Intel Optane SSD 900Pの性能は史上最速だが、まだ革新的過ぎた

Intelはついに、革新的な不揮発性メモリ技術である「3D-Xpoint」を用いたSSDを一般向けに投入した。それが「Intel Optane SSD 900P」で、今のところ280GBと480GBがあり、280GBの方は詳細が明らかになっている。

というわけで、この記事では900Pの革新的過ぎた…話について書いてみます。

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現状のSSDの課題

Samsung 950 PROや、Crucial MX300などではNANDフラッシュという技術が使用されている。HDDを遥かに超える読書速度を発揮できるのが強みだが、以前としてランダム速度はボトルネックになっている。

要するに、理論上は500MB/sの速度を出せたとしても転送するファイルが非常に細々とした状態だと理論通りの速度を出せないってこと。1GBのファイルを1個送るより、10KBのファイルを1000万個送るほうがずっと遅いし今のSSDには苦しい…。

一般ユーザーにはそれほど大きな問題ではないが、エンタープライズ市場ではこのボトルネックはそれなりに課題になっていたらしい。それを解決するべく生まれたのが「3D Xpoint」で、NANDフラッシュメモリに替わる次世代の不揮発性メモリ技術のひとつです。

どんな時に既存のSSDでは問題なのか?

ワークステーションではDRAMメモリに収まりきらない莫大なデータを読み込んで処理をさせる。この際、細々とした断片的なデータを大量に読み込むわけだが、この時に既存のSSDではランダム速度がボトルネックになっていたわけですね。

今回の3D Xpoint技術を用いて作られたOptane SSDは、Samsung 960 PROが11億個の粒子を使ったレンダリングに17.4時間かかったのに対して、Optane SSD 900Pはわずか6.3時間と約2.75倍も高速化している。

自作歴16台のやかもち
と…いうことは、Illustratorでマップデータを作る時に重宝しそうかな。

3D Xpoint技術の課題は「歩留まりの悪さ」にあり、当初はエンタープライズ向けの「Optane SSD P4800X」しか発売されていなかった。しかし2017年10月からついに一般向けの「Optane SSD 900P」が登場。大幅に買いやすい価格設定になった。

Intel Optane SSD 900Pの仕様

SSDIntel Optane SSD 900P 280GBIntel SSD 750 400GB
リソグラフィ3D Xpoint20nm
容量280GB400GB
シーケンシャルリード2500 MB/s2200 MB/s
シーケンシャルライト2000 MB/s900 MB/s
最大ランダムリード @8GB550000 IOPS430000 IOPS
最大ランダムリード @100%550000 IOPS
最大ランダムライト @8GB500000 IOPS230000 IOPS
最大ランダムライト @100%500000 IOPS
レイテンシ(リード)10 us20 us
レイテンシ(ライト)10 us20 us
消費電力(動作時)14W12W
消費電力(アイドル)5W4W
動作温度0 ~ 70度0 ~ 55度
TBW5.11 PB70GB /1日
MTBF160万時間120万時間
インターフェイスPCIe NVMe 3.0 x4
保証期間5年5年
MSRP$389$899

従来のIntel製ハイエンドSSD「Intel SSD 750」を比較に入れておいた。カタログスペック上は全てにおいて進化しており、容量あたりコストもほぼ半額にまで向上しています。

特に脅威的なのがSSDの寿命を示す分かりやすい指標のひとつ「TBW」の異質な水準である。大抵のSSDは250GBモデルならTBWは「75TB」程度だが、900Pはなんと「約5232TB」もある。

普通に使っている分にはどう考えても自分が生きている間に使い切れるかどうか…分からないような寿命だが、幸い(?)メモリコントローラや基盤までその寿命に付き合ってられるわけではない。

ちなみにインテルの保証期間は5年です。

Optane SSD 900Pは史上最速のSSD

やかもち
見出しに答えが書いている気が…。

半導体業界の雄「インテル」とNANDフラッシュメモリーにおけるトップ企業の一つ「Micron」が共同で生み出した3D Xpointはどれほどのものなのか。SSDの基本性能を示す…

  1. 4KB ランダムリード速度(読み込み)
  2. 4KB ランダムライト速度(書き込み)
  3. シーケンシャルリード速度
  4. シーケンシャルライト速度
  5. 混合テスト

以上の5つの指標で確認していきます。参照するデータベースは米AnandTechより。

4KB ランダムリード速度

Queue Depthは「キューの深さ」と訳される。細かい説明を省いてざっくりと説明すると、SSDの読み書きをする時に何パターン使っているかを示す指標。

キューの深さが「1」の場合は、1パターンしか処理に使えないためSSDの本来の性能がかなり浮かび上がってきやすい。キューの深さが深いほど(使用するパターンが多いほど)読み書き速度は向上します。

