電源ユニット、PCケース、冷却ファンなどのブランドで知られる「Antec」が斬新な製品を発表。それが「Prizm Cooling Matrix」で、120mmのケースファンが2つ合体した「2連ケースファン」という今までにないジャンルのPCパーツです。
この記事の目次
Antec Prizm Cooling Matrixとは

画像:Antec製品ページより
パッと見ただけでは簡易水冷ユニットのようにも見えますが、よく見るとラジエーターもホースも無く、ラジエーターのようなデザインをした「240 mmのケースファン」です。
海外メディアでリリース情報が出た時は「一体コレは何に使えるんだ?」というコメントが多かったが、光る自作PCを組む上でとても重宝するパーツになるのは間違いない。
ただPCケースにケースファンとして取付けるだけでなく、グラフィックボードのファン換装や、簡易水冷ユニットのラジエーターファン換装など。「換装用」としても使えます。
Prizm Cooling Matrixのスペックと仕様
Prizm Cooling Matrix | |
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寸法 | 240 x 130 x 26 mm |
ファン制御 | 4 pin PWM |
ファン軸受 | 流体動圧軸受(FDB)表記は「Hydraulic」 |
ファン回転数 | 500 ~ 1800 rpm |
風量 | 21.7 ~ 77.2 CFM |
静圧 | 0.15 ~ 1.83 mmH2O |
LED | ARGB1680万色に対応 |
寿命 | 45000 時間 |
コネクタ | PWM 4pin / ARGB 3pin |
定格電圧 | ファン:DC12V / LED:DC5V |
動作電圧 | ファン:DC7~13.8V / LED:DC4.5~5.3V |
定格電流 | ファン:0.45A / LED:0.55A |
本体重量 | 0.35 kg |
保証 | 2年 |
ファン軸受は「Hydraulic」と表記されていますが、公式サイトをよく読むと「FDB Technology」を採用と記載があったのでFDBファンで間違いない。高い静音性と耐久性に期待できます。
制御は4 pin PWMでソフト側からファン回転数を細かく調整可能。回転数はスペック上は最低500 rpmで、最大1800 rpmまで対応。性能は2000円クラスの120mmケースファンをやや上回る。

マザーボード側のLED制御に対応
LEDはARGBで最大1680万色を設定可能で、マザーボードメーカー側が用意している各種ユーティリティにも対応。ASUS Aura SyncやASRock PolyChrome Syncなど、だいたい使えます。
メーカーの希望小売価格(MSRP)は不明ですが、Amazon.comでの販売価格は約60ドル。国内販売価格はまだ未定ではあるものの、ザックリ7000円くらいの価格設定になると推測。
1680万色のRGB制御に対応し、1500~2000円クラスの120mmケースファン(FDB軸)が2個搭載されていて60ドルなら、妥当な価格かな。
Prizm Cooling Matrixを開封レビュー

※「Antecちゃん」アクリルキーホルダーは付属しません
今回はAntec Japan(@AntecJapan)さんに本製品を提供して頂いたので、実際にレビューを行います。

パッケージは黄色とブラックのAntec基調のカラーで統一されています。裏面はPrizm Cooling Matrixのスペックや付属品について記載されていた。
付属品をチェック

底面から開ける見開きタイプのパッケージ。本体はしっかりと発泡スチロールに梱包されています。

本体を取り出して下の層を確認すると、付属品がいくつか入っていました。

- 「Prizm Cooling Matrix」本体
- Antec製ファンコントローラー
- 固定用ネジ4本
- 本体用ケーブル
- ファンコン用ケーブル
- GIGABYTE用ケーブル
付属品は全部で5つ。ファンコントローラーは、本体だけでなく他のARGBケースファンも同時に制御できます。本体含めて最大で5つのARGBファンなどを合わせて使える。

真っ黒なケーブルは「本体用」のケーブル。8 pinでPrizm Cooling Matrixと接続し、PWM 4 pinとARGB 3 pinは付属のファンコンやマザーボード※に接続します。
※ PWM 4 pinは「CPU_FAN」「CHA_FAN」へ。ARGB 3 pinは「ADDR_LED」などのLEDヘッダへ接続。

ホワイトと黒色のケーブルは「ファンコン用」です。4 pinをファンコンに接続し、PWM 4 pinとARGB 3 pinをマザーボード※に接続します。ファンコンを使うなら必ず使うことになる。

こちらの小さいケーブルは「FOR GIGABYTE M/B ONLY」とシールが貼ってある通り、このケーブルはGIGABYTEのマザーボード専用です。

AntecのARGBケースファンセットにも付属している「Antecファンコントローラー」。ヘッダーが5つあるので、最大で5つのARGBケースファンを同時に使えます。

SATAコネクタで「給電」を行いますので、必ずSATAケーブルを挿し込むこと。4 pinはマザーボードと接続する時に使います。
Reset 2 pinは再起動ボタンのケーブルを流用して、再起動ボタンを押すだけでLEDモードを切り替えることが可能になります。アナログボタンを押すのが面倒なら、接続して使おう。

左右にはそれぞれ「ARGB 3 pin」と「PWM 4 pin」が5個ずつ用意されています。ここに、ARGBケースファンや今回のPrizm Cooling Matrixを接続するというわけですね。

- ボタン1:LEDの点灯パターンの速度を設定
- ボタン2:LEDの色や点灯パターンを切り替え
ボタン1とボタン2を使うことで、マザーボードによるRGB制御を使わずにRGBの光り方や点灯パターンを調整できます。



なお、ボタン2(MODEボタン)を長押しすると、ファンコントローラーの制御モードを切り替えることも可能です(Antecの中の人に教えてもらった方法)。
初期状態ではファンコントローラーを経由してPrizm Cooling Matrixを接続すると、マザーボード側のソフトを使ってRGBの設定ができません。
しかしボタン2(MODEボタン)の長押しで、ファンコントローラーを経由してもマザーボード側のソフトで、いろいろと設定ができるようになりました。

ASRock Polychrome Syncを使ってRGBパターンの設定をしてみたところ、即反映できます。ファンコンに他のAntec製品を接続して、同時に設定することも可能です。
本体をチェック

Prizm Cooler Matrix本体をじっくりと見ていく。120mmファンは11枚のブレードで構成されています。

排気側はブレードが設置側に接触しないように、しきりがあります。ファンの四隅に埋め込まれているのが「防振ラバー」で、ファンの振動を設置側に伝えない役割を果たす。

斜めから見るとこんな感じ。十分に現代的なデザインです。手前に見えるのが「8 pin」コネクタで、本体用ケーブルを挿し込むところになります。

本体の重量は実測で「355 g」です。けっこう軽いです。

ファン口径はほぼ120 mmでした。ファンと本体を含めると130 mmになります。

横幅は245 mmくらい。

厚みをデジタルノギスで計測すると25.4 mmで、寸法はほぼスペック通り。
冷却性能と騒音を検証

PCケースに取付けるだけでは内容として寂しいので、手元にある280 mm簡易水冷ユニット「NZXT X62」に、Prizm Cooling Matrixを換装して冷却性能や騒音レベルを比較検証します。

本来は240 mmで試すべきなんですが、残念ながら240 mmの簡易水冷ユニットを持ってなかったので仕方なく。でも、この状況で同じくらいの冷却性能を発揮すれば「優秀」だと分かります。

検証マシンはいつも通り「ちもろぐ専用ベンチマークPC」です。Prizm Cooling Matrixが、Core i9 9900K(定格 / Auto電圧)をどこまで静かに冷やせるのかが比較するポイントです。
なお、ファンの回転数プロファイルはCPU温度が75℃を超えると100%回転にしてあります。

負荷テストは無料のレンダリングソフト「Blender 2.79」にBMWプリセットを読み込み、レンダリングを実行するだけ。その間にHWiNFOでCPU温度、ファン回転数を計測する。

ファン回転数はどちらも1800 rpmに迫りました。Prizm Cooling Matrixはスペック通り、ほぼ1800 rpmを維持した。NZXT X62は1850 rpm前後で回転を続けています。

- Prizm Cooling Matrix:最大85 ℃ / 平均64.5 ℃
- NZXT X62:最大85 ℃ / 平均65.5 ℃
肝心の冷却性能は驚くべき結果になっていて、Prizm Cooling Matrixはファン口径が120 mm x2で、NZXT X62は140 mm x2と条件が違うにも関わらず…冷却性能はほぼ同じでした。
ファン回転数もさきほど確認した通り、NZXT X62の方が50 rpmほど高い。つまりフル回転時の冷却性能において、Prizm Cooling Matrixはなかなか優秀ということです。

騒音レベルはラジエーターから30 cmくらい距離を離したデジタル騒音計で計測。
- Prizm Cooling Matrix:51.5 ~ 52.5 dBA
- NZXT X62:51.8 ~ 52.5 dBA
フル回転時の騒音はどちらもほとんど同じです。計測した結果だけでなく、耳で聞いた感じでも音の大きさや質に大差はありません。
LEDをソフトウェア制御する

「ASRock PolyChrome Sync」を使って、Prizm Cooling MatrixのLED機能を検証する。ARGB 3 pinをマザーボードの「ADDR_LED」に挿し込むと、アドレッサブルRGB LEDとして設定可能になります。

まずは普通にブルーカラーに設定。問題なく即時反映されました。

赤色もOK。

光が流れていくような点灯パターンもOKです。

虹色に光り方が変化していくパターンもOK。


一通りASRock PolyChrome Syncに入っている点灯パターンを試しましたが、表示できないパターンや色は皆無です。「マザボ対応」「1680万色対応」は本当です。


まとめ:「光る自作PC」におすすめ

Prizm Cooling Matixはおそらく世界初の「2連ケースファン」という新しいジャンルのPCパーツですが、完成度はとても高く実用性にも問題ないPCパーツでした。
言うまでもなく「自作PCを実用性を損なわずに光らせたい」ユーザーにおすすめです。PCケースにそのまま取付けるのも良し、簡易水冷ユニットのファン換装にもOKです。
「Prizm Cooling Matrix」の良いところ
- 十分に実用的なファンの冷却性能
- マザーボード各社のLED制御に対応
- 4 pin PMWでファン回転数も自由に設定可能
- 45000時間に耐えるFDBファン
- 最大5個に対応するファンコントローラーが付属
まず第1に、自由度の高い設定に対応していることです。ASUS Aura Syncを始めとしたマザーボード各社のLED制御にほぼ対応しているし、4 pin PWMでファン回転数も仕様の範囲内で自由に設定できます。
次に冷却ファンとしての性能が決して「おまけ」扱いではないこと。今回はNZXT X62に付属する140 mmファンと比較したが、Prizm Cooling Matrixは120 mmファンでありながら同格の冷却性能でした。
動作音もほぼ同じで、実用性をほとんど損なっていないのが優秀です。「ちゃんと冷えて」「ちゃんと光る」240 mm冷却ファンを求めているなら、これ以外に適任なパーツはまだ無い。
「Prizm Cooling Matrix」の微妙なとこ
- 日本ではまだ入手が難しい(並行輸入のみ)
- 100%回転時はやや動作音が大きい
日本のAmazonでも一応売っていますが、まだ並行輸入品だけで正規の代理店販売がない。
あと、100%回転時の騒音(51.5 ~ 52.5 dBA)はやや大きめの動作音です。とはいえNZXTやCorsairの付属ファンもだいたい同じくらい大きいので、ほかと比べて劣ってるという話ではない。
1800 rpmでぶん回してもそこそこ静かなファンなんて1個4000円のNoctua NF-A12x25くらいで、その他大勢の120 mmファンは1800 rpmで回せば同じような騒音になってしまいます。

というわけで、以上「Antec Prizm Cooling Matrixをレビュー:新ジャンル「2連ケースファン」を開拓」でした。
Antecの電源ユニット「NeoECO Gold」や「HCG GOLD」はとてもオススメ。製造元がSeasonicで、コストパフォーマンスもなかなか優秀です。
面白いパーツだなぁ。と言うか意外と冷却性能高いのね
280mm版や360mm版が欲しくなる……
NoctuaもNF-A12x25の140mm版はまだかなーと期待して待ってるところです
>出来ますけど、せっかくLED対応なのに無点灯にする意味あります?
自分みたいにライトアップする気が欠片もない人には十分あるんですよ
むしろ、LEDの分を削って安くしてくれと思ってるレベル
パッと見るとグラボですね……
現時点で、アマゾンで18705円。この金額であれば、Noctua NF-F12 industrialPPC-3000を2個買えばよく冷えそうです。
それ並行輸入品(=輸入転売品)ですから、ボッタクリなんですよね。60ドルなので7000円くらいが妥当だと思いますが、まだ日本での正式販売は不明です…。
光らせずに性能重視なら「NF-A12x25 PWM」など、一級品に換装した方がいいのは確かですね。
Antecがグラボ市場に参入したかと思った
全く関係ない話題で申し訳ないんですが、ゲーミングモニタやゲーミングノートの液晶なんかには保護フィルムとかって付けた方がいいんでしょうか?唐突に思ったのでご質問してみます。
私はタッチパネルがついているデバイスはフィルムを貼っています。逆に、テレビなどのタッチパネルがついていないデバイスには貼っていません。
あんまり気にしたことないです。高額なタブレットやスマホなら貼りますけど、モニターに貼ったことはないです。グレアモニタが嫌だから「ノングレア化フィルム」を貼る、というのはアリだと思います。
かっこいいけどファンが片方だけ逝った時が問題ですね…
面白い製品ではあるんだけど実用性を考えたらNoctuaのNF-A12x25を買っちゃうかなー
実効性能派とドレスアップ派で棲み分けできるんだろうけどわたしは前者だな
基盤抜きグラボ
ファンに制限のあるケースに良さそうだなぁ
ただ、コスパは度外視になりそうだけど