2009年に登場して以来、メインストリーム向けでは一貫して4コア搭載だったCore i7が、今回から6コアへと増量された。エンスージアスト向けのCore i7では10コア搭載などもありましたが、一般向けで6コア搭載は初のこと。
この記事では「Core i7 8700K」がゲーミングCPUとして最強の座を更新できるのか、そしてライバルである「Ryzen 7」をどれほど圧倒できるのか。各種データにもとづいて確認してみたい。
この記事の目次
「Core i7 8700K」の仕様を確認
世代 | CoffeeLake | KabyLake | Zen | |
---|---|---|---|---|
CPU | Core i7 8700K | i7 7700K | Ryzen 7 1800X | Ryzen 7 1700 |
プロセス | 14nm++ | 14nm+ | 14nm | 14nm |
コア数 | 6 | 4 | 8 | 8 |
スレッド数 | 12 | 8 | 16 | 16 |
ベースクロック | 3.7 Ghz | 4.2 Ghz | 3.6 Ghz | 3.0 Ghz |
ブーストクロック | 4.7 Ghz | 4.5 Ghz | 4.0 Ghz | 3.7 Ghz |
全コア時 | 4.3 Ghz | 4.4 Ghz | 3.7 Ghz | 3.1 Ghz |
L2 Cache | 1.5 MB | 1.0 MB | 4.0 MB | 4.0 MB |
L3 Cache | 12 MB | 8 MB | 16 MB | 16 MB |
対応メモリー | x2 DDR4-2666 | x2 DDR4-2400 | x2 DDR4-2666 | x2 DDR4-2666 |
PCIeレーン数 | 16 | 16 | 20 | 20 |
内蔵GPU | Intel UHD Graphics 630 | Intel HD Graphics 630 | – | – |
GPUクロック | 1200 Mhz | 1150 Mhz | ||
TDP | 95W | 91W | 95W | 65W |
対応チップセット | Intel 300 Series | Intel 200 Series | X370 / B350 / A320 / A300 | |
CPUソケット | LGA 1151 | LGA 1151 | Socket AM4 | Socket AM4 |
MSRP | $359 | $339 | $499 | $329 |
まずは仕様(カタログスペック)を確認しておきます。比較対象として先代のCore i7 7700Kと、仕様も価格も非常に似ているライバル「Ryzen 7」も入れておいた。
こうして見ると大きく変更された点はありませんが、やはり最も大きな進化がコア数が「4 → 6」へと50%も増量された点。Core i7にはハイパースレッディングが搭載されているので、スレッド数も「8 → 12」へと一気に増えた。
Ryzen 7と比較すると確かにコア数では2個ほど負けているものの、最近のインテルが作るCPUはシングルスレッド性能が非常に高い傾向です。よって、恐らく6コアでも十分にRyzenの8コアと対等に戦える可能性は高い。
仕様の変更点をまとめ
- コア数は50%増加して「6コア」に
- キャッシュも50%増加
- プロセスサイズは更に微細化し「14nm++」(12nm相当)
- 内蔵グラフィックスがほんのちょっとだけ進化(+50Mhz)
- ベースクロック周波数は500Mhzも低下
- 一方、ブーストクロックは200Mhz上昇したが、全コア時は100Mhz低い
- 従来のLGA 1151と互換性は無し
- 対応チップセットも「Intel 300」へと変更
プロセスサイズは「14nm+」から更に微細化が進み「14nm++」(12nm相当)。ベースクロック周波数は500Mhzも低下しているが、コア数が1.5倍なので処理性能自体は確実に7700Kから進化している。
Coffee LGA 1151 | Kaby LGA 1151 |
---|---|
![]() | ![]() |
しかし、Core i7 8700Kはコア数が50%も増えたことで大きな問題(デメリット)も抱えてしまった。それが互換性。従来のLGA 1151とは完全に互換性を失っており、Core i7 8700Kを使おうと思ったら
- Intel 300シリーズ(Z390 / Z370 / H370 / B360など)を搭載したマザーボード
- 新型LGA 1151に対応したマザーボード(Intel 300対応モデルなら問題なし)
この2つが必要になります。既に環境を持っている人にとっては、乗り換えをしようと思ったらマザーボードなど追加コストが必要になるためデメリットに感じる点だろう。
一方、まだ何も環境を持っていない人や、かなり古いマシンを持っている人にとってはそこまで大きなデメリットではないと思います。
それにオーバークロック可能な「Z370」搭載マザーボードは、安価なモノだと119ドルくらいですし、今後は更に安価なH370 / B360を搭載したマザーボードも登場する予定。
LGA 2066が必要になるi7 7740X / i5 7640Xと比べれば、i7 8700Kは遥かに安いコストで乗り換えが可能だ。6コア化したことだし、乗り換えることによって得られるメリットは大きい※。
※とは言っても、既にi7 7700Kなどハイスペックな環境を持っている人が乗り換えるほどのメリットは提供できないと思います。NVIDIA Volta世代が登場し、i7 7700Kでもボトルネックが深刻化すればメリットは大きいと思いますが。
どちらかと言えば問題なのは、互換性を失ったにも関わらず名称を一切変更してないこと。紛らわしいですよ、互換性が無いのにLGA 1151を名乗るなんて。「LGA 1151 v2」や「LGA 1152」という名前にしたほうが分かりやすいんだが。
理由は単純。コア数が50%も増えたため、今までのLGA 1151では電源供給が追いつかない。だから予備においていたピンを、電源供給用に設計し直すなど、電源供給を安定させるための仕様変更が行われた。
これが原因で、従来のLGA 1151との互換性を喪失することになったということ。
「Core i7 8700K」の処理性能:Ryzen 7を上回るプレミアム
テスト環境 | |
---|---|
CPU | Core i7 8700K |
GPU | GTX 1080 Ti |
M/B | GIGABYTE Aorus Z370 Gaming 7 |
メモリ | DDR4-3200 16GB |
ストレージ | Samsung 960 EVO 500GB |
電源 | 750W 80+ PLATINUM |
OS | Windows 10 Pro 64bit |
INTEL’S 8TH GEN PROCESSORS DELIVER A HUGE JUMP IN PERFORMANCE
一般向けとしては初の「6コア搭載Core i7」が、どの程度「先代i7 7700K」から進化したのか。テストされた環境は上記の通りです。参照したデータベースは米PC GAMERより。
グラフィックボードにはボトルネックが非常に出やすい「GTX 1080 Ti」が使われているので、CPUが持つゲーミング性能についても正確な計測が可能(ゲーミング性能は後ほど)。
まずはCPU自体の処理性能から見ていく。特に確認しておきたいのが…
- 先代のCore i7 7700Kからの伸び
- ライバル「Ryzen 7」とどれくらい戦えるのか
この2点は特に注目しておきたいところ。では、以下ベンチマークが続く。
Cinebench R15
Cinebench R15はCPUにレンダリングを行わせ、その処理にかかった時間でCPUの性能をスコア化するベンチマーク。非常に分かりやすいため国際的に人気で、国内でも有名なベンチマークソフトになっている。
Cinebench R15 – シングルスレッド性能
まずは1コアあたりの処理性能(シングルスレッド性能)を見る。やはりKabyLake / CoffeeLakeは、このシングルスレッド性能が高いのが特徴だ。i7 8700Kは190cb台と非常に高速で、OCを施せば200cbを超える。
これはゲーミング性能や、X264 / X265エンコードの実行速度に大きな影響を与える要素。そのため、200cbを突破できるi7 8700Kは、Ryzenを超えるゲーミング性能を発揮し、エンコード速度でも凌駕する可能性が高いと言えるだろう。
Cinebench R15 – マルチスレッド性能
次は全てのスレッドを使用するマルチスレッド性能をチェック。基本的にスレッド数が多いほど有利になるため、こういったテストではAMD Ryzenの方が高く評価されやすい。2コア(4スレッドも)少ないi7 8700Kは不利な戦いだが…。
実際の結果はかなり健闘している。オーバークロックすることでRyzen 7 1800Xにも迫る処理性能を発揮しているので、ひとまず「i7 8700KはRyzen 7と戦える」と言って差し支えない。
x264 HD Benchmark 5.0.1
Tech ARP製の「x264 HD Benchmark Ver. 5.0.1」を使って、X264エンコードの実行速度が計測された。このテストが非常に役立つのは、Cinebench R15のマルチスレッド性能 = エンコード速度では無いことを証明できる点です。
HD Benchmark x264 5.0.1 – 1 st Pass / fps
まずは1st Passモードで実行。シングルスレッド性能が非常に効きやすいため、Core i7 8700Kは当然…圧倒的です。i7 7700Kですら、定格のi7 8700Kに全く歯が立たない。シングル性能が低いRyzen 7は尚更ですね。
HD Benchmark x264 5.0.1 – 2 st Pass / fps
2st Passモードで実行。こうすると並列処理が評価されやすくなるので、16スレッドを備えるRyzen 7が急に強くなる。定格だとRyzen 7 1800Xに負けますが…OCすれば勝てます。6コアなのに、かなり頑張っていると言える。
HWBOT x265 Benchmark
HWBOT x265 – 1080p / fps
X265エンコードの実行速度は、HWBOT製のベンチマークを使って計測された。今のところX265エンコードという分野は、スレッド数よりはシングルスレッド性能が効きやすい現状がある。だからi7 8700Kは猛威を奮っている。
ちなみにこのテスト。以前作った「Ryzen Threadripper マシン」で実行した時は60.89fpsと出ています。それに対してi7 8700K @4.8Ghzは54.08fpsを叩き出している。
…よってコスパ重視でエンコードマシンを作りたい場合も、i7 8700Kは適任と言えるだろう。
HWBOT x265 Benchmarkだけでは参考にはなるものの、正確な評価はできない部分が多いことは否定できない。インテルCPUの場合は、命令セットのAVX2を有効にするとエンコードが高速化される特徴があったりするし、Blenderのようなオープンソース系のソフトだとRyzen系もかなり高速に動作したりします。
HandBrake x264 / 処理速度(fps)
HandBrake x265 – HEVC / 処理速度(fps)
参考程度に、HandBrakeを使ってエンコードを行った場合の処理速度を載せておきます。X264だとi7 8700KはRyzen 7 1800Xと互角のスピード。X265 / HEVCでは、i8 8700Kが最速でした。
AMD RyzenにもAVX2が実装されているものの、Core i7ほどその機能を上手く活用できない…という課題を抱えています。
Intel Coffee Lake-S: Core i7 8700K review – The fastest gaming CPU money can buy.
y-cruncher Pi
「y-cruncher Pi」は円周率を計算させ、その処理時間でCPUの性能を評価するベンチマークソフト。
y-cruncher Pi – 100万桁 / 秒数
こういう単純作業もシングルスレッド性能が強く影響しやすい。i7 8700Kは、Ryzen 7 1700に対して50%以上、Ryzen 7 1800Xに対しては40%ほど高速な結果が出た。先代i7 7700Kに対しても25%ほど高速だ。
VeraCrypt AES
VeraCryptは暗号解読の速度を計測するベンチマーク。一般的にCPU性能の指標として使われているのが「AES(TwoFish(Serpent))」という項目です。この秒間処理量(MB/s)で評価が行われている。
VeraCrypt AES(TwoFish(Serpent)) – MB/s
こういう分野はちゃんとスレッド数が効いている。定格だとRyzen 7 1700と互角で、4.8GhzにオーバークロックするとRyzen 7 1800Xに一歩迫る。ちなみにRyzen 1950X(32スレッド)で計測した時は2100MB/sは出ていた。
7-Zip Benchmark
無料の解凍ソフトウェア「7-Zip」に付属しているベンチマークソフト。1秒間あたりの処理量(MB/s)で評価される(またはMIPSという単位でも評価される)。
7-Zip Benchmark – 圧縮
「圧縮」はクロック周波数(=シングルスレッド性能)が普通に効きやすい。Ryzen 7は圧縮で苦戦し、Core i7系は圧倒的。2コア格下のi7 8700Kは定格でRyzen 7 1800Xを抑えてしまおり、OCを施すと30%近く高速に。
7-Zip Benchmark – 解凍
逆に「解凍」はRyzen系が非常に得意とする分野。オーバークロックを施しても定格状態のRyzen 7 1700にすら敵いません。
Civilization VI Benchmark
Civilization VI – AI Benchmark
Civilization VIは非常にCPU性能に影響を受けやすいという特徴があるため、その特徴を逆手に取ってベンチマークとして利用したのがこのグラフ。
定格だとi7 7700Kの方が優秀だが、これは500Mhzも低下したベースクロック周波数が原因だとは思うが…。オーバークロックを施してやっと互角という状況なので、少し不思議な傾向と言える。
まとめ:i7 7700Kを圧倒し、Ryzen 7とも戦える処理性能
平均パフォーマンス – Core i7 8700K VS…..
先代i7 7700Kが持っていたメインストリーム向けCPUとしては最速のシングルスレッド性能をそのままに、6コア化したことでRyzen 7にも匹敵するマルチスレッド性能を手に入れた。それがCore i7 8700Kです。
特にエンコードという分野においてはRyzen 7よりもCore i7 8700Kの方が明らかに優秀なパフォーマンスを示しているので、コストパフォーマンス重視でエンコードマシンを組み立てたい…という人にとっても重宝しそうだ。
ただ、それだけではまだi7 8700Kの評価は確定できない。先代i7 7700Kは、史上最高のゲーミングCPUでした。これを覆すことが出来ないなら本当の意味でi7 8700Kは進化したとはいえません。
というわけで、次はゲーミング性能をチェックしていく。
「i7 8700K」は先代7700Kを超えるゲーミング性能
「ゲーミング性能」とは、高性能なグラフィックボードの処理にどれだけ追いついて、本来のパフォーマンス(フレームレート)を引き出せるか。その性能のことを言う。
同じGTX 1080 TiでもCPUによってフレームレートは随分と変わってくるため、ハイエンドなGPUを使うのならCPU側のゲーミング性能は必ずチェックしておかなければならない。
Ashes Escalation

Ashes Escalation – フルHD(1920×1080) – GTX 1080 Ti 11GB
CPU性能がクッキリと反映されやすいAshes Escalationではこの通り。Core i7 8700Kが最もGTX 1080 Tiの性能を引き出せている。
Battlefield 1

Battlefield 1 – フルHD(1920×1080) – GTX 1080 Ti 11GB
BF1も似たような傾向で、シングルスレッド性能が高い & スレッド数が多いと安定している。よく見るとCore i5 8400とパフォーマンスは酷似しているため、GTX 1080 Tiの性能をほぼ100%引き出せている可能性が高いですね…。
Civilization VI

Civilization VI – フルHD(1920×1080) – GTX 1080 Ti 11GB
Civilizaton VIではCore i7 8700Kが定格・OCともに最高のパフォーマンスを記録。スレッド数の増加によって更に1080 Tiの実力を引っ張り出せた感がある。
Dawn of War 3

Dawn of War 3 – フルHD(1920×1080) – GTX 1080 Ti 11GB
定格だとi7 7700Kとあまり差は出ていないが、オーバークロックを施すと一気に引き離せる。性能差は10%以上だ。
Deus Ex : Mankind Divided

Deus Ex : Mankind Divided – フルHD(1920×1080) – GTX 1080 Ti 11GB
やはりCore i7 8700Kが強いものの、i7 7700Kから大きく変わったわけではない。あまりボトルネック自体が発生していませんし、このあたりが限界なんでしょう。Ryzen 7は苦戦気味ですが。
Dishonored 2

Dishonored 2 – フルHD(1920×1080) – GTX 1080 Ti 11GB
Dishonored 2ではi7 8700Kが完全に無双状態。このように、CPUが進化することでフレームレートが伸びているわけですが…グラフィックボードの進化のほうが速いため、世代更新が進めば進むほどボトルネックはかなり問題になりそうですね。
i7 7700Kでは108.4fpsしか引き出せなかったのに、i7 8700Kなら140fps前後も引き出せるわけですから。
The Division

The Division – フルHD(1920×1080) – GTX 1080 Ti 11GB
The Divisionでは頭打ち感があるものの、一応は最高のパフォーマンスを更新できた。
Fallout 4

Fallout 4 – フルHD(1920×1080) – GTX 1080 Ti 11GB
Fallout 4も同様に頭打ち感。
Far Cry Primal

Far Cry Primal – フルHD(1920×1080) – GTX 1080 Ti 11GB
Far Cry Primalはかなりインテル寄りな最適化が施されており、Ryzen 7は相当に苦戦しています。i7 8700Kはだいたい頭打ち感がありますが、オーバークロックをすると更に伸びている。
Ghost Recon Wildlands

Ghost Recon Wildlands – フルHD(1920×1080) – GTX 1080 Ti 11GB
オーバークロックを施しても大きな変化はなく。Ryzen 7 1700と比較すると23%ほどフレームレートに差があります。
Grand Theft Auto V

Grand Theft Auto V – フルHD(1920×1080) – GTX 1080 Ti 11GB
GTA Vでは大きくフレームレートを更新。i7 7700Kでは130fps前後が限界だったのに。i7 8700Kでは一気に140fps前後に。そこからオーバークロックを施してもほとんどフレームレートが改善していないので、恐らく限界まで引き出せたのだろう。
ただ…明らかに6コア化が効いている印象があるので、i7 8700Kの8コア版が出れば…まだ上はあるかもしれません。
Hitman 2016

Hitman 2016 – フルHD(1920×1080) – GTX 1080 Ti 11GB
Hitmanでも大きくフレームレートを更新してしまった。Ryzen 7 1700と比較すると、その差は77%も開いている。先代i7 7700Kと比較しても15%ほど伸びている。強烈ですね。
Rise of the Tomb Raider

Rise of the Tomb Raider – フルHD(1920×1080) – GTX 1080 Ti 11GB
Rise of the Tomb Raiderでは大きく伸びなかったが、ちゃんと最高記録を更新しています。
The Witcher 3

The Witcher 3 – フルHD(1920×1080) – GTX 1080 Ti 11GB
Witcher 3は元々ボトルネックが出づらいが、フレームレート自体は最高の水準に達した。
まとめ:ゲーミングCPU最強の座をきっちりと更新
平均パフォーマンス – GTX 1080 Ti 11GB
平均パフォーマンスを確認すると、i7 7700Kに対して定格状態で7%、オーバークロック状態で10%もフレームレートが伸びた。
i7 8700Kの凄まじいゲーミング性能を確認するとともに、GTX 1080 Tiが秘めている実力がまだまだあったという事実にも驚きを禁じ得ない…。
この調子だと2018年に登場する予定のVolta世代では更にボトルネックが開くと思うので、i7 8700Kの存在は非常に重要になってくるだろう。間違いなくRyzen 7やi7 7700Kでは追いつけない高性能GPUが誕生するはずだからだ。
「Core i7 8700K」の消費電力とCPU温度
消費電力
消費電力 – アイドル時
アイドル時(何もしていない状態)の消費電力はこんな感じ。Ryzen 7が25%ほど高い水準で、i7 8700Kは35Wと普通です。i7 7700Kと比べてもほとんど消費電力は変化していない。
消費電力 – Prime95 AVXテスト時
AVXストレステスト実行時の消費電力は大幅に伸びます。物理コアが2個(+50%)も増えていますから、消費電力の伸びは仕方がないでしょう。
CPU温度
CPU温度 – Prime95 AVXテスト時
CPU温度は意外と上昇せず、Prime95でストレステストを実行していても71度程度。対してi7 7700Kは84度まで上昇してしまっている。
2コア増えた割には熱くならない原因ですが、おそらくはベースクロック周波数が500Mhzも下がったことや、ブースト時のクロック周波数もi7 7700Kほどではなく、全コア時のクロックも100Mhzほど低い。
だからオーバークロックを施せばCPU温度は一気に上昇すると思います。
オーバークロックで更に伸びる「Core i7 8700K」
クロック周波数(Mhz) | コア電圧(VID) | 最大CPU温度 |
---|---|---|
4300 | 1.264 | 70 |
4400 | 1.168 | 61 |
4500 | 1.184 | 64 |
4600 | 1.184 | 64 |
4700 | 1.232 | 69 |
4800 | 1.28 | 72 |
4900 | 1.296 | 79 |
5000 | – | – |
Intel Core i7-8700K, Core i5-8600K, Core i5-8400 et Core i3-8350K en test
※冷却に使われているのはNoctua製の空冷ファン「NH-D15」。2枚の巨大放熱フィンを備える大型空冷ファンで、強力な冷却性能を提供可能だ。
定格4.3Ghzでは、コア電圧(VID)が1.25V前後になっているのでCPU温度が高めだが、コア電圧を調整することである程度は温度を抑えられます。しかし4.8Ghzを超えてくると一気に難しくなり…。
4.9Ghzでは79度、コア電圧はほぼ1.30Vまで。更に電圧を1.40V程度まで盛ることで5.0Ghzは可能だが、それなりに優れた水冷クーラー(Corsair H115iなど)が必要になってくるだろう。
Cinebench R15 – マルチスレッド性能
なお、オーバークロックを施した場合の処理性能も改めて載せておきます。
ゲーミング時はもっと熱くなる
Prime 95 AVXストレステスト時なら4.9GhzまでOCしても最大79度くらいで済んでいたが、ゲーミング時は更に高温になるので注意が必要。

冷却環境は「Corsair H115i」にも関わらず、90度に迫るCPU温度
それなりに高性能な簡易水冷を使用していても、定格では67度前後と割りと高いCPU温度になります。4.90Ghzまでオーバークロックを施すと一気に90度前後まで跳ね上がる。
なのでオーバークロックを行う場合は…、実用上十分な性能を得られる4.80Ghzを限度にしつつ、中途半端なCPUクーラーではなく「Corsair H115i」や「Cryorig H7 Quad Lumi」など冷却性能が高いクーラーを使う方が良いでしょう。
もちろん、5Ghz以上で常用を求める人はリキプロ殻割り(またはクマグリス殻割り)など、打てる手を打てばいいかと…。最近は殻割りマシン(Delid Master)も売ってますし(推奨はしない)。
結論:Ryzen 7とも戦える「至高のゲーミングCPU」
ここまでの各種データを見てきた通り、CPUとしての処理性能は先代Core i7 7700Kを超えているし、Ryzen 7ともの互角かそれ以上の処理性能を発揮してみせた。
ゲーミング性能に関しても、先代が持っていたゲーミングCPUとして最強の座をキッチリと塗り替え、GTX 1080 Tiが持つ力を更に引き出すことに成功(逆にGPUの底深さが怖くなる)。
単位コストあたりの処理性能(高いほどコスパ良好)
MSRP(希望小売価格)は20ドルほど高くなっていますが、コストあたりの処理性能を出して相対的に見れば、コストパフォーマンスはちゃんと向上していると言っていいだろう。
Core i7 8700Kのメリット
- 従来のCore i7を凌駕する処理性能
- エンコードの実行速度は「Ryzen 7」を超える
- GTX 1080 Ti本来の実力をほぼすべて引き出せる圧倒的なゲーミング性能
- 内蔵グラフィックスもあるよ
という感じで、特に欠点という欠点はありません。100人中98人は「快適だ。」と答えても全く違和感がない、そんな性能です。
既にi7 7700Kを持っている人からすれば、ゲーミング性能は最大10%の伸びですし、エンコード速度(X264)は最大30%程度。マザーボードを買い替えてまで乗り換える旨味は少ない。
逆に言えば、i7 3000~4000を使っていたり、グラフィックボードをGTX 1080以上にアップグレードしようかな…と考えている人にとっては十分魅力的な選択肢。
2017年の時点で、Core i7 8700Kは間違いなく史上最強のゲーミングCPUですから。
Core i7 8700Kのデメリット
- 意外と熱くなりやすいので、冷却にはコストを掛けたい
- マザーボードはIntel 300シリーズ搭載(Z370)じゃないと動かない
- 従来のLGA 1151と全く互換性が無い
CoffeeLake全般に言われている「互換性のなさ」が最大のデメリットだろう。この点に関しては先ほど述べた通り、既に環境があるかないかで大きく評価は変わってくる。
もう一つ気になるのは、非常に熱くなりやすい点です。水冷を使っていても、定格状態でゲーミングをすると70度に迫るというのは、正直言ってかなり熱くなりやすい部類だ。
よってCPUクーラーにそれなりのコストが必要になるのはデメリットと言っていいですね。

というわけで、個人的な評価は「Sランク」で。6コア化で無理やり性能向上を図った感はあるものの、性能自体はしっかり向上したし値上げも僅かです。十分、高評価できる出来栄えだ。
そしてインテルに競争を迫ったAMDに感謝ですね。AMDがRyzenでインテル勢を圧倒しなければ、今頃Coffee Lakeはいつもどおりの4コア8スレッドだったでしょう…。
以上「【レビュー】「Core i7 8700K」は、史上最強のゲーミングCPUだ。」でした。
i7 8700K搭載マシン

i7 8700Kは熱を出しやすいので、大型空冷ファンが装着済みだ。
ドスパラさんがコストパフォーマンスに優れたCore i7 8700K搭載マシンを発売していたので、実際に入手して試してみました。やはり6コア化によって大幅に伸びたCPU性能は魅力的です。
他のコーヒーレイクも知りたい人へ
4コア化したCore i3は非常に強力。168ドルという低価格で、ほとんどのユーザーにとって満足できる性能を提供可能な稀有の存在です。Ryzen 3はかなり分が悪くなってしまった。
6コア化したCore i5も同様にとても強力だ。182ドルという安さで従来のCore i7に迫る処理性能とゲーミング性能を示しており、コストパフォーマンスはなかなか驚異的な水準に達している。
i5 8400と同様に優秀ではある。しかしコストパフォーマンスは大きく劣っており、中途半端な立ち位置になってしまった。
Coffee Lakeのラインナップや、先代Kaby Lakeから変化した仕様について。ざっと知りたい人はこの記事を。
“今のところX265エンコードという分野は、スレッド数よりはシングルスレッド性能が効きやすい現状がある”
“シングルスレッド性能が効きやすい現状”というのはcpuが全く使いきれてない状態なのでHWBOT x265 というソフトがcpuをうまく使いきれてないだけでは?
x264の1passはcpuが使いきれないことが多いです。
HWBOT x265 というソフトだけでx265/h265の傾向が一般的にそうだと論じるのはどうかとおもいます。
一般的にはx265/h265にはシングルスレッドの性能よりはAVX2とスレッド数のほうが重要になる傾向があります。
確かに、エンコード速度はソフトによって最適化の状態が違うので、一概に論ずるのは強引でしたね。BlenderのようにAMD Ryzenがしっかり機能するソフトもあるし、X265もHandBrakeかTMPGEncかで速度が違ってくる(特にTMPGEncだとAVX2が効きやすい傾向あり)。
とても参考になるコメントありがとうございました。
Ryzen 1700Xと1800XのCPU温度はソフトでの計測値-20℃という話を聞いたんですが、この記事のグラフでは-20℃されてますか?
+20度のOffset分は引いてますよ。
8700K OC 4.8Ghz,4.9Ghz時の消費電力も載せておくと参考になります
海外ではAuto OCで100W増、熱は90℃を超えるようですよ
やっぱ熱関係がネックだなあ
殻割推奨CPUは自作に疎い人には勧めにくい・・・
5.0Ghz以上で常用するなら殻割りしたほうが良いけれど、基本的には定格でも十分な性能なので自作に不慣れな人でも「組み立てて動かす」くらいなら、問題ないと思います。
初心者なので悩んでいるのですが、i7-8700kとi7-7820Xでかなり悩んでいます。。主はゲームなのですが、写真の編集などもちょうちょくします。どちらがいいでしょうか?ゲームだけで観たら明らかにi7-8700kが上回っているのは分かるのですが、やはり8コアという所に惹かれてしまいます…
写真編集で有名な「Adobe Lightroom CC」の場合、「書き出し」に関しては8コアのi7-7820Xが優秀です。しかし、それ以外の作業についてはi7 8700Kの方が優秀な結果が出ています。
参考:https://www.pugetsystems.com/labs/articles/Lightroom-CC-2015-12-CPU-Performance-Core-i7-8700K-i5-8600K-i3-8350K-1056/
i7 7820X(65000円) + X299マザボ(30000円)で合計10万円ほど。i7 8700K(42000円) + Z370(15000円)で合計6万円。3~4万の差額を出してまでi7 7820Xを選ぶメリットがあるかどうかは…個人的には微妙です。
殻割&熊&360mm空冷で5.2GHz常用可能らしいが。
http://blog.livedoor.jp/wisteriear/archives/1068198011.html
5ghz1.27vでocct1時間回ったけどこれって当たり石?
まぁ4コアしか対応してないゲーム(fortniteとか)もありますけどね…