「Ryzen 3」の強みと弱み、果たしてCore i3を駆逐できるか?

Ryzenが初登場して約4ヶ月も経ってようやく市場に投下された「Ryzen 3」。インテルがエントリー向け市場に投入している「Core i3」を駆逐するのが主な目的だが、果たしてRyzen 3はCore i3を打倒できるのか。

各種データを見ていくと、Ryzen 3は強みと弱みがハッキリしていることが分かるので、簡単に解説していく。

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「Ryzen 3」とは?

世代Zen
シリーズRyzen 3
CPU12001300X
プロセス14nm
コア数4
スレッド数4
ベースクロック3.1 Ghz3.5 Ghz
ターボクロック3.4 Ghz3.7 Ghz
L2 Cache2 MB
L3 Cache8 MB
OC可能
ソケットAM4
TDP65W
希望小売価格$109$129

「Ryzen 3」はAMD Ryzenシリーズのエントリーモデルで、2モデル用意されています。AMD側の希望小売価格は109~129ドルと非常に安く、明らかに価格帯はCore i3の下位モデルを意識しているのが分かる。

特徴的なのはやはり、どのRyzen 3も4コア搭載ということ。HT(ハイパースレッディング)は無効化されているので4スレッドだが、100ドル台でクアッドコアCPUが買えるのは普通にすごいことだと思う。

ライバルのCore i3は、2コア4スレッドが基本。そして、CPUの性能(特にマルチスレッド性能)は、HTで擬似的に作ったコア数よりも実際に搭載されているコア数の方が、パフォーマンスに与える影響は大きい。

つまり、同じ価格のRyzen 3とCore i3をベンチマークさせれば、間違いなくRyzen 3が勝つということ(あとでデータも見ます)。Ryzen 5 / 7から変わらず、Ryzen 3もやっぱり「コスパ最強CPU」なわけですが…。

実は相手にしている「Core i3」がちょっと厄介なやつでして、Ryzen 5やRyzen 7ほどには成功しない可能性がある…。Ryzen 3は今までのRyzenよりも、ずっと強みと弱みがハッキリしているんですよ。

Ryzen 3の「強み」:Core i3を超えるマルチスレッド性能

結論から言って、CPU全体の処理性能(マルチスレッド性能)は、その安い価格からは想像もできないような水準に達していること。これがRyzen 3最大の強みだと言って良いと思います。

  • 109~129ドルという安価さ
  • 1万円台で買える、唯一のクアッドコアCPU
  • 1万円台で買えるCPUでは、最強のマルチスレッド性能

ということだ。純粋にCPUとしての性能は十分にインテルの「Core i3」と戦っていけるし、勝てる水準だと思う。ここでCinebench R15(マルチスレッド)のスコアも見てみよう。

マルチコア性能(Cinebench R15)スコア
Ryzen 7 1800X

1655

Ryzen 5 1600X

1247

Core i7 7700K

1003

Ryzen 5 1500X

814

Core i5 7600K

717

Ryzen 5 1400

707

Ryzen 3 1300X

557

Ryzen 3 1200

484

Core i3 7350K

457

Core i3 7100

432

Ryzenシリーズ全体に言えることは、やっぱり搭載コア数が多いために、CPU全体の性能はものすごく優秀。例えば「Ryzen 3 1300X」のマルチスコアは557 cbと記録されているが、これは2~3世代前のCore i5と互角の性能なんですよ。

3年ほど前に人気だった「Core i5 4690K」は、4コア4スレッドCPUで、Cinebenchのマルチスコアはだいたい550 cb前後です。価格は269ドルくらいですから、半額で同じマルチコア性能を得られるという意味だ。

  • 2~3世代前の「Core i5」と同じマルチコア性能(価格は269ドル)
  • なのに「Ryzen 3」の価格はその半額(109~129ドル)

もちろん、最新のCore i3に対しても圧倒的な性能です。

CPUマルチスコア価格コスパ度
Ryzen 3 1300X557$12923.16
Ryzen 3 1200484$10922.52
Core i3 7350K457$16836.76

スコア1点あたりの価格「コスパ度」を見てみると、Ryzen 3はCore i3に対して40%もコストパフォーマンスが良い

結論

「Ryzen 3」は最新世代も含めた、すべてのCore i3よりも優れた性能を持つことが分かった。100ドル台のCPUとしては、おそらく過去最強の性能※になるだろう。処理性能の高い安価なCPUは…