ただし、Queue Depth = 32以上になると性能に与える影響はほとんど無くなります。

4KB ランダムリード速度 / Queue Depth = 1 / (MB/s)

  • Intel Optane Memory 32GB
    508.5
  • Intel Optane SSD 900P 280GB
    417.5
  • Samsung 960 PRO 2TB
    59.8
  • Samsung 960 EVO 250GB
    48.7
  • Intel SSD 750 400GB
    43.7
  • Samsung 850 PRO 256GB
    38.8

3D Xpoint / NVMeTLC NAND / NVMeMLC NAND / SATA

というわけで、最初に4KBずつのランダムリード速度を「キューの深さ:1」(QD=1)で試したところ。見ての通り、既存のNAND技術で作られたSamsung 850 EVOなどは、Optaneに対して全く追いついていません。

HDDをキャッシュ化してSSD並に爆速化させるIntel Optane Memoryの記録を破ることはできなかったが、既存のSSDは完全に駆逐したので十分だろう。それにIntel & Micron以外のメーカーは、まだ3D Xpointの代替技術を保有してすらいないのだ。

つまり、この分野に関して2社は完全に独占状態ということ…恐ろしい技術力ですね。

4KB ランダムリード速度 / QD = 1~4の平均値 / (MB/s)

  • Intel Optane Memory 32GB
    832.7
  • Intel Optane SSD 900P 280GB
    712.5
  • Samsung 960 PRO 2TB
    123.7
  • Samsung 960 EVO 250GB
    97.7
  • Intel SSD 750 400GB
    95.1
  • Samsung 850 PRO 256GB
    87.2

次はキューの深さを1~4で計測し、その平均値を出したもの。処理に使えるパターン数が増えるため、処理速度は大幅に向上していますね。Optane SSD 900Pは依然として7~9倍も高速です。

それにしても、既存のNAND技術では規格をSATAから更に高速な NVMeに切り替えても、このタマネギのみじん切りのような細々とした4KBサイズの処理はほとんど改善できていないんですね…。

4KB ランダムライト速度

次は4KBサイズごとの書き込み速度を確かめる。

4KB ランダムライト速度 / Queue Depth = 1 / (MB/s)

  • Intel Optane Memory 32GB
    177.0
  • Intel Optane SSD 900P 280GB
    400.0
  • Samsung 960 PRO 2TB
    277.2
  • Samsung 960 EVO 250GB
    243.7
  • Intel SSD 750 400GB
    265.4
  • Samsung 850 PRO 256GB
    146.7

3D Xpoint / NVMeTLC NAND / NVMeMLC NAND / SATA

キューの深さ「1」だとこんな感じで、やはりOptane SSD 900Pが最速の結果を叩き出した。使われているNANDの技術によって、明確に性能差が出ています。やはりMLC(2ビットセル)は遅く、TLCはそれより高速で、3D Xpointは史上最速だ。

4KB ランダムライト速度 / QD = 1~4の平均値 / (MB/s)

  • Intel Optane Memory 32GB
    238.3
  • Intel Optane SSD 900P 280GB
    744.0
  • Samsung 960 PRO 2TB
    686.7
  • Samsung 960 EVO 250GB
    383.4
  • Intel SSD 750 400GB
    614.1
  • Samsung 850 PRO 256GB
    238.7

キューの深さを1~4にして、その平均値を取ると更に書き込み速度は向上する。しかしこれでも既存のTLC NAND勢はまったくOptane SSD 900Pに追いつけません…。

128KB シーケンシャルリード速度

次は4KBサイズから64倍大きい128KBサイズで読み書き速度が計測された。一般的に多くのユーザーがSSDを選ぶ際に、このシーケンシャル速度はよく見られている指標だと思います。

128KB シーケンシャルリード速度 / Queue Depth = 1 / (MB/s)

  • Intel Optane Memory 32GB
    1170.6
  • Intel Optane SSD 900P 280GB
    2038.1
  • Samsung 960 PRO 2TB
    2139.0
  • Samsung 960 EVO 250GB
    2000.0
  • Intel SSD 750 400GB
    1330.4
  • Samsung 850 PRO 256GB
    422.6

3D Xpoint / NVMeTLC NAND / NVMeMLC NAND / SATA

シーケンシャルリード速度は以上の通り。Optane SSDは2000MB/s超えと、非常に高速だがSamsung 960 Pro(MLC V-NAND / NVMe規格)に最速の座は阻まれました。サムスンのNVMeって、単純なスピードだけは半端ないな…。

128KB シーケンシャルリード速度 / QD = 1~4の平均値 / (MB/s)

