コスパがとても良いと評判のAMD製最新CPU「Ryzen」シリーズがだいたい出揃った。エントリークラスの「Ryzen 3」、i5キラー「Ryzen 5」、i7キラー「Ryzen 7」。そしてi9キラーの「Ryzen Threadripper」の全4ブランド。
すべてまとめてスペック(仕様)と、各種ベンチマークスコア(性能)を知りたいという人もいると思うし、ぼくも個人的にあったら便利なのでまとめてみました。
AMD Ryzenシリーズ【スペック表】
CPU | Ryzen 1950X | Ryzen 1920X | Ryzen 1900X | Ryzen 7 1800X | Ryzen 7 1700X | Ryzen 7 1700 | Ryzen 5 1600X | Ryzen 5 1600 | Ryzen 5 1500X | Ryzen 5 1400 | Ryzen 3 1300X | Ryzen 3 1200 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
コア | 16 | 12 | 8 | 8 | 8 | 8 | 6 | 6 | 4 | 4 | 4 | 4 |
スレッド | 32 | 24 | 16 | 16 | 16 | 16 | 12 | 12 | 8 | 8 | 4 | 4 |
ベースクロック | 3.40 Ghz | 3.50 Ghz | 3.80 Ghz | 3.60 Ghz | 3.40 Ghz | 3.00 Ghz | 3.60 Ghz | 3.20 Ghz | 3.50 Ghz | 3.20 Ghz | 3.40 Ghz | 3.10 Ghz |
ブーストクロック | 4.00 Ghz | 4.00 Ghz | 4.00 Ghz | 4.00 Ghz | 3.80 Ghz | 3.70 Ghz | 4.00 Ghz | 3.60 Ghz | 3.70 Ghz | 3.40 Ghz | 3.70 Ghz | 3.40 Ghz |
XFR | +0.20 Ghz | +0.20 Ghz | +0.20 Ghz | +0.10 Ghz | +0.10 Ghz | +0.05 Ghz | +0.10 Ghz | +0.10 Ghz | +0.20 Ghz | +0.05 Ghz | +0.20 Ghz | +0.05 Ghz |
L1 Cache | 1536 KB | 1152 KB | 768 KB | 768 KB | 768 KB | 768 KB | 576 KB | 576 KB | 384 KB | 384 KB | 384 KB | 384 KB |
L2 Cache | 8 MB | 6 MB | 4 MB | 4 MB | 4 MB | 4 MB | 3 MB | 3 MB | 2 MB | 2 MB | 2 MB | 2 MB |
L3 Cache | 32 MB | 32 MB | 32 MB | 16 MB | 16 MB | 16 MB | 16 MB | 16 MB | 16 MB | 8 MB | 8 MB | 8 MB |
PCIe レーン | 64 | 64 | 64 | 24 | 24 | 24 | 24 | 24 | 24 | 24 | 24 | 24 |
対応メモリ | x4 DDR4-2666 | x2 DDR4-2666 | ||||||||||
対応ソケット | AMD TR4(4094pin) | AMD AM4(1331pin) | ||||||||||
チップセット | AMD X399 | AMD B350 / X370 / A320 | ||||||||||
OC可否 | 可能(全モデルが倍率ロックフリー) | |||||||||||
TDP | 180W | 180W | 180W | 95 W | 95 W | 65 W | 95 W | 65 W | 65 W | 65 W | 65 W | 65 W |
Offset | 27 | 27 | 27 | 20 | 20 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
付属ファン | – | Wraith Spire (RGB LED) | – | Wraith Spire | Wraith Spire | Wraith Stealth | Wraith Stealth | Wraith Stealth | ||||
拡張機能 | AES AVX2 FMA3 | AVX2 FMA3 | ||||||||||
MSRP | $ 999 | $ 799 | $ 499 | $ 419 | $ 299 | $ 279 | $ 229 | $ 209 | $ 189 | $ 159 | $ 129 | $ 109 |
インテルの「Core」シリーズと比較するとコア数・スレッド数が多めなのが特徴。その代わりクロック周波数はおとなしい。Core i3の位置づけである「Ryzen 3」のクロック周波数を見てみると、ブースト時でも最大3.90Ghz程度しかなく4.0Ghzにはならない。
その次に特徴的なのが「価格の安さ」です。例えばインテルの3.5~4万円くらいする「Core i7」だと、4コア8スレッドが基本です。それに対して「Ryzen 7」だと3万円台で8コア16スレッドという、化物クラスのスペックを備えている。
「Ryzen 7」が登場する前に8コアを備えていたのは「Core i7 6900K」というエンスー向けCPUでして、国内価格は驚きの10万円超え(平均13万円)だったんですよね。それを、3万円台で提供できるというのが「Ryzen」シリーズ最大の強み。
設計者のジム・ケラーさんはいわゆる「天才」で、一般向けCPUとして世界で初めてクロック周波数1Ghzを超えた「Athlon(K7)」や、Apple iPhoneに採用された「Apple A4」「Apple A5」を設計した人でもある。色々な半導体系の企業をフラフラとしては、必ずぶっ飛んだ「置き土産」をしていくんですよね。