  • 小規模のサーバー用PC
  • 通貨マイニング用のPC

このような用途で役立つかと。例えばマインクラフトのサーバーを建てたいといった場合に活躍する。そこまでCPUパワーは要らないけれど、少ない予算内で可能な限り性能を追求したい場合にRyzen 3は重宝するだろう。

5~6万円の低予算で、動画のエンコードやデータマイニング(Excelで大量のデータを統計解析に掛けたり)がそれなりにこなせるパソコンを作りたい。こういったニーズにRyzen 3は応えられるということです。

※100ドル台だと、ギリギリ「Ryzen 5 1400」も対象内ですが、今は置いておきます。

Ryzen 3の「弱み」:シングル性能と内臓GPUの不在

搭載コア数が多いために、CPU全体の性能はものすごく優秀。例えば「Ryzen 3 1300X」のマルチスコアは557 cbと記録されているが…。

「強み」について、CPU全体の性能はすごいと評価しました。では、全体ではなくCPUの一部一部を見ていくとどうなのか。そう、Ryzen 3の弱みはここにあるんですよね。さっそくシングルコア性能を見てみよう。

シングルコア性能(Cinebench R15)スコア
Core i7 7700K

196

Core i5 7600K

184

Core i3 7350K

179

Core i3 7100

166

Ryzen 5 1600X

158

Ryzen 7 1800X

158

Ryzen 3 1300X

147

Ryzen 5 1500X

146

Ryzen 5 1400

135

Ryzen 3 1200

131

Ryzen 3は、基本的にはRyzen 5のHTを切ったバージョンと言えるCPUなので、シングルコア性能はRyzen 5と非常に似ています。そのシングルコア性能はお世辞にも高いとは言えず、Core i3に20~30%も引き離されている。

この低いシングルコア性能が何を意味するのか。簡単にまとめると

  • CPUのベンチマークの割には振るわない「ゲーミング性能」
  • 体感上のパフォーマンスやレスポンスが思ったよりも遅くなる可能性

この2つの欠点を呼び出してしまうんですよ。言うよりはデータ、ということでゲーミング性能を確認してみよう。

Rise of the Tomb Raider (DX12)
Core i7 7700K

126.8

Core i5 7600K

124.1

Ryzen 7 1800X

122.9

Ryzen 5 1600X

116.3

Core i3 7350K

105.3

Core i3 7100

101.8

Ryzen 5 1400

97.4

Ryzen 3 1300X

95.2

Ryzen 3 1200

82.3

「GTX 1080 Ti」を使って、DirectX12環境のRise of the Tomb Raiderをベンチマーク。表のスコアは平均フレームレートです。見ての通り、シングルコア性能が低いためにグラボの処理性能に追いつけていない。

Core i3は「2コア」CPUでありながら、シングルコア性能が意外と高いために、ゲーミング性能は思っている以上に頑張れる傾向。それに対して「4コア」のRyzen 3は中々厳しい展開だ。

Ryzenはゲーミング性能がイマイチ振るわないことで知られているが、その理由の一番が「シングルコア性能が低い」ことです。確かに最適化不足もあるとは思いますが、Cinebenchのスコアを見る限りはシングル性能が原因…。

Grand Theft Auto V
Core i7 7700K129.5

Core i5 7600K126.0

Ryzen 7 1800X112.7

Ryzen 5 1600X107.1

Core i3 7350K103.0

Core i3 710098.4

Ryzen 3 1300X95.0

Ryzen 3 120090.0

Ryzen 5 140089.7

別のタイトルも見てみる。Grand Theft Auto Vでも、やっぱり同じ傾向が確認できた。

ゲーミング性能の悪さはそこまで問題ではない

シングルコア性能の低さに起因しているので、オーバークロックをすることで改善は出来ます。Ryzen 3 1200を定格3.10 Ghzから3.80 Ghzまでオーバークロックした場合、概ね10%はフレームレートが改善する。

オーバークロックをすることで、とりあえずはCore i3並のゲーミング性能が手に入れられる、ということだ。しかも、相手のCore i3はオーバークロックが出来ません。