  • Intel Optane Memory 32GB
    1235.8
  • Intel Optane SSD 900P 280GB
    2157.7
  • Samsung 960 PRO 2TB
    1532.5
  • Samsung 960 EVO 250GB
    991.1
  • Intel SSD 750 400GB
    1136.2
  • Samsung 850 PRO 256GB
    487.9

しかしキューの深さを1~4にして平均値を取ると状況は一変し、3D XpointのOptane SSD 900Pが圧倒的に最速でした。

128KB シーケンシャルライト速度

書き込み速度であるシーケンシャルライトも当然見ておきます。

128KB シーケンシャルライト速度 / Queue Depth = 1 / (MB/s)

  • Intel Optane Memory 32GB
    250.6
  • Intel Optane SSD 900P 280GB
    1777.1
  • Samsung 960 PRO 2TB
    1976.0
  • Samsung 960 EVO 250GB
    1829.3
  • Intel SSD 750 400GB
    1186.0
  • Samsung 850 PRO 256GB
    402.8

3D Xpoint / NVMeTLC NAND / NVMeMLC NAND / SATA

読み込み速度(シーケンシャルリード)と同様、やはりSamsungのNVMe SSDたちが猛威を振るい、Optane SSD 900Pは今ひとつ追いつけていない。それでも十分にトップクラスの速度だと思いますが。

128KB シーケンシャルライト速度 / QD = 1~4の平均値 / (MB/s)

  • Intel Optane Memory 32GB
    267.0
  • Intel Optane SSD 900P 280GB
    1381.0
  • Samsung 960 PRO 2TB
    1833.0
  • Samsung 960 EVO 250GB
    413.7
  • Intel SSD 750 400GB
    433.5
  • Samsung 850 PRO 256GB
    458.5

キューの深さ1~4の平均値でも、SamsungのNVMe SSDとりわけ大容量モデルには敵いませんでした。

よりリアルなベンチマーク:混合テスト

SSDはテストする環境(4KB、128KBなど)によって実際に出せる読み書き速度が大きく変化することがわかった。というわけで、32GBのデータを10%刻みで読み書きさせる混合テストを用いて、実運用におけるパフォーマンスを数値化する。

要するに、PC上で実行されるアプリの処理やファイルの書き込みは、常に同じ大きさや状態で実行されるわけではない。だから混合テストで実際の使用上のパフォーマンスを再現しておこう…というアプローチです。

4KB 混合テスト / QD = 4 / Size = 64GB / IO性能(MB/s)

  • Intel Optane Memory 32GB
    498.1
  • Intel Optane SSD 900P 280GB
    1266.7
  • Samsung 960 PRO 2TB
    406.0
  • Samsung 960 EVO 250GB
    146.4
  • Intel SSD 750 400GB
    237.9
  • Samsung 850 PRO 256GB
    189.0

3D Xpoint / NVMeTLC NAND / NVMeMLC NAND / SATA

キューの深さは4、サイズは4KBで混合テストを実行させるこんな感じ。見ての通りOptane SSD 900PのIO性能(読み書き性能)は史上最速の水準に達している。

Samsung 960 Pro 2TBとOptane SSD 900P 280GBで、約3.11倍はスピードが違う。インテルが行った11億個の粒子を用いたレンダリングで2.75倍の差がついたのも納得ですね。

128KB 混合テスト / QD = 1 / Size = 64GB / IO性能(MB/s)

  • Intel Optane Memory 32GB
    451.6
  • Intel Optane SSD 900P 280GB
    1379.9
  • Samsung 960 PRO 2TB
    978.9
  • Samsung 960 EVO 250GB
    356.0
  • Intel SSD 750 400GB
    549.5
  • Samsung 850 PRO 256GB
    346.7

最後はキューの深さを1にし、サイズは大きめの128KBで混合テストを実行。細かいみじん切りから、少し太めの短冊切りに切り替わったことで、4KBでは苦戦していたSSDも大幅にパフォーマンスが改善しました。

それでもOptane SSD 900Pの最速の地位は微動だにせずですが。

結論:Optane SSD 900Pはコンテンツクリエイター向け

Intel Optane SSD P900はシーケンシャル速度ではSamsung製NVMeに一歩引けを取りましたが、4KBサイズのみじん切りファイルを転送などでは過去に例を見ない圧巻の速度を見せつけた。

ただ、ほとんどの人は膨大な数のファイルを頻繁に読み込んだり…書き込んだり…するような、超ハードな使い方はしないでしょう。

ぼく自身も、半月に1回ほどAdobe Illustratorに20000~30000枚(1枚あたり1~2KB)程度のファイルを詰め込むハードな使い方をしますが、普通のSATA SSDで間に合っています。

それを更に超えて10万枚、100万枚。あるいはインテルがベンチマークで示していた11億個のパーティクルを使った超高負荷なレンダリングでもする予定がないなら、コストに見合ったSSDでは無いだろう。

現状、ほとんどのシーンにおいてSATA規格のSSDで十分なパフォーマンスを提供できているし、SATAより3~4倍も速いNVMe規格のSSDですら、性能差を体感できる使用場面ってあまり見ない。

  1. 本職、プロのコンテンツクリエイター
  2. 理屈は良いんだ。とにかく史上最速のSSDを自分のパソコンに搭載したいんだ!!