今回は「AMD Ryzen」という約4年ぶりにインテル製CPUとマトモにやりあえるプロセッサを置いていったわけ。ちなみに、Ryzenの設計を終えた後はTeslaにて自動車の自動運転技術の研究をしているそうです。
まぁ、カタログスペックとMSRP(希望小売価格)を見ただけで興奮してしまうのがRyzenなんだが、実際の性能を見ないことにはなんとも言えないよね。過去には「8コアの割にしょぼいな…」という製品が多かったので、今回のRyzenにも同じように思っている人はいるかもしれない。
だが断言できる。Ryzenに限っては「本物」。
AMD Ryzenシリーズ【性能 / ベンチマーク表】
CPU | Passmark | Futuremark | Cinebench | CPU-Z | 7-Zip 圧縮 | 7-Zip 解凍 | Frybench x64 | x264 | Pi (3.14…..) | Rise of Tomb Raider | Watch Dogs 2 | ||||
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Ryzen 1950X | 24967 | 25570 | 166 | 3000 | 2337 | 35090 | 37 | 918 | 1.34 | 51.36 | 20.04 | 136 | 92 | 82 | 58 |
Ryzen 1920X | 0 | 0 | 168 | 2459 | 2328 | 28276 | 38 | 761 | 1.48 | 53.11 | 15.95 | 138 | 92 | 80 | 58 |
Ryzen 1900X | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
Ryzen 7 1800X | 15421 | 18610 | 161 | 1637 | 2229 | 19211 | 32 | 516 | 2.48 | 47.33 | 10.53 | 122 | 92 | 80 | 58 |
Ryzen 7 1700X | 14651 | 17840 | 145 | 1527 | 2181 | 18094 | 29 | 461 | 2.51 | 46.29 | 9.73 | 115 | 91 | 78 | 57 |
Ryzen 7 1700 | 13821 | 16290 | 137 | 1415 | 2048 | 16627 | 27 | 452 | 3.01 | 42.01 | 9.54 | 113 | 92 | 78 | 57 |
Ryzen 5 1600X | 13134 | 16390 | 161 | 1245 | 2228 | 14203 | 27 | 387 | 3.23 | 41.85 | 8.31 | 114 | 92 | 79 | 57 |
Ryzen 5 1600 | 12352 | 15200 | 145 | 1147 | 2091 | 12986 | 24 | 338 | 3.36 | 38.33 | 7.7 | 112 | 91 | 79 | 57 |
Ryzen 5 1500X | 10680 | 11490 | 152 | 799 | 2174 | 9314 | 19 | 254 | 5.04 | 30.07 | 5.79 | 111 | 92 | 78 | 57 |
Ryzen 5 1400 | 8471 | 10590 | 134 | 705 | 1909 | 8283 | 17 | 228 | 5.58 | 26.86 | 5.15 | 107 | 91 | 77 | 55 |
Ryzen 3 1300X | 8257 | 7650 | 141 | 557 | 2173 | 7902 | 15 | 160 | 7.22 | 24.04 | 4.96 | 128 | 92 | 78 | 56 |
Ryzen 3 1200 | 7064 | 6650 | 132 | 482 | 1928 | 6802 | 13 | 137 | 8.27 | 20.51 | 4.18 | 123 | 91 | 77 | 55 |
※Ryzen 1900Xはまだデータがありません。2017年9月には追加する予定。
スコア(数値)だけでなく、視覚的に分かりやすいようにグラフバーもつけてみた。CPUとしての処理性能を測るなら「Cinebench」「Frybench x64」を見ること。CPU本来の性能を極めて忠実にスコア化できるから参考になります。
Passmarkスコアは価格コムにも掲載されていることがある有名なスコア。単体でもそれなりに参考にはなるが、Futuremarkスコアとあわせて見たほうがより客観的。CPU-Zのスコアは分かりやすいけれど、シングルスコアがやや盛られ気味なので注意。
ゲーミング性能が気になる場合は一番右にあるスコアを見てください。GTX 1080を使った場合のフレームレートを載せているので、ボトルネック具合がひとめで分かる。クロック周波数と正の相関性があるのも分かると思います。
さて、AMD Ryzenのベンチマークスコアを全体的に見ると、「すごい」の一言。
- Ryzen前:Cinebenchで1000点オーバーを出すなら、3.5~3.8万円の「i7 7700K」を買ってオーバークロックする必要あり
- Ryzen後:1000点オーバーなら、24000円の「Ryzen 5 1600」を買って定格でOK
衝撃的。今までのCPUを考えると、Ryzenは「破壊的コストパフォーマンス」と言える。
さらに「AMD Ryzen」のことを知りたくなったら
知りたいCPU名(例:Ryzen 5 1600X)で検索するのもいいし、ちもろぐに投稿されているデータ系の記事もおすすめです。以下に、いくつかまとめておきますね。
AMD Ryzen 1950X

さきほどの「AMD Ryzen【ベンチマーク表】」で、頂点に君臨している「Ryzen 1950X」についてはこの記事を。結論だけ言うと、1000ドル以下のCPUでは2017年8月時点で「史上最強」の性能です。
AMD Ryzen 7 1700

3万円から買える8コア16スレッドの超コスパCPU「Ryzen 7 1700」についてはこの記事を。ライバルは当然「Core i7 7700K」になるが、どちらを選ぶべきか悩んでいる人に参考になると思います。結論、そこまでフレームレートにこだわらないなら「Ryzen 7強すぎ」だ。
Ryzen 5 シリーズ

「Core i5 キラー」と評している「Ryzen 5」についてまとめた記事。ぼくはRyzen 5 1400を愛用していて、コストパフォーマンス神すぎなCPUだと思います。たしかにゲーミング性能はCore i5に劣りますが、それを除けば概ね「強い」し、「コスパ神」だ。
Ryzen 3 シリーズ

エントリークラス「Ryzen 3」について、包括的に評価した記事。たしかにRyzen 3は高性能だけれど、ライバルの「Pentium G4560」や「Core i3 7XXX」とくらべると魅力に欠ける部分が多い…という結論。
AMD Ryzenで「自作PC」

素直にRyzenすごいと思ってるので、しっかりとジムケラーさんに「お布施」してきました。159ドル(18000円)でCinebenchが700点オーバーできるCPUなんて、現時点ではRyzenだけだからな。
まとめ:AMD Ryzenは宇宙人の置き土産

ぼくは前世代の製品から一気に性能が上がった時に「宇宙人が訪問したらしい」とか「宇宙人の置き土産」だとか表現してます。去年(2016年)はNVIDIAのGeForce 10シリーズに「NVIDIAに宇宙人が社会見学に来たらしい。」と言いふらしていました。
AMDは4年ほどパッとしない時期が続きましたが、Ryzenの登場で一気に風向きが変わった。今まではインテルCPUの中でコスパ良好品を探していたが、Ryzenの登場で苦労せずとも簡単にコスパ良好品が見つかるようになったのだ。
同価格で比較すれば、ほとんどの場合でAMD Ryzenが勝てる今の状況。ゲーミング派はインテルのCore i5 / i7で良いと思いますが、それ以外の性能や、驚異のコストパフォーマンスと優れたマルチタスク性能を求めているならAMD一択だろう…。
2017年はAMDに訪問してきた宇宙人(ジムケラーさん)のおかげで、CPU界が一気に前進した年になった。Core i7を駆逐する「Ryzen 7」に、Core i5を駆逐する「Ryzen 5」。そしてCore i9やXeon E5を駆逐しようとしている「Ryzen Threadripper」。
インテルの収益に占める割合がとても大きいサーバー市場でも、「AMD EPYC」を投入することで「Xeon Gold / Xeon Platinum」を迎え撃つ用意だ。
今後のAMD、今後のインテル
AMD Ryzenはインテルにとっては「不意打ち」のようなものだったかもしれない。ハッタリをかましているだけだ、と思っていたら、本当に事前情報どおりのぶっ飛んだ性能だったんだから。
インテルは殿様商売でマイペースにCPUをちまちまと売っていく予定だったろうが、AMD Ryzenがすごすぎたので軌道修正に忙しい。「Core i9」も突然登場したが、同じ価格で勝負すればAMDに勝てないので虚しさが漂う。
さて、今後どうなっていくか。まずは2017年8月あたりに登場するらしい第8世代「Coffee Lake」で戦況がどう変化するかだと思う。4コア搭載「Core i3」や、6コア搭載の「Core i5 / i7」が登場する予定だから、それなりに競争力はあるだろう。
で、来年(2018年)はインテルより第9世代の「Cannonlake」(10nmプロセス)、AMDからはRyzenの続編「Zen 2」(7nmプロセス)が登場予定。まだまだ激戦は続きそうなので、ユーザー(消費者)としては嬉しい限り。
以上「よく分かる「AMD Ryzen」シリーズ【スペック/性能/ベンチマーク】」でした。
Ryzen TR 1900X 69500円(税別)で入荷です
レポート待ってますー
Ryzen 5 1500X のTDPは95Wじゃなくて65Wですよー
ありがとうございますー、修正しました。
(あとはメモリの相性が会えばなあ…)