さらに言えば、ボトルネックはCPUとGPUの性能差が大きければ大きいほど発生する現象です。つまり使っているグラボが「GT 1030」や「RX 550」のような、エントリークラスなら全く問題にならないことも忘れずに。

  • 定格状態ではCore i3にかなり劣るゲーミング性能
  • オーバークロックすればCore i3と互角のゲーミング性能
  • しかもCore i3はオーバークロック不可能(倍率が制限)
  • 低性能のグラフィックボードなら問題なし

ということで、ここまでの評価を見る限りでは「Core i3はRyzen 3に対してほぼ負けて」しまっている。さて…真の「弱み」はここからだ。

内蔵グラフィックスの不在

「Ryzen 3」は、Core i3と戦う身としてもっとも厄介な問題を抱えている。それが内蔵グラフィックスの不在です。この価格帯のCPUは、できれば安く、少ない構成でPCを組みたいと思っている層が多いはず。

なるべく安くPCを作りたい場合、使うパーツを減らすのが手っ取り早いんですよ。だから、内蔵グラフィックスが入っているCPUは、別にグラボを買わなくていいというメリットを持つために重宝される。

今回争った「Core i3 7350K」には、「Intel HD Graphics 630」という内蔵グラフィックスが搭載されている。これが意外と仕事の出来る内蔵GPUだったりする。

GPUPassmarkFutureMark
Intel HD 6301218890
NVIDIA GT 7309221170

「GT 730」は、低予算PCに人気のあるグラボです。価格は5000~6000円ほど。内蔵型の「Intel HD 630」と、かなり似た性能を持っているんですよ。

グラボ不要の低予算ユーザーから見ると
Core i3CPU代のみ
Ryzen 3CPU + グラボ代

つまり、別途グラボを買わなければ使えないRyzen 3は、この価格分だけCore i3に対して不利になってしまう。CPUとグラボの合計金額が、結局1万円後半になるため、圧倒的にコスパが良いはずが、実はあまり良くないという結末に…。

試しに価格コムの最安値を使ってシミュレーションしてみると。

CPUCPU価格GPUGPU価格合計
Core i3 7350K17969HD 63017969
Core i3 710013497HD 63013497
Ryzen 3 1300X17820GT 730560423424
Ryzen 3 120014904GT 710410319007

こんな感じで、なんだかんだ性能の分だけ価格も上がってしまいました。…みたいな値段になってしまう。

結論

シングルコア性能が最新世代(Kabylake)のインテルCPUと比較すると、20~30%劣っているため、1コアあたりの性能に影響を受けやすい「ゲーミング性能」では優位性を見いだせない。

まぁ、それは別に大した問題ではないと途中に書いた通りだ。もっとも問題なのは、CPUに内蔵グラフィックスが無いこと。この1万円台という価格帯では、CPUだけで動いて欲しいユーザーも多い。

Office系のソフトで事務処理をしたり、Chromeで大量のタブを開いてブラウジングしたり、Excelに為替レートなどのデータを大量に噛ませたり、動画や音楽のエンコードをしたり…。

こういった用途をこなすPCに、グラフィックボードは必要ないことが多い。Ryzen 3はそういう用途に強いため、低予算PCでかなり重宝されそうだが、内蔵GPUが無いために別途グラボを買わなければいけない。という点がデメリット。

国内のRyzen 3の価格がどこまで落ち着くのかにもよるが、今のところは「CPU本体 + ローエンドGPU」の価格が「Core i3」と互角または上回るため、あまり競争力があるという印象は受けない。

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まとめ「Ryzen 3はCore i3に成り代わることは難しい」

Ryzen 5 / 7は、価格帯が高いしゲーミング性能もそれなりにこなす。そのため、グラフィックボードを買うのが当たり前になっている。だから、Core i5 / i7といい勝負が出来たわけです。

まぁRyzen 5の話は以下の記事で読んでいただければいいとして、Ryzen 3の話に戻します。

「Ryzen 3」は、Core i3を仮想ライバルとしているものの、Core i3のような価格帯は内蔵GPUが入っていることが求められる傾向にある。そして内蔵GPUを捨てるほどの性能かと言われると、ちょっと足りない。

