「ゲーミングPCって高い」という人にとって、低予算のゲーミングPCはとても魅力的な存在。2017年時点で、その最大の味方がインテル製の「Pentium G4560」というCPU。7000円前後という価格にも関わらず「i3キラー」的な性能を有しているのが特徴。
この記事では、Pentium G4560のCPU性能からゲーミング性能まで、幅広く解説する。
この記事の目次
Pentium G4560の基本スペック

世代 | Kabylake(7世代) |
---|---|
プロセスルール | 14nm |
CPU | Pentium Dual-Core G4560 |
コア数 | 2 |
スレッド数 | 4 |
クロック周波数 | 3.50 Ghz |
ブーストクロック | 未実装 |
OC可否 | 不可 |
L1 Cache | 128KB |
L2 Cache | 512KB |
L3 Cache | 3072KB |
対応メモリ | x2 DDR3-1333 |
x2 DDR3-1600 | |
x2 DDR4-2133 | |
x2 DDR4-2400 | |
PCIeレーン数 | 16 |
内蔵GPU | Intel HD Graphics 610 |
GPUクロック | 350 ~ 1050 Mhz |
TDP | 54W |
MSRP | $64 |
CPUを選ぶ時、最初に見るのが「スペック」(仕様)だ。G4560のスペックは表の通り。特に注目したい部分に関しては太字にしておいた。要点を言うと、G4560は64ドルという非常に安価な希望小売価格でありながら…
- Pentium初の「ハイパースレッディング」有効化モデル(スレッド数が2倍)
- Core i3(低電圧版)に匹敵するそれなりに高いクロック周波数
- ただし、前作の「G3258」などと違って倍率ロックは解禁されず
一番重要なのは「ハイパースレッディング」がPentiumシリーズとしては初めて実装されたことです。この技術が入っていると、OS上で扱えるコア数(スレッドと呼ぶ)が、実際のコア数の2倍になるんです。G4560は2コア搭載なので、4スレッド。
最新世代のPentiumとCore i3の比較 | ||
---|---|---|
世代 | Kabylake(7世代) | |
プロセスルール | 14nm | |
CPU | Pentium G4560 | Core i3 7350K |
コア数 | 2 | |
スレッド数 | 4 | |
クロック周波数 | 3.50 Ghz | 4.20 Ghz |
ブーストクロック | 未実装 | |
OC可否 | 不可 | |
L1 Cache | 128KB | |
L2 Cache | 512KB | |
L3 Cache | 3072KB | 4096KB |
対応メモリ | x2 DDR3-1333 | |
x2 DDR3-1600 | ||
x2 DDR4-2133 | ||
x2 DDR4-2400 | ||
PCIeレーン数 | 16 | |
内蔵GPU | Intel HD Graphics 610 | Intel HD Graphics 630 |
GPUクロック | 350 ~ 1050 Mhz | 350 ~ 1150 Mhz |
TDP | 54W | 60W |
MSRP | $64 | $179 |
今まで「2コア / 4スレッド」というスペックを持っていたのは「Core i3」でした。しかし今回のKabylake世代のPentiumから、そのCore i3に並ぶ仕様である「2コア / 4スレッド」になったということ。
「Pentium G4560 = Core i3並のスペック」
額面だけを見れば明らかにCore i3相当のプロセッサですが…データを見る前にそういう評価をするのは危ない。まずはPentium G4560のCPU処理能力を確認していこう。
Pentium G4560のCPU性能
ベンチマークソフトや、動画エンコード、円周率の計算などを行ってPentium G4560がどれくらいの処理性能を持っているのかを確認します。他のCore i3やCore i5とも比較することで、よりG4560の立ち位置を浮き彫りに出来ます。
Cinebench R15