上記のどちらかに当てはまる人でなければ、大抵の場合はコストパフォーマンスの悪い買い物になりますね。

280GBモデルのMSRPは389ドル。国内では5万円前後と非常に高価です。SATA SSDなら5万円も出せば1000GB + 500GBくらいは買えてしまう。

480GBモデルのMSRPは599ドルで、国内価格は8万円前後。こちらもとても高価で、ちょっと一般人が手を出せる値段ではない。それでも375GBが30万円もするようなP4800よりは遥かに安くなったといえるけれど。

やかもち
これなら1TB SSD買って、そこにゲーム入れたほうが幸せそう。

というわけで、3D Xpointで製造されたSSDはまだまだ一般人がストレージとして常用するにはコスパが悪いということだ。もちろん、革新的なハードウェアなのは間違いない。

歩留まりの悪さが今後改善されて、今のNVMe SSDと同じくらいの価格で買えるようになれば中々脅威的な存在になると思います。

以上「Intel Optane SSD 900Pの性能は史上最速だが、まだ革新的過ぎた」という話でした。

Optane Memoryの方が良さげ

なお、個人的には3D Xpointで製造されたハードウェアとしてはOptane Memoryの方が面白そうな気がしています。

大容量のHDDをSATA SSDよりも高速化できるので、実質的には3万円するような1TB SSDを1.5~1.6万円ほど手にするのも同然の技術です(容量が大きいほど、SSDに対してお得感が大きい)。

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6 件のコメント

  • こんにちは!!いつも楽しく見ています。

    丁度 Intel Optane SSD 900P が気になってましたので
    とても参考になりました。
    ゲーム用途で使う分には、まだまだコスパ悪いですね。

    また、ブログ主さんのおススメSSDはありますか?
    サムスンの960 EVO か PRO を買おうと思ってます。

    • 「960 PRO」は、書き込み上限が多めの「MLC」というNANDが使われていますが、普通に運用していく分には「TLC」でも十分なので「960 EVO」で良いと思います。
      ちなみに960 EVOは、実際に自作ワークステーションで採用していますが、今のところ問題なく稼働していますし、速度も十分すぎるものです。
      ただ、サムスンの960シリーズはエアフロー管理がなっていない環境だと熱くなりやすいため、SSDに対して風を当てられない状況なら…

      このようなM.2 SSD専用の冷却ボードを使うと、より安全な運用が可能です。ぼくが使った960 EVOは、高負荷時に60度まで熱くなりますが、冷却ボード化してからは30度ぐらいまで抑えられています。

      しかし、実際のところ…熱を抑えるために追加コストを払うべきなのかどうかは悩ましいところ。4000円ほど掛けて60度→30度まで熱を抑えたわけですが、性能への影響は誤差レベルだったんですよね…orz

      アイネックス M.2 SSD用ヒートシンク HM-21

      だから500円くらいのヒートシンクで十分かも。4000円は割に合わないです(´・ω・`)

      • なるほど!!冷却用のパーツもあるんですね。
        はじめて知りました。試してみようと思います。

  • SSD業界もなんかいろいろ忙しいですねえ。

    前記事のコメントでチラっと言いましたが、いま使ってる自作が2009年建造のCore2最終型の古いやつで、いまでもSSDとあまり縁がないもので(半年前に買ったサブ機モバイルパソコンにSATAのSSDが入ってるくらい)しばらくの間ここで勉強させてもらいます。

    ってことで、SSDの知識が薄いのと、NVMeのM.2SSDの発熱が怖いのとで、次世代自作PCは2.5インチSATA搭載でしばらくやり過ごします(弱気

    • ぼくはコーヒー自作悩んでいるところですが、Amazonのサイバーマンデーセール次第では、Coffee Lake Refreshを待たずに自作に踏み切るつもりです。やっぱりパーツがすぐそばで鎮座して待っていると自作欲を抑えられないですね。

      NVMeの発熱はSSD本体にまったく風が当たらない状態でひどくなりやすいですが、性能への影響はあまり無い。ただ、その発熱が他のパーツの温度に影響を与える可能性はあるので、気になるなら500~1000円くらいのヒートシンクをつければいいかと。

      ちなみにぼくは次の自作でOptane Memoryを使ってみる予定。2TB HDD + Optane Memory = 合計16000円ほどでシステムドライブを構築してみます(2TB SSDはまだまだ高すぎるので…)。

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