12000~17000円のCPUとしては確かに、今までの常識をくつがえす処理性能を持つものの、別途にグラフィックボードを追加するコストを足すと意外なことに価格相応の性能になってしまいます。ここが痛いところでしょう。

CPU本体別途GPU合計金額マルチスコアコスパ度
Core i3 7350K17969HD 630内蔵型1796945739.32
Core i3 710013497HD 630内蔵型1349743231.24
Ryzen 3 1300X17820GT 73056042342455742.05
Ryzen 3 120014904GT 71041031900748439.27

※コスパ度。1スコアを手に入れるのに掛かる金額。数値が小さいほど安いという意味、コスパは良いということになる。

表にまとめてみました。グラフィックボードはCore i3(Kabylake)に入っている「HD 630」に近い性能のモノを選んだ。コスパ度を見てみると、思ったより差が無いどころか「Core i3 7100」に出し抜かれてしまった

唯一の救いは、Ryzen 3はCore i3と違ってオーバークロックが可能ということ。オーバークロックを施すことで実質的なコスパ度がもっと改善できるから、トータルで見ると「お得」になる可能性は残されています。

Ryzen 3はどんな人にオススメか

とにかく安く、CPUパワーが欲しい人にオススメ。

  • CPUの性能を最大限に使いたいので、別途グラフィックボードは用意しても構わない

こういう人ならRyzen 3は買うかもしれない。正直なところ、こういう人って多分もっと上のRyzenを買っちゃうかもしれないけどね。

  • ちょっと高性能な事務用、Office用の低予算PCを組みたい
  • 動画の編集やエンコードを行いたい(低予算で)
  • Adobe系のソフトをゴリゴリ使いたい(低予算で)
  • かなりハードなマルチタスクをこなせる環境が欲しい(低予算で)

低予算かつ、処理性能もそれなり欲しい。少なくともCore i3程度の処理性能では足りない…という人には良いと思います。オーバークロックも含めれば、一応はCore i5相当のマルチ性能になりますから。

  • Ryzen 5ほどの性能はいらない、ちょっと前のCore i5相当の性能で十分

あとはこういう人にもオススメですね。「Ryzen 5」はCore i7に近い性能を出してしまうけれど、正直そんな性能はいらないから1万円台でCore i5相当の性能を入手したい…という人向け。

どちらにせよ、対象になる人がニッチな傾向だ。Ryzen 5やRyzen 7ほど、ツボにハマる人は少ないと思います。ぼくもAMD派だが、Ryzen 3は少々不利な戦いを強いられていると感じるからね。

結論、Core i3周辺は攻略が難しい

CPU内蔵GPU性能参考価格
Ryzen 5 1400707 cb19400
Ryzen 3 1300X557 cb13000
Core i3 7350KHD 630457 cb17900
Pentium G4560HD 610384 cb6800

というわけで、Ryzen 3は決め手に欠けます。似たような価格帯で、特にライバルになりやすいCPUを表にまとめました。見ての通り、かなり過密になっており、よほどインパクトのある性能を、誰もが驚愕するほどの安価で投入しなければ、勝てないだろう。

むしろ、Core i3を駆逐しそうなのは同じインテルの「Pentium G4560」や、Core i5キラーの「Ryzen 5 1400」です。価格コムの順位を見る限りでも、Core i3は20~30位だが、G4560は2位でRyzen 5は4~5位と圧倒的。

この10000~18000円という価格帯をAMDに清掃するのは、おそらく「Ryzen APU」までお預けになりそうだ。Ryzen APUには、Vega世代のGPUが搭載される。

まだどのようなスペックなのかは一切不明だが、ダイの半分は内蔵GPUに費やされるらしい。「Intel Iris Plus」を超える性能の内蔵GPUは期待できそうだと妄想しています…。

以上、「Ryzen  3の強みと弱み、果たしてCore i3を駆逐できるか?」について解説でした。

AMDの記事

インテルが対抗措置として焦って投入した「Core i9」を完全に焼却する、インテル涙目のCPUシリーズ。「Ryzen Threadripper」についてまとめた記事。HEDT市場が陥落するのも時間の問題だろう。

AMDを応援するために、「Ryzen 5 1400」と「Radeon RX 470」を使った、超コスパの自作PCです。個人的には、もうRyzen 3買うならRyzen 5買ったほうが良いんじゃないか。なんて思ってたりします。

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