げられるようになったのではないか。と推測しています。

リーク情報では、第3世代Ryzenの「IPC」(クロックあたりの性能)が約29%も改善したという情報があったが、基調講演でクロック周波数を公開しなかったことから、IPCはそれほど改善していない可能性が割とありそう。

第3世代Ryzenの消費電力(システム全体)

  • Ryzen 7 3700X
    134.4 W
  • Core i9 9900K
    179.9 W
  • Ryzen 7 3700X
    15.3 cb
  • Core i9 9900K
    11.3 cb

次に消費電力。

同じテスト環境でCPUだけを取り替えて計測されたシステム全体の消費電力は、基調講演にて第3世代Ryzenが約134 W、i9 9900Kが約180 Wとのこと。

第3世代Ryzenはi9 9900Kとほぼ同じマルチスレッド性能を叩き出しているにも関わらず、消費電力は46W(約26%)も少ない計算になります。ワットパフォーマンスは間違いなくトップクラスです。

逆に言えば、同じ性能を出すためにi9 9900Kより2~3割も少ない熱で済むということ。つまり、オーバークロックの余地すら残されているため、本気で回せばオーバークロック状態のi9 9900Kを相手にすることだって出来るでしょう。

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まとめ:「順当な性能アップは間違いない」

というわけで、AMDが基調講演で発表した内容に基づけば、第3世代Ryzenはほぼ間違いなく「順当な性能アップ」を果たすと言っていい。

残る懸念は、

  • 価格設定:7nmプロセスは製造コストが高いらしい
  • IPCの改善:なぜ基調講演でクロック周波数を明らかにしない?
  • 汎用性:デュアルCCX構造は健在、異種チップ化の影響は?

このあたりですね…せっかくなので、懸念ポイントについても少しだけ掘り下げてみる。

懸念1:価格設定

7nmプロセスを用いたダイの製造は意外とコストが高いらしい。それと、異種チップの混合ならまだしも、別メーカーが製造したチップの混合は低コスト化の障壁になるとも言われている。

実際、IntelとAMDが共同製造している「Kaby Lake-G(=CPUはインテルが製造し、内蔵GPUはAMDが製造している異種混合CPU)は値段がかなり高い。

もちろん、ぼくの希望は「最低でも据え置き」ですが、どうなるかは実際に出てくるまで分かりません。

懸念2:IPCは改善したのか

基調講演でAMDは、クロック周波数を公開しないまま「Core i9 9900Kと同等の性能になったよ。」という見せ方をした。IPCは約29%改善した、という発表は何だったのか。

ぼくの希望は「Ryzen 7 2700Xと同じクロック周波数で、i9 9900Kを追い抜きました。」という見せ方だったんだが、今回の発表はそうではなかったため、IPCは言うほど改善してない説がある。

初心者もち
でも、7nmになって省エネ化してクロック盛りやすくなったからシングル性能アップしたんでしょ。なら良いんじゃない?
自作歴24台のやかもち
短期的には良いのだけれど、長期的に見ると行き詰まるんですよ。

懸念3:汎用性とゲーミング性能

Cinebench R15では同格の性能なのに、Adobeソフトで動作スピードが遅かったり、同じグラボを使っているのにRyzenの方がフレームレートが出にくいなど。「汎用性の低さ」はRyzenの抱える大きな問題です。

第3世代Ryzenは依然として「CCXを2個使う構造」を続投しているので、とりあえずレガシーソフトとの相性が改善されない可能性は濃厚。

ゲーミング性能は「シングルスレッド性能が速いなら何とかなるでしょ。」と思われがちだが、ゲームによってはクロック周波数では説明できないような性能差が出るため、クロック盛り盛りで緩和出来ても、根本解決にはならない。

ただ、GTX 1060や1070レベルのグラボを使っている人にとっては、さほど大した問題では無いけれど。RTX 2080 Tiなど、ハイエンドGPUを使っているユーザーは、第3世代Ryzenのゲーミング性能は要注目になる。

エンコード速度は、第3世代からAVX演算機が「128 bit x2」ではなく「256 bit単体」に改良されるので、インテルと互角の速度を叩き出せるはず。

あとは2019年の夏に期待

Lisa Su氏いわく、今回発表した第3世代Ryzenは2019年の夏頃に投入する予定らしいので、楽しみに待ちましょう。

ぼくはもちろん、第3世代のAMD Ryzenをベンチマーク機を組む予定。肝心のIPCは気になるし、ゲーミング性能やエンコード速度も非常に気になる。とにかく面白そうなCPUですよ、第3世代Ryzenは

以上「【AMDの反撃】世界初の7nm CPU「第3世代Ryzen」のスペックや性能」について解説でした。

AMD最新ハードの関連記事

「Zen 2」の設計についてイラストで解説した記事。当時は「痺れる設計…」と感じていたが、後から「CCXはやっぱり2個」と判明して、感動が半減しました。やはり1パッケージで8コアはコスト的に難しいのだろうか。

同じくCES 2019にて発表された、Radeon Vegaの最新モデルです。世界初の7nm GPUということで注目が集まるが、NVIDIAの牙城を崩せるほどインパクトのある製品にはならなさそう。やはりグラボはパッとしません。

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11 件のコメント

  • グラフの作り方が悪い
    シングルは推定なら?など付けるべきだし、higher is betterのワッパとlower is betterの消費電力を同じグラフに入れるのは見づらい

    消費電力の低さからIPC向上&クロック程々でのスコアなのは想像できる。9900Kや2700Xでもそうだけど、クロックを上げるなら消費電力は結局高くなる

  • うーん結局のところ7nmプロセスの恩恵だけといった感じか。
    これならIcelakeの方を待つ方が良さそう。

  • あまり多くの情報は出しませんでしたがCinebenchは7nmへの移行の効果を感じる結果ですね
    動作クロックや他のベンチマーク、ラインナップ・価格を見ない限り最終的な評価は下せませんが今後が楽しみですね

  • RyzenはXFRで結構OCの余地あんまりないくらいクロック上がっちゃうらしいから、
    今回も性能上がりやすいスイートスポットまで引き出した可能性はあると思う。
    ただCPU自体もまだ最適化の余地がある状態でこれでしょうから、まぁこれ以上ベンチは上がるんでしょう。

    IOダイは不安材料ですが多くの人は遅延改善すると見てるみたいですね。
    期待です。

  • リサおばちゃんがあんだけニッコニコしてたってことはCPU、GPU共に何かしらありそう(いい意味で)
    夏に期待じゃな

  • まだクロック上がってないのが明らかだから数値を公表してない。
    消費電力から見ればそこまでは読める。
    IPCの向上は期待していいと思うけど製品版のクロックがどこまで上がるかは不明、といったとこでしょ。
    あともう1個コア乗せるかどうかはインテルの動向見て決めればいい。
    ただ確実なのはコア2個乗せてもコアをまたいだメモリアクセスが発生しない為、メモリレイテンシが「どんな状況でも変わらない(平均的)」のは前世代に対する強みだと思う。
    ただしメモリ帯域がデュアルチャンネルでは流石に足りない。
    この辺でスレッドリッパーとの振り分けをどうするか悩んでるんじゃないかな。
    何ならここに流行のAI演算用チップ或いはレイトレ演算用チップを乗せるのも面白いだろうね。
    後者ならNVidiaの反応が楽しみ。

  • 相変わらず現状の憶測も素でぶっ込む酷えブログやな…
    くっさい自己紹介文載せてるブログの地雷率の高さよ

    • 個人のサイトが個人の推測や憶測で記事を書いたところでなんの問題もないのでは?
      メディアがやったなら大問題ですけど

  • 2020年1月にサポートが切れるWin7からの移行を考えてる人達には
    Zen2は魅力的な選択肢になるだろう。
    年末にIntelから10nmのIcelakeが出る予定だが、モバイル向けでデスクトップ向けではない。
    もし予定が遅れたらWin7の切り替えが間に合わない。

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