Cinebench R15はCPUが本来持っている性能をほぼ正確にスコア化できる、非常に便利なベンチマークソフト。まずはゲーミング性能への影響が大きいシングルスレッド性能から見ていこう。
Cinebench R15 – シングルスレッド性能
Ryzen 3よりも高い性能が出ている。しかし、定格4.20Ghzで動作するCore i3 7350Kにはさすがに敵いません。オーバークロック出来ればワンチャンありそうだが、残念ながらG4560は倍率ロックモデルです(OCできない)。
Cinebench R15 – マルチスレッド性能
CPU全体の性能はこんな感じ。i3 7350Kに約20%ほど引き離されており、同じ2コア4スレッドでもクロック周波数が違えばこれだけの性能差が出てしまうのがよくわかります。それでも1万円以下のCPUとしてはトップクラスの性能である。
7-Zip 解凍 & 圧縮
7-Zip – 32MB 解凍スピード(MIPS)
7-Zipの解凍速度も、i3 7350Kに30%ほど追い抜かされた。G4560だと1分かかる解凍を、i3 7350Kだと45秒程度で終えられる。まぁ…そのくらいの性能差は、価格を考えれば全然許せる範囲ですけどね。
7-Zip – 32MB 圧縮スピード(MIPS)
圧縮の場合も傾向は変わらず。
Microsoft Excel 2016
Excel 2016 – モンテカルロシュミレーションの終了時間(秒)
Core i7の3秒台は圧倒的。Pentium G4560とi3 7350Kは2秒ほどの差。意外とPentiumは頑張っている印象。
PCMark10による各種パフォーマンステスト
PCMark10は、パソコン全体の総合的なパフォーマンスを計測するベンチマーク。ただ、項目がとても多いので「ウェブ閲覧」「文書作成」「写真編集」の3種類に限定してスコアを見ていきます。
PCMark10 – ウェブ閲覧のパフォーマンステスト
「ウェブ閲覧」は基本的にシングルスレッド性能の影響をモロ受けするので、Pentium G4560には不利な戦いだ。それでも、マメなキャッシュ削除とアドウェア削除を心がければ、常にキビキビとしたブラウジング環境はかんたんに実現可能。
PCMark10 – 文書作成ソフトのパフォーマンステスト
CPUの処理性能順に並んでいるが、正直言ってあまり体感できない項目です。これが1000~2000点くらいなら、もっさり感はあると思いますが、5000点も出ていますから特に問題にならない。
PCMark10 – 写真編集のパフォーマンステスト
「写真編集」のスコアはこんな感じ。さすがにCore i7は強い…、意外なのはi3 7350KとG4560のスコアがほぼ同じという点。
ちょっとだけ詳しい話をすると、画像編集(画像を回転したり、ぼかしたり)の処理は4コアまではコアが多いほど性能が上昇します。シングル性能が悪くても4コア搭載のRyzen 3が8000点台で、シングル性能が良いi3 7350Kが7000点すら超えられなかった理由です。
HandBrakeを使ったエンコード処理性能
HandBrake – 4K(H.264)をフルHD(H.265)へのエンコード枚数
エンコードの処理性能は基本的にCinebench R15のマルチスコアとほぼ相関するので、この結果は妥当なものですね。うーん…そもそもエンコードしたい人はPentiumなんて買わないし、気にしなくていいかな。
Adobe Premiere CCのエンコード時間
Adobe Premiere CC – Youtube出力(4K/H.264)の処理時間
Adobe PremiereもHandBrakeの場合とほぼ同じ結果。シングルスレッド性能が高く、コア数が多いCPUほど有利な戦いになるので、Pentium G4560の遅さは仕方がない(1万円以下では最速クラスです)。
Pentium G4560のゲーミング性能とボトルネック
PC初心者向けをうたうサイトでは、なぜかこのボトルネックをあまり考慮していないことが多い。「ゲームするならCore i5以上」などはよく見かける例だ。しかし、実際のところは使うグラフィックボードによって選択肢は変わる。
この低予算PC向けのCPU「Pentium G4560」は、グラフィックボード側の性能がどれくらいの水準に達するとボトルネックが発生するのか。データからざっくりと傾向を確認していく。
The Division DX12

GeForce GTX 1080の場合
平均フレームレート最低フレームレート(全体の1%)
DirectX12環境の「The Division」(フルHD画質)を、ハイエンドGPUのGTX 1080を使って動かした場合はこうなる。見ての通り、CPUの性能によって同じグラボでも実際に出るフレームレートはバラバラですね。
GeForce GTX 1060 6GBの場合
しかし、これをGTX 1060 6GBに落とすとだいぶ性能差がマシになります。それでも最低フレームレートは20%も開いているため、安定性に過度な期待はできなさそう…。
GeForce GTX 1050 Tiの場合
更に落としてミドルクラスでコスパ神に君臨している「GTX 1050 Ti」で動かしてみると、やっとボトルネックが完全に消失する。Pentium G4560で無駄なくゲーミング性能を出すなら「GTX 1050 ~ 1050 Ti」あたりが限度ということになります。
Civilization 6 DX12

GeForce GTX 1080の場合
かなり正確な結果を出す「Civilization 6」でも確認します。やはりGTX 1080はPentium G4560にとってあまりに高性能過ぎることが分かる。平均フレームレートでは60%も引き離され、最低フレームレートも70%近く離されてしまっている。
GeForce GTX 1060 6GBの場合
GTX 1060に落とすとやはりボトルネックはマシになります。それでも平均フレームレートは50%、最低フレームレートは60%ほど離されてしまった…。GTX 1060はそれなりに高性能なグラフィックボードなんですよね。
GeForce GTX 1050 Tiの場合
GTX 1050 Tiだとボトルネックはほぼ無くなる。平均フレームレートはほぼ同じで、最低フレームレートは10%程度にまで改善された。Pentium G4560 + GTX 1050 Tiという構成は、低予算PCを組む上でかなり堅いと言える。
Overwatch

GeForce GTX 1080の場合
Overwatchは比較的軽い3Dゲームで、3桁台のフレームレートが簡単に出てくる。しかし、グラボの処理枚数が多ければ多いほどボトルネックは目立ってしまいます。平均フレームレートでは110fpsも差がついている…。
GeForce GTX 1060 6GBの場合
GTX 1060に落とすと全体的にマシになって26fps程度の開きに収まる。
GeForce GTX 1050 Tiの場合
GTX 1050 Tiだとボトルネックは完全に消えて、どのCPUでも大丈夫という状況に。
Battlefield 1

GeForce GTX 1080の場合
最後にBattlefield 1を。ボトルネックは度合いは2コアCPUか、4コアCPUかで大きな差があるのは間違いない。次にシングルスレッド性能が重視されるということ。G4560はGTX 1080に追いつける処理性能は持ち合わせていないことが確定した。
GeForce GTX 1060 6GBの場合
GTX 1060までならギリギリ許容範囲内といったところだ。多少のボトルネック(無駄)を気にしないのであれば、GTX 1060を採用してもいいと言える。あまりオススメはしないが。
GeForce GTX 1050 Tiの場合
GTX 1050 Tiになれば、平均フレームレートに関してはほとんど差がなくなり、最低フレームレートの差も十分に落ち着きます。突発的な処理が発生した時に、フレームレートが崩れる可能性は高いものの価格を考えれば十分過ぎる性能だ。
Intel Pentium G4560: Kaby Lake’s Real Gift
結論:Pentium G4560は「i3キラー」になりうる

Cinebench R15 – マルチスレッド性能
CPU単体の処理性能は「Core i3 7350K」に20%程度は抜かされています。逆に言えば20%程度の差に収まっているため、Pentium G4560はCore i3の最下位モデルといっても差し支えないレベルのCPUということ。
しかし、あくまでもPentiumを名乗っているため価格はCore i3と比較すれば「破格」の安さと言える。Core i3に対して最大で30%は劣る性能だが、価格は半額以下。コストパフォーマンスが圧倒的に良いのは間違いない。
Core i3 7350Kなどを買おうと思えば「Ryzen 5 1400」といった選択肢も見えてくるため、Pentium G4560は「i3キラー」と言っても過言ではないポジションを獲得している。
Pentium G4560の「強み」
- 「Core i3」の最下位モデルとしても、遜色ない処理性能
- 7000円前後という、インテルの2コア4スレッドCPUでは破格の価格設定
- 「GTX 1050 Ti」程度までならボトルネックをほぼ発生させずに動作可能
まさに「低予算PC」の救世主的存在です。ゲーミング性能もGTX 1050 Tiまでなら問題ないので「超低予算ゲーミングPC」を組む時にも、かなり重宝する存在だ。事実、価格コムでは売れ筋ランク2~3位に居座り続けています。
Pentium G4560の「弱み」
- 内蔵グラフィックスはCore i3よりもやや劣る(HD 630 → HD 610)
- マルチタスク性能はごく平凡である(重たいゲーム + Adobe系はキツイ)
- オーバークロックはできない
そもそもPentium G4560を必要とするユーザー層からすれば、これら大した問題ではないかもしれない。それでも一応挙げておきました。
Core i3に迫るといってもCore i3以下の処理性能ですから、ぼくがよくやっている「黒い砂漠をしながらYoutubeでフルHD動画を見て、さらにAdobe Photoshopでブログの画像編集…」という使い方だと、少々ガタつきます。
あとは…あえて言うと、割りと名作だった先代「Pentium G3258」というCPUは倍率ロックフリーだったのに、今作は出来ないことですね。今回も「G4458」という感じで倍率ロックフリー版のPentiumがあったら嬉しかったかな。
5万円前後の「低予算ゲーミングPC」を作るなら最適なCPU
低予算PCの構成例 | 参考価格 | |
---|---|---|
CPU | Pentium G4560 | 7000 |
GPU | GF-GTX1050Ti-4GB/OC/SF | 15000 |
メモリ | DDR4-2133 8GB(4GB *2) | 8000 |
M/B | MSI B250M PRO-VH | 7000 |
SSD | DREVO X1 120GB | 6000 |
電源ユニット | CORSAIR CX450M | 5000 |
PCケース | SAMA 舞黒透 MK-01W | 3500 |
合計価格 | 51500 |
とにかく安くゲーミングPCを作りたい、というコンセプトならこんな構成になります。ボトルネックがまず発生しない「G4560 + GTX 1050 Ti」という組み合わせを入れて、一定のゲーミング性能を担保した。
他のパーツは好みか安さで選んでいけばいいかと。更に安価に済ませたいならGTX 750相当の性能がある「GeForce GT 1030」を使うという手もあり、これだと4.5~4.7万円くらいで作ることも可能だ。

「低予算でパソコン作りたい?」

「Pentium G4560で解決!!!」
って感じですね。以上「Core i3泣かせなCPU、Pentium G4560を徹底解説する」について書きました。
追記:実際に「似た構成」で低予算ゲーミングPCを作ってみました
「Pentium G3258」+「GTX 1050 Ti」を軸に、50500円ほどで作ってみました。組み立てから動作検証まで、全部まとめてるので低予算で組みたいと思っている方はどうぞ。
低予算PCを考えている方にオススメな記事
今回、G4560と特に相性がいいと評価した「GTX 1050 Ti」について、更に知りたい人はこの記事を。コスパ最強なのは間違いない。
グラボに1万円以上は掛けられない…しかし性能をある程度は欲しい。という人には「GT 1030」がオススメ。TDPがわずか30Wなのも良い。
Core i3よりも安いのに、3~4世代のCore i5に匹敵する性能を叩き出す「Ryzen 3」についてはこちら。低予算PCを考えている人なら、おそらく気になっているかもしれないが…。正直、惜しいCPUです。
GTX1050Tiの性能をフルに活かせるPCを5万で作れるというのは衝撃。
SSDもしっかりありますし、これ+1万くらいでBTO売ってたら多くのゲーマーさんが助かりそう。
でも、現実としてGTX1050Tiは格安BTOには載ってないから自作しかないですね。
G-tuneが62000(+税)で、「G4560 + GTX 1050」という構成で売っているのですが、おっしゃるとおり「GTX 1050 Ti」を載せてくれないので非常に惜しいマシンになっています。ここまで低価格になると、自作の方がコスト的なメリットは大きいですね。
Pentium初の「ハイパースレッディング」有効化モデルは、Pentium4のNorthwoodな
Prescottでは